沖縄現代史 (岩波新書)

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第二次世界大戦後の沖縄の歴史を辿る

本書は、第二次世界大戦後の沖縄の現代史をまとめている本です。米軍の占領下にあった沖縄の状況から返還された後の葛藤や様々な政治運動に加えて、沖縄を巡る政治問題が紹介されています。日米間の思惑や利害調整も相まって、沖縄をめぐる政治問題の複雑さが際立っていることがわかります。

新崎 盛暉 (著)
出版社 : 岩波書店; 新版 (2005/12/20)、出典:出版社HP

はじめに

戦後日本の政治は、アメリカの世界戦略に従属するかたちで、後には、それを積極的に補完するかたちで展開してきた。その世界戦略への従属あるいは積極的補完のかたちが、日米安保体制(日米同盟)として表現されている。いいかえれば、戦後日本は、アメリカの世界戦略に固く結びつけられることを通して世界につながってきた。沖縄は、その日米同盟の軍事的根幹部分として位置づけられてきている。したがって、沖縄現代史は、日米同盟の変質過程に即して、六つの時期区分に分けて考察することができる。
第一期は、対日平和条約とセットになった旧安保条約の成立(一九五二年四月)以前の時期、いわば前史の段階である。
第二期は、五二年四月の二条約成立から、一九六〇年の安保改定までの時期である。
第三期は、六〇年安保改定から、一九七二年の沖縄返還までの時期である。
第四期は、沖縄返還から、一九七八年の「日米防衛協力のための指針」(いわゆるガイドライン)策定や「思いやり予算」のはじまりのころまでである。
第五期は、七〇年代末から一九九五年夏までの時期である。
第六期は、日米安保再定義という上からの安保見直しと、沖縄が提起した下からの安保見直し要求が激突する一九九五年秋以降である。そして二〇〇五年のいわゆる米軍再編協議によって、日米安保体制はまた新しい時期を画そうとしている。日米同盟の完成期とでもいえるかもしれない。
ここにおける時期区分の第一期から第三期にかけての時期は、沖縄が米軍支配の下に置かれていた時期であり、第四期以降の時期は、沖縄が日本に復帰し、四七都道府県の一つとなった時代である。
沖縄戦後史(現代史)は、米軍支配下の時期と、日本になって以降の二つの時期に大きく分けられる。この二つの時期を通して、沖縄は、日米同盟の軍事的根幹部分をなしており、その意味では連続性をもち、また、日本戦後史(現代史)と一体不可分の関係にあるが、この二つの時期は、たとえば「戦後六〇年」という言葉で一括りにすることのできない時代的特徴をもっている。
沖縄戦から一九七二年の沖縄返還にいたる米軍支配時代の沖縄の歴史的歩み、とりわけ軍政と対峙した民衆の闘いの歴史については、同じ岩波新書の前著『沖縄戦後史』(一九七六年、中野好夫と共著)で具体的に明らかにしているので、本書では、まず第一章で、米軍支配時代の沖縄戦後史を要約的にまとめ、第二章以下で、日本になって以降、すなわち沖縄返還以後の沖縄の歴史的歩みを具体的に整理しておきたい。

新崎 盛暉 (著)
出版社 : 岩波書店; 新版 (2005/12/20)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第一章 米軍支配下の沖縄
住民を巻き込んだ沖縄戦/平和憲法と米軍の沖縄支配/対日平和条約と日本復帰運動/米軍政下の沖縄/暴力的な土地接収/島ぐるみ闘争の爆発/砂川と沖縄の違い/安保改定と沖縄へのしわ寄せ/ベトナム戦争と沖縄/「反戦復帰」への転換/クローズアップされる沖縄返還/B52 撤去闘争/沖縄返還とは何であったか

第二章 日本になった沖縄
苦渋に満ちた復帰/返還で沖縄に集中した米軍基地/米軍優先を認める「五・一五合意メモ」/混乱招いた日本政府の軍用地政策/反戦地主と公用地法/自衛隊配備への抵抗/うつろう「日の丸」/「革新王国」/一次振計と沖縄海洋博/新たな価値観を提起した「金武湾を守る会」/復帰に失望した民衆/地籍明確化をめぐる攻防/安保に風穴を開けた四日間/「安保タナ上げ論」/屋良県政から平良県政へ/「ガイドライン」と「思いやり予算」/「人は右、車は左」/政党、労組、運動の「一体化」/「全軍労」の名が消えた

第三章 焼き捨てられた「日の丸」
演習激化と嘉手納爆音訴訟/復活した米軍用地特措法/強制使用手続きの五段階/「五年間の強制使用」という裁決/一坪反戦地主運動の発足/変わる自衛隊観/六歳未満の「戦闘協力者」とは/「復帰してよかった」か/反復帰・反ヤマト/国際的軍事化の潮流のなかで/天皇訪沖と海邦国体/沖縄民衆の天皇観/強化された管理体制/沖縄をめぐる天皇の戦争責任/「日の丸」「君が代」と学校/紛糾した八六年の卒業式・入学式/二年足らずで全国並みに/読谷村で焼かれた「日の丸」/「強制使用二〇年」申請という暴挙/警察も介入した公開審理/嘉手納基地「人間の鎖」へ

第四章 湾岸戦争から安保再定義へ
「慰霊の日」休日廃止反対運動/条例案廃案後、海部発言で決着/「再契約拒否地主」対象に着手された強制使用手続き/湾岸戦争で問われた沖縄戦の体験/公告・縦覧代行と軍転法/公開審理で明かされた日米安保の変質/首里城の復元/「PKO訓練施設を沖縄に」の衝撃/非自民連立政権と沖縄/嘉手納基地爆音訴訟判決/相次ぐ米軍事故、そして核密約疑惑/宝珠山発言とP3C基地/宝珠山発言をめぐる攻防/軍転法と基地三事案/代理署名で対応が割れた革新市町村長/「平和の礎」への疑問

第五章 政治を民衆の手に
少女暴行事件の衝撃/知事、代理署名を拒否/運動の高まり/クリントン大統領の訪日中止/基地返還アクションプログラムと国際都市形成構想/県民投票条例制定へ/激しい駆け引き/ほとんどの市町村長が公告・縦覧を拒否/成立した県民投票条例/有権者の過半数が賛成した基地縮小/知事の公告・縦覧代行応諾/米軍用地特措法改定/名護市民投票の勝利/名護市長選挙から県知事選挙へ

第六章 民衆運動の停滞と再生
県政交代と新基地問題/「戦争をしない国家」から「戦争ができる国家」へ/沖縄サミットと民衆の動き/新基地建設へのプロセス/ブッシュ、小泉政権の登場/時代状況と民衆世論/辺野古の闘いと米軍再編協議/都市型戦闘訓練施設の建設/民衆無視の日米合意

あとがき
付表
略年表

新崎 盛暉 (著)
出版社 : 岩波書店; 新版 (2005/12/20)、出典:出版社HP