リテール・デジタルトランスフォーメーション D2C戦略が小売を変革する

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D2Cの基礎から具体的事例まで

小売業のDX化を推進する活動を背景に、D2Cの基礎知識、世界観の作り方、オンラインとオフラインの融合(OMO戦略)、マーケティング戦略、組織運営、さらにその先の未来の話(RaaS)まで、具体的な事例やデータを盛り込みながら解説しています。D2Cによる小売推進・変革のための事業戦略を徹底解説する一冊です。

三嶋憲一郎 (著), FABRIC TOKYO (著)
出版社 : インプレス (2021/1/22) 、出典:出版社HP

リテール・デジタルトランスフォーメーションを目指したい小売事業者、中間流通業者、メーカーと、すべてのD2Cスタートアップに、本書をささげます。

はじめに

まずは、私が経営に参画しているFABRIC TOKYOのサービスについて、簡単に説明させてください。
FABRIC TOKYOは、「Fit Your Life.」をブランドコンセプトに、体型だけでなく、お客さま一人ひとりの価値観やライフスタイルにフィットする、オーダーメイドのビジネスウェアを提供するブランドです。サービスを開始してから6年間にわたり、D2Cモデル(Direct to Consumerの略で、自らがメーカーであり、オリジナルブランドを持つ企業が、自社の製品を直接顧客に販売するビジネスモデルのこと)で事業を運営してきました。店舗で採寸した体型データをクラウドに保存しておくことで、以降はオンラインからオーダーメイドの一着を気軽に注文することができるサービスです。リアル店舗も自社で展開し、2020年1月現在、関東・関西・名古屋・福岡で合計4店舗を運営しています。
D2Cはアメリカで生まれたビジネスモデルですが、近年日本国内でも注目されるようになりました。今では数多くのスタートアップが立ち上がり、D2Cモデルへ展開を図る大手企業も増えてきています。また、最先端のテクノロジーや最新のブランディング理論を兼ねそなえていることから、低迷する小売業を救いうるモデルとしても注目されています。
しかし、2020年に発生した新型コロナウイルスは、D2Cといえども例外なく大きな打撃を受けまし
た。D2Cモデルが勃興したアメリカで、その草創期からブランドを運営するEverlaneが、約300人の従業員を一時解雇するというニュースが出たのも、同年4月のことです。ウイルスが世界に蔓延してまだ間もない頃ですが、その影響は急速に業界全体に及んでいきました。
私がこの本を執筆し始めたのも、世界がコロナ禍で混乱する真只中のことでした。4月に緊急事態宣言が発布され、FABRIC TOKYOも約2ヶ月間にわたり、9割の店舗が休業となり、新規顧客の獲得ができない状況に苛まれました。その間、売上高も急激に低下し、苦しい経営を余儀なくされました。サプライチェーン全体が混乱に陥り、取引先や関係者等々、非常に苦しい事業環境となり、「これまでの事業の運営方法では立ち行かなくなる」といった声が多数、私の耳にも聞こえてきました。売上高が急激に下がり、固定費が多く発生している企業は非常に苦しい経営状態に追い込まれたことでしょう。
奇しくも、コロナ禍による影響で、アパレル業界だけでなく、小売業界全体、さらにはそれにかかわるサプライチェーン全体における構造上の問題が浮き彫りになってきたのでした。立ち上げ当初からD2Cモデルで事業を運営してきた我々もまったく例外ではなく、今までのやり方や考え方を抜本的に方向転換していくことが急務となりました。経済環境、資金調達環境の悪化により、資本調達(エクイティファイナンス)に基づく拡大路線を突き進む経営から、PL(損益計算書)を重視した経営にシフトする必要性に迫られました。
その間、あらゆる取引先、関係者の皆様とお話する機会があり、私自身改めてアパレル業界、ひいては小売業界全体の課題として、目の前の危機を捉え直すようになりました。その中でも、特に我々がサービス開始から6年かけて培ってきたD2Cモデルの手法や仕組みが、小売業界全体の課題解決に資するのではないか、という想いが日に日に強くなっていきました。
店舗モデルによる固定費比率の高さから、高コスト体質で非効率な経営をしている業界もあったことと思います。また、サプライチェーン全体でムダ・ムラ・ムリが祟った業界、デジタル化の遅れが叫ばれた業界もあったことでしょう。そうした反省から、特にコロナ禍の苦境を顧みた結果として、EC化やDX化が強く叫ばれるようにもなりました。
しかし、そもそも小売業界全体が改善すべき課題の本質は、EC化やDX化で済むような話なのでしょうか。そうではなく、もっと業界全体が根本から変わるような、本質的な部分を見直さなければならない時に来ているのではないでしょうか。
そのような想いから、本書は弊社が培ってきたD2Cの考え方やノウハウを開放するだけにとどまらず、広く小売業界全体を変革するという展望のもとに執筆しました。まだまだ成長途中の弱小スタートアップ企業ではありますが、我々が属するアパレル業界のみならず、小売業界全体、さらにはサプライチェーン全体での業界変革の一助になれれば幸いです。
本書は、D2Cスタートアップの起業を考えている、もしくは起業している経営者や起業家は当然として、D2Cへのモデル転換を図りたい小売事業者、中間流通、メーカー、その他関連企業様に向けて書かれています。もちろん、小売事業だけでなく、サプライチェーン全体のデジタルトランスフォーメーションを図りたい企業様などにも、読んでいただきたいと思っています。
6年間、FABRICTOKYOの経営を通して培ってきた考え方やノウハウをふんだんに盛り込んであります。ぜひ、最後までお読みいただければと思います。
三嶋憲一郎

