産業・組織心理学 改訂版

【最新 産業・組織心理学について学ぶためのおすすめ本 – 仕事における心理学の応用】も確認する

実務者にも有用

職場環境、働く人々や消費者の置かれた状況は大きく変貌しています。これに伴い、産業・組織心理学の研究領域や課題も新たな視点から取り組まれてきています。本書は、産業・組織心理学を長年研究してきた著者たちがそれぞれの研究テーマについて執筆しています。難しい内容もわかりやすく解説しているので、初学者にもおすすめです。

小野 公一 (著), 関口 和代 (著), 岡村 一成 (監修), 馬場 昌雄 馬場 房子
出版社 : 白桃書房; 改訂版 (2017/1/27)、出典:出版社HP

まえがき

本書は,産業・組織心理学の現状と課題を纏めたものである。そもそもの発想は学会活動をともにしてきている,中堅,若手研究者達が集まり,われわれの古希を記念して何か一冊の本を出したいということから始まった。

産業・組織心理学も誕生からほぼ一世紀の歴史を持とうとしている。考えてみると,われわれ二人は,そのうちのほぼ半分近くに亘ってこの学問に関わって来たことになる。そのわりには、産業・組織心理学の何たるかを理解したとは言えず,慰愧の念に堪えない感がある。おそらく、この学問の発展の早さ,領域の広さに圧倒されてしまったからであろう。とはいえ,われわれ二人は,まだこの学問から足を洗えず,若しかしたらある時,”EUREKA”と呼べるかもしれないと思い、勉強を続けていく心算である。
そこで,本書も当初の狙いは,この学問に少しでも興味を持った人達の為に,産業・組織心理学の概論書を提供したいというものであったが、出来上がってみると,概論書というより、むしろ研究論文集の様相を呈してしまった感がある。これは,本書の執筆に参加してくれた若手研究者達が、自分達の担当した研究テーマについて、全力投球してくれたからであり,結果として,かなり入門色が薄れてしまったものと考えている。その責任は,あくまでもわれわれ二人にあり、読者諸兄からのご意見、批判をお待ちしたいと考えている。

なお、多忙にも拘らず,本書の編集を引き受けてくれた、亜細亜大学経営学部の小野公一教授,東京富士大学の岡村一成学長には大いに感謝したい。
さらに、本書の出版を快く承諾してくれた、照井規夫氏は、四十年来の友人であり,ある意味では、われわれ二人のご意見番でもある。あらためて深く感謝したい。

2005年5月
馬場昌雄
馬場房子

改訂版まえがき

本書の初版が誕生してから早くも10年余りの歳月が過ぎている。この間,リーマンショックや新自由主義の横行など,わが国の社会経済に大きな影響を与える出来事を受けて職場環境は様変わりし、生活者である働く人々や消費者の置かれた状況は大きく変貌してきている。これに伴い『産業・組織心理学』の研究領域や課題も新たな視点から取り組まれ,新しいセオリーや研究知見が示されるようになった。そこで、本書もそれらに対応できる内容にアップデートする必要に迫られ、改訂版を刊行することになった。
本書の初版は,わが国の産業・組織心理学の創成期に,組織行動と消費者行動という2大領域で多大なご貢献をなされた馬場昌雄先生と馬場房子先生の古希を祝い、ご夫妻の監修によって、当時の産業・組織心理学研究の現状と課題を纏めた概論書として上梓されたものであった。出版後,幸いにも多くの読者を得られ、何度か重版が出来たことは喜びに耐えない。
さて、今回の改訂版では,初版の構成を基にしながらも内容を新しい研究成果を取り入れた15章構成とした。また、執筆者は教職者から人選し,学生に教えることを意識して、学ぶ者の理解を促進するテキストという色彩の強いものに変えることを意図して企画された。
なお、本書の編集にあたっては,馬場先生ご夫妻の薫陶を受けた亜細亜大学の小野公一教授と東京経済大学の関口和代教授にお願いした。ご多忙にもかかわらず、大変な編集作業をお引き受けいただいたことに心から感謝申し上げる次第である。
さらに、本書の出版を快くご承諾され、ご尽力いただいた白桃書房の平千枝子編集長に厚くお礼を申し上げたい。
最後に、本書の監修者であり、産業・組織心理学界の重鎮であった馬場昌雄先生が2013年9月にご逝去された。謹んで哀悼の意を表し、心からご冥福をお祈りする。合掌
2016年12月
岡村一成

