自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?

【最新 地方自治体財政を学ぶおすすめ本 – 基本から実務まで】も確認する

自治体財政の初歩が分かる

注目を集めている自主勉強会・研修内容が書籍化された者で、財政課長を4年務めた著者が軽妙な語り口調で解説していきます。自治体財政に関する現状がよく分かるので、疑問も解消されます。財政課について理解を深めたいと考えている自治体職員の方やこれから自治体財政について学びたいと思っている初学者の方におすすめの1冊です。

今村 寛 (著)
出版社 : ぎょうせい (2018/12/13)、出典:出版社HP

目次

プロローグ ―「出張財政出前講座 with SIMふくおか2030」を知らないあなたへ
Part1 財政課職員はなぜ嫌われる?
1 自治体職員の多くは財政の”ざ”の字も知らない
財政のこと、今日は何が知りたいですか?
自治体職員の多くは財政のことをよくわかっていない
2 あなたのまちの財政課職員のこと、好きですか?
全国の自治体で嫌われている財政課
注文ばかりでわかり合えない間柄
3 なぜ財政課は口うるさく注文をつけてくるのか
財政課が守ってほしい二つのルール
支出は収入の範囲でないと使えない
予算は誰が決めている?
予算は議会が承認しないと使えない
4 予算はどうやってできあがる?
1年間の収入と支出の計画を決める「予算編成」
大切なのは収入と支出のバランス
見えないところで格闘する財政課
財政課職員は我慢しすぎ?
5 誰がどうやって予算を決めているのか
どうすれば予算が取れるのか
全ての予算要求調書をチェックする「一件査定」
現場に責任と権限を委ねる「枠配分予算」
一件査定と枠配分予算、どっちが良い仕組み?
自治体の“台所”事情”財政が厳しい”ってどういうこと?

Part2 自治体は「お金がない」?
1 使い道が自由に決められるのは「一般財源」だけ
収入は支出の裏付けとなる「財源」
特定のことにしか使えない「特定財源」
使い道を自由に決めることができる「一般財源」
自由に使えるお金がどのくらいあるのかが全ての前提
2 どこにどのくらい使っているの?
支出の総額で見てみると 一般財源で見てみると
自治体の“台所”事情”財政が厳しい”ってどういうこと?
3 義務的経費って何?
必ず支払う義務がある裁量のきかない経費
借金の返済に係るお金「公債費」
社会保障に関する給付のお金「扶助費」
自治体職員の給与・手当に関するお金「人件費」
使い道を決める裁量があるのは半分以下
4 この2年間で増えたもの、減ったもの
公共事業が減り、借金の返済が増える
増え続ける社会保障費
5 借金するのは何のため?
赤字を埋めるための借金はできない
借金は長く使う社会資本整備のため
6 市債残高が高いのは財政が健全でないということか
社会資本整備の遅れを取り戻すために
都市の魅力と生活の質を兼ね備えた存在感のある都市へ
資産があればその分負債があるのは当たり前
7 自治体財政これからどうなる?
今後10年間の収支見通しを試算
大きく伸びない一般財源
自治体の“台所”事情”財政が厳しい”ってどういうこと?
8 支出は増える一方
手放しでは喜べない人口増加
急速に伸び続ける「扶助費」
高止まりが続く「公債費」
これ以上減らすことが難しい「人件費」
9 迫りくる第四の義務的経費
これから負担が増える公共施設の維持管理
計画修繕による長寿命化が必要だが
10 自治体の「お金がない」とはどういうことか
伸びない一般財源、増え続ける経常的経費
「政策的経費」と「経常的経費」
「お金がない」のは新たな政策に投資する資金
1 新しいことに取り組む必要ってあるの?
現在行っている施策事業は継続できるが
マスタープランの目指すもの
今のままでよいかどうかは市民が決める
2 市民と約束したバラ色の未来のためにやるべきこと
収入を増やすか支出を減らすか
一般財源はすぐには増えない
新たな政策と過去の政策のトレードオフ

Part 3 限られた資源をどう使う?―対話型自治体経営シミュレーションゲーム「SIM2030」を通して
1 私と「SIM2030」との出会い
Facebookで偶然耳にした「SIM2030」の産声
「財政出前講座 with SIMふくおか 2030」の誕生
一粒で二度おいしいパッケージプログラム
Part3でお話したいこと
ネタバレにならないように
2 対話型自治体経営シミュレーションゲーム「SIM2030」
「SIM2030」ってどんなゲーム?
与えられた役割を演じるロールプレイの妙
「SIM熊本2030」の誕生
広がる「SIM2030」ファンの輪
「SIM2030」をやってみてわかる三つのこと
3 「選択」は難しい
「選択と集中」の体感
自治体の“台所”事情”財政が厳しい”ってどういうこと?
「選択」の基準はどこにある
4 「説明」は難しい
試される「説明責任」
なぜ「説明」が難しいのか
5 「対話」は難しい
納得を導くのは「対話」
行政職員は「対話」が苦手
「対話」に必要なのは「情報共有」
「立場」を越えることで「対立」を越える
6 未来は現在の積み重ね
残ったカードが意味するもの
一番大事なのは「ビジョン」の共有―いいまちになりましたか?
それは最初から目指していたまちですか
「未来からの視点」を忘れずに ビジョンが必ず備えていなければならないもの
素晴らしい未来を残してくれてありがとう
「SIM2030」と総合計画
7 「SIM2030」はどこへ行く
「SIM2030」の発展可能性
自治体職員研修素材としての「SIM2030」
自治体の“台所”事情”財政が厳しい”ってどういうこと?
他の自治体職員との「SIM2030」
市民との「SIM2030」
他のプログラムとのコラボレーション
8 ご当地SIM2030をつくりたい方へ
「SIM2030」をつくりたい!
誰のための「SIM2030」?
何のための「SIM2030」?
実際のまちづくりへの活用も
独りでゲームをつくらない
まちの将来について真剣に語る機会として
9 あなたも今日からSIM伝道師
「SIM2030」ファンとして
体験者こそが伝道師
ご当地版をつくってみたら

