わかりやすい数学モデルによる多変量解析入門

【最新 多変量解析について学ぶためのおすすめ本 – 統計の基本から実務に使える応用まで】も確認する

多変量解析の基本から

統計解析の手法の一つである多変量解析の数学モデルを用いて、スポーツ・芸能・政治などの様々な分野のデータの解析例が紹介されています。初めて多変量解析を理解するのにおすすめの1冊です。さらに応用の内容も多く扱っているため、確実に実践的な知識が身に付きます。

木下 栄蔵 (著)
出版社 : 近代科学社; 第2版 (2009/5/1)、出典:出版社HP

読者の皆さまへ

小社の出版物をご愛読くださいまして、まことに有り難うございます。おかげさまで,近代科学社は1959年の創立以来,2009年をもって50周年を迎えることができました。これも、ひとえに皆さまの温かいご支援の賜物と存じ、心より御礼申し上げます。
この機に小社では、全出版物に対してUD(ユニバーサル・デザイン)を基本コンセプトに掲げ、そのユーザビリティ性の追究を徹底してまいる所存でおります。
本書を通じまして何かお気づきの事柄がございましたら、ぜひ以下の「お問合せ先」までご一報くださいますようお願いいたします。
お問合せ先:reader@kindaikagaku.co.jp
なお,本書の制作には,以下が各プロセスに関与いたしました:
・制作:大日本法令印刷
・組版:電算写植/大日本法令印刷
・印刷:大日本法令印刷
・製本:大日本法令印刷
・資材管理:田村洋紙店,三新大日本法令印刷
・カバー・表紙デザイン:川崎デザインスタジオ
・広報宣伝・営業:森田忠,山口幸治,富高塚磨

・本書の複製権・翻訳権・譲渡権は株式会社近代科学社が保有します。
・JCLS<(株)日本著作出版権管理システム委託出版物>
本書の無断複写は著作権法上での例外を除き禁じられています。
複写される場合は、そのつど事前に(株)日本著作出版権管理システム(電話03-3817-5670,FAX03-3815-8199)の許諾を得てください。

まえがき

21世紀に入りますます混迷を深める現代において、「意思決定」という言葉が非常に重要なキーワードとなっている。近未来の政治,経済,経営の問題,あるいは,個々人の進路選択などの問題に対して、さまざまな条件が錯綜するなかで最も重要な戦略的目標を達成するために最適な選択を効率よく行う必要が高まっているからである。

このような意思決定問題のすべてにおいて、私たちは多くの代替案のなかから、いくつかの評価基準に基づいて、1つあるいは複数の代替案を選ぶという場合が多いのである。このように考えると、人間が生きるということは、選択行動の積み重ねであり、一種の意思決定の集合であるということができる。
一方、混迷を深める現代社会においては,「情報社会」,「IT革命」などの要因により、ビジネス世界だけでなく、身の回りの生活まで、情報化の時代へ突き進もうとしている。そのため従来の考え方では時々刻々と変わりゆく時代の流れ(たとえばドッグイヤー)についていけず、国際化の波に乗り遅れることは必至である。いままさにパラダイム・シフトが必要になってきているのである。それは1990年からの「失われた15年」を総括し、それ以前のパラダイムから新しいパラダイムを創造することを意味している。すなわち、一言でいえば、オペレーションマネジメント(選択された道を上手に走る戦略論)への変更である。1990年以前の日本は「あれもこれもの時代」だったが、これからの時代は、「これだけはの時代」になるからである。

したがって、21世紀は、意思決定論が重要な課題を解くキーワードとなるであろう、このようときに用いる数学的な分析手法として「多変最解析」がある。
本書は、多変量解析等の数学モデルを勉強している学生や、実際の業務で数理解析に従事している人たち、さらに直接仕事に関係なくても教養として数学を身につけたいビジネスマンのために多変量解析等の数学モデルをわかりやすくまとめたものである。とりわけ本書では,著者がこれまで行ってきた研究や,数学モデルの実務ならびに教育の経験をもとにしているので、読者のみなさんにとって実用的で理解しやすい本になったものと信じている。また適用例は,日常的でわかりやすく楽しい話題を選んでいるので興味深く読んでいただけるはずである。
なお、本書を執筆するにあたり、先輩諸氏の著書を多数参考にさせていただいた。これらの諸氏に御礼申しあげる.
最後に、本書の企画から出版に関わる実務にいたるまでお世話になった株近代科学社の小山透氏と高山哲司氏に厚く感謝したい。

