産業・組織心理学を学ぶ:心理職のためのエッセンシャルズ (産業・組織心理学講座 第1巻)

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研究者、実務家に必携

近年、産業・組織に関係する問題が次々と生じていることから、産業・組織心理学に注目が集まってきています。本書では、産業・組織心理学を学び始めた人を対象にしており、産業・組織心理学の基礎的知見をまとめた教科書となっています。公認心理師のシラバスに対応して作られているため、公認心理師を目指している人にもおすすめです。

金井 篤子 (著, 編集), 小野 公一 (著), 角山 剛 (著), 芳賀 繁 (著), 永野 光朗 (著), 産業・組織心理学会 (その他)
出版社 : 北大路書房 (2019/8/7)、出典:出版社HP

産業・組織心理学会設立35周年記念講座

刊行の言葉

本学会は2019(令和元)年に設立35周年を迎えた。1986(昭和61)年11月15日の設立大会以来これまで,節目ごとに学会のあり方を明確化し,学会の役割として学会の知見を集約し,世に広く還元することを試みてきた。すなわち、設立10周年には『産業・組織心理学研究の動向産業・組織心理学会10年の歩み』(1994年学文社)として学会のあり方行く末を模索し、設立25周年には『産業・組織心理学ハンドブック』(2009年丸善)として本学会の知見を集約し、世に広く還元する試みを行った。
今ここに設立35周年を迎え、産業・組織心理学を取り巻く心理学界の情勢をみるに、さかのぼること2015(平成27)年9月,心理学領域における初の国家資格として公認心理師が法制化されたことをあげることができよう。大学における公認心理師養成カリキュラムにおいて,産業・組織心理学は必須科目(実践心理学科目)と位置づけられたのである。これを受けて、本学会は産業・組織心理学を標榜するわが国における唯一の学会として、日本心理学会の求めに応じ,公認心理師大学カリキュラム標準シラバス(2018年8月22日版)を提案した(日本心理学会ホームページを参照)。
このように産業・組織心理学の位置づけが注目される昨今の情勢にかんがみ,設立35周年においては,産業・組織心理学のこれまでの知見を集約し,初学者(公認心理師資格取得希望者含む)から若手研究者,実務家のよりどころとなることを目的として、基礎(第1巻)から応用(第2巻~第5巻)までを網羅した本講座を刊行した。本講座が産業・組織心理学会の現時点における到達点を示し,今後を展望することができれば望外の喜びである。

2019(令和元)年9月
編者を代表して 金井篤子

―産業・組織心理学会設立35周年記念講座―
編集委員一覧

■企画
産業・組織心理学会

■編集委員長
金并管子 名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授

■編集委員
細田聡 関東学院大学社会学部現代社会学科教授
岡田昌毅 筑波大学大学院人間総合科学研究科教授
申紅仙 常磐大学人間科学部心理学科教授
小野公一 亜細亜大学経営学部経営学科教授
角山剛 東京未来大学学長・王子八一之行動科学部教授
芳賀繁 株式会社社会安全研究所技術顧問,立教大学名誉教授
永野光朗 京都橘大学健康科学部心理学科教授

■各巻編集担当
第1巻:金井篤子
第2巻:小野公一
第3巻:角山剛
第4巻:芳賀繁
第5巻:永野光朗

金井 篤子 (著, 編集), 小野 公一 (著), 角山 剛 (著), 芳賀 繁 (著), 永野 光朗 (著), 産業・組織心理学会 (その他)
出版社 : 北大路書房 (2019/8/7)、出典:出版社HP

はじめに

本書は産業・組織心理学会設立35周年を記念して編まれた講座(全5巻)の第1巻である。
本書は、講座の基礎編にあたり,産業・組織心理学の初学者を対象として,産業・組織心理学の基礎的知見をまとめた教科書となっている。産業・組織心理学が公認心理師養成カリキュラムの必須科目となったことを受けて、日本心理学会の求めに応じて産業・組織心理学会が提案した、公認心理師大学カリキュラム標準シラバス(2018年8月22日版)(日本心理学会ホームページならびに,本書Appendix1を参照)に対応し,公認心理師が最低習得すべき産業・組織心理学の知見を網羅している。また、さらに深く学びたい人のために,第2巻以降の応用編で詳細な知見を得られるように工夫している。
本書の構成は4部15章からなり、大学における半年間の講義内容としても活用できるようになっている。第1章では「産業・組織心理学とは」として,その目的,歴史,社会的意義,研究方法などを述べた。以降は産業・組織心理学の扱う領域ごとに,第1部では人事部門の基礎的知見を紹介し,第2部では組織行動部門,第3部では作業部門,第4部では消費者行動部門の基礎的知見を紹介した。用語集は公認心理師の上記標準シラバスに対応し、辞書引きできるように五十音順に並べ、巻末にまとめた。もちろん標準シラバス以外の用語も重要なものは収録している。また、コラムは読者が導入として興味を持てる内容を取り上げた。

