Art 1 誰も知らない「名画の見方」 (小学館101ビジュアル新書)

【最新 – 名画の見方を学ぶためのおすすめ解説本 – 構図や色彩から時代背景・歴史まで】も確認する

名画の鑑賞がより楽しめる

本書は、西洋美術史研究の第一人者である著者が、一般の方でもわかるように名画鑑賞のやり方を解説している本です。有名な作品が例に出されており、その絵が描かれた時代背景や作者が評価されるようになった理由などが紹介されています。名画の鑑賞がより面白く、深みのあるものになります。

高階 秀爾 (著)
出版社 : 小学館 (2010/10/1)、出典:出版社HP

はじめに

「絵は好きだけど、どうやって見たらよいかよくわからない」という人がいる。あるいは、「絵を見るのは楽しいけど、素人だから美術のことはわからない」という言葉もしばしば聞く。だが「わからない」ことをそれほど悲しむ必要はない。なによりもまず、絵が好きだ、見るのが楽しいというのは、豊かな感性に恵まれている証拠である。それは大したことだ。「わからない」と思うのは、好きな絵を見る喜びを味わいながら、その奥にもっとなにかあるのではないかと、心のどこかで漠然と感じているからである。対象がなんであれ、好きだからこそもっとよく知りたいと思うのは、人間の本性であろう。そして事実、優れた作品は、幾重にも豊かな魅力を秘めている。

「わからない」と言えば、美術の専門家にとっても、わからないことはいっぱいある。画家について、作品について、調べれば調べるほどわからないことばかりと言ってもいい。だがそのようにして多くの作品に接し、互いに比較し、また歴史や背景を探っていくうちに、まるで山道で突然、眺望が開けるように、今まで気づかなかった新しい視点が浮かび上がってくる。それは思いがけない細部の特質であったり、歴史とのつながりや、あるいは画家の仕掛けた密かな企みなど、さまざまだが、そのことに気づいて改めて絵を見直してみると、そこに新たな発見があり、理解が深まり、喜びと感動は倍加する。「絵の見方」というようなものがもしあるとすれば、そのような視点を見出すことにほかならないだろう。

本書は、とくに重要と思われる視点に基づく「絵の見方」を八つのテーマに分類し、具体的な作例によってわかりやすく述べたものである。本書が、より豊かな絵画鑑賞の一助となることを期待したい。

高階 秀爾 (著)
出版社 : 小学館 (2010/10/1)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第一章 「もっともらしさ」の秘訣
白い点ひとつで生命感を表現したフェルメール
見る者を引き込むファン・エイクの「仕掛け」
影だけで奥行きを表したベラスケス

第二章 時代の流れと向き合う
激動の時代を生き抜いた宮廷画家ゴヤ
時代に抗った「革新的な農民画家」ミレー
時代を代弁する告発者ボス

第三章 「代表作」の舞台裏
いくつもの「代表作」を描いたピカソ
タヒチでなければ描けなかったゴーガンの「代表作」
二種類の「代表作」をもつボッティチェリ

第四章 見えないものを描く
科学者の目で美を見出したレオナルド・ダ・ヴィンチ
人を物のように描いたセザンヌの革新的な絵画
音楽を表現したクリムトの装飾的な絵画史

第五章 名演出家としての画家
依頼主を喜ばせたルーベンスの脚色
演出した「一瞬」を描いたドガ
絵画の職人ルノワールの計算

第六章 枠を越えた美の探求者
女性の「優美な曲線」に魅せられたアングル
見えない不安を象徴したムンクの「魔性の女性像」
イギリス絵画の伝統を受け継いだミレイ

第七章 受け継がれるイメージ
カラヴァッジョのドラマティックな絵画+
働く人々を描いた色彩画家ゴッホ
西洋絵画の歴史を塗りかえたマネ

第八章 新しい時代を描き出す
人間味あふれる農民生活を描いたブリューゲル
新しい女性像を描いたモリゾ
20世紀絵画の預言者モロー

あとがき
西洋絵画略年表

高階 秀爾 (著)
出版社 : 小学館 (2010/10/1)、出典:出版社HP