2009年1月
木下栄蔵

木下 栄蔵 (著)
出版社 : 近代科学社; 第2版 (2009/5/1)、出典:出版社HP

目次

まえがき
第1章はじめに

第2章OERAモデルとDERAモデル
2.1はじめに
2.2 OERAモデル
2.3 DERAモデル
2.4 2008年度プロ野球での計算例
2.5イチローの生涯打者成績

第3章回帰分析法
3.1回帰分析法とは
3.2直線回帰分析(単回帰分析)
3.3指数回帰分析
3.4重回帰分析
3.5重回帰分析の適用例(学校の成績,打者の評価)

第4章数量化理論1類
4.1数量化理論1類とは
4.2数量化理論1類の適用例:その1(学校の成績)
4.3数量化理論1類の適用例:その2(打者の成績)

第5章判別分析法
5.1判別分析法とは
5.2判別分析法の適用例:その1(学校の身体測定)
5.3判別分析法の適用例:その2(打者の成績)

第6章数量化理論2類
6.1数量化理論2類とは
6.2数量化理論2類の適用例:その1(学校の成績)
6.3数量化理論2類の適用例:その2(打者の成績)

第7章クラスター分析
7.1クラスター分析の概要と計算手順
7.2クラスター分析の方法
7.3クラスター分析の適用例(打者の成績)

第8章数量化理論3類
8.1数量化理論3類とは
8.2数量化理論3類の適用例:その1(レジャーの過ごし方)
8.3数量化理論3類の適用例:その2(食事のメニューの選び方)

第9章数量化理論4類
9.1数量化理論4類とは
9.2数量化理論4類の適用例:その1(アイドルタレントの分析)
9.3数量化理論4類の適用例:その2(タレントの分析)

第10章主成分分析法
10.1主成分分析法とは
10.2主成分分析法の適用例:その1(学校の身体測定)
10.3主成分分析法の適用例その2(投手の成績)

第11章因子分析法
11.1因子分析法とは
11.2因子分析法の適用例:その1(野球人の好み)
11.3因子分析法の適用例:その2(タレントの好み)
11.4因子分析法の適用例:その3(政治家の好み)

第12章AHPモデル
12.1AHPモデルとは
12.2階層分析法AHPの概要
12.3AHPの数学的背景
12.4AHPモデルの適用例(企業選定,住宅の選定,番組の選定)

第13章ISMモデル
13.1システム分析(ISMモデル)
13.2ISMモデルとは
13.3ISMモデルの適用例:その1(住宅の選定)
13.4ISMモデルの適用例:その2(交通経路選択)

参考文献
索引

木下 栄蔵 (著)
出版社 : 近代科学社; 第2版 (2009/5/1)、出典:出版社HP

はじめに

2008年は激動の一年間であった。米国発サブプライムローン問題に端を発し、2008年9月15日の米国証券会社リーマンブラザースの破綻で一挙に世界同時株安へと突入した。1930年代の世界大恐慌の再来を思わせる経済状態である。そして、急激な円高が進み、日本の輸出産業は軒並み赤字決算に陥った。
一方、スポーツ界に目を転ずれば、プロ野球において阪神タイガースが独走しており、誰もがセ・リーグの覇者になると信じて疑わなかった。しかし、結果は巨人の奇跡的逆転優勝でセ・リーグは幕を閉じた。そして、日本シリーズでは、パ・リーグの覇者西武が巨人を倒し、日本一に輝いたのであった。

野球をはじめあらゆるスポーツにおいて、勝負の分かれ目は、一元的な指標では決まらない、その背後にある多元的な要因が複雑にからみあって決まるものであるまたスポーツだけでなく,政治・経済の世界、芸能界、入学試験や入社試験における人物評価等々において,その内部状況を分析してみると複雑である場合が多い。このように社会現象は,複雑な要因の組み合わせで成り立っているが,これらを一元的にとらえるのではなく多元的にとらえることにより複雑な構造が単純化されてくることがある。このような複雑な構造を分析するときに用いる数学的手法が「多変量解析」と呼ばれるものである.したがって、多変量解析は,複雑な社会現象や人間関係の仕組みを把握するのに使える手法の集まりともいえる。その内容は,種々の現象がいくつかの変量によって決まるとき、その変最間の相関関係を解析し,これらの変量の総合化をいくつかの視点から行い、多元的に考察するものといえる。
さて、本書では、この多変量解析を中心に説明していくのであるが,以下,本書の構成と各章の内容について述べる.