本書が産業・組織心理学に関する初学者(公認心理師資格取得希望者含む),若手研究者,実務家のよりどころとなることを期待するものである。
第1巻編者 金井篤子

金井 篤子 (著, 編集), 小野 公一 (著), 角山 剛 (著), 芳賀 繁 (著), 永野 光朗 (著), 産業・組織心理学会 (その他)
出版社 : 北大路書房 (2019/8/7)、出典:出版社HP

目次

産業・組織心理学会設立35周年記念講座 刊行の言葉
編集委員一覧
はじめに

第1章 産業・組織心理学とは
第1節 産業・組織心理学の目的と対象
第2節 産業・組織心理学が扱う領域とテーマ
1. 人事部門
2. 組織行動部門
3. 作業部門
4. 消費者行動部門
第3節 産業・組織心理学の歴史
1. 産業・組織心理学の創始
2. 科学的管理法
3. ホーソン研究
4. 組織観の変遷
5. 自己実現的人間観の登場
第4節 産業・組織心理学の社会的意義
第5節 産業・組織心理学の方法
COLUMN 1 産業・組織心理学と公認心理師

第1部 人を活かす―人事部門
第2章 募集・採用と評価・処遇
第1節 募集・採用と職務分析
1. 募集と職務分析
2. 採用に用いられる検査
3. 職業適性と配置
4. 雇用の多様化
第2節 人事評価・処遇
1. 評価はなぜ必要か
2. 評価内容とその基準としての目標管理
3. 評価の方法と陥りやすい心理的エラー(評価バイアス)
4. 評価の受容を促進するために
COLUMN 2 労働条件:労働基準法とブラック企業

第3章 キャリア発達と能力開発
第1節 キャリア
1. キャリアがなぜ問題にされるのか
2. キャリアの定義
3. キャリア発達
4. キャリア発達を促すもの
第2節 企業の視点から見た能力開発
1. 能力開発の目的
2. 能力開発の方法・考え方:企業によるキャリア発達支援
3. 成果主義と能力開発
第3節 個人の視点から見たキャリアやキャリア発達
1. 働く人々にとってキャリア発達は人生の問題
2. 私的な人間関係に基盤を置くキャリア発達支援

第4章 人間関係管理と職場の人間関係
第1節 職場の人間関係の位置づけ
第2節 人間関係管理:人と企業の関係の管理
1. 人間関係管理の成立と展開
2. 人間関係管理の内容
第3節 私的な支持的関係:人間関係の肯定的側面
1. ソーシャル・キャピタル
2. ソーシャル・サポート
第4節 ハラスメント:地位や力の差がもたらす負の人間関係
1. ハラスメントの定義と種類
2. ハラスメントの実態とその影響
COLUMN 3 働き方改革:ワーク・ライフ・バランスと過労死・メンタルヘルス

第5章 働くことの意味と働かせ方
第1節 働くことの意味
1. 仕事をする目的
2. 働く人々のニーズの変化と価値観の変化:人間観の変遷
3. 多様なニーズと人事管理
第2節 働かせ方:労働条件管理と職務設計
1. 労働条件管理と労働基準法
2. 職務設計
3. 不公正な働かせ方とブラック企業
第3節人らしい働き方と well-being
1. 職務再設計:仕事における”ひと”らしさの復権
2. 働く人々の well-being と生きがい
COLUMN 4 調査結果の見方:働く人々のニーズ調査を例にして

第2部 組織行動を科学する―組織行動部門
第6章 組織行動の心理学的視点
第1節 集団のダイナミックス
1. 集団とは
2. 公式集団と非公式集団
3. 集団の規範
第2節 集団の中の個人
1. 集団意思決定
2. 集団思考過程で見られる負の効果
3. 社会的手抜き
4. 集団浅慮
第3節 集団内コミュニケーション
1. コミュニケーション戦略
2. 説得の技法
3. 他者判断時の思い込み要因
第4節 組織文化
1. 組織風土と組織文化
2. 組織文化の要素
COLUMN 5 企業不祥事の心理学

