現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート―「6パターン、5ステップ」でどんな難問もスラスラ解ける!

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最高の思考トレーニング

内容は「フェルミ推定」というテーマの基本的なところを学ぶことを目的としたもので、比較的平易です。考え方も詳しく解説してあり、初学者にも読みやすく、頭の体操の読み物としても面白いです。「フェルミ推定」が面接で問われる職種への就職活動を検討されている方には一読の価値があります。

この作品は、2009年10月東洋経済新報社より刊行されました。
電子書籍化に際しては、2012年11月発行の第10刷に基づいて制作しています。また仕様上の都合により適宜編集を加えています。
また、本書のコピー、スキャン、デジタル化等の無断複製は、著作権法上での例外である私的利用を除き禁じられています。本書を代行業者等の第三者に依頼してコピー、スキャンやデジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用であっても一切認められておりません。

現役東大生が書いた地頭を鍛えるフェルミ推定ノート
―「6パターン、5ステップ」でどんな難問もスラスラ解ける!

はじめに

本書の目的・趣旨

本書はビジネスパーソンや学生、そして戦略コンサルティングファーム(以下、戦略コンサル)への就職を目指している就活生も含めた幅広い方々に対して、フェルミ推定の体系と解法ステップを提案する解説書であり、それに準拠した問題集でもあります。
本書の主要な目的は、就職活動面接におけるフェルミ推定のテクニックやノウハウを紹介することではありません。フェルミ推定の持つ論理的思考訓練ツールとしての奥深さを感じていただきたいというのがその根幹の趣旨です。
われわれ東大ケーススタディ研究会のメンバーは、戦略コンサル就活のために、フェルミ推定に関する本を片っ端から読み漁り、スターバックス(以下、スタバ)に集まって1日何時間もの議論を数カ月間繰り返してきました。
当初は面接対策が目的の活動でしたが、徐々にフェルミ推定はロジカルシンキング、仮説思考、モデル化、定量化など、広く「地頭力」を鍛える最高のトレーニングであることに気づき、その魅力・おもしろさにはまり込んでいきました。
われわれはこの経験をもとに、ぜひ多くの方々にこのようなフェルミ推定の魅力を伝えられればという思いから、今まで解いてきた1000問近くの問題を体系化し、その解法の類型化に着手しました。
その過程では幸運にも、われわれの声に賛同してくれた多くの戦略コンサル内定者の方々の協力を得ることもできました。
結果として、実際の面接のリアリティを伝え実践的対処法を解説するにとどまらず、フェルミ推定の本質である大胆かつ緻密な論理プロセスの構築方法を、遊び心を交えながら描き出すことができたと思っています。
また、昨今の地頭力ブームに乗って、「フェルミ推定」と冠した書籍は数多く出ていますが、問題数も限られており、その解法もやや単純にすぎるものが多い気がしています。
本書はその質・量において、他に類を見ない価値を読者の方々に提供でき、フェルミ推定を学ぶ上でのスタンダードとして多くの方に受け入れていただけるものと自負しています。その意味で、戦略コンサルへの就職を目指している学生の方々の面接対策としてお使いいただけるのはもちろん、職業・年齢を問わず「地頭力」を鍛えたいと思っているすべての方が楽しみながらフェルミ推定を解くための「水先案内人」となり得たのでは、と感じています。

