エコハウス超入門:84の法則ですぐ分かる

【最新 エコハウスについて学ぶためのおすすめ本 – 基本知識から建築事例まで】も確認する

難解な内容を噛み砕いて記した入門書

エコハウスとはエコロジーハウスの略称で、住宅が建てられる地域の気候や風土、敷地の条件、住む人の暮らし方に合わせて、自然エネルギーを最大限に活用した生活を実現するものです。本書は、著者の長年の研究と実績に基づく計算された確かな家づくりの基本か記された、エコハウスについての入門書です。

松尾和也 (著)
出版社 : 新建新聞社 (2020/8/6)、出典:出版社HP

 

CONTENTS 目次

第1章 どんな住まいや室内環境を目指すべきか
METHOD01「頑丈でシックハウスにならない普通の家」がベースになる
METHOD02 冬に暖かく、夏に涼しい家をつくるには計算が欠かせない
METHOD03「普通の家」の温熱環境は劣悪で光熱費が高すぎる
METHOD04 床暖房のコストを窓と無垢フローリングに回す
METHOD05 家を小さくするのも省エネ手法の1つ
METHOD06 冬は21℃・45~50%、夏は27℃・60%を目標にする
METHOD07 絶対湿度と相対湿度の相関で快適性を把握する
METHOD08 周壁平均温が低いと健康的な室内環境にできない
METHOD09 室温22℃、周壁平均温21℃が現実的な目標値
METHOD10 周壁平均温を知る方法は2通りある
METHOD11 日射遮蔽と高い断熱性能が備わった家は夏でも涼しい
METHOD12 梅雨~夏に通風を重視するとカビやダニと共存する家になる
METHOD13 室内の二酸化炭素を1000~1500ppm以下に保つ

第2章 断熱性能はどのように高めるとよいか
METHOD14 国が設定した暖房負荷はあてにならない
METHOD15 HEAT20のG2は欧米の最低基準
METHOD16 真の暖かさの指標はQ値ではなく暖房負荷
METHOD17 賃貸マンションの環境はQ値1.9の戸建て住宅程度
METHOD18 Q値とUA値の関係を知ると両者の概算方法が分かる
METHOD19 費用対効果の高い断熱性能の高め方
METHOD20 裸のグラスウールのほうが合理的に施工でき性能も出る
METHOD21 グラスウールは16K品を用い面材耐力壁にして施工性向上
METHOD22 現場発泡ウレタンでも防湿層が必要な場合がある
METHOD23 湿式外張り断熱はコスパの高い付加断熱工法
METHOD24 コスパなら屋根断熱よりも天井断熱が有利
METHOD25 屋根断熱は厚みを確保する工夫が必要
METHOD26 気密性能を高めるなら基礎断熱が圧倒的に有利
METHOD27 床断熱は熱橋を減らす工夫が必須
METHOD28 基礎断熱を採用するならシロアリ対策は必須
METHOD29 基礎内断熱に100倍発泡品は厳禁
METHOD30 基礎底盤下の断熱材は効果はあるがもとは取れない

第3章 窓に必要な性能をどのように満たすか
METHOD31 窓はU値を確認して性能の高いものを選択する
METHOD32 窓には真冬でも結露しない性能が必要
METHOD33 窓は樹脂サッシを選択するのが基本になる
METHOD34 窓は取り付け位置で性能が変わる
METHOD35 ペアからトリプルにガラスを変えるとどこまで変わるか
METHOD36 断熱ブラインドを付けるとU値が劇的に改善する
METHOD37 シャッターには断熱性能を増す効果もある
METHOD38 シェードがあると配置の自由度が増す

第4章 給湯や冷暖房の熱源をどのように選ぶか
METHOD39 電気、ガス、灯油はどう使い分けるか
METHOD40 一次エネルギー消費量で給湯器を比較する
METHOD41 都市ガスを使うメリットはあるのか
METHOD42 オール電化の電気代は上昇中。それでもコスパは高い
METHOD43 オール電化のコスパはどう変わっていくか
METHOD44 太陽光発電は最高にコスパのよい投資
METHOD45 太陽光発電を自家消費で活用する

