基礎地球科学(第3版)

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地球科学の基礎が身につく

地球科学の基礎が平易かつ包括的に解説されている、地球科学の教科書の最新改訂版です。地球の構造から地球環境の変遷まで幅広く内容を扱っています。地球科学の基本をしっかりと理解し、応用に活用するために必携の1冊です。

西村 祐二郎 (著), 鈴木 盛久 (著), 今岡 照喜 (著), 高木 秀雄 (著), 金折 裕司 (著), 磯崎 行雄 (著)
出版社 : 朝倉書店; 第3版 (2019/8/7)、出典:出版社HP

基礎地球科学(第3版)

執筆者

西村祐二郎
山口大学名誉教授
給木盛久
広島大学名誉教授
山口大学名誉教授
早稻田大学教育・総合科学学院教授
司前山口大学大学院理工学研究科教授
東京大学大学院総合文化研究科教授
(執筆順)

まえがき

地球科学(earth science, geoscience)とは,地球の表層部から地球の内部真下を含めた地球全体を研究の対象にする総合的な科学であり,自然科学の1つの分野である.高等学校の「地学」の一部にあたる.具体的には,現在の地球の構造や運動を解明するだけでなく,地球の生成から現在までの歴史の解明をも目的にしている.20世紀後半になって,地球上でおこるいろいろな事象がお互いに密接に関連しあっていることが明らかになり,地質学,古生物学,火山学,地球物理学など18世紀後半以降に生まれてきた学問分野の多くを統合した名称として「地球科学」が使われるようになってきた。
本書は地球科学を初めて学習する教養教育あるいは共通教育の2単位用の教科書として、また将来,地球環境問題に携わる各学部生,理科教育に携わる教育系学部生,そして土木・建築業などに携わる工学系学部生の入門書にもなりうるよう企画された。内容的には,地球科学の基礎を平易に解説するとともに,地球環境問題を理解しその解決に向かって模索できるよう配慮した.また,高校教育ではややもすると軽視されている「地学」を広く普及させるため,「地学」を履修していない学生にも理解できるよう工夫した.
地球は宇宙的視点からみると,極めて小さな天体にすぎない.しかし,私たち人間だけでなくあらゆる生命にとっては,とても大きな物体であり,また偶然とは思えないほどの恵まれた環境にあり,絶好なすみかを提供してくれている.地球上でおこっている諸現象やその生い立ちを探ってゆくと,地球がまさに「生きもの」であり「奇跡の星」であるようにも感じられてくる。地球は46億年前に太陽系の「第三惑星」として誕生し、長い時間をかけて「水惑星」として成長・発展してきた。その過程では、さまざまな要素や事象が微妙に関連しつつ,より安定な状態へと次第に分化してきたことも理解できる、地球の過去と現状を学ぶことは、未来の予測を可能にするだけでなく、いろいろな示唆を与えてくれるであろう。

20世紀は人類の人口が飛躍的に増加し,その生活様式が大きく変化しただけ学もその例外ではない。
それとともに科学・技術も急速に進展した.地球科学もそのい。人類人口の急増,生活様式の変化,そして科学・技術の発展は,地球白誕生以来46億年という長い年月をかけて営々と築いてきた地球環境にいるな影響を与え,新たな地球環境問題をひきおこしている.このことが“今世21世紀はまさに地球環境の時代”といわれる大きな理由の1つである.
この「基礎地球科学」の受講あるいは利用によって,新しい自然観への確立の道が開かれ,今世紀最大の課題である地球環境問題に積極的に取り組んでいたがける契機になることを、私たち執筆者は強く期待している.本書の初版は2002年10月に刊行された。それ以来,地球科学の各分野は目覚ましく進展し,またいくつかの定義や基準も改定されてきた。たとえば,日本の活火山の定義が2003年に,太陽系の惑星の定義が2006年に,新生代の区分が2009年になど,それぞれ変更された。一方2004年度以降には、国公立大学は独立行政法人化をうけ制度や運営面などが大きく変化するとともに,教養教育あるいは共通教育の重要性があらためて問われている。

本書は初版を2002年10月に刊行し,第2版を2010年11月に出版した。その後も多くの方々に利用され8年以上が経過したので,さらに改訂を重ね第3版を発刊することにした.改訂に際して,最新の知見とデータを取り入れ,本文を見直し図表を更新するだけでなく,新たに図の一部を巻頭部にカラー口絵として移し刷新を図るとともに,表紙の世界地図をフルカラー化して講義などに活用していただけるよう、地図の配置も工夫した。また,より使いやすい教科書として,本書をスリム化することにも努めた。第3版が旧版に劣らず,地球科学の理解と活用に役立てば、この上ない慶びである。
終わりに、本書を使用される先生方および読者の忌憚のないご意見やご叱正をいただければ幸いである。これまでに貴重なご意見をたまわった方々,および編集・改訂の労をとっていただいた朝倉書店編集部にお礼を申しあげる.