本書の構成

「PART1」では、フェルミ推定の全類型を広く俯瞰した後に、具体的な問題を例にその解法プロセスを深く詳細に解説しています。
まず、「フェルミ推定の基本体系」において、フェルミ推定のジャンル別体系を提示しています。われわれが実際に解いてきた1000問近くのフェルミ推定の問題のほとんどがこの体系に収まることを考えると、かなり汎用性の高い体系になっているといえます。
この体系の意義は、ツリーによって分類される問題とその基本的な解法が1対1に対応していることにあります。つまり、出された問題が体系のツリーのどこに分類されるかさえわかれば、基本的な解法もわかるように作られているのです。
このフェルミ推定の体系こそが、本書におけるわれわれの最大の提供価値であるといっても過言ではないでしょ
さらに、「フェルミ推定の基本5ステップ」において、すべてのフェルミ推定に共通する基本的解法プロセスを、われわれの実際の面接経験に基づいて作成した対話形式で体感していただきます。ここはフェルミ推定の骨組みとなる部分ですので、しっかり読んで身につけていただければと思います。「PART2」では、基本体系に基づいた代表的な例題とその解答・解説、それに対応した練習問題を掲載しました。
「例題」はいきなり解答・解説に目を通すのではなく、少しだけでもいいので頭と手を使って考えてみてください。それによって解答・解説から得られるものも変わってきます。自信のある方は時間を測って解いてみるのも勉強になるでしょう。
自分なりの見通しが立ったら、解答・解説の論理展開を1つひとつたどって、かみしめてみてください。聞き手を説得するために必要な論理レベルを実感できるでしょう。ただし、答えを導くプロセスは文字通り無数に存在し、解答はあくまでも「例解」にすぎないため、自らのロジックを頼りに批判的に読み進めていただければと思います。
フェルミ推定においては、ロジックが通っていることがもっとも重要であり、最終的に計算された数字と現実との適合性はそこまで重視されません。しかし現実と比較することは、今後よりリアリティのあるロジックを組み上げるための反省材料になるのはたしかです。
そういったねらいから、多くの問題には実際の統計データが付してありますので、自分の出した数字と比べ、どこが現実とズレていたのかをたしかめてください。ロジック感覚と数的センスが磨かれてくるでしょう(ただし、「東京都に鳩は何羽いるか?」など統計データの探索がきわめて難しい問題に関しては、途中で置いた仮定の検証で代替したり、他の数値と比較することでその数値の実感を示すにとどまっていることもあります)。
例題を終えた方は、ぜひそれに続いた「練習問題」にチャレンジしてください。基本的解法は例題と同じですが、難易度は例題より高いものが多いです。解答・解説は巻末に載せてありますので、活用してください。例題と同様に、時間を測って解いてみるのもよいでしょう。
本書の問題をこなしていくうちに、徐々にフェルミ推定のリズムが体に染みついてくるのが実感できると思います。街を歩いているとき、「日本に郵便ポストはいくつあるか?」や「東京都内に捨てタバコは何本あるか?」といった問いが自然と頭に浮かび、脳が勝手に数の計算をはじめるようになればしめたものです。
フェルミ推定のロジックが脳内言語として完全にインストールされるまで、楽しみながら練習を繰り返してください。
なお、これらの問題は1人でこなしていくのも有効ですが、友人と時間を測って解き、ロールプレイング的に面接を実践したり、ディスカッションをしていくとさらにおもしろいでしょう。
友人のロジックに対して批判や検討を加えていくことで、さらなるロジックの高みが見えてきます。実際、われわれもスタバで大声を出しながら、世界中のゴキブリの数やトイレットペーパーの国内市場規模について、マニアックな(?)議論を数時間繰り返していました。周囲の人はさぞや不審感を抱いたことでしょう。1人でも多くの方に頭脳訓練ツールとしてのフェルミ推定の魅力を感じていただき、そのロジックの旋律を楽しんでいただければ幸いです。

目次

はじめに
PART1 1000問解いてみてわかった!フェルミ推定6つのパターンと5つのステップ
Chapter1フェルミ推定の基本体系
Chapter2フェルミ推定の基本5ステップ
コラム①フェルミ推定は実生活に役立つ!