小野 公一 (著), 関口 和代 (著), 岡村 一成 (監修), 馬場 昌雄 馬場 房子
出版社 : 白桃書房; 改訂版 (2017/1/27)、出典:出版社HP

目次

まえがき
改訂版まえがき

第1章 産業・組織心理学:定義と歴史
第1節 産業・組織心理学の定義・歴史・課題
第2節 組織の定義と組織観
1 古典的組織観(機械的閉鎖システム観)
2 現代的組織観(有機的開放システム観)
第3節 組織の有効性
第4節 組織と環境との相互作用

第2章 コミュニケーション
第1節 コミュニケーションとは
1 対人コミュニケーションの成り立ち
2 言語的コミュニケー ション―非言語的コミュニケーション
3 低コンテキスト文化と 高コンテキスト文化
4 垂直的コミュニケーションと水平的コミュニケーション
第2節 コミュニケーションとチームパフォーマンス
1 コミュニケーション・ネットワーク
2 組織システムとコミ ュニケーション
3 チーム・メンタルモデル
4 対人交流型記憶(トランザクティブ・メモリー)
第3節 組織のコミュニケーションに影響を与える要因
1 多数派への同調行動
2 集団極性化現象
3 集団思 考
4 ホイッスル・ブローイング

第3章 モティベーション
第1節モティベーションの背景
1 モティベーションとは
2 モティベーションの特徴
3 欲求
第2節 期待とモティベーション
1 達成への期待
2 道具性期待理論
3 効力感期待
第3節 目標とモティベーション
1 具体的で高いレベルの目標が持つ効果
2 フィードバックの 効果
3 目標設定への参加の効果
4 高業績サイクル・モデル
第4節 内発的モティベーション
1 内発的モティベーションとは
2 内発的モティベーションの 命題
3 外発的モティベーションは有害か
4 フロー体 験

第4章 コミットメント
第1節 コミットメントとは
1 コミットメントの意味するもの
2 コミットメントを考える意義
第2節 組織コミットメント
1 組織コミットメントを考える意義
2 組織コミットメントの捉え方
3 組織コミットメントがもたらすもの(結果)
4 組織コミットメントを高めるもの(原因)
5 組織で働く人の組織コミットメントのあり方
第3節 職務関与とキャリア・コミットメント
1 職務関与とは
2 職務関与の結果と原因
3 キャリ ア・コミットメントとは
4 キャリア・コミットメントの結果と原因
第4節 コミットメントの全体像

第5章 職務満足感
第1節 職務満足感とは
1 定義
2 職務満足感の捉え方
第2節 職務満足感に影響を与える要因
1 動機づけ―衛生要因理論
2 職務満足感に影響を与える要因
第3節 職務満足感が影響を与える要因
1 生産性・業績との関係
2 定着意思・コミットメント↔︎離・転職,欠勤との関係
3 職務満足感と生活満足感の関係
第4節 まとめ

第6章 募集・採用と適性
第1節 採用計画と募集
1 採用計画
2 雇用形態
3 募集活動
第2節 職業適性と採用試験
1 職業適性とは何か
2 企業の求める職業適性
3 職業適性検査の種類
4 採用試験
第3節 採用面接
1 採用面接のねらい
2 採用面接の方法

第7章 評価と処遇
第1節 人事考課
1 評価目的
2 評価要素
3 評価方法
4 考課者とバイアス
第2節 アセスメント
1 人事考課との違い
2 アセスメント・センター方式
第3節 日本の評価制度
1 職能資格制度
2 成果で評価する制度
3 プロセスで評価する制度
第4節 配置・異動
1 配置の日米比較
2 日本企業における異動
3 配置先を従業員が選ぶ制度

第8章 キャリア形成
第1節 人材育成
1 人材育成の三本柱
2 人材育成の変化
第2節 キャリア
1 キャリアとは
2 キャリア形成
第3節 キャリア支援
1 メンタリング
2 キャリア・カウンセリング

