茶の湯入門 (ムック/和樂ムック)

【最新 茶の湯について学ぶためのおすすめ本 – 正しい作法から茶の湯の魅力まで】も確認する

茶の湯の真髄がわかる

茶の湯について、あらゆる角度から楽しめる茶の湯手引書です。いま注目される茶人、武者小路千家家元後嗣・千 宗屋氏による章を中心に、そのほか反響が高かった企画も集め、凝縮した一冊です。和樂ならではの美しいビジュアルを通して茶の湯の真髄に触れられる、日本文化に興味を持つ人すべてに、手にとっていただきたい一冊です。

千 宗屋 (監修)
出版社 : 小学館 (2012/6/14) 、出典:出版社HP

アートディレクション
木村裕治

デザイン
木村裕治
斋藤心介
金田一 亜弥
佐藤幹
木村デザイン事務所

制作
望月公栄
森雅彦
速水健司

宣伝
栗原弘

販売
中山智子

編集
小竹智子
福持名保美
和樂編集部

監修
千宗屋(せんそうあく)
1975年生まれ、 武者小路千家家元後嗣。 慶應義塾大学大学院修士課程修了。 2003年後嗣号「宗屋」を襲名。 2008年度文化庁派遣文化交流使として、 1年間ニューヨークを拠点に 茶の湯の普及に努める。 明治学院大学非常勤講師。 著書に「茶利休と今をつなぐ】 (新潮新書)などが。

表紙
利休型黒大棗
利休作の茶杓(個人蔵)

表紙・裏表紙
撮影/鈴木心

和樂ムック
茶の湯入門
2012年6月16日 初版第1刷発行 2017年3月21日 第3刷発行

編集人
五十嵐佳世

発行人
橋本記一

発行所
株式会社 小学館
〒101-8001 千代田区一ツ橋2-3-1 編集03・3230-5675 販売03-5281・3555

印刷
大日本印刷株式会社

製本
株式会社 若林製本工場

本書は雑誌和楽に掲載された記事を 加筆・修正の上一冊にまとめたものです。 掲載商品の表示価格は2012年5月15日 現在のもの、またメーカーや店舗では 取り扱いのない商品もあります。

造本には十分注意しておりますが、 印刷、製本など製造上の不備がございましたら 「制作局コールセンター」 (フリーダイヤル0120-336-340)に ご連絡ください。 (電話受付は、土・日・祝休日を除く9:30~17:30)

本書の無断での複写(コピー)、 上演、放送等の二次利用、翻案等は、 著作権法上の例外を除き禁じられています。 また、本書の電子データ化等の無断複製は 著作権法上での例外を除き 禁じられています。 代行業者等の第三者による本書の電子的複製も認められておりません。
©Shogakukan 2012 Printed in Japan
ISBN978-4-09-105462-3

千 宗屋 (監修)
出版社 : 小学館 (2012/6/14) 、出典:出版社HP

別冊和樂 目次

和樂ムック
茶の湯入門
千宗屋

利休さんに学ぶ 「茶の湯」のき
「わび茶」の基本/林屋晴三さん×千宗屋さん 特別対談「偉大な目利き、千利休」/ 利休さんの眼鏡にかなった「茶道具」の名品拝見/人物相関図,
利休の伝説エピソード/イラストで再現! 北野大茶湯

誌上体感
茶室の美
待庵/如庵/残月亭/又隠/燕庵/忘冬/激看席/庭玉軒/時雨亭

千宗屋さんに学ぶ 「茶の湯」の心得
千利休と12人の大茶人/茶室の心得/茶道具の心得/食事の心得/はじめて茶会に行く前に…素朴な疑問集

きもので茶席へ。 茶箱なら、いつでも一服。
千宗屋の 「茶箱は愉しい!」
利休時代に伝来、蒟醤茶箱/原三溪が愛した高麗来の茶箱 湯木貞一が愉しんだ猿鶴蒔絵の茶箱/戸田商店の先代が生涯かけて集めた白騎の茶籠/山田宗春コレクションから光琳樫蒔絵茶/ 小堀遠州が所持した半文茶箱/異国の香り南蛮蒔絵の洋標茶箱/ 長谷川竹次郎さんの3つの茶箱/究極の豪華さ 黒漆地三番叟蒔絵茶箱/ 茶三昧の数寄者が組んだ大らかな茶箱/茶箱を組む愉しみ

