覚えておきたい 美しい大和言葉 (だいわ文庫)

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品格を身につける

日本の風土と暮らしから生まれた大和言葉には、奥ゆかしさや独特のやわらかさがあります。そんな日本の言葉を上手に使いこなすことで、自身の言葉遣いの格を上げることができます。心に色彩と潤いを与えてくれるような大和言葉が満載です。

日本の言葉研究所 (著)
出版社 : 大和書房 (2016/1/9)、出典:出版社HP

表紙デザイン 三木俊一(文京図案室)
本作品を電子書籍版に収録するにあたり、一部の漢字が簡略体で表記されている場合があります。
この本は縦書きでレイアウトされています。
また、ご覧になる機種により、表示の差が認められることがあります。

はじめに

大和言葉は、日本の風土と日本人の暮らしが言霊となったもの
現在、私たちが慣れ親しんでいる日本語は、大和言葉、漢語、外来語と大きく三つに分けられます。このうち、古来日本に伝えられてきたのが大和言葉です。ある意味では純粋な日本語といえるでしょう。
大和言葉は美しく、優雅で、洒落た言葉の宝庫です。語感や響きを目と耳で楽しめます。さらに、肌感覚で意味や内容が理解でき、思いも伝わりやすいという美点があります。これは、千年以上にわたる日本人のDNAが込められているからです。日々の暮らしを振り返ると、私たちの使っている言葉はごく限られたものです。ボキャブラリーがやせているといわれますが、それで事足りてしまうのです。
生きていくうえで不便がなければいいのですが、それだけではさびしいような気もします。せっかく古人が残してくれた珠玉の言葉の数々を味わい、活用してはいかがでしょうか。
よい言葉は、心に彩りと潤いを与えてくれます。さらに実際に使ってみると、豊かな世界が見えてきます。本書では、みなさんにそんな提案をしたいと思います。

「楽しめる、味わえる」、そんな大和言葉を集めました
近年は大和言葉というと、丁寧な言葉づかいや、よそ行きの会話フレーズとして注目されることが多いようです。他人とのコミュニケーションや仕事に役立てるなど、実用的な面で興味が広がっています。たしかにそうした側面もあるのですが、できれば純粋に言葉の持つ魅力を味わい、「いいなあ」と思ったものを実際に口に出してみる。そんな自由なところから、大和言葉との付き合いをはじめてみてはいかがでしょうか。
そこで本書では実用性を少し横に置いて、「聞いたことはあるけれど使い方がわからない」「あまり見かけないが、きれいな響きや語感をもっている」「知らない言葉だけれど、現代語に変換するときれいな言葉になる」など、普段はあまりお目にかからない大和言葉を中心に紹介しています。使える、使えないではなく、心に留まるもの、琴線に触れるもの、そんな基準でみなさんも大和言葉に出合ってください。

本書で紹介している、大和言葉の一例を以下に示します。
美しい言葉
しなやか→嫋やか
花が咲く→笑む
火葬される(死ぬ)→雲となる
心の中で恋しく思うこと→心恋
恋人を待つ夕方→待つ宵

見て、聞いて、すぐに意味がわかる言葉
美人→見目佳し
耳元でささやく→耳擦り、耳打つ
メモ帳→留め帳
まっしぐら→面も振らず
皮肉→当て言、ねすり言
好意を寄せる→心寄す
ふっくら丸い→明らか

ユニークな言葉
飲み友達→削り友達
駆け落ち→走り夫婦

題ある言葉
稲→秋田実
水玉→水鞠
手紙、便り→雁の使ひ
雪→天花

語感や響きからイメージをふくらませ、言葉で遊んでみる
本書の上手な使い方、楽しみ方は、その語感、響き、字面をまず堪能することです。そしてお気に入りがあれば、日常の会話やメール、手紙の中にそっと忍ばせてみましょう。文法として正しいかどうかよりも、ひとつのフレーズとして活用し、楽しんでください。遊び心でいいのです。相手に意味が伝わるかどうかは重要ではありません。しかし、言葉のもつパワーが、思いを同じくする人には不思議と伝わるものです。
そうして大和言葉に少しでも興味がもてたら、さらに未知なる言葉を探し求めてください。そこには新しい発見と、知の喜びが待っています。ひとりでも多くの方に、本書がそんなきっかけを与えられれば幸いです。