三嶋憲一郎 (著), FABRIC TOKYO (著)
出版社 : インプレス (2021/1/22) 、出典:出版社HP

はじめに

第1章 D2C戦略が小売を変革する
リテール・デジタルトランスフォーメーションとは何か
CDX化のHOWばかりに囚われてはいけない
WHOやWHATからの根本的な見直しが急務
○変革はビジョンから始まる
D2Cとは何か。
○直接販売することの効果OEC利用の差
○販売チャネル、マーケティングの差
〇サプライチェーン統合型D2C
D2Cと従来の小売業では何が違うのか?
○製品開発/仮説検証の違い人材の違い
○KPIの違い
○店舗の役割の違い
OMOがユーザー体験の鍵を握る
顧客課題の解決から価値提案へ
○ワービーパーカーの価値提案
○エバーレーンの価値提案
○オールパーズの価値提案
○FABRI CTOKYOの価値提案
アップルとナイキが体現するD2C
○すべての産業はD2C化していく

第2章 D2C立ち上げ時に考えるべきこと
サービス選びは原体験によって決める
○ワービーパーカーの創業物語
○原体験からさらにその先へ
商材選びを決める六つの基準
①商品の差別化
②LTVの算出
③市場規模の把握
○ニッチな市場で始めて多角化する
④ストーリー作り
⑤アマゾンと競合しない商材
⑥海外投資家の目線
ビジョン、ミッションに創業メンバーの想いを結集する
○3ヶ月の合宿で策定したビジョン、ミッション
ブランディングはビジョンに結び付ける
○ブランドイメージの再構築
ブランドとして顧客と約束する
○ライフスタイル提案としてのコンテンツメディア運営
勝機はどれだけアセットを構築できるか
○クリエイティブを科学する
○組織カルチャーから生み出されるアセット
○アセットを蓄積する
データis king、データはone to oneの体験価値の向上に
○データは付加価値を付けて顧客に返すためのもの
○データをかけ合わせてブランド価値を高める
ポジショニングではなく、事業と組織のケイパビリティで勝つ
○トランスフォーメーションし続ける
体験価値や利便性だけでない、広がりのあるコア・コンピタンスを特定する

第3章 マーケティング戦略
D2Cのためのマーケティング
スプリント1 WHY~北極星を発見~
スプリント2 WHO~真の課題を発見~
スプリント3 WHAT~解決策を発見~
二人のペルソナ(WHO)を作る
○理想の顧客像
○顧客獲得のためのターゲットとなる顧客像
○WHOをきちんと区別する
問いを立てWHATで解決する
〇サービス初期は購入タイミングを掴むことが集客を左右する
○購入タイミングの特定と訴求の実際
○デジタルS級立地を確保する
チャネル戦略、オンラインか、×オフラインか
○オフラインで顧客獲得コストが下がる
D2Cの出店方法、商業施設の契約形態
○店舗運営のリスクを低減する
小売の最先端はOMO
○OMOは体験価値を最大化する

第4章 LTVの最大化
商材の購買頻度を把握する
〇あるべきARPUを目標にする
○クロスセルのARPUの想定
コホートによるリピート率を管理する
○グロースの前のバケツの穴を埋める
タッチポイントの最適化がLTV最大化の鍵
OMO戦略におけるタッチポイント
カスタマーサクセスポイントを把握する
○カスタマーサクセスとは約束を果たし続けること
○顧客のエンゲージメントを高める
揺りかごから墓場までを制する
○時間軸だけで考えるのは難しい
○顧客との関係性を強固にする
○利用時の課題にフォーカスする
○購入から利用へ、小売からサービス業へ

第5章 組織運営
D2C最大のボトルネックは組織
○多様なメンバーをビジョン、ミッション、パリューで統合
○組織運営のためのバリュー
○メンバーの役割を明確分解し、すべてをビジョン、バリューに結集する
サイエンスとアートのバランス
○複眼思考の組織運営
既存大手がD2Cに参入しにくい理由は組織運営にある
①既存店舗や人材の壁
②経営手法の壁
③OMOの壁
④人事評価の壁
⑤システム開発の壁
⑥世界観の壁
○組織の変革が必要
専門家の知恵を借り、社内にストックする

第6章 ファイナンス&提携
アメリカでのD2Cファイナンスの現状
D2Cファイナンス戦略
○時価算定の差はなぜ生じる?
○ユニットエコノミクス、LTV、CACの算定
D2Cの資金調達戦略
○シード期(創業期)
○アーリー期(事業化期)
○ミドル期(成長初期)
○レイター期(成長後期)
○焦らず、しっかりとした戦略を
D2Cの成長曲線
○D2Cブランドの成長低迷ケース①「チャネルの枯渇」
○対策
○D2Cブランドの成長低迷ケース②「損益分岐点遅行型」
○対策
○D2Cブランドの成長低迷ケース③「バランス性遅行症」
○対策
D2Cの事業計画の作り方
D2Cのユニットエコノミクス
D2Cの提携戦略

第7章 D2Cのその先へ
日本が勝つ道はサステナビリティ?
○顧客価値があってはじめて共感が生まれる
顧客価値を構成する提供価値にサステナビリティを織り込む
○サーキュラー・エコノミーへの取り組み
○顧客価値を高めるサービスへ
○日本だからできることもある
D2Cのその先のビジネスモデルRaaS
○RaaSの特徴
○RaaSの事例
○RaaSがもたらす顧客への提供価値
利用後のサービスをどう考えていくべきか
「D2C×●●」が事業の成長性を左右する
おわりに

第1章 D2C戦略が、小売を変革する
D2C Strategy for Retail Digital Transformation

三嶋憲一郎 (著), FABRIC TOKYO (著)
出版社 : インプレス (2021/1/22) 、出典:出版社HP