PART2 6+1パターン15問のコア問題で、地頭を効率的に鍛える!
【個人・世帯ベースでストックを求める問題】
例題1日本にぬいぐるみはいくつあるか?難易度《A》
例題2、日本に自動車は何台あるか?難易度《B》
【法人ベースでストックを求める問題】
例題3日本にゴミ箱はいくつあるか?難易度《C》
【面積ベースでストックを求める問題】
例題4日本に郵便ポストはいくつあるか?難易度《A》
例題5日本にコンビニはいくつあるか?難易度《B》
例題6日本に宅配ピザの店舗はいくつあるか?難易度《B》
【ユニットベースでストックを求める問題】
例題7日本にスキー場はいくつあるか?難易度《C》
例題8日本にすべり台はいくつあるか?難易度《C》
【マクロ売上を求める問題】
例題9ぬいぐるみの市場規模は?難易度《B》
例題10新幹線の中のコーヒーの売上は?難易度《A》
例題11自動車の年間新車販売台数は?難易度《C》
【ミクロ売上を求める問題】
例題12スターバックスの売上は?難易度《A》
例題13カラオケの売上は?難易度《B》
例題14タクシー(1台)の1日の売上は?難易度《B》
【「マクロ需要・ミクロ供給」でストックを求める問題】
例題15日本に中華料理店はいくつあるか?難易度《C》
コラム2「フェルミバカ」によるフェルミ推定訓練法
おわりに

+15問でワンランク上の地頭を作る!【練習問題解答】
練習問題1日本にピアスはいくつあるか?難易度《A》
練習問題2日本に猫は何匹いるか?難易度《A》
練習問題3日本にコピー機は何台あるか?難易度《C》
練習問題4日本に電柱は何本あるか?難易度《A》
練習問題5日本にスターバックスの店舗はいくつあるか?難易度《B》
練習問題6日本に消防署はいくつあるか?難易度《B》
練習問題7世界遺産はいくつあるか?難易度《C》
練習問題8東京都に鳩は何引いるか?難易度《C》
練習問題9ピアスの市場規模は?難易度《B》
練習問題10割り箸の年間消費数は?難易度《B》
練習問題11マッサージチェアの市場規模は?難易度《B》
練習問題12丸の内のラーメン店の売上は?難易度《A》
練習問題13ゲームセンターの売上は?難易度《B》
練習問題14キヨスク1店舗の1日の売上は?難易度《B》
練習問題15日本に美容師は何人いるか?難易度《C》
フェルミ推定問題厳選100問
カバー・本文デザイン/dig

PART1
1000問解いてみてわかった!
フェルミ推定6つのパターンと5つのステップ

フェルミ推定とは
本書で紹介する「フェルミ推定」とは、「日本全国の牛の数」「長野県のそば屋の数」「胃腸薬の市場規模」など、「直感では見当のつかないような荒唐無稽な数量を、知っている知識だけをもとに、合理的な仮定とロジックを駆使して、短時間で概算する方法」を指します。封筒の裏などに短時間でちょこちょこっと計算するところから、Back of Envelope(封筒の裏)の計算などとも呼ばれます。
フェルミ推定は科学者の思考訓練ツールとして有効であると認められたことから、欧米の学校では理科系の教材として幅広く利用されています。中には、フェルミ推定の「科学オリンピック」のような大会まで存在しています。このようにして科学の世界における物理量の推定に端を発したフェルミ推定でしたが、科学者教育の教材だけでなく、後々にはコンサルティング会社や外資系企業での面接試験、そして今では一般のビジネスパーソン向けの教育ツールにも利用されるようになってきています。

Chapter1
フェルミ推定の基本体系
本書はフェルミ推定を解くことで、ロジカルシンキング、仮説思考、モデル化、定量化などの「思考プロセス」を習得していただくことを目的としています。ですが、いざフェルミ推定の問題を解こうとしても(たとえば「日本全国の電柱の数はいくつ?」と聞かれても)、「どこからとりかかっていいのかわからない」と感じる人が多いのではないでしょうか?そこで、本書ではフェルミ推定理論の骨組みとなる「基本体系」を示します。
この「基本体系」を頭に入れておくことで、「~の数はいくつ?」と突然だれか(たとえば面接官)に聞かれたとしても、「あ、体系の中のあそこにあった類型の問題だ!」とわかり、すぐに解決の糸口が見つかるはずです。フェルミ推定の「基本体系」は次の図のようなものになります。