(コラム)今に生きる利休style
茶席のお菓子
「茶の湯」をもっと知るための11冊

茶と庭の美術館を訪ねて京都へ
京都・東京「茶の湯」の美にふれる美術館
日本の「茶家」を巡る
遠州茶道宗家/茶道上田宗箇流/宗偏流 松尾流/江戸千家/江戸千家宗家/大日本茶道学会
月刊誌 和樂のご案内/和樂ムックバックナンバー

利休さんに学ぶ「茶の湯」のき
織田信長や豊臣秀吉の「お茶のよろず係」、茶頭として仕えた千利休は、わび茶を大成させた人物といわれています。茶道具から茶室・露地にいたるまで独特の美意識を巡らせ、それまでのお茶とはまったく異なるスタイルを提案。それらは茶の本道、として、後世へと受け継がれていきます。『茶利休と今をつなぐ』(新潮新書)や、「もしも利休があなたを招いたら(角川oneテーマ21)を著した武者小路千家家元後嗣の千宗屋さんに、ご先祖さまである。”利休さん”の茶の湯について習います。
撮影/鈴木心(P46)、水田忠彦(PA〜M)撮影協力/武者小路千家(財)官休庵、聚光院、瀬津雅陶堂イラスト/峰岸達~四)、亀川秀樹(P8~3)構成,植田伊津子、浦野芳子、高橋木綿子(本誌)

花は野の花のように
炭は湯の沸くように
夏は涼しく
冬は暖かに
刻限は早めに
降らずとも雨用意
相客に心をつけよ
利休七ヶ条

簡素でありながら贅沢。豊かな心と心の交わりを目指した「わび茶」。利休さんによって確立したわび茶の基礎知識を、一緒に学んでみませんか?
真髄は一千利休の『わび茶』にあります

「わび茶」の基本、一
あたたかなお茶をまるで掌で飲んでいるかのような「黒楽茶碗」
楽茶碗はひとつひとつが手づくりで、やわらかいやきものです。そのため熱がゆっくり伝わるので、まるで人肌のように手になじみ、口当たりもやさしい。これは、茶の湯のために純粋な目的でつくられた茶碗でした。
黒楽茶碗・銘利休、長次郎作(個人蔵)。上から見ると真円、茶を点てやすい半筒のかたち。作意を抑えたシンメトリックなフォルムが、宗易形(宗易とは利休のこと)と呼ばれる所以です。利休の孫・千宗の箱書がつき、芸州浅野家旧蔵の由来。色や触感ともに皮膚感覚に近い赤楽、ほの暗い茶室空間に溶け込む黒楽。千宗屋さんは、利休の茶の湯は物の存在を消そうとしたところに意図があるといいます。

大徳寺の塔頭、聚光院の開席(重要文化財)へ続く露地蹲踞、飛び石、井戸、灯籠がバランスよく配されています。もともと茶室は家の裏側にあり、そこへと回り込む細い通路を「路地」とよびました。現在の露地は、腰掛(待合)という簡易な設備から茶室までの動線を取り囲む庭の総称。露地は俗世界から非日常空間へと変わるスイッチの役割をしています。

「わび茶」の基本、二
『市中の山居』のような。茶室へ誘う通路が「露地」です
露地が「お茶に意識を向けていくためのプロセスの場」であると認識させたのは、おそらく利休。秀吉時代、大坂城のような公式な場に茶室がつくられ、整えられていくようになると、当然そこにわびに向かう利休の創意、作意が大きく関わったと推察されています。

これまでの定番であった四畳半の茶室から、わび茶人が好んだ二畳や三畳の茶室を主流にしたのが利休です。また窓の数も減らして、サイズも小さくしました。そのため小間は、極端に光を絞った薄暗い座敷へと変わります。視覚を極力制限することで、お茶そのものに集中させたい意図を感じます。

