美しい「大和言葉」の言いまわし: さりげなく、折り目正しく「こころ」を伝える (知的生きかた文庫)

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思いやりが込められた大和言葉

遠い昔、文字のなかった日本人が話していた生粋の日本語、それが「大和言葉」です。大和言葉には奥ゆかしさがあり、余韻が心に染みるという特徴があります。大和言葉を学び日常会話や文章に取り入れることで、今までとは違った雰囲気を彩ることができます。

三笠書房
美しい「大和言葉」の言いまわし
日本の「言葉」倶楽部

この本は縦書きでレイアウトされています。
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はじめに

言葉は生きていて時代とともに変化する、といわれます。
とくに最近の日本では、情報化社会が進んだせいか、消えゆく言葉が増えているようです。本来、日本語は豊かで美しい言語なのですが、外国にルーツをもつ外来語や漢語に押され、存在感を失いつつあるのです。
こういう時代にこそ見直していただきたいのが、「大和言葉」です。
わたしたちの遠い祖先が、美しい風土のなかで生み出した日本独自の言葉。その特徴は、品よく、優しい点にあります。実際に声に出してみると、味わい深さが感じられることでしょう。
本書は、数ある大和言葉のなかから日常生活でつかえるものを場面ごとに選び、由来や意味、つかい方などを解説しています。たったひと言で、場の雰囲気やつかう人の印象を好転させられる大和言葉。その魅力を再発見し、日常生活で活用していただければ幸いです。

目次

はじめに
第一章 おもてなしの大和言葉
お運び 来訪者が費やした体力や時間にも感謝する
お足元 悪天候でも来てくれた人への思いやり
ごゆるり 「ゆっくり」と「ゆったり」の合わせ技
おみ足 「お足」では少し違う意味になる場合も
心置きなく 遠慮がちな訪問客に効果が大きい
婚しゅう 目上の人に嬉しい気持ちを伝えるのにぴったり
腕によりをかける 腕前をよく見せようと張り切る
お口汚し 手間はかかっていないが自信作?
置き 和の雰囲気を壊さないために
箸休め 小皿や小鉢の小料理のこと
お粗末さま 「どういたしまして」よりも、畏まった表現
お召し替え 親切さと言葉の妙でイメージアップ
お持たせ お客さまからのお土産をすぐ出すときに
お暇 自宅に招いてくれた相手を悲しませないために
おすそ分け 楽しみを分けてあげれば絆が深まる
印ばかりのもの 「つまらないもの」はもう”つまらない”?
ご笑納ください 贈り物にひと言添えるなら、これ!
心待ち 待ち遠しさ、ワクワク感を伝えられる
お相伴 目上の人に食事の誘いを受けたときのひと言
卒爾 突然、何かを行なう際につかう
よしなに 「よろしく」よりも丁寧で強い
恐れ入る 感謝だけでなく謙虚さも伝えられる
お骨折り 苦労を厭わず力を尽くしてくれた人への感謝
こらむ①日本語の種類~「大和言葉」

第二章 相手を称える大和言葉
手だれ 優れた腕前の持ち主のこと
玄人はだし プロが裸足で逃げ出すほど上手な人
このうえない 「最高の」よりさらに高い素晴らしさ
得も言われぬ 「得も言わず」と間違わないように!
水際立つ 際立った働きをした人に
打てば響く 頭の回転の速さを示す最高の称賛
舌鼓を打つ おいしいものを食べたときに鳴らす音
まろやか グルメ番組で定番のひと言
うがつ 「うがちすぎ」ないように注意!
大人しい 静かにしているという意味のほかにも…
いたいけ 心が痛いほど愛らしい
たおやか 姿や動作、態度が上品でしなやかなさま
胸に迫る 思いが胸いっぱいに溢れたときに
ろうたけた 積み重ねられた洗練の優美さ
見目麗しい 顔立ちの整った正統派美人を評して
あっぱれ 意外にも「あはれ」が語源だった
しおらしい 塩を狙う女性が由来
目端が利く 「目鼻が利く」との混同に注意
緑の黒髪 黒髪を「みどり」と表現するわけは?
ほんの手慰み 褒め言葉を嫌味にならないように返す
こらむ②日本語の種類~「漢語」