第5章 換気量をどう確保して熱損失を抑えるか
METHOD46 そもそも換気量はどのくらい必要なのか
METHOD47「中気密住宅」は新鮮空気が入ってこない
METHOD48 熱交換換気の顕熱/潜熱型の違いをどう評価すればいいか
METHOD49 レンジフードからの熱損失はどのくらいなのか

第6章 エアコンはどのように選んで使いこなすか
METHOD50 必要暖房能力を算出すると光熱費が概算できる
METHOD51 ひと月ごとの暖房費の計算方法
METHOD52 暖房費は電気とガス、灯油のどの熱源が安いか
METHOD53 COP3を超えると暖房の熱源は電気が安価
METHOD54 冷暖房を1台でカバーするエアコンが空調の基本
METHOD55 エアコンは運転方法で効率が大きく変わる
METHOD56 各部屋に設置するエアコンは「最大能力×補正係数」で選ぶ
METHOD57 各部屋に設置するエアコンは冷房能力で機種が決まる
METHOD58 エアコンは6、10、14畳用から選択するとコスパが高い
METHOD59 冷房用エアコンは再熱除湿とカビ対策で選ぶ
METHOD60 夏の日射は冷房負荷に大きな影響を与える
METHOD61「日射遮蔽+全館冷房」でカタログ値の3割で冷房できる
METHOD62 風量を生かせるとエアコンの効率は高まる
METHOD63 全館空調の方式は11種類もある
METHOD64 全館空調の各方式のメリット・デメリット
METHOD65 ダクトエアコンを用いた全館空調の特徴
METHOD66 エアコン1台による全館冷暖房の特徴
METHOD67 エアコン2台による全館冷暖房の特徴
METHOD68 床下エアコンは建物全体に暖気を拡散させる
METHOD69 床下エアコンに用いるエアコンはセンサーの位置と横幅に注意
METHOD70 床下エアコンの設置と床下の構造のポイント
METHOD71 床下エアコンの床ガラリや運転方法のポイント
METHOD72 除湿よりも冷房運転のほうが省エネになる
METHOD73 気化式の大型加湿器はすべての要求を満たす

第7章 建物配置や形をどう整えると日射が増すか
METHOD74 方位別の日射の当たり方でガラスを使い分ける
METHOD75 夏には南面の窓と天井から大量の熱が侵入する
METHOD76 南面の窓から得られる日射量は夏より冬のほうが多い
METHOD77 南面の開口部を最大化しシェードで日射遮蔽
METHOD78 日射の多い・少ないは断熱性能より室温に影響する
METHOD79 日射を最大化するための建物計画のセオリー
METHOD80 建物形状や配置で日射取得が変わる
METHOD81 滞在時間が長い部屋の日射を重視して暖房負荷を減らす
METHOD82 敷地、隣家、車庫から1階配置のパターンを読み解く
METHOD83 等時間日影図を作成して日射取得を最大化する
METHOD84 隣家の影を考慮しつつ建物と車配置を考える

COLUMN
1住宅にも燃費表示が必要
2マンションはなぜ暖かいのか
3マンションは中住戸の影響を強く受ける
4 HEAT20G2レベルの温熱環境とは?
5シミュレーションを営業に生かす
6太陽光発電+電気自動車は最高のコスパ
7同時給排気型のレンジフードの優位性
8競合先に勝つシミュレーションの方法
9珪藻土だけでは十分な除湿は行えない
10冷暖房に関する住宅会社の技術水準

はじめに
おわりに

松尾和也 (著)
出版社 : 新建新聞社 (2020/8/6)、出典:出版社HP

 