Part 4 「財政健全化」って何だろう?
1 「財政健全化」は目的ではなく手段
「財政健全化」って何だろう?
財政指標はただの物差し
自治体の財政健全化は個人の健康づくりと同じ
2 「スクラップ&ビルド」から「ビルド&スクラップ」へ
「ビルド&スクラップ」への発想の転換
「スクラップ&ビルド」は順序が逆
要らないもの探しから要るもの探しへ
3 限られた資源で自律経営ができる組織に
枠配分予算による「局・区の自律経営」
市民に近い現場に責任と権限を
「共有」から「共感」「共働」へ
自治体の“台所”事情”財政が厳しい”ってどういうこと?
財源は与えられるだけではない
使うために「稼ぐ」という創意工夫がモチベーションに
4 私が「財政出前講座」を始めた本当の理由
きっかけは1本のメール
「講座」に名を借りた「お願い」
「出前」だからうまくいく
口コミを生んだ掲示板での壁新聞
財源を生み出すことはできないけれど
5 財政出前講座を予算編成にどう活かす?
枠配分予算制度は万能か
枠配分はルールではなく目標
枠配分なのに査定する?
いつ、誰と、どこで対話する?
一件査定と枠配分予算
自治体と市民との関係に置き換えてみる
6 対立を対話で乗り越える
私が財政出前講座で一番伝えたいこと
共通項は「対立を対話で乗り越える」
一人の千歩よりも千人の一歩
7 グラフィックレコーディングとともに
親しみやすさ、わかりやすさ、そして物語性
ともに対話を促進する者として
Part5 全体最適を「対話」で導くヒトづくり
財政出前講座の現在・過去・未来
講座では話せないここだけの話
もともとは普通の自治体職員でした
2 財政係長はつらかった
査定に明け暮れた財政課時代
財政が厳しくても財政課が厳しくてはいけない
枠配分予算が招いた混乱
査定なき財政課を目指す
「対話」への目覚め
外の世界への憧れ、
早稲田で考えたこと、ポートランドで考えたこと
あれだけ嫌だった財政課を卒業したのに……
「対話」が全てのカギになる
再び財政課へ舞い戻る
4 人生を変えたのは「ゆる~い対話の場」
人生の転機となった「禁酒令」
「何とかしたい人全員集合!」から「明日晴れるかな」へ
「明日晴れるかな」が教えてくれたもの
「対話」がつないでくれた外の世界
5 講座を育ててくれた熱心なフォロワー
みんな黙って舟をこぐ
今日、聞きたいことはなんですか?
「出張」財政出前講座のはじまり
欲張りなワガママが生んだコラボレーション
6 全国区となった「出張財政出前講座」
全国の仲間が出前講座の営業マン
全国への普及拡大を支えた人財ネットワーク
ツボにはまったキラーコンテンツ
「出張財政出前講座」が全国各地でウケるわけ
人寄せパンダとして
7 「財政出前講座」はどこへ行く
ワーク・ライフ・オフサイトバランス
芸は身を助く
出前講座は「副業」ではなく「複業」
なぜ財政出前講座に情熱を注ぐのか
やりたいことは「全体最適を対話で導くヒトづくり」
財政出前の旅はまだまだ続く?
エピローグー外に出てみよう! 世界を広げてみよう!
グラフィック : 和田あずみ(株式会社グラグリッド)

今村 寛 (著)
出版社 : ぎょうせい (2018/12/13)、出典:出版社HP

プロローグ ー「出張財政出前講座 with SIMふくおか2030」を知らないあなたへ

■どうして財政課は「お金がない」というのか

今、全国の地方自治体が「厳しい財政状況」に置かれていると言われていますが、皆さんは「自治体財政の厳しさ」についてどのように理解されているでしょうか。毎年度行われる予算編成の過程でも、財政課からは「お金がない」の一点張り。既存の事業に対する予算が毎年削られる一方、新しく取り組みたいことには一向に予算がつきません。
この本は、福岡市役所で3年前まで財政調整課長を務めていた私が全国各地で行っている「出張財政出前講座 with SIM ふくおか 2030」の内容をまとめたものです。自治体の財政は厳しいと言いますが、何がどう厳しいのか、どうして厳しいのか、を知ったうえで、その厳しさにどう対処していけばいいのか、なぜその厳しさを乗り越えていかなければいけないのか、その具体的な方法について、一人でも多くの方に知っていただきたい、理解していただきたい。そう思ってこの講座をもう6年も続けています。

今村 寛 (著)
出版社 : ぎょうせい (2018/12/13)、出典:出版社HP