第三章 相手をたしなめる大和言葉
しどけない 服装や髪の乱れをたしなめるときに
うだつが上がらない 日本家屋の建築用語が語源
すべからく 「すべて」の高級な表現ではない
たかをくくる 物事を甘く見るとたいへんな目にあう
何をか言わんや 相手を突き放すだけではいけない
おいそれ 「おい」は「はい」、「それ」は「それっ!」
沽券にかかわる 体面、面目、人の値打ちを表す
易きにつく 手っとり早く楽なほうを選ばせない
惜しむらくは 称賛のあとにマイナス点を指摘する
つまびらか 威圧感を感じさせずに襟を正させる
のべつまくなし ひっきりなしの状態を意味する
にべもない 愛想のないことをひと言で
目くじらを立てる 海のクジラとは無関係!
あけすけ 正直なことはよいことですが…
ほだされる 断ちがたい絆に束縛された状態を意味する
そぞろ 何かに気をとられて集中できないようす
あたら 価値あるものの消失を残念に思う気持ち
おざなり 「なおざり」と違って、「おざなり」は少しはする
こらむ③日本語の種類~「外来語」

第四章 気持ちを伝える大和言葉
首ったけ 「どれくらい好き?」の返事にぴったり
そこはかとなく 「なんとなく」では納得できない?
憎からず思う 遠回しに「好き」の気持ちを伝える
おもはゆい 「かわゆい」と語源は同じ
あばたもえくぼ なんでもよく見える魔法?
思いのほか 想定外の事態が起こり驚いている気持ち
荷が勝つ 「無理です」と言わずに上手に断わる
決まりが悪い かっこ悪い、恥ずかしいを格調高く…
やるせない 晴らせない気持ちをひと言で表す言葉
目頭が熱くなる 目上の人に「ウルウルした」は失礼
胸をなでおろす 心に抱いていた不安や心配を消し去る
相好をくずす 顔をくしゃくしゃにして笑うさま
たゆたう 揺れ動く心の動きを優しく伝える
敷居が高い 不義理をしているために行きにくい
有頂天 最高に嬉しい気持ちを端的に表現する
ひとかたならぬ お礼の言葉をより心のこもったものに
いたく 感動の気持ちを格調高く表現
あまつさえ 不幸の連鎖に見舞われたときに…
よしんば 「もし」よりも数段強い仮定を想定する
こらむ④ 日本独自の文字「平仮名」の誕生

第五章 仕事でつかう大和言葉
なりわい たんなる仕事とは少し違う
お見知り置き 今後も関係が続くことを期待して…
お手すき 上司は暇にしているかどうか?
塩梅 仕事の進み具合を尋ねるのに便利
襟を正す 衣服や姿勢を整え、それまでの気持ちも改める
しのぎを削る 日本刀で斬り合うような接戦のこと
伸るか反るか イチかバチかやってみようというときに
下駄を預ける 自分ではどうにもならないときに…
はっぱをかける 木の葉ではなくダイナマイト
やぶさかでない じつは積極的な意志表明をする言葉
おこがましい 非難の気持ちと謙虚な姿勢を表現できる
水を向ける 「水」は会話の呼び水のこと
ゆるがせにしない おろそかにしない、頼もしい表現
いささか 少しぼかして言いたいときに最適
有り体に申しますと 「正直に…」より畏まる
憚りながら 目上の人に意見するときの前置き言葉などに
言わずもがな 「もがな」は願望を表す
むべなるかな 納得・感心したときに用いる古風な言葉
いたみいる 「恐れ入ります」よりも強い感謝を伝える
いみじくも 平安時代の女流文学でつかわれた形容詞が由来
たなごころ 「手の心」が変化した優しい雰囲気
ゆくゆくは 謙虚にやる気をアピールできる便利な言葉
ままならぬ 思いどおりにならないことを表す
とどのつまり アシカの仲間のトドではない!
骨休め 労働の資本である身体を「骨」で表現する
はなむけ 旅立つ人に贈る言葉や物
こらむ⑤ 日本人の季節感~「二十四節気」

