地域を変えるデザイン ― コミュニティが元気になる30のアイデア

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地域を元気付けるアイデアが詰まった一冊

近年、災害による被害や人口減少など様々な問題を抱える地域が日本各地に増えてきています。本書ではそのような問題を様々なデータを元に正面から見つめ直し、解決するためのアイデアが紹介されています。現状の課題に対するヒントを学ぶことができます。

issue+design project (著),筧 裕介 (監修)
出版社 : 英治出版 (2011/11/28)、出典:出版社HP

この本は縦書きでレイアウトされています。また、ご覧になる機種により、表示の差が認められることがあります。

はじめに―本書におけるデザインとは

私たちは、デザインという行為を以下のように定義しています。
▼問題の本質を一挙に捉え、そこに調和と秩序をもたらす行為
▼美と共感で多くの人の心に訴え、行動を喚起し、社会に幸せなムーブメントを起こす行為
この書籍の企画が固まり、執筆を始めたばかりの2011年3月。マグニチュード9.0の日本観測史上最大の巨大地震が東北地方を襲いました。波高10メートル以上の大津波が発生し、死者・行方不明者は2万人にのぼる未曾有の人的被害をもたらしました。エネルギー自給率4%の国を支えてきた原子力発電所の事故が続きました。
東京大学の前総長・小宮山宏氏が述べた「日本は課題先進国である」という言葉がこれほど説得力を持つ時は過去になかったのではないでしょうか。

こういう時代、今の日本に求められるのが、社会に幸せなムーブメントを起こすデザインです。

震災の被害を受けた自治体の多くは人口数千人から数万人の小規模な市町村です。被災地の自治体をはじめ、地方の中小規模の自治体はこれまで首都圏・阪神圏などの大都市圏の自治体の一足先に、さまざまな課題に直面
してきました。
人口減少という言葉は、中山間・離島地域では数十年前から言われていた過疎化の言い換えです。65歳以上の高齢者が過半数を占める地域も多数存在します。地域経済を支える産業は衰退し、嫁不足、医師不足は深刻です。
こうした問題に一足先に挑戦し、厳しい財政状況の中で知恵を絞り、住民の気持ちを動かし、解決策を実践している地域が多く見られます。
そんな地域が実践している美しい解決策、それが「地域を変えるデザイン」です。

私たちはこうした地域から学ばなければなりません。学んだことを即座に実践しなければなりません。被災地をはじめ、深刻な課題に直面している地域にデザインの力を差し伸べなければなりません。
本書は、そのために必要な3つの要素で構成されています。
パートIでは、地域が直面している社会イシューをわかりやすいデータで紹介します。地域が抱える問題の本質を捉える第一歩の基礎知識として役に立つでしょう。
パートⅡでは、その解決に挑んでいるデザイン事例を紹介します。事例の中には、他の地域でも転用・応用可能なデザインの発想やアウトプットが多数あるでしょう。
パートⅢでは、「地域を変えるデザイン」を実践するために必要なデザインの思考プロセス、デザインの推進役となる地域コミュニティ、行政に関する考え方を提案します。地域が変わるためには、地域の住民そして行政が変わらなければなりません。そのための方法論です。

厳しい時代環境はまだまだ続きます。しかし、生活者を幸せにする美しいデザインが、日本中に次々と生まれれば、日本は、地域は変わるはずです。この書籍が、地域の課題に悩み解決策を模索している皆様の取り組みに少しでもお役に立つことがあれば幸いです。
最後になりましたが、東日本大震災の被害を受けた地域の一刻も早い復旧・復興を心からお祈りしております。私たちも阪神・淡路大震災の教訓を活かしたデザインプロジェクトを通じて微力ながら被災地の復興に向けて、尽力していくつもりでおります。

著者を代表して
issue + design project寛裕介

issue+design project (著),筧 裕介 (監修)
出版社 : 英治出版 (2011/11/28)、出典:出版社HP

 

