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【最新 – 日本政治について学ぶためのおすすめ本 – 幕末以降の政治史から現代の政治まで】も確認する
若者が学ぶべき日本政治史を読み解く
本書は、1941年から2018年までに起こった出来事について、時系列に沿って日米政権の相互の動きを表現しています。図解があるのでわかりやすく、過去を知りつつ現代日本の現状を知るためにベストであり、14歳から学ぶべき貴重な一冊となっています。
目次
はじめに
第1部 日本を改造せよ
❶アメリカ・イギリスは日米開戦前から戦勝後の世界を話し合っていた
❷マッカーサーは日本改造計画を持って焼け野原の東京に進駐してきた
❸天皇、マッカーサーと会談するそこで何が話され、実行されたのか
❹日本を統治する権限はすべてGHOに次々と改造指令が発せられた
❺理想主義的なGHQ草案に日本の議会が修正を加え、日本国憲法が誕生
❻刑務所から解放された人々と刑務所に送られ、追放された人々
第2部 東西冷戦に組み込まれた日本
❶朝鮮戦争が激変させたアメリカの世界戦略が日本の平和憲法との矛盾を生み出した
❷昭和のワンマン総裁吉田茂の光と影 サンフランシスコ講和条約と日米安保条約
❸吉田政権で始まった日本の対米従属その仕組みは砂川事件で完成した
❹反共の防波堤作りのために戦争を推進した人々が次々と復活
❺岸信介は脱占領体制を旗頭に保守派を束ねて自民党結成に導く
❻1960年、岸内閣は安保改定を強行 反対運動の渦が国会を包囲した
第3部 高度経済成長の光と影
❶今日よりも明日はもっと素晴らしい給料も倍になる、そんな時代があった
❷いまある普通の便利な暮らしその原型がこの時期に誕生した
❸すべては東京オリンピック開幕までに。道路、鉄道、街が変貌した
❹石炭から石油へのエネルギー革命その影で労使が対決した三池争議
❺経済成長まっただ中の日本は同時に公害列島でもあった
❻公害裁判で告発された企業 問われたのは「利益」が「生命」か
❼沖縄、日本に切り捨てられた島 その怒りの歴史を知る。
❽沖縄が日本に返還された! なのに米軍優位が変わらないわけ
第4部 変革を求めて激走した時代
❶同時多発文化発生都市「新宿」に若者たちが集った60~70年代
❷世界の若者が怒った1960年代日本の全共闘運動は何と闘ったのか
❸日本の60年代の新左翼運動は赤軍派の凄惨な暴力で自滅した
❹1960年代後半、混沌の中からいまにつながる若者文化が弾け出る
❺メッセージからファッションへ団塊の世代が担ったもの
❻佐藤内閣の密約反故のツケを精算して庶民派宰相、田中角栄登場
❼アメリカの虎の尾を踏み続ける角栄をロッキード事件が追い始める
❽戦後の歴代内閣を比べると脱・対米従属内閣は、なぜか短命
第5部 アメリカ経済に翻弄される日本
❶福田内閣から中曽根内閣まで対米従属派と独自路線派で揺れ続ける
❷経済絶好調の日本にプラザ合意1人負けのアメリカが貿易ルール変更を迫る
❸プラザ合意から円高、そして不況に日本政府・企業は回避努力するが
❹日本の銀行に溢れたお金は土地と株に注がれ、バブルが発生した
❺日本政府はバブル潰しを断行するが時遅く、その傷は深すぎた
❻日本の政治は大混戦続き その陰で日米金融戦争に敗北
第6部 露わになった戦後日本の矛盾
❶自民党をぶっ壊す!と小泉純一郎登場 小泉政権の「構造改革」は何を壊したのか
❷小泉政権が破壊したもうひとつのこと 歴代首相が阻止した自衛隊海外派遣
❸自分探しの若者たちがたどり着いたのは 「オウム真理教」という悪夢の惨劇
❹国民の圧倒的支持を得た民主党の改革 その政権が、なぜ無様に瓦解したのか
❺執拗に繰り返される小沢バッシング 内紛続く稚拙な民主党政権を国民は見放す
❻東日本を未曽有の災害が襲う 日本人はこの厄災をどう教訓とするのか
❼福島第一原発重大事故は人災 真実を隠す人々が被害を拡大させた
❽被爆国なのに、核兵器禁止条約を無視 原発事故があったのに、原発推進政策
❾親米右翼という奇妙な矛盾に支えられ安倍政権はどこへ向かうのか?
