社会を変える投資 ESG入門

【最新 ESGについて理解するためのおすすめ本 – ESG経営から投資まで】も確認する

ESG経営の知っておくべき知識を得られる

昨今、投資家の間で注目されているESG経営とはどういうことか分かりやすく解説している本です。ESGとはどういうものか、なぜ流行っているのかという切り口から始まり、ESGに取り組む事が企業の長期的な安定と利益につながる事を簡潔に説明してくれています。

アムンディ・ジャパン (編集)
出版社 : 日本経済新聞出版 (2018/9/20)、出典:出版社HP

 

はじめに

この本を手に取られた方は、最近、よく耳にする「ESG」や「責任投資」という言葉が気になっている方だと思います。
個人で投資をされている方でしょうか。はたまた、株主からの「エンゲージメント」を求められている上場会社にいらっしゃる方でしょうか。もしかすると、私たちと同じような運用の仕事をされている方、あるいはこれから資産運用の世界に入ろうとされている方なのかもしれません。
いずれにしても本書に興味を持っていただけたことに感謝いたします。
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取った略語です。なぜ今ESGなのでしょうか。
それは、経済や社会が成熟し3世紀までに経験してきたような市場の拡大が望めない一方で、これまでの人類の経済活動が気候変動をもたらし、また、成長の結果生まれた格差が社会の歪みを引き起こしたりする中にあって、「いかに成長を引き上げるか」から「いかに成長を持続できるか」という点に人々の意識が変化しているためです。
では、そのESGが投資になぜ関係するのでしょうか。それは、モノやサービスを生み出す経済活動はファイナンスを伴うからです。この表裏一体の関係を前提にすると、投資を行う側の意識と行動には、「成長」に向けた企業の営みの在り方に影響を与える力があるわけです。そして、より広いステーク・ホルダーのことを考えてこの力を生かすことが、投資に求められている今日の役割なのです。
翻って、日本の運用業界で「ESG」が使われ始めたのはほんの2、3年前のことです。それが、最近では、ESGだけでなく、SDGs、PRIなど関連する言葉がいろいろな場面で用いられています。今後は、こうした「横文字」の理念を理解するだけにとどまらず、いかに投資の実務に落とし込んでいくか考え行動することが期待されています。
そこには唯一の正解はありえません。投資目標は実にさまざまであり、その手段には、株式もあれば債券もあり、また、広く市場の動きに連動させることを目指す戦略もあれば、積極的に投資したい対象を選ぶ戦略もあるからです。
いずれにせよ最後は、とったリスクとあげたリターンで評価されるのが投資です。各々のプロセスにどのようにESGを盛り込んでいくかは、まさに工夫のしどころです。
さて、この本は、運用会社であるアムンディ・ジャパンの有志でまとめた入門書です。すでにESGについては学術書や解説書がいくつか発刊されていますが、投資の実務者が書いたという点では、おそらく初めてのケースかもしれません。それができたのは、アムンディが責任投資を価値基盤に置く会社で、ESGを投資に反映することに関してパリの本社を中心に多くの経験とリソースがあるからです。
私たちは、本書をわかりやすい「読み物」にするために、型にとらわれずに今の運用の世界で起こりつつある変化について生の声を載せていくことにしました。その結果、まとまったのが次の構成です。
第1章では、ESGや責任投資に対する世の中の意識が高まってきている背景について、構造的な要因による世界の経済成長の鈍化や地球規模の問題である気候変動などから考えます。
第2章では、ESGの歴史を振り返るとともに、E(環境)、S(社会)、G(企業統治)のそれぞれの分野におけるテーマと企業のマネジメントに対して意味するところをまとめます。
本書のコアである第3章では、企業の営みに必要なのは、「お金」だけでなく、それ以外にもさまざまな資本が要ることを国際統合報告評議会(IIRC)がまとめた6つの概念で説明します。そして、企業の「付加価値創造プロセス」についていくつか例示したのち、ESGに関する企業の発信手段である「統合報告書」を紹介します。さらに、こうした企業のESGにかかわる取り組みが格付けされていることに触れ、日本株についてESGの情報と株式リターンの関係を考察した結果を示します。
第4章では、運用実務に話を展開します。ESGへの運用からのアプローチの仕方を4つの動機と3つの形態を使って整理します。そして、日本におけるESG投資について、ガバナンス改革と日本版スチュワードシップ・コードに触れながら、「インベストメント・チェーン」において大切な役割を果たすエンゲージメントについて、私たちの考えを述べます。
結びに代えて第5章では、アセット・マネジャーの側でも「統合思考」を実践し、アセット・オーナーとともに投資先企業と同じ船に乗り運用成果の積み上げを目指す「スロー・インベストメント」の考えを紹介しながら、日本のインベストメント・チェーンで取り組むべき課題を述べます。
限られた紙面でESGという大きなテーマについてすべてを満遍なくカバーするものではありませんが、本書が、「投資が世の中で果たしうる役割」という大きなテーマに関して考えるきっかけを読者の皆様に与えることができれば大変うれしく思います。
2018年9月
執筆者一同