第9章 リーダーシップとフォロワーシップ
第1節 なぜリーダーシップが問われるのか
1 リーダーシップの定義
2 リーダーの影響力と有効性
3 リーダーシップとマネジメント
第2節 リーダーシップ研究の歴史的変遷と理論
1 特性論
2 行動論
3 コンティンジェンシー理論
4 交換理論
5 変革型リーダーシップ
6 倫理的リーダーシップ
第3節フォロワーシップ
1 フォロワーの役割に関する理論
2 構築主義の理論

第10章 職場におけるメンタルヘルス
第1節 ストレス
1 ストレスとは
2ストレス理論
第2節 仕事ストレスモデル
1 仕事の要求度―コントロール(―サポート)モデル
2 NIOSH モデル
3 努力―報酬不均衡モデル
第3節 職場におけるメンタルヘルスマネジメント
1 日本における歴史的経緯
2 職場におけるメンタルヘルスマ ネジメント
3 職場におけるメンタルヘルスマネジメントの新 しい潮流

第11章 人間関係
第1節 はじめに:なぜ人間関係が重視されるのか
第2節 産業場面における人の発見:ホーソン実験と人間関係管理
1 ホーソン実験
2 人間関係管理の成立
3 人間関係管理の内容
第3節 人間関係が仕事や組織に与える影響:負の影響としてのハラスメント
1 ハラスメントの定義と種類
2 パワーハラスメント
3 セクシュアル・ハラスメント
4 ハラスメントまとめ
第4節 組織における私的な人間関係:仕事や組織に与えるプラスの側面
1 ソーシャル・サポート
2 ソーシャル・キャピタル

第12章 人間工学とリスクマネジメント
第1節 人間工学
1 エルゴノミクスとヒューマンファクター
2 安全工学設計
3 本質安全
4 ユニバーサルデザイン
第2節 リスクマネジメント
1 リスクの定義
2 リスクマネジメント
3 エラーマネジメント
第3節 ヒューマンファクター
1 ヒューマンファクターモデル
2 ヒューマンエラーの分類
3 事故分析手法
第4節 組織の安全文化
1 安全アプローチの変遷
2 組織事故
3 安全文化
4 高信頼性組織

第13章 職務分析と作業研究
第1節 職務分析
1 職務とは
2 職務分析
3 職務分析の方法
4 職務分析を行う際の手順と留意点
第2節 作業研究の展開:作業研究・作業分析とその方法
1 作業研究
2 さまざまな作業研究手法
第3節 現代の雇用情勢から考える職務分析と作業研究の活用(相互併用)について
1 職務分析と作業研究の併用による活用
2 おわりに:現代の 雇用情勢からみる職務分析・作業研究の役割

第14章 消費者心理学
第1節 消費者心理学の定義・歴史・課題
第2節 消費者行動の複雑性と消費者行動のモデル
1 消費者行動の複雑性
2 消費者行動のモデル
第3節 消費者の心理的要因に関する理論
1 消費者の動機づけに関する理論
2 消費者の知覚(認知)に 関する理論
3 消費者の学習・記憶に関する理論
4 消費者の態度と態度変容に関する理論
第4節 消費者を取り巻く環境の変化と消費者の顕在的行動
1 自然的環境・物理的環境
2 企業的環境
3 政治 的環境
4 経済的環境
5 社会的環境
6 文化的環境:文化と下位文化
7 その他の環境
第5節 消費者行動の研究方法
1 情報の収集
2 情報の記述と分析
3 情報の解釈 と洞察
4 行動の予測
5 アイディアの提案と実行

第15章 消費者心理学の応用
第1節 消費者の心理と行動
1 学際的な消費者行動研究
2 マーケティングにおける消費者行動研究の応用
第2節 インターネット普及による消費者行動の変化
1 インターネットがもたらした影響
2 購買行動の多様化
3 購買プロセスの変化
第3節 色と消費者心理
1 色彩研究注目の背景
2 色が消費者心理に与える影響

参考文献
改訂版あとがき
事項索引
人名索引

小野 公一 (著), 関口 和代 (著), 岡村 一成 (監修), 馬場 昌雄 馬場 房子
出版社 : 白桃書房; 改訂版 (2017/1/27)、出典:出版社HP