フェイクニュースの見分け方 (新潮新書)

【最新 フェイクニュースを知るおすすめ本 – 真偽を見分けてメディアリテラシーを身につける】も確認する

真偽を見抜く力を身につける

メディアの中から事実を見つけるにはどうすればいいかを、著者の体験に基づいて書いた本です。本書では、一見もっともらしい情報に対するAmazonやGサーチ、検索によるクロスチェックなどの技術的なファクトチェックの方法、正しい情報を見分けるために役立つヒントを実際の報道を事例として分かり易く詰め込んでいます。

烏賀陽 弘道 (著)
出版社 : 新潮社 (2017/6/15)、出典:出版社HP

はじめに

新聞・テレビ・雑誌・書籍など「旧型マスメディア」と新興のインターネットをぶち抜いて、より精度の高い「事実(ファクト)」を探す。そのための具体的な方法を提案する。それが本書の目的です。
私は1986年に朝日新聞社に入社して、新聞記者になりました。その後新聞記者→週刊誌記者→編集者→フリー記者と、活字媒体のあらゆる職種を経験しています。フリーになった今は、写真も撮りますし、場合によってはビデオカメラも回します。
幸運だったと思うのは、その職業人生の間に、アナログ→デジタル→オンライン化というマスメディア産業の技術革新を、職業の現場で、しかも同時進行で体験できたことです。新聞→雑誌→書籍→インターネットと媒体はどんどん変化しました。新聞記者になりたてのころは原稿用紙にボールペンだったのが、ワープロになり、ついでパソコンじになり、今やiPhoneで書くことすらあります。昔は原稿をテレタイプやファクスで送っていたのに、今ではメールどころか、クラウドサーバーにリアルタイムで打ち込んでいます。
本書で紹介するのは、そうした職業生活の中で私が自然に身につけた「事実の見つけ方」です。
プラスマイナスの総体で考えれば、職業的場面でも私的場面でも、インターネットは私の人生に大きな恵みをもたらしていると言えます。ネットというメディア革命がなければ、私は新聞社を辞める決断をしなかったかもしれません。
しかし社会全体を見渡してみると、インターネットの普及は「信頼できる情報をマスメディアから見つける」という作業をより難しくしました。何が事実かわからない。何を信じていいのかわからない。時を同じくして旧型メディアの衰退が始まりました。乾いた大地は崩れ、私たちは深くて広い「情報のカオスの海」に投げ出されたのです。そこは虚偽の情報(フェイク)と事実(ファクト)が混在している海でした。
そんな混乱したメディア環境にいると、人々は現実を知ることが苦痛になり、あきらめ、無関心になります。それは民主主義社会としては大変不幸なことです。私の提案する「事実の見つけ方」はあくまで私の個人的体験にすぎませんが、そうしたカオスの海を泳ぐ方法を知る一助にしてもらえれば幸甚です。

烏賀陽 弘道 (著)
出版社 : 新潮社 (2017/6/15)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章インテリジェンスが必要だ
公開情報に当たる重要性
日本会議は黒幕か
Gサーチの有効性
アマゾンは書店2.0

第2章オピニオンは捨てよ
オピニオンとは何か
増殖したオピニオン
「大物」のオピニオンには意味がある
代理話者に注意せよ
根拠を求める習慣を
安倍政権は言論弾圧をしたのか
圧力とは何か

第3章発信者が不明の情報は捨てよ
匿名者が発信する情報は信じるな
主語が明示されていない文章は疑う
組織が主語を消す
匿名の朝日記者
「関係者」はオールマイティ
新聞記者はなぜ匿名でもいいのか
「炎上」を過大評価するな
匿名ネット発言はデマの温床
信用できる匿名者とは
書き手の独断的な価値判断
印象操作の蔓延

第4章ビッグ・ピクチャーをあてはめよ
空間軸と時間軸を拡げる
電波停止発言は問題か
問題の本質は電波法
本質を掘り下げよ
書いていないことに着目すべき
前提条件を疑う
「わからない」とは言わないマスコミの悪癖

第5章フェアネスチェックの視点を持つ
フェアネスとは何か
吉田所長は偉人なのか
人間は複雑である
単純な話は受ける
罪請負人は英雄か
無罪請負人の別の顔
現実の単純化
ステレオタイプに沿ったストーリーは要警戒
略奪はなぜ少なかったのか
褒められたい私たち
アーレントの教訓
小保方氏の本の評価
元少年Aの出版は暴挙か
警察と検察報道の問題

第6章発信者を疑うための作法
発信者が多すぎる
フォロワー数は信用を保証しない
引用の正確さで見分ける
定義に正確な言葉を使っているか
言葉の定義を疑う
スラップ訴訟発信者の名前をアマゾンで検索してみる
キャリアも重要である/本を出すことの意味
「媒体」よりも発信者で選ぶ
「専門家」が事実に正確あるいは中立とは限らない
何の「専門」家なのかを確認する
ステマと専門家

第7章情報を健全に疑うためのヒント集
ヒント①世界は妄想に満ちている
妄想性障害
ヒント②陰謀史観は相手にしない
ヒント③企業や政府などの宣伝に沿った話は疑う
ヒント④集団のルールをもとに構成員は動く
法律が人間を縛る
ヒント⑤発問のゴールを明確に決めて動かさない
ヒント⑥事実の全貌は時間が経たないとわからない
ヒント⑦ロジックを逆にしてみる
ないものが「ある」と仮定してみる
ヒント⑧「断言の強さ」は正確さとは関係がない

烏賀陽 弘道 (著)
出版社 : 新潮社 (2017/6/15)、出典:出版社HP