●第2章OERAモデルとDERAモデル
OERAモデルはアメリカのコウバーとケイラーが提案した打者貢献度指数モデルである。すなわち,野球における打者の公平かつ正確な評価を行うためのモデルといえる.一方,DERAモデルは日本の木下(著者)が提案した投手貢献度指数モデルである.すなわち、野球における投手の公平かつ正確な評価を行うためのモデルである。
多変量解析の手法は第3章から第11章までに説明してある。その中で第3章から第6章までが外的基準がある場合の多変量解析の手法で,第7章から第11章までが外的基準がない場合の多変量解析の手法である.外的基準とは,予測あるいは,判別すべき測定対象のもつ性質のことである.たとえば入学試験における総合得点や合否と考えてもらえればよい.
さて、この外的基準とこれを説明する要因がどのようなデータであるか(量的であるか質的であるか)によって4つの手法に分かれる。ただし量的データとは、たとえばテストの点が何点といったものであり,質的データとは,成績が優とか良あるいは合格とか不合格といったものである.そこで,外的基準のある多変量解析の手法を章単位で説明する.
●第3章回帰分析法
量的な要因に基づいて量的に与えられた外的基準を説明するための手法である。
●第4章数量化理論1類
質的な要因に基づいて量的に与えられた外的基準を説明するための手法である。
●第5章判別分析法
量的な要因に基づいて質的に与えられた外的基準を説明するための手法である。すなわち、判別分析法は,回帰分析法において外的基準が質的データで与えられている場合に相当する.
●第6章数量化理論2類
質的な要因に基づいて,質的に与えられた外的基準を説明するための手法である。すなわち,数量化理論2類とは、判別分析法において各要因が質的データで与えられている場合に相当する。

一方,外的基準のない多変量解析のうち分類を目的としている手法は第7章から第9章までであり,以下それらを章単位で説明する.
●第7章クラスター分析
種々の異なった性質のものがまざり合っている対象の中で、互いに似たものどうしを集めてクラスターを作り,それらを直接分類しようとする手法である。
●第8章数量化理論3類
個体の様々なカテゴリーへの反応の型に基づいて,個体とカテゴリーの両方を数量化する.そして,この数量により各個体やカテゴリーを分類し,その分類をもたらした原因は何であるかを探りだす手法である。
●第9章数量化理論4類
対象間の比較を手掛りにして数量化を行い,多くの対象を似たものどうしに分類する手法である。
さらに,外的基準のない多変量解析の手法は,第10章,第11章にもあり,以下それらを章単位で説明する。
●第10章主成分分析法
多くの変数の値を1つまたは少数個の合成変量(主成分)で表す手法である。つまり,この手法は多くの変量をまとめ、現象を要約する1つの有効な方法といえる。
●第11章因子分析法
多くの変数の値をいくつかの因子によって説明する手法である。つまり,この手法は現象の背後にある事実を明らかにするためのもので,その説明因子の解釈に重きをおく方法といえる。

最後に,ユニークなモデルを2つ紹介する。1つは,複雑なあるいはあいまいな状況の下での意思決定手法AHPモデルであり,もう1つは問題をより客観的に明確にとらえるための階層構造化手法ISMモデルである。これらの手法は,第12章,第13章にあり,以下それらを章単位で説明する.
●第12章AHPモデル
Thomas.L.Saatyが提唱した不確定な状況や多様な評価基準における意思決定手法であるこの手法は,問題の分析において主観的判断とシステムアプローチをうまくミックスした問題解決型意思決定手法の1つといえる。
●第13章ISMモデル
J.N,Warfieldが提唱した階層構造化手法の1つである。この手法は,問題をより客観的な方法で最適な階層構造に明示化する際の有効な方法といえる。

木下 栄蔵 (著)
出版社 : 近代科学社; 第2版 (2009/5/1)、出典:出版社HP