量子コンピュータが本当にわかる! ― 第一線開発者がやさしく明かすしくみと可能性

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量子コンピュータの本質がわかる

実際に開発している立場から量子コンピュータの実態を解説している1冊です。量子コンピュータの基礎や仕組みはもちろん、開発現場の雰囲気、量子コンピュータ装置のリアルな様子まで紹介されているため、非常に勉強になります。

はじめに

「量子コンピュータって聞いたことあるけど、実体がよくわからないなぁ」。
そう思ってこの本を手に取ったあなた。そんなあなたに、量子コンピュータのしくみと可能性を本質的なところから解き明かすことが、この本の目的です。

量子コンピュータは今、次世代の超高速コンピュータとして世界中で注目されています。最近は、新聞やインターネット記事などで量子コンピュータのニュースが取り上げられる機会も増えました。しかし残念なのは、量子コンピュータとは一体どういうものなのか、その実体が皆さんにあまり知られていないことです。世の中のニュースはどうしても表面的な説明にとどまり、「量子コンピュータはとにかく計算が速い」「量子コンピュータは実現間近」と過度に期待させるような言葉ばかりを並べる傾向があります。また、皆さんが量子コンピュータの本質的なところをもっと知りたいと思っても、誰もが納得できるように正確に伝えてくれるメディアはあまり見つからないように思います。
量子コンピュータの実体を、実際に開発している立場から誰にでもわかるように伝えたい。本書はそういう思いから生まれました。量子コンピュータの計算の仕組みはもとより、その装置のリアルな様子や、開発現場の雰囲気などは、今まさに最子コンピュータ開発を進めている私にしか伝えられないと思ったのです。本書では、量子コンピュータについて「本当にわかった!」と皆さんに納得してもらうため、本質的な部分に絞ってていねいにお話しすることにしました。数式は一切使わずに、「最子コンピュータは今のコンピュータとどう違う?」「どう役に立つ?」「なぜ計算が速くなる?」といった疑問を解き明かしていきます。さらに、「息子コンピュータって見た目はどういう装置?」「最先端の開発状況はどんな様子?」という疑問にも迫り、新聞やインターネット記事からはなかなか感じ取れない量子コンピュータ開発のリアルな現場を解き明かします。特に、最後の章では私が開発している量子コンピュータの装置の見学ツアーを行いながら、開発現場の具体的な様子や臨場感を味わってもらえるようにしました。実体が正しく伝わるように、ネガティブな情報も包み隠さず書いています。
この本を読めば、世の中の雑多なニュースに惑わされることなく、量子コンピュータの実体を本質的なところからリアルな現場まで把握し、「本当にわかった!」と思えるはずです。さらに、そういった理解を通して、今後世の中を大きく変えるかもしれない量子コンピュータという未来のテクノロジーの仕組みや可能性にワクワクすることができるでしょう。この本が、量子コンピュータに興味を持ってくれた皆さんの初めの一歩となるような本となれば幸いです。

武田俊太郎

目次

はじめに

第1章 量子コンピュータとは?
量子コンピュータは未来のひみつ道具?
今、量子コンピュータが熱い
誤解ばかりの量子コンピュータ
誤解1:量子コンピュータはあらゆる計算が速くなる?
誤解2:量子コンピュータは並列計算するから速くなる?
誤解3:量子コンピュータは数年後には実用化される?
コンピュータの仕組みと歴史
現代のコンピュータの誕生と進歩
量子コンピュータの必要性
量子コンピュータの誕生
量子コンピュータで世の中はどう変わる?
コラム 量子コンピュータには、ゲート型とアニーリング型の2種類ある?
第1章のまとめ

第2章 量子力学の最も美しい実験から探る量子コンピュータの正体
量子コンピュータと量子力学
量子力学はどれくらいミクロな世界か?
「2重スリットの実験」~水面を進む波の場合~
「2重スリットの実験」~電子1個の場合~
電子は2つの隙間を同時に通っている?
重ね合わせは壁に当たった瞬間に壊れる
重ね合わせ「具合」にも色々ある
2重スリットの実験から理解する量子コンピュータの計算の仕組み
なぜ日常的な世界とミクロの世界は違うのか?
第2章のまとめ

第3章 量子コンピュータの計算の仕組み
現代のコンピュータと量子コンピュータ
現代のコンピュータの情報処理の仕組み
ビットの基本的な変換=論理演算
論理演算を組合せればどのような計算もできる
ビットと論理演算の「量子バージョン」とは?
量子ビットは「重ね合わせ具合」で情報を表す
量子ビットから取り出せる情報には制約がある
1個の量子ビットの重ね合わせ具合を変える量子論理演算
2個の量子ビットを連携させる量子論理演算
量子コンピュータは波を操って答えを導く計算装置
並列計算だけでは計算は速くならない
コラム1:通常のコンピュータと量子コンピュータの足し算回路
コラム2:量子コンピュータは逆向きにさかのぼれるコンピュータ
第3章のまとめ

第4章 量子コンピュータはなぜ計算が速いか?
量子コンピュータの速さに関する誤解
現代のコンピュータが苦手な問題
量子コンピュータが現代のコンピュータより「速い」とは?
どのような問題で量子コンピュータの計算が速くなるのか?
高速化メカニズムの具体例1:グローバーの解法
グローバーの解法の具体的な計算手順
高速化メカニズムの具体例2:ミクロな化学の計算
化学計算の具体的な計算手順
量子コンピュータで高速化する計算は他にも色々ある
コラム 量子超越性とは?
第4章のまとめ

第5章 量子コンピュータの実現方法
量子コンピュータをどうやって作るか?
量子コンピュータを作るのはとにかく難しい
コンピュータにはエラー訂正が必須
量子コンピュータ開発の今
量子コンピュータのメジャーな方式の比較
量子コンビュータ方式1:超伝導回路方式
量子コンピュータ方式2:イオン方式
量子コンピュータ方式3:半導体方式
量子コンビュータ方式4;光方式
量子コンピュータのこれから
コラム 実際に量子コンピュータを使ってみる
第5章のまとめ

第6章 光量子コンピュータ開発現場の最前線
量子コンピュータ開発の真実とは?
私が光量子コンピュータの研究を始めたきっかけ
光量子コンピュータの実現を可能にする新方式の量子テレポーテーション
ループ型光量子コンピュータ方式で大規模化を狙う
実際の研究開発の現場
テーブルの上に作りこまれた光回路
光回路を安定に制御する
研究開発を行う心構え
現状の光量子コンピュータはまだまだである
量子コンピュータのこれから
コラム光の量子が活躍する未来
第6章のまとめ

あとがき
参考文献