おわりに
参考文献
索引
はじめに
いまある日本の姿をつくった戦後史をその背後にあるアメリカとの関係を読み取りながらたどってみよう
日本の戦後史といえば、その起点を1945年8月15日の終戦とするのが通常でしょう。しかし本書では、1941年8月4日、大西洋上で、イギリスのチャーチル首相とアメリカのルーズベルト大統領が発表した大西洋憲章を始まりとしています。なぜなら日本の東条内閣がアメリカに宣戦布告する4カ月も前に、この二人は第二次世界大戦後の世界の仕組みを、すでに構想していたからです。しかも彼らは「連合国」が勝利することを前提にして、敵国の戦後処理を話し合っていました。
玉音放送が伝える敗戦に呆然とした日本の人々が、そのことを知るよしもありませんでした。しかし、日本人はその瞬間から、厳しく処遇されるべき敵国民として、連合国が構想した戦後世界の中に組み込まれていたのです。
日本人が語る戦後史には、ひとつの成功物語があります。軍部の暴走で誤った戦争に巻き込まれた日本人は、敗戦の焦土から立ち上がり、懸命の努力の結果、戦後の高度経済成長を成し遂げ、世界有数の先進国にまでになった。この物語は間違いでありません。しかしこれは、日本人が、そうであってほしいと願う物語でもあります。
ひとつの歴史をたどる時、忘れてはならない視点があります。歴史とは、常に相対的なものだということです。一国の歴史の動きには、常に他国という相手があり、その相手との相互作用によって、物事は変化していきます。
日本人が生きてきた戦後世界には、常に巨大な相手が存在していました。戦勝国の代表として6年間日本を問接統治したアメリカです。アメリカは大きな戦後世界構想を持って、日本を統治しました。このアメリカによる占領時代に、戦後日本の基礎となる憲法を始め、様々な政治・社会制度が改められました。現在、私たちが暮らす社会の枠組みは、この時につくられたのです。私たちのいまは、70年以上昔と地続きでつながっているのです。
もし、世界が70年前のままであれば、現在の日本が抱える問題は、もっと単純なものだったでしょう。しかし、世界は動き、その度にアメリカの世界戦略は変化し、それと連動して、日本に設定されたルールもその都度変更されました。時には180度転換することすらあったのです。ですから、先の日本人の戦後物語をアメリカの視点で見ると、他者が設定したルールに忠実に従い、その中で必死に努力する従順な人々の物語でもあるのです。
本書に展開されるのは、1945年の太平洋戦争終結から現在に至るまでの、70余年にわたる日本とアメリカの決して対等ではない「関係史」です。
この間、アメリカでは13人の大統領が政権を担いました。その一方、日本では実に33人の首相が交代しています。これは世界中のどの国を見ても例のない現象です。
本書では、この日米政権と、その時々の出来事を時系列に沿って図解し、そこに働いた相互の動きを表現しています。すると単純な形が見えてきます。アメリカのつくったルールから踏み出し、日本独自の政策を推進しようとした政権は、その都度スキャンダルに見舞われて短命政権で終わっていること。その反対に、アメリカのルールに率先して従い、日本社会の諸制度を変更した政権が、例外なく長期政権として存続していることです。
70余年一貫するこの現象を、さすがに「偶然」と強弁できる人はいないでしょう。そのように歴史を動かす相互作用が働いている、と考えるほうが合理的なのではないでしょうか。
現在、私たちの前には、例えば憲法改正問題、日米安全保障問題、沖縄の基地問題、原子力発電所問題など、多くの課題があり、様々な立場から議論がなされています。こうした問題を自分の頭で考えるためには、いま現在、目の前に見えているものだけではなく、日本の戦後の政治と社会を動かしてきた「相互作用」に目を向ける必要があります。つまり、戦後史全体を俯瞰して見つめることが重要なのです。
戦後日本は、どのような外因に動かされ、どのように歩んできたのか?その70余年の道のりを、これからたどっていきましょう。