美しい「日本語」の言いまわし: 粋で優雅で角も立たない!「伝える技術」 (知的生きかた文庫)

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伝えるための言葉を学ぶ

『美しい「大和言葉」の言いまわし』に続く第2弾です。世界でも有数の「豊かな表現力」をもつ言葉だと言われる日本語の多くの言い換えや言い回しを知ることで、表現の幅が広がります。テーマごとに、豊富な用例とともに多くの表現が紹介されています。

日本の「言葉」倶楽部 (著)
出版社 : 三笠書房 (2016/11/24)、出典:出版社HP

三笠書房
美しい「日本語」の言いまわし
日本の「言葉」俱楽部

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はじめに

日本語は世界でも有数の、「豊かな表現力」を有する言語のひとつといわれています。でも最近は、「若い人がつかう日本語の語彙が減ってきている」などという意見をよく耳にするようになりました。時代とともに変化する言葉の消長を嘆いても詮ないことかもしれませんが、長年受け継がれてきた日本の言葉が、自分たちの代で「”死語”になってしまうのは、やはり寂しいものです。
この豊かで美しい日本語を残すには、まず、その魅力を知ることが肝心でしょう。たとえば、次のような言い換えができるのが日本語の豊かさなのです。
感動する→「琴線に触れる」、怒る→「気色ばむ」、雪が降りそう→「雪催い」、泣く→「袖を絞る」、浮気心→「花心」、威勢がいい→「勇み肌」、たいへん→「頗る付き」
――いかがでしょう。日本語の美しさと妙味が感じられませんか?
本書は、これからも残したい、実際につかってみたいと思えるような美しい日本語を、テーマごとに用例とともに紹介しています。本書をお読みいただいたのちに、しみじみと「日本語っていいなぁ……」と、思っていただければ幸いです。

日本の「言葉」倶楽部 (著)
出版社 : 三笠書房 (2016/11/24)、出典:出版社HP

目次

はじめに
第1章 想いを表す言葉
花心 陽気な心だけでなく、浮気心も意味する
心化粧 化粧は顔だけにするものではない?
人心地がつく やっと通常どおりに振る舞うことができる
岡惚れ 一方的に傍らからひそかに好きになること
秋風が立つ 相手を怒らせず傷つけず、愛の終わりを告げる
後ろ髪を引かれる 後頭部の髪を引っ張られると前に進めない
ほぞを噛む 過去の失敗を嘆き、後悔するときにつかう
軸を絞る 涙で濡れた袖を絞るほどの大号泣
気色ぽむ はっきりと顔や態度に出た怒りの感情
愁眉を開く 眉は人の感情に正直?
柳眉を逆立てる “美人の怒り”に限定した表現
今昔の感 時の流れの速さに思いを馳せる…
そこはかとなく 「其処は彼と」ない、よくわからない感情
うら悲しい 「うら」は表面に出ない心を意味する
御の字 遊廓で生まれた「ありがたい」を意味する言葉
希う 「願う」よりもさらに強く望むこと
心安い 心が”安っぽい”人のことではない
慈しむ さまざまな愛情のニュアンスを表現する
なしのつぶて かつては恋人に小石を投げてアピールしていた?
刹那的 「アリとキリギリス」のキリギリス?
こらむ① 勘違いしがちな言葉「奇特な人」

第2章 人間関係に関する言葉
竹馬の友 幼なじみは、こう呼ぼう。ただし男限定
ねんごろ 本来は念入りで心がこもっていること
わりない仲 筋道や道理を超越した男女の仲
お膝送り 「少し詰めてください」でもいいのですが…
お愛想 客が言っては、おかしなことに?
いとま 訪問先からスマートに去ることができる
空茶 茶碗のなかが空っぽなわけではない
いただき立ち ご馳走になったあと、すぐに帰るときに
手合わせ 自分より上の実力者に対局などを申し込む
お師匠さん 先生やコーチよりも敬意や人間味が…
たまさか 「たまたま」よりも優雅で美しい
慈無く ツツガムシでやさしい気づかいを示す?
こらむ② 勘違いしがちな言葉「青田買い」と「青田刈り」

第3章 人や物の状態を表す言葉
綺羅星のごとく 「きらぼし」という星があるわけではない
小股の切れ上がった 颯爽と歩く脚の長い女性を見かけたら…
身ぎれい 身なりだけでなく”生き方“全般が清潔
堂に入る プロ級という褒め言葉もいいけれど…
いでたち 「出で立つ」目的と行き先に合わせて装う
勇み肌 「町火消」に代表される江戸っ子の理想像
垢抜ける 「垢抜ける」か、「灰汁抜ける」か?
楚々とした 気品があって清潔感の漂う女性
あだっぽい 熟女ならではの色っぽさ
いずれ菖蒲か杜若 どちらかを選ぶのが難しいときにつかえる
はんなり 派手でなく地味でもない、ちょうどいい華やかさ
かんばせ 「花のかんばせ」という表現で知られる
解語の花 世界三大美女のひとり、楊貴妃のこと
春秋に富む 戦乱の世には過去よりも未来が重視された?
しじま 静寂や沈黙を表す言葉
長閑 暖かい春の日差しでのんびりした雰囲気に
生成り 黄色い色?いえ、未加工の天然の色合いのこと
鈴なり 神社の巫女さんが持つ楽器に由来する
つくねん なんとなく、じっとしているようす
乙 「お疲れさま」の略語ではない!
苦み走った 「イケメン」が安っぽいと感じている人へ
目から鼻へ抜ける 素早く的確に判断する頭のよさを表す
てんてこ舞い 遊びが忙しくても「てんてこ舞い」?
有卦に入る やることなすことうまくいく、うらやましい状態
うたかた はかなく消えても、また変幻自在に現れる
こらむ③ 勘違いしがちな言葉「さわり」