2019年7月
編著者,西村祐二

西村 祐二郎 (著), 鈴木 盛久 (著), 今岡 照喜 (著), 高木 秀雄 (著), 金折 裕司 (著), 磯崎 行雄 (著)
出版社 : 朝倉書店; 第3版 (2019/8/7)、出典:出版社HP

目次

1. 地球の概観
1.1 天体としての地球
a. 宇宙における地球
b. 太陽系の形成とその性質
c. かけがえのない地球——水惑星
1.2 地球の形と大きさ
a. 地球の形
b. 地球の大きさ
1.3 地球にかかる力
a. 重 力
b. 地磁気
1.4 地球のエネルギー
a 太陽放射のエネルギー
b. 地球内部のエネルギー
c. 地球システム

2. 地球の構造
2.1 地球表面の姿
a 大陸と海洋
b. 大陸地域の地形
c. 海洋地域の特徴
2.2 地球内部の姿
a 地球内部を探る
b. 地球内部の構造
c. 地球内部の諸量の分布
2.3 地殻の構成と構造
a. 大陸地殻の特徴と構造
b. 海洋地殻の特徴と構造
2.4 マントルと核の構成と構造
a. マントル
b. 核
2.5 地球表面をおおうプレート
a プレートとは
b. 海洋プレートと大陸プレート
c. プレートの境界と大地形
2.6 地球内部の働き
a. 地球内部トモグラフィー
b. プルームとは
c. 地球内部の大循環
2.7 地球表層の凹凸と地下でのバランス
a. 大陸地域と海洋地域の相違点
b. アイソスタシー

3. 地殻の物質
3.1 地殻の化学組成
a 地殻の構成単元
b. 地殻の元素組成
3.2 鉱物とその形成条件
a. 鉱物とは
b. 鉱物の性質
c. 鉱物の分類
d. 鉱物の形成条件
3.3 岩石の分類とそのサイクル
a. 岩石の性質と分類
b. 岩石のサイクル
3.4 火成岩と火成作用
a 火成岩の分類と産状
b. 玄武岩質マグマの発生と分化
c. 花崗岩の起源
3.5 堆積岩と堆積作用
a 堆積物と続成作用
b. 堆積岩の分類と命名法
c. 堆積岩の二大原理
d. 付加体の形成
3.6 変成岩と変成作用
a. 変成作用の2つの要素
b. 変成岩の分類と命名法
c. 変成作用の種類と特徴
d. 変成岩の温度と圧力による分類

4. 地殻の変動と進化
4.1 大陸移動説からプレートテクトニクスへ
a. 大陸移動説とマントル対流説
b. 古地磁気学による大陸移動説の復活
c. 海底研究の成果
4.2 プレートテクトニクス
a プレートテクトニクス理論の確立
b. プレートとプレート境界
c. プレートを動かす原動力
d プルームテクトニクス
4-3 火山活動
a 火山の分布
b. 火山の形と構造
c. 火山噴火のメカニズム
d. 火山噴火の様式
e. 火山の成因
4.4 地震現象
a 地震発生のメカニズム
b. 震央の決定
c. 震度とマグニチュード
d. 地震の分布
4.5 造山運動
a 沈み込み型造山運動(帯)
b. 大陸衝突型造山運動(帯)
c. 古い時代におこった造山運動
4.6 地質構造とその記載
a. 地殻変動と変形様式
b. 曲
c. 断層とせん断帯
4.7 地球表層の変化
a. 風化作用
b. 侵食作用
c. 運搬と堆積
d. 整合と不整合
e. 海水準の変動

5. 地球の歴史
5.1 地質年代と地質年代尺度
a. 層序区分と対比
b. 地質年代の区分体系:相対年代
c. 絶対年代:放射年代
d. 地質年代尺度
5.2 地球46億年史の概観:先カンブリア時代
a 冥王代
b. 太古代
c. 原生代
5.3 地球環境と現代型生物の進化:顕生代
a. 生物の多様化・陸上への進出:古生代
b. 現代型環境・生物の進化:中生代
c. 新しい気候と哺乳類時代の成立:新生代
5.4 人類紀:第四紀
a. 氷河時代
b. 第四紀の動植物
c 人類の進化
5.5 日本列島の地質と構造
a 日本列島の基本構成
b. 日本列島の帯状構造
c. 日本列島の新しい構造
5.6 日本列島の形成と進化
a誕生(受動的大陸縁)の時代
b. 成長(活動的大陸縁)の時代
c. 島弧の時代
d. 日本列島の未来

6. 地球と人類の共生
6.1 地球環境の変遷
a. 原始大気と原始海洋
b. 酸素の発生とオゾン層の形成
c. 寒冷-温暖の大サイクル
d. 氷期-間氷期
e. 海洋酸素同位体ステージ
6.2 天然資源
a 岩石・鉱物資源
b. 金属資源
c. 化石エネルギー資源
d. 地熱資源
e. 新エネルギー
6.3 火山との共生
a 火山災害の種類と規模
b. 火山噴火の予知と防災
c. 火山の恩恵
6.4 地震災害
a. 被害地震の発生場所
b. 地震被害のタイプ
c. 地震の予知
d. 地震防災
6.5 その他の災害
a. 土砂災害
b. 人為災害
6.6 最近の地球環境問題
a. オゾンホール
b. 酸性雨
c. 地球の温暖化
d. 放射性廃棄物
6.7 開発と自然との調和

文索
索引

西村 祐二郎 (著), 鈴木 盛久 (著), 今岡 照喜 (著), 高木 秀雄 (著), 金折 裕司 (著), 磯崎 行雄 (著)
出版社 : 朝倉書店; 第3版 (2019/8/7)、出典:出版社HP