地球惑星システム科学入門

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今後の環境問題までわかる

地球システム科学の考え方を取り入れられた教科書として好評を博した『地球システム科学入門』の改訂版です。広い視点から地球システムについて学び、これからの地球環境問題を考える上で重要な基本的かつ専門的な知識が身につきます。

鹿園 直建 (著)
出版社 : 東京大学出版会 (2009/4/1)、出典:出版社HP

地球惑星システム科学入門

An Introduction to Earth and Planetary System Science
Naotatsu SHIKAZONO
University of Tokyo Press, 2009
ISBN 978-4-13-062714-6

はしがき

21世紀となりすでに10年が経過したが,この間にさまざまなグローバルな問題が顕在化した.特に温暖化問題をはじめとする地球環境問題,資源・エネルギー問題,アメリカに端を発する世界的な経済危機の問題が深刻である.そこで,これらの問題を解決し,安心・安全で持続的な社会を構築していくことが強く望まれている.それではこのような構築をしていくためにはどうしたらよいのだろうか。社会を変革することにより、安心・安全で持続的な社会を作り上げていくことは、はたして可能であろうか。人間社会は,自然環境に影響を与え,そのことで変化をした自然環境が人間社会に多大な影響を与えているのである。したがって、この自然環境という人間社会にとっての外的条件の科学的理解なしには、安心・安全で安定的な人間社会は成立し得ないと考える。そこで第一に大事なことは、自然環境の物質科学的理解を深めるとともに,人間と自然環境の相互作用の科学的理解が人間社会のあり方を考えるための基本であると考えたい。

それではこの人間と自然環境の相互作用とはどのようなものなのだろうか。この答えを出すための基礎的な学問が「地球システム科学」である.この地球システム科学では,地球システムを大気,水,岩石,生物,人間といったサブシステムから構成されているとして、それらの間での相互作用について明らかにする.これらの相互作用により,物質・エネルギーは循環し,各サブシステム,トータルな地球システムは時間的に非可逆的な変化をしている.地球システム科学によって,この変化を明らかにすることがはじめて可能となる。
この地球システムの概要については,前書『地球システム科学入門」(1992)で述べた。1992年以降,地球システム科学は急速に進歩した。たとえば、太陽系惑星やさらには系外惑星等に関する知識が飛躍的に増大し、太陽系外惑星等宇宙における地球の位置づけ(起源,進化等)が明らかにラフィーなどにより,なりつつある.また,高温高圧実験,地震波トモグラフィーカ]球深部の構成物質,温度分布,プルームの存在なども明らかる.さらに,コンピュータシミュレーション,同位体分析より,過去の気候変動やCO2などのグローバル物質循環に人の存在なども明らかになってきている。

体分析,化学分析などに丘循環についての研究の「地球惑星システム科学」へと大きく変貌しつつある.そこで,本書では,前書に比べて、退からこの地球或星システム科学の基礎を与えるために,『地球惑星システム科学入門』としてまとめることを試みた.本書では前書では述べていた固体地球を扱うプレートテクトニクスとプルームテクトニクスについて、簡単ではあるが述べられている(3章).それは,これらのテクトニクスの働きにより、人間と生物の生存している地球表層環境が多大な影響を受けるである。本書ではこのほかに,1992年以降飛躍的に知識が増大した生と地球との関係(生命の起源,進化,絶滅,地下生物圏)についても取り上げられている(6章).人間と地球との関係については,最後の章(7章)で述べられている。この章では、これまでの地球観,自然観についてまとめ本書で述べられている地球惑星システム科学による自然観とこれまでの自然観との相違点について述べ、人間社会のあり方に関する著者なりの考え方(地球惑星共存型社会)が提示されている。

本書を,専門家のみならず,一般の方々が、地球や惑星さらには自然と人間との関係についてより理解を深めるための一助としていただければ幸いである。
本書は、慶應義塾大学理工学部・文系学部、学習院大学理学部,東京大学教養学部,筑波大学地球科学系,千葉大学理学部静岡大学理学部,秋田大
学工学資源学部,山形大学理学部,日本大学文理学部,東京学芸大学教]部,東北大学理学部において行ってきた教養課程総合教育課程,専門での授業内容を基礎にして書き下ろした。授業を通して多くの学生部の質問、意見は大変有益であった。東京大学出版会の小松美加さんに変丁寧な原稿校閲をしていただいた、相澤素子さん、片山典子さん,片山典子さん,菅京子さんには文章入力の手伝いをしていただいた。以上の方々に深く感謝いたします。