はじめに

私が高断熱住宅に目覚めたきっかけは、高校1年生のときに設計者である父親が設計した住宅に暮らすようになったことです。その住宅はそれまで住んでいた県営住宅よりもはるかに暑く、寒かったのです。
見た目はとても美しいのに、とにかく夏は暑く、逆に冬は寒くてたまらない。高校生ながらに「これが本当の豊かさなのだろうか?」と疑問に感じました。そんなときにある新聞広告に目が止まりました。OMソーラーの一面広告でした。「これこそ理想の住宅に違いない」と直感しました。そして、大学でも熱環境の研究室を選択し、OMソーラーに関する研究を行って卒業論文としてまとめました。
大学卒業後、私は住宅メーカーに就職しました。入社直後に作文を発表する機会があり、「これからの住宅は高断熱化しなければならない」と訴えました。しかし、私の主張は会社にはまったく聞き入れてもらえませんでした。

日本の住宅の断熱性能が低いわけ

それから約20年が経ち、世の中は大きく変わりました。最近では「高断熱の話をしてほしい」といろいろな方面から依頼を受けます。住宅メーカーに就職したころとは隔世の感があります。とはいえ、まだまだ日本の住宅の断熱性能は欧米の先進国に比べると大幅に低く、技術的にも遅れをとっています。既存住宅はもちろん、新築住宅においてもそれは同じです。
その理由は大きく2つあります。「つはもともと日本では空間全体を暖める「暖房」の考え方がなく、人がいるところだけを暖める「採暖」の文化であったことです。その代表的な機器がこたつです。室温は低くても、暖かさを直接感じることで寒さをしのいでいたのです。
もう1つの理由は日本のビジネスマン、特に住宅業界には「住宅は寝るための場所」と考えている人が多かったことです。就寝時以外は住宅にいないのですから、暖かさや涼しさの必要性を感じるわけがありません。
この2つが重なった結果、日本全国に夏は暑くて冬は寒く、維持費が高くついて耐久性は低い住宅ばかりがあふれる結果となってしまいました。

高断熱化は生き残りの必須条件

昨今の世の中の風潮に乗って高断熱化を進めることは悪いことではありませんが、心の底からその必要性を感じた上で高断熱化に取り組むほうが、技術的な進化も早く、建て主に対しても何倍も説得力があります。
折しも新型コロナウイルスが流行した影響で、戦後はじめて、大多数の日本人が長時間を家で過ごすという体験をしました。これをきっかけに、暖かさや涼しさを含め、住宅の居心地のよさを追求する傾向が強まってくるでしょう。
その流れを加速するためには、本来は国が断熱性能の表示を義務付けるべきでした。実際2019年にそのような法改正が行われるはずでしたが、直前になって国の方針が変わり、この話は泡のごとく消えてしまいました。
こうなってしまった以上、実務者がみずからの意思で断熱性能を高めていくしかありません。そして、断熱性能の高い住宅をつくれる技術力の高い会社でなければ生き残れないという状況をつくっていく必要があると考えています。
そんな考えから、私はメディアや建材メーカーなどを通じ、業界に対して高断熱化の啓蒙活動を10年以上行ってきました。それでもいまだに高断熱化に取り組もうとしない住宅会社は少なくありません。これ以上、業界に対して啓蒙活動を行っても、こうした住宅会社は動かないと感じています。
では、これ以上の高断熱化を推進するにはどうすればよいか。建て主が高い性能を担保できる住宅会社しか選ばないという状況をつくるしかないと考えました。そうなれば、高い断熱性能を担保できない住宅会社は自然と淘汰されます。
そこで、一般の方に向けてYouTubeチャンネルで情報発信を始めることにしました。きちんとした性能を担保できる住宅会社を選択するための指針を分かりやすく説明することを心がけて配信しています。2020年7月3日現在で2万4000人がチャンネル登録をしてくれました。
私のYouTubeチャンネル以外にも、最近はインターネット上に正確な情報が増えてきており、建て主がそれらにアクセスしやすくなりました。
これまで住宅業界では「○○工法だから暖かい」といった信憑性に乏しい性能競争が続けられてきましたが、高い断熱性能を担保できない会社は生き残れない状況になってきています。
2020年は日本の住宅の高断熱化を進める上で大きな転換期だと思います。次の10年に向けて、これまでよりさらに早いスピードで高断熱化が進むことを期待しています。本書がその一助となれば幸いです。
松尾和也

松尾和也 (著)
出版社 : 新建新聞社 (2020/8/6)、出典:出版社HP