地域を変えるデザイン
目次

はじめに―本書におけるデザインとは
PARTI
地域を変えるキーイシュー20

1気候変動
2地震
3エネルギー
4食料自給
5森林
6ものづくり
7人口減少
8高齢化
9人口密度
10多世帯化
11コミュニティ
12結婚・出産
13育児
14子どもの心と体
15経済格差と雇用
16外国人
17犯罪
18医療・介護
19自殺
20生活習慣病

PARTII
地域を変えるキーデザイン30

SECTIONⅰ
日常を発掘するデザイン

割りから始まる中山間地域循環システム
1和RE箸(岡山県西粟倉村、岐阜県高山市他)
島外の視点を活かし、「島の日常」を観光資源に
2探られる島・家島(兵庫県姫路市)
労働と体験を交換する「少人数ずつ受け入れる旅」
3半泊景観保全プロジェクト(長崎県五島市)
奥にしまわれたモノに光を与える雑貨店
4おっこう屋(高知県香南市)
ご当地素材・技術でエネルギーの地産地消
5ご当地クリーンエネルギー(東京都、鳥取県鳥取市、證賀県、愛媛県他)
身近なムダを資源に変える
6リサイクルプロダクト(青森県、神奈川県、石川県、東京都)

SECTIONⅱ
想像力を耕すデザイン
放課後を突破口に、市民が教育へ参画
7放課後NPO(東京都港区)
住民、デザイナー、学生の協働による「家具づくりスクール」
8穂積製材所プロジェクト(三重県伊賀市)
市民が発電を体感できる発電床埋め込みゲート
9ふじさわ発電ゲート(神奈川県藤沢市)
島留学制度とニコース制で地域を担う人材育成
10島前高校魅力化(島根県海士町)
うつ病への偏見や勘違いをなくし自殺を防止する
11うつ防止紙芝居(岩手県久慈地域)
体験を通じた学びの場
12子どもワークショップ(神奈川県、香川県、大阪府)

SECTIONⅲ
キモチをカタチにするデザイン
ボランティアと被災者をつなぐスキル共有ツール
13できますゼッケン(兵庫県神戸市)
お医者さんへの感謝の気持ちを届ける
14ありがとうカード(兵庫県、秋田県他)
人と人との絆をつなぐ、まちのうわさ
15八戸のうわさ(青森県八戸市)
「最高の米」と「おもしろ旅」で都市と農村をむすぶ
16こめたび(秋田県)
町から子どもへの世界に一つだけの贈り物
17君の椅子(北海道東川町他)
愛妻の盟地、そして愛菜の聖地へ
18日本愛妻家協会(群馬県嬬恋村)

SECTIONⅳ
格差を埋めるデザイン
妊娠・出産・育児のセーフティーネット
19親子健康手帳(島根県海士町、栃木県茂木町他)
路上生活者の自立支援ガイドブック
20路上脱出ガイド(大阪府大阪市)
女子大生の能力を引き出し、就職機会を育む
21ハナラボ(東京都)
高齢者や身体の不自由な人のためのミニカー
22タケオカ・カー(富山県富山市)
患者を通し、介護ボランティアを育てる
23千里リハビリテーション病院(大阪府箕面市)
特別な才能を活かすモノづくり
24障害者発プロダクト(福岡県、鹿児島県、愛媛県、栃木県)

SECTIONⅴ
みんなを育むデザイン
町民と行政職員が一体で作った実効性ある計画
25海士町総合振興計画(島根県海士町)
まちにとってなくてはならないデパート
26マルヤガーデンズ(鹿児島県鹿児島市)
自立した多世代がともに暮らすコレクティブハウス
27スガモフラット(東京都豊島区)
2万7000人の城主が名城復興
28一口城主制度(熊本県熊本市)
地域の人々が日替わりで料理を作り、助け合う
29ワンデイシェフ(三重県四日市市他)
市民の創造力で、社会課題に挑む
30 issue + design(兵庫県神戸市他)

PARTIII
地域を変えるデザイン
1地域を変えるデザイン思考 寛裕介
2地域を変えるデザインコミュニティ 山崎亮
3地域を変えるデザイン行政 松添高次・本田瓦

参考資料

issue+design project (著),筧 裕介 (監修)
出版社 : 英治出版 (2011/11/28)、出典:出版社HP