2009年初春
鹿園直建

鹿園 直建 (著)
出版社 : 東京大学出版会 (2009/4/1)、出典:出版社HP

目次

はしがき
1 序論
はじめに 1
1-1 地球惑星システムとは 2
1-1-1 地球惑星システムの階層性 2
1-1-2 サブシステムの相互作用 5
1-1-3 システムとは5
1-2 地球環境とは
1-3 地球惑星を対象とする学問の進展と地球惑星システム科学 9
1-3-1 地質学・地球化学・地球物理学9
1-3-2 新しい地球・惑星・人間観一地球惑星システム科学の成立 12

2 地球システムの構成要素
2-1 流体地球 17
2-1-1 大気圏17
2-1-2 水圏 20
2-2 固体地球(地圏) 27
2-2-1 地球内部構造の推定法27
2-2-2 地殻の組成30
2-2-3 マントルの組成31
2-2-4 コアの組成33
2-2-5 リソスフェアとアセノスフェア 34
2-2-6 地球の平均組成35
2-2-7 宇宙存在度 37
2-2-8 隕石 39
2-2-9 地球固体構成物質 41
2-3 生物圏 53

3 地球における物質循環
3-1 流体の循環と相互作用58
3-1-1 多圏間相互作用60
3-1-2 水の循環 61
3-1-3 炭素の循環 63
3-1-4 グローバル物質循環とボックスモデル65
3-1-5 海水組成の支配要因74
3-2 固体の循環と相互作用76
3-2-1 プレートテクトニクス76
3-2-2 プルームテクトニクス 94

4 自然-人間相互作用
4-1 自然-人間相互作用 98
4-2 自然災害 99
4-2-1 自然災害の分類100
4-2-2 地震災害101
4-2-3 火山災害103
4-3 資源 104
4-3-1資源問題105
4-3-2 資源の開発と環境問題108
4-3-3 鉱物資源 110
4-3-4 水資源 116
4-3-5 エネルギー資源 117
4-4 地球環境問題 122
4-4-1 地球温暖化問題 124
4-4-2 オゾン層破壊 129
4-4-3 酸性雨131
4-4-4 土壌問題134
4-4-5 水質汚染 136
4-4-6 廃棄物問題136
4-4-7 地球資源環境問題対策 138

5 宇宙・太陽系・惑星
5-1 宇宙の起源と進化 142
5-1-1 ビッグバン宇宙142
5-1-2 恒星の進化 144
5-2 原始太陽系の生成147
5-3 太陽系の惑星 152
5-3-1 比較惑星学 152
5-3-2 月 153
5-3-3 地球型惑星 154
5-3-4 木星型惑星とその衛星 159
5-3-5 小惑星, カイパーベルト天体,彗星 162
5-3-6 地球,月,惑星の相違点 163
5-4 系外惑星

6 地球システムの進化
6-1 地球年代学 167
6-1-1 相対年代法167
6-1-2 放射(絶対)年代法170
6-2 地球の起源と進化 172
6-2-1 原始地球の生成:46-30億年前 172
6-2-2 30-20億年前182
6-2-3 20億年前~現在186
6-2-4 生命の起源190
6-2-5 地球外生命194
6-2-6 地下生物圏195
6-2-7 生物の進化196
6-2-8 生物大量絶滅200
6-2-9 第三紀,第四紀の気候変動 202
6-2-10 地球表層環境変動に対する内的作用,外的作用の影響 205
6-2-11 地球未来環境の予測205

7 現代の自然・人間観
7-1 人間中心主義的考え 209
7-2 自然中心主義的考え 210
7-3 新しい自然・人間観213
7-3-1 地球惑星環境共存型社会213
7-3-2 地球惑星システム科学214.

参考文献217
あとがき225
索引 226

鹿園 直建 (著)
出版社 : 東京大学出版会 (2009/4/1)、出典:出版社HP