第7章 リーダーシップ
第1節 リーダーシップの諸相
1. 特性的アプローチ:リーダーシップ特性論
2. 行動的アプローチ:リーダーシップ行動記述論
3. 状況適合的アプローチ:リーダーシップ状況適合論
第2節 リーダーとメンバーの交流
1. 特異性クレジット
2. 変革型リーダーシップ
3. サーバント・リーダーシップ
第3節 信頼とリーダーシップ
1. リーダーの持つパワー
2. リーダーへの信頼感と勤続意思

第8章 仕事へのモチベーション
第1節 モチベーションの諸相
1. モチベーションとは
2. モチベーションを探る視点
3. 内容理論と過程理論
第2節 目標とモチベーション
1. 目標とモチベーション
2. 目標設定理論
3. 目標設定理論からみた目標設定の留意点
第3節 内発的モチベーション
1. 内発的モチベーションの意味
2. 内発的モチベーションのプロセス
3. フロー体験
COLUMN 6 楽観的思考と業績の関係

第9章 組織開発
第1節 組織変革と組織開発
1. 組織変革と組織開発
2 変革のエージェント
第2節 組織と個人の適合性
1. 適合の諸相
2. 個人の価値観と組織の価値観の適合
第3節 ダイバーシティ
1. ダイバーシティが意味するもの
2. 異文化間コミュニケーション
3. セクシュアル・ハラスメント
COLUMN 7 セクシュアルハラスメントの説明モデル

第3部 働く人の安全と健康―作業部門
第10章 仕事の安全
第1節 労働災害
1. 労働災害の基礎
2. 労災保険制度と過労死
第2節 安全と品質に関わる人的要因
1. 事故と人的要因
2. ヒューマンエラーの定義
3. ヒューマンエラーの分類とモデル
4. 違反とリスクテイキング行動
第3節 安全対策
1. ハインリッヒの法則
2. ヒヤリハット分析
3. 適性検査
4. リスクアセスメント
5. 安全マネジメント
第4節 安全文化
COLUMN 8 指差呼称

第11章 仕事の疲労・ストレスと心身の健康
第1節 産業疲労
1. 疲労と休息
2. 労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト
3. 自覚症状しらべと自覚症しらべ
4. 疲労管理
第2節 過労による病気と自殺
第3節 ストレス
1. ストレスとは何か
2. 職務ストレス
3. メンタルヘルスケア
4. ストレスチェック
COLUMN 9 ストレッサーとしてのライフイベント

第12章 作業と職場をデザインする
第1節 作業設計と作業研究
第2節 作業負担
1. 負荷と負担
2. メンタルワークロード
第3節 ヒューマンファクターズ
1. ヒューマンファクターズとは何か
2. SHEL モデル
3. HMIとHCI
4. エラーを防ぐデザイン原則
5. ユーザビリティ
第4節 快適な職場環境
COLUMN 10 ユーザ・エクスペリエンス

第4部 豊かな消費生活―消費者行動部門
第13章 消費者行動への心理学的アプローチとその意義
第1節 消費者行動研究の目的
第2節 消費者行動を理解する枠組み
第3節 消費者行動の研究法
1. 質問紙調査法
2. 面接法
3. プロセス分析法
4. 観察法
5. POSデータ
6. 心理生理学的方法
第4節 消費者行動における研究成果の応用
1. 消費者行動の規定要因(個人差要因)の分析と応用
2. 消費者行動の規定要因(状況要因)の分析と応用
3. 近年の動向
COLUMN 11 店舗内の消費者行動

第14章 消費者の購買意思決定
第1節 消費者の購買意思決定過程とその影響要因
第2節 消費者のブランド選択過程
第3節 選択ヒューリスティックス
第4節 購買後の評価
1 期待不一致モデル
2. 衡平モデル
3. 認知的不協和理論
第5節 購買意思決定と関与
1. 複雑な購買行動
2. 不協和低減型購買行動
3. バラエティ・シーキング型購買行動
4. 習慣的購買行動
COLUMN 12 心理的財布理論

第15章 企業活動と消費者行動
第1節 消費者行動とマーケティング
第2節 消費者行動の規定要因(マスメディアの影響)による効果
第3節 消費者の説得過程
1. 販売場面における消費者の説得過程
2. 説得を規定する心理的要因
第4節 消費者問題と消費者保護
1. 悪徳商法の実例
2.「限定表示」における問題
3. 消費者保護のための消費者研究へ
COLUMN 13 マーケティングの4P

Appendix
Appendix 1 シラバス案
Appendix 2 用語集

文献
索引

金井 篤子 (著, 編集), 小野 公一 (著), 角山 剛 (著), 芳賀 繁 (著), 永野 光朗 (著), 産業・組織心理学会 (その他)
出版社 : 北大路書房 (2019/8/7)、出典:出版社HP