歴史上の人物たちがガイド役! 古典で旅する茶の湯八〇〇年史

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茶の湯入門ガイド

本書では茶の湯を知る上で欠かせない古典24冊と、それらに関わる人物22名をガイド役に、先人たちの茶の湯愛を体感できる全50話を収録しています。「茶の湯」は敷居が高そうと感じる方、「古典」は難しそうと思っている方にも分かりやすい、初心者向けの茶の湯入門ガイドです。

竹本 千鶴 (著)
出版社 : 淡交社 (2020/11/4) 、出典:出版社HP

はじめに

私たち日本人の生活で、欠かすことのできない飲み物と言えば、お茶です。コーヒーや紅茶 を飲まない日があっても、お茶を口にしない日はないと言ってもいいでしょう。そのことは「日 常茶飯事」という表現があることからもうかがえます。
ところが、この最も身近な飲み物が「茶の湯」あるいは「茶道」と呼ばれた途端に、日常で はなくなり、遠い存在になってしまいます。その上、さらに「古典」などとつくと、歴史は苦手、と敬遠する方も多いかもしれません。一方で、その特別な空間をちょっとのぞいてみたいな、と思う方もいらっしゃるでしょう。そこで、ペットボトルも含め、日々お茶を飲むすべて の方々のために、茶の湯の古典をたどりながら、歴史の歩みをまとめました。その際、入門ガイドであることを念頭に、次の二点を意識して執筆しました。
一、古典は決して難しいものではないこと
二、茶道のイロハを知らなくとも、茶の湯を身近に感じてもらえることもともとお茶は、七○○年代半ばに中国から入ってきました。ただそれは茶葉を含むハーブティーであったり、団茶という、茶葉の塊を砕いて飲んだりするスタイルでした。いわゆる抹茶(粉末の茶葉を攪拌する)が中国より伝わったのは、一一〇〇年代のことでした。本書はそこを出発点として、しだいに抹茶が定着していき、ついに茶の湯の大流行を見、そして茶道が生 まれ、我が国を代表する文化のひとつになった昭和時代初期までの軌跡八○○年を五十話にわけてお話しするものです。急須で入れて飲む煎茶は一八〇〇年代に、ペットボトルのお茶は一九九〇年代に生まれたものですが、これらも壮大な抹茶文化から派生したスタイルと考えれば、茶の湯に夢中になった歴史上のヒーローや名茶人たちとの距離も縮まるでしょうか。
本書では、そうしたお茶とその発展に寄与したはるか昔の人たちを身近に感じてもらえるよう、茶の湯の歴史を知る上で欠かすことのできない古典二十四冊と、それぞれの古典に関わる人物二十二名を選び、時代ごとに六章にわけています。一見しておわかりのように、織田信長と豊臣秀吉の時代が半分を占めるという偏りようです。これには相応の理由があります。第一に、茶の湯界のスーパースター千利休の生きた時代であること。第二に、トラディショナルな 「大名茶の湯」が下火となり、モダンな「わび茶」が大流行して現代の茶道の基礎が作られた画期であること。これらの理由から、信長と秀吉の時代はより丁寧に描く必要がありました。
さぁ、お茶でも飲みながら、いにしえの人々の話に耳を傾けてみませんか。

竹本 千鶴 (著)
出版社 : 淡交社 (2020/11/4) 、出典:出版社HP

目次

はじめに

第一章 鎌倉・室町時代:
第一話 『喫茶養生記』――苦いお茶のすすめ/第二話 喫茶伝来のシンボル・栄西/第三話 空前の ロングセラー『君台観左右帳記』/第四話 文化の立役者・足利義教 /第五話 珠光から弟子へ贈る 『心の文』/第六話 伝説の名人・珠光

第二章 戦国時代:
第七話 『松屋会記』――武野紹鴎よりのお招き/第八話 茶禅一味の人・武野紹鴎必/第九話 「宗達 他会記』――多聞山城へ行ってきました /第十話 名物大好き! 松永久秀 /第十一話 戦国時代 のタイムカプセル『烏鼠集』その一/第十二話 戦国時代のタイムカプセル『烏鼠集」その二

第三章 織田信長の時代
第十三話 『フロイス日本史』――滞日三十一年間の記録/第十四話 ルイス・フロイスin岐阜城/第 十五話 まぼろしの茶の湯を伝える『茶湯之書次第不同』/第十六話 織田信長に抜擢された茶人・不 住庵梅雪 /第十七話 『宗及自会記』その一 津田宗及、堺の代官を招く /第十八話 白むくげの人・ 松井友閑/第十九話 津田宗及のメモだった『信長茶会記』/第二十話 側近が語る織田信長/第 二十一話『宗及自会記』その二 戦略会議としての茶会/第二十二話 宝の山を残した津田宗及/第 二十三話 まるで暗号のような『宗及他会記』/第二十四話 二度生きた荒木村重(道薫)/第二十五話 『天正六年茶湯記』――安土城から中継します/第二十六話 早世の貴公子・織田信忠

第四章 豊臣秀吉の時代
第二十七話 千利休の教えを伝える「山上宗二記』その一/第二十八話 弟子が語る千利休/第二十九 話 千利休の教えを伝える『山上宗二記』そのニ」/第三十話 ホンモノの茶人・山上宗二/第三十一話 『明記集』――息子へ託した名物のエピソード集い/第三十二話 お坊ちゃま佐久間信栄 (不干斎)の茶の湯 /第三十三話 千利休の肉声を書きとめた『宗湛日記』/第三十四話 メモ魔の神屋宗湛/第 三十五話『島津家文書』――回し飲みが生まれたわけ/第三十六話 亭主対決! 信長、秀吉

第五章 伝承の中の利休
第三十七話 江戸時代のテキスト『草人木』8/第三十八話 千家に伝わる利休伝『江岑之覚』/第三十九話 さびの茶人・千宗旦/第四十話『茶話指月集』――茶席で語られた利休の逸話集/第四十一話 秀吉と利休と/第四十二話『源流茶話』―利休がわび茶を語るなら

第六章 江戸時代から近代:
第四十三話『古今名物類聚』――名物ってなに? 8/第四十四話 松平不味からのメッセージ/第四十五話 茶会での心技体を説く『茶湯一会集』明/第四十六話 心と向き合ったお殿様・井伊直弼 /第四十七話 外国人向けのテキスト『The Book of Tea 茶の本』/第四十八話 岡倉天心の語る死と芸術/第 四十九話 みんなのバイブル『大正名器鑑』/第五十話 研究の道筋を示した高橋箒庵

むすびにかえて
参考文献

本書は小社刊、月刊「淡交』連載「茶の湯の古典に親しむ」 (二〇一九年一月号~1月号)に加筆修正のも、まとめたものです。

ブックデザイン○大久保裕文務上知子(Better Days)
カバー装画○小林マキ
本文イラスト○瞳堂

竹本 千鶴 (著)
出版社 : 淡交社 (2020/11/4) 、出典:出版社HP