日本の言葉研究所 (著)
出版社 : 大和書房 (2016/1/9)、出典:出版社HP

もくじ

第一章 時・季節の言葉
大和言葉―現代語
天つ日―「太陽」
朝まだき―「夜明け」
彼は誰れ時ー「夕方」「夕暮れ」
小夜―「夜」
明くる今日―「明日」
弥日異に―「日ごとに」
日並み―「日」
三五月―「満月」「名月」「旧暦十五日の月」
月―「月」
月籠りー「月末」
大暮れ―「年末」
星の林―「多くの涙」
雨隠れ―「雨宿り」
しめじめー「雨がしとしと降る様子」
朝明の風―「朝の風」
追ひ風―「風」
移ろふ―「色(が)褪せる」
思ひの色―「緋色」
年頃―「長い時」「長い年月」
念―「一瞬」「短い時間」
行き合ひ―「聞の変わり目」
ささらぐー「水がさらさらと音をたてて流れる」
早乙女―「田植えをする女性」
秋の鏡草ー「朝顔」
旧り行く―「老いていく」
遠人―「長生きの人」
限り―「死ぬこと」
雲となる―「火葬される」
添ふ―「結婚する」
走り夫婦ー「駆け落ち」
熱る―「熱くなる」
慌しー「忙しい」
明け暮れー「いつも」
息の緒―「命」
川雉子―「蛙」
蚊遣り火―「蚊取り線香」
古へ―「過去」
青嵐(晴嵐)―「霞」
勢ふ―「栄える」
咲きすさぶー「咲き乱れる」
向かふー「進む」
空音―「空耳」
只中―「代表」
地む―「疲れる」
差し合ふ―「出会う」
巧み―「手際がよい」
轟くー「鳴り響く」
身翻る―「妊娠する」
手児―「乳幼児」
肖る―「似る」
落ち髪―「抜け毛」
長路―「遥かな道」
天花―「雪」
心の塵―「煩悩」
面も振らずー「まっしぐら」
今ー「まもなく」
固め―「約束」
行き方―「行方」
名残ー「余韻」
後世―「あの世」

第二章 装いの言葉
大和言葉―現代語
見目佳し―「美人」
装ひ―「服装」
出で立ち―「姿」「装い」
映る(写る)―「似合う」
生身―「肉体」
始末―「節約」「倹約」
繕ふー「す」「手入れをする」
仕立つー「衣服をち縫う」「仕立てる」「着物をつくる」
婆娑羅―「派手」
窶す―「変装する」
心劣りー「見劣りする」
身を成す―「身支度をする」
水鞠―「水玉」
映え映えしー「見栄えがする」「輝いて見える」
立ち装ふー「美しく装う」
色ふ―「着飾る」

第三章 味わいの言葉
大和言葉―現代語
執り行ふ―「一杯やる」
酌むー「お茶やお酒を印んで飲む」
削り友達―「酒飲みの友達」
ずぶずぶ(づぶづぶ)ー「酔いつれた様」
振る舞ひ―「(ご)馳走」
尽くす―「すべてを出す」
所狭しー「いっぱい」「あたりに満ちている」
煌めく―「歓待する」
心行く―「足りる」「満足する」
旨し―「楽しい」
持て成す―「振りをする」
当たる―「なす」
身になる―「栄養になる」
五臓六腑―「内職」
労くー「病む」「病気になる」
労るー「治療する」
切る―「尽きる」
打つー「耕す」
秋田実―「稲」
屯食―「握り飯」
肉置きー「肉付き」
春告魚―「飲食する」
円らか―「ふっくらしている」
師(かれひ)ー「弁当」
被け物ー「ご褒美」
可惜し(借し)ー「もったいない」
我酒―「やけ酒」

第四章 住まい・暮らしの言葉
大和言葉―現代語
終の住処―「死後に落ち着く所」
営み出だす―「つくる」「つくり上げる」
漫ろ歩き―「散歩」
笑むー「(花が)咲く」
忘れ花ー「季節に遅れて咲く花」
道も狭に―「道いっぱいに」
夥しー「(建物などが)立派」
取り置く―「片付ける」
課と―「きちんと」
朝夕事―「暮らし」
耳を借る―「耳元でささやく」
初立つ―「立つ」
浮き世を立つ―「生計を立てる」
健の使ひ―「便り」「手紙」
形―「担保」
付き付きしー「調和している」
出で立ち―「立ち」
道中ー「旅の途中」
道行き―「道中(旅の途中)」
玉水―「清水」
勤しむ―「勤める」
湯浴み―「入浴」
無徳―「みすぼらしいこと」
便無し―「不便」
雪隠(せっちん)ー「トイレ」「便所」
方ー「方向」「方角」
紙幣を担ぐ―「迷目を気にする」
留め帳ー「メモ帳」
潤ふー「暮らしが楽になる」
流離ふー「流浪する」
仕付けー「礼儀作法」
手習ひー「練習」
奢り費やす―「浪費する」
車返しー「危険な所」「難所」

日本の言葉研究所 (著)
出版社 : 大和書房 (2016/1/9)、出典:出版社HP