「わび茶」の基本、三
空間を狭めることで主客の心が通い合う『直心』の場が「小間」
茶室の基本はまず四畳半。それより大きいと「人間(書院)」、小さいと「小間」とよびます。聚光院閑隠席は、利休の150年忌に表千家7代如心斎から寄進されたもの。客量と点前畳の間がまっすぐな中柱で区切られた三畳の茶室です。造作すべてが、利休の精神を映したわび空間として知られています。床の間の軸は、利休筆の消息(武者小路千家蔵)。利休作の尺八竹花入の添え状です。「この花入を秘蔵していたけれど、あなたがたびたび所望したから差し上げます」という内容。

かつて「潜り」とよばれた?口は、その名のとおり身をかがめないと入れません。利休によって定着した躙口は、いわば芝居小屋の木戸のようなもの。世俗の身分を離れ、非日常空間へと気持ちを切り換える有効な装置でした。

「わび茶」の基本、四
身分に関係なく客全員が身をみて「躙口」から別世界に入ります
閑隠席躙口から床を拝見。入室するときは、鋼口前の沓脱石に乗り、木戸を引いて、内部のたたずまいや床の様子を見てから踊って入室するきまり。茶室に入ると、自然に意識が床の間に集中し、亭主がしつらえた掛け物や花を静かに鑑賞する心持ちとなります。そこに漂うのは香の匂い。利休は外界を遠ざけるために、さまざまな工夫を仕掛けました。

「わび茶」の基本、五
貴人や武将に広まったわび茶人のお茶のスタイルが「平点前」です
利休以前に広間(書院)でおこなわれたお茶は、「飾り付け重視」の茶の湯です。中国から渡来した珍しい絵画や名物のやきものを見せるためには、あらたまった空間が必要でした。そのため茶道具は、台子とよばれる棚に飾られた状態ではじめられるものでした。利休の最大の功績は「お茶のための道具」「お茶のための茶室」を整えたことです。そして何もない空間に、水指、茶碗や求などの茶道具を全部持ち出す点前も考案しました。いわゆる「平点前」の誕生です。これのまたの名を「運び点前」ともいいます。
平点前はとくに小間にふさわしいもの。「無」から「有」、そして道具を下げて「無」に帰するわび数寄の点前です。それを茶の湯の「本道」としたのが利休でした。「平点前にはじまり、平点前に終わる」のが千家流茶道の基本。ここでは、真中欠、赤楽茶碗・銘小手巻(長次郎作、利休作の茶杓を取り合わせました。シンプルな丸金(写次郎作)、木地曲建水引切の養竹蓋置など、いずれも利休好みの道具。

「わび茶」の基本、六
手近な素材でつくられた究極の茶道具です。「竹の茶杓」と「棗」
室町時代までは、茶道具の価値基準と
いえば舶来品の唐物。しかし利休は、それに匹敵する別の美を完成させます。一見簡素ながら格調の高い塗のや釣瓶の水指、竹茶杓など材そのものを生かし切った茶道具をつくりました

(下)利休作の茶杓(個人蔵)と、究極のシンプルデザインである利休形黒大棗。東はおもに薄茶を入れるための木の容器。「草」のお茶を大切にした利休は、塗師にやわらかい漆塗のうつわをつくらせました。真ん中に節のある中節のもので、これが利休が好んだスタイル。茶杓は亭主みずからが竹を削り、筒を添え、筒に名前を書き付ける行為から、もっとも茶人の思いを伝える道具として親しまれるようになりました。

(左)利休作の尺八竹花入(武者小路千家蔵)に白椿を入れて。竹の花入には、寸胴形の尺八、ひとつだけ窓を開けた一重切、窓2つの二重切(6ページ参照)などのさまざまなバリエーションがつくられました。利休が見出し、手がけた茶道具は、どれも最大の創意を盛り込みながら、それを感じさせない工夫を凝らすことで、永遠の評価が与えられています。

「竹花入」
身近な素材であっても、利休は相当竹を吟味し、間合いをはかって竹花入をつくりました。当時の天下一宗匠が床の間に飾るあたらしい花入をつくるとき、名物道具と同等以上のものを創しなくてはいけないという高い意識あったはずです。

千 宗屋 (監修)
出版社 : 小学館 (2012/6/14) 、出典:出版社HP