アムンディ・ジャパン (編集)
出版社 : 日本経済新聞出版 (2018/9/20)、出典:出版社HP

 

社会を変える投資ESG入門 目次

はじめに
第1章 ESGで何が変わるのか
①企業の活動と存在意義――存在意義がわかって変わる企業の活動
さまざまなステーク・ホルダーとの関係の中での位置づけ
②今なぜ持続的成長か――ESGを考えなければ持続的成長はできない
資本主義の限界
グローバルな要請SDGs(持続可能な開発目標)とは
「持続的成長」のために会社にはやれること、やるべきことがたくさん
③「利益最大化」から「先義後利」ー「義」とは取り組むべき社会的課題

第2章 ESGとは何か
①それぞれ何を指すものか――異なる3つの言葉をひとつに
「国連責任投資原則」の6原則
環境の課題と具体例
環境課題の例
社会の課題と具体例
社会課題の例
ガバナンスの課題と具体例
ガバナンス課題の例
アムンディのESG基準
②ESGの歴史SRIからESG投資へ
根幹にあるのは社会的責任投資(SRI)
貴任投資の拡大
③今求められているものは何か―大局的な視点で課題を把握する
世界の今と日本の課題
企業に求められているもの
投資家に求められているもの
④経営戦略の一貫として価値創造の源泉としても注目
「守り」のESGから「攻め」のESG
ビジネスモデルにESGを取り込む

第3章 これからの「良い会社」
①付加価値創造メカニズムESGの目標値を持ち始めた「良い会社」
IIRCが定義する「6つの資本」
財務資本/製造資本/知的資本/人的資本/社会・関係資本/自然資本
価値創造プロセス
時間と空間を超える会社活動の影響
②経営トップのコミットメントの必要性ESGにはトップの意識と実行力が大事
会社のストーリー
まずはビジョン
フェイスブックの資本の変換、増減の流れ/シオノギの資本の変換、増減の流れ
6つの資本におけるESG的視点
個人情報対策を迫られるフェイスブック
時間軸を超えてなされる経営判断
③資本市場への発信「統合報告書」ESGへの目標を表明する場
統合報告書が生まれた背景
日本での統合報告書発行の動き
統合報告書は何を訴えているのか
具体的なフレームワーク
オムロンの先進事例
④会社がESGで格付けされる?――取り組みや達成度を評価
⑤投資への影響――現状の分析と今後の展望は
価格形成に関するわれわれの仮説
分母分子
これまでの実証研究
ESGスコア/東京理科大学・山下隆教授の分析/アムンディ・ジャパンの分析/実証はこれから

第4章 投資で社会を良くする
①ポートフォリオでいかに表現するか――責任投資への取り組み方はさまざま
4つの動機(貴務、リスク、価値観、リターン)と3つの形態
ESG情報の反映/エクスクルージョン/インパクト
②日本でのESG投資の在り方―投資家と会社の間に築かれる「建設的な関係」
日本にとっての意義―国を守る!
脆弱なインベストメント・チェーンとガバナンス改革
期待されるガバナンス改革
「同じ船に乗る」ことがエンゲージメント実践の大前提
まずは相互理解から
重要なESG項目は時代とともに変化する

第5章 ESGの未来
スロー・インベストメントへの転換
これから必要な変革とは
参加者の姿勢が成否を決める

アムンディ・ジャパン (編集)
出版社 : 日本経済新聞出版 (2018/9/20)、出典:出版社HP

 

第1章
ESGで何が変わるのか