第4章 行為を表す言葉
嗜む 趣味や酒を楽しんでいることを少し気取って
紫煙をくゆらせる たばこが男性の嗜みだった時代の言葉
まどろむ 目がとろとろして少しだけ眠ること
現を抜かす 他人から言われることが多い言葉
管を巻く いったい何の管のことか?
お茶を濁す その場しのぎの弁解や言い訳はほどほどに
付け焼刃 鍛錬した刀と鍛錬しなかった刀の違い
ひそみにならう 物笑いの種から模範へと変化
琴線に触れる 人の心は琴の弦のよう?
諳んじる 「暗記する」を“デキる”イメージに!
稽古する 現代的なレッスンには似合わない?
おめかし 胸が高鳴る「特別な」オシャレ?
紅を差す かって口紅は「差す」ものだった
逢引する おおっぴらにデートできない時代の「密会」
袖にする 冷淡に異性をふること
一目置く 目上の人にはつかわないので注意
薫陶を受ける 人徳によってよい影響を与えられること
居住まいを正す たんに座っている姿勢を正すだけ?
因果を含める 事情を説明して納得させ、あきらめさせる
禊ぐ 最近の政治家が乱用する言葉の意味は?
耳朵に残る 言葉や音が心にジーンと響いたときにつかう
縷々述べる 事細かに説明すること
こらむ④ 勘違いしがちな言葉「つとに」

第5章 性格・性質を表す言葉
凛 厳しい寒さに由来する言葉
匂い立つ 溢れ出す美しさを上品に伝える言葉
身持ちがよい 異性関係がしっかりしている人のこと
きっぷがいい テキパキとした威勢のよさを表す言葉
おてんば 「お転婆」と書いても若い女性限定
居丈高 座高が高い人のことではない
圭角がある 丸いはずの玉に角がある?
悩気深い 嫉妬深い人のことを指す言葉
如才ない 褒め言葉なのか、嫌味なのか?
けれん味 「けれん味」は、”ない”ほうが褒め言葉?
なよやか 「なよなよ」に似ているがネガティブではない
野暮 融通が利かないという意味だが…
麒麟児 「神童」を中国風の言葉で表現すると?
白河夜船 “よく眠る知ったかぶり”とは?
こらむ⑤ 勘違いしがちな言葉「じくじたる思い」

第6章 程度を表す言葉
おしなべて 決して「すべて」ではない
いかばかり 弔辞での慰めや励ましによくつかわれる
醍醐味 最上の味とされるパター状の食品が由来
極め付き 歌舞伎の重要な役を最も上手に演じる役者
けんもほろろ 雄の鳴き声に由来する言葉
芳しくない 出来のよくない状態を遠まわしに伝えたいときに
杳として はっきりわからないさまを強調する
頗る付き 「超おいしい」を平安貴族はこう言っていた?
おもむろに ゆっくりな動作を非難せずに表現する
かりそめ ほんの一瞬のときを表す切ない言葉
こらむ⑥ 勘違いしがちな言葉「たわわ」

第7章 かしこまった場でつかう言葉
誼を結ぶ 目上の人に敬意と親しみを込めて
弥栄を祈る 「ますますの発展をお祈りします」の代わりに
錦上花を添える 美しいものに美しいものが重なったときに
お目もじする 宮中女の「女房詞」を仕事でつかう
僭越ながら 差し出がましいことをして申し訳ありません
お身体をおいといください 去り際に、優しい印象を残す
薄紙を剥ぐように 少しずつ着実に快方に向かっているようす
おみそれしました 予想もしていなかった能力を褒める言葉
馴れ初め 誰しも気になる?二人のきっかけ
不徳のいたすところ 反省+謝罪の気持ちを示す
粛々と 政治家や組織のトップがよくつかう言葉
気は心と思って 気持ちが入っていることを確実に伝えたい
それは重畳 「たいへんけっこう」を侍言葉で
不調法 お偉いさんに飲めないお酒を勧められたら…
芳紀 その女性が何歳なのか、しっかり確認して
水菓子 水ようかんやゼリーのことではない!
こらむ⑦ 勘違いしがちな言葉「おっとり刀」

第8章 情景を表す言葉
花冷え 春先の「寒の戻り」をより風流に
花筏 筏のように川を流れる桜の花びら
風薫る 青々とした草木を渡って吹く南風の匂い
青き踏む 春の野に出て青草を踏んで遊ぶこととは?
五月雨 田の神への敬意を示す風流な言葉
万緑 美しさと力強さを合わせもった言葉
蝉時雨 蝉の鳴き声にイライラしている人へ!
篠突く雨 豪雨を風流な表現にすると……
車軸を流す 車輪の心棒のように大きく太い雨のこと
山装(粧)う 四季のうちでいちばん美しい山の姿
雪催い いまにも雪が降りだしそうな空模様
風花 風に舞う花びらではなく、雪を表す言葉
なごり雪 懐メロのタイトルにもなった雪とは?
遣らずの雨 帰ろうとする相手を引き止めるひと言
狐の嫁入り 狐と通り雨にどんな関係がある?
雨催い いまにも雨が降りそうなときに
小欄雨 粒子のように細かい雨のこと
月の雫 いにしえ人のセンスが光る美しい言葉
仄日 「夕日」とは違った印象の太陽?
有明の月 明け方の空に残る、優しくて風流な月
埋み火 灰の中でも燃え続ける炭火のような熱い心
残り香 立ち去った人の香りがその人を偲ばせる
主な参考文献
本文イラストー小春あや

第1章
想いを表す言葉

日本の「言葉」倶楽部 (著)
出版社 : 三笠書房 (2016/11/24)、出典:出版社HP