第六章 スピーチ・手紙につかえる大和言葉
お力添え 目上の人に助力を願う
ご自愛ください 相手に対するいたわりの気持ちを表す
身に余る 褒められたら謙遜する、それが礼儀
ひとしお 染料に染まる糸のように風情が伝わる
気の置けない ほんとうに仲のよい間柄であることを示す
幾久しく 「末長く」よりも新味のある言葉
あやかる よい影響を受けて、よいほうに変化すること
ふつつか 本心でそう思っているわけではない
宴もたけなわ なぜ安会のピークで、あえて述べる?
ひとえに 感謝の意を心から表現するひと言
倦まず弛まず 中弛みを防ぐのに効果的
心ならずも 不本意にそうなってしまったことを暗に伝える
よんどころない やむにやまれぬ事情を暗に示す。
尾籠な話 ばかげた話をする前には断わりのひと言を
ことほぐ その場に幸福を招く言葉
来し方行く末 人生が進んでいくイメージを示す言葉
なかんずく なかでもとくに、と強調する効果がある
徒や疎かに 大事にします、という決意表明
こらむ⑥ 日本人の季節感~「七十二候」

第七章 スピーチ・手紙につかえる大和言葉
竹を割ったような 竹の割れ方、伸び方にたとえる
まめまめしい 「忠実忠実しい」と書いて「まめまめしい」
奥ゆかしい 控えめな態度で従順なこと、ではない
心ばえがよい 相手を気づかえる人のこと
甲斐甲斐しい 他人のためにひたむきに努力しているさま
ひたむき 全神経を集中して何かに取り組むようす
物堅い しっかりして律儀な性格を表す
やんごとない ただの貴いよりもはるかに高い尊敬を表す
いなせ 日本橋の魚河岸の男の番に由来する
したたか 本来はプラスの意味だが、いまは負のイメージも
けなげ 一途な気持ちが根底にあることが条件
生一本 「き」と「なま」、読み方ひとつで意味が変わる
極楽とんぼ 芸人コンビの名前ではなく…
かまとと 「ぶりっこ」をさらに古風に表現すると…
あこぎ 三重県にある実際の海岸での故事による
猪口才 日本酒を飲む小さなお猪口に由来する言葉
こらむ⑦ 新しい大和言葉

第八章 季節・時間を表す大和言葉
日和 とんだ勘違いから生まれた優しい言葉
うららか うっすらぼんやりしたようすではない
花冷え 桜の時期だけしかつかえない期間限定の言葉
東風 春の訪れを告げる東からのやや荒い風
陽炎 ゆらゆらと揺れて消えるはかないもの
草いきれ 草の匂いが強くても春や秋にはつかえない
しののめ 古代の住居の「篠の目」が語源
暮れなずむ 暮れそうで暮れないようすを表す
たそがれ 誰だかわからないくらいの薄暗い時間帯
逢魔がとき 一日のうちで最も大きな災いにあう時間帯
夕映え 夕日の光を受けて周囲が美しく見える
夜の帷 闇があたりを静かに包み込むようす
朝な夕な 万葉の時代から親しまれてきた情緒的な言葉
ひねもす 「一日中」をより情緒的に伝える
とこしえ 永遠に変わることがないようす
たまゆら 宝石が触れ合うほんの一瞬のこと
主な参考文献
本文イラスト/小春あや
本文デザイン・DTP/伊藤知広