デザイン科学概論:多空間デザインモデルの理論と実践

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デザイン科学の教科書

デザイン科学において代表的理論と言われる「多空間デザインモデル」をもとに、デザインの応用事例を紹介しているので実務に活かせる知識が身につきます。デザインに携わる方や空間デザインの設計に興味のある学生におすすめの1冊です。

加藤 健郎 (著, 編集), 佐藤 弘喜 (著, 編集), 佐藤 浩一郎 (著, 編集), 松岡 由幸 (監修)
出版社 : 慶應義塾大学出版会 (2018/3/20)、出典:出版社HP

デザイン科学概論:多空間デザインモデルの理論と実践

はじめに

本書の狙い

本書は,デザイン科学における初めての教科書的出版物です。20世紀までの学問体系が縦割りであったことへの批判として,現在,横断型科学の必要性が強く問われています。デザイン(設計)という行為そのものを研究対象とするデザイン科学は,その代表的な学問領域です。
しかしながら,デザイン科学の基盤構築には幾多の課題がありました。たとえば,デザイン行為は,人々や社会のさまざまな潜在的・顕在的ニーズを物質的なモノや情報システムなどのコトに写像する行為です。そのため,デザイン科学は,人文科学や社会科学の問題を自然科学の問題に変換するという,まさに文理にまたがる学問領域になります。このことは,今でもデザイン科学を構築するうえでの難解さの主要因になっています。さらに,人はなぜ未知で多様なデザイン解(デザインされたモノやコト)を導けるのか。この創造の根源的なメカニズムについても,これまで,デザイン科学における大問題でありました。
筆者らを含むデザイン科学領域の研究者たちは,これらの問題に対して,さまざまな領域の知の統合を図ることで、少しずつデザイン行為を紐解くことに成功し、デザイン科学の基盤構築を進めてきたのです。それらの成果は,すでに幾多の人工物や人工システムの開発に応用され,その効果を示しています。また,得られた知見は,国内外の多くの論文としても報告され,世界的にも注目されはじめています。しかし、いまだ入門書的な概要を記した書籍はなく,このような背景を受けて本書は刊行されました。
本書では、デザイン科学の枠組みとその代表的な理論である「多空間デザインモデル」に注目しています。また,その理論をデザイン(設計)の実践に応用した事例を多く紹介することにより、実務に応用しやすいようにわかりやすく解説しました。デザイナーや設計者などの実務に携わる方々はもとより,デザイン・設計領域の研究者,教育者,さらには学生など,多くの方々に読んでいただければ幸いです。

本書の構成

本書は,以下の3部で構成されます。
<第1部デザイン科学と多空間デザインモデル> 第1部では、デザイン科学と多空間デザインモデルを概説します。デザイン科学では,分析・発想・評価による「デザイン思考モデル」,新たなアイデアを生み出す「創発デザイン」と既存のアイデアを極める「最適デザイン」を解説しています。また,それらの知を統合して生まれた多空間デザインモデルでは,その理論を実務に応用するための「Mメソッド」も含め,その意義や使用法について述べています。 <第2部多空間デザインモデルの応用領域> 第2部では、多空間デザインモデルの応用事例を紹介します。応用事例の領域は、プロダクトデザイン,システムデザイン,ソフトウェアデザインなどさまざまです。さらには,研究,教育への応用事例も紹介します。第2部では,これらを通じて、多空間デザインモデルの理論と実践の関係性について理解を進めていきます。 <第3部Mメソッドを用いたデザイン事例集> 第3部では、多空間デザインモデルの応用手法であるMメソッドについて,その適用事例集を紹介します。前半には、発想をおもな狙いとした「M-BAR」,後半には、分析・評価をおもな狙いとした「M-QFD」について,オフィス機器,福祉機器,生産システムなどの多彩な事例を紹介します。これらの応用事例を通じて,Mメソッドのつかい方や多空間デザインモデルの有効性を実感していただければ幸いです。 デザイン塾(謝辞) 本書に記載した内容には、「デザイン塾」(主宰:松岡由幸,ホームページ:http://www.designjuku.jp)におけるさまざまな議論を通じて得られた多くの知見が含まれています。デザイン塾は、企業における現場のデザイナーや設計者,デザイン・設計領域の研究者・教育者など、さまざまなデザイン・設計にかかわる関係者が集う場です。本書の刊行にあたり、関係者,参加者の皆様に、ここに改めて感謝の意を表します。 2017年11月 監修 松岡由幸

加藤 健郎 (著, 編集), 佐藤 弘喜 (著, 編集), 佐藤 浩一郎 (著, 編集), 松岡 由幸 (監修)
出版社 : 慶應義塾大学出版会 (2018/3/20)、出典:出版社HP

Contents

はじめに [松岡由幸] 第1部 デザイン科学と多空間デザインモデル
第1章 デザイン科学の文脈
[加藤健郎] 第2章 デザイン思考のモデル
[加藤健郎] 第3章 創発デザインと最適デザイン
[佐藤浩一郎] 第4章 多空間デザインモデル
[佐藤浩一郎] 第5章 多空間デザインモデルを応用するMメソッド
[加藤健郎] 5.1 節 多空間デザインモデルに基づく発想法(M-BAR)
[高野修治] 5.2節 多空間デザインモデルに基づく分析・評価法(M-QFD)
[堀内茂浩・加藤健郎]

第2部 多空間デザインモデルの応用領域
第1章 プロダクトデザイン
[佐藤弘喜] 第2章 システムのデザイン
[西村秀和] 第3章 ソフトウェアのデザイン
[大槻繁] 第4章 機械システムのデザイン
[森田寿郎] 第5章 サイネージのデザイン
[小木哲朗] 第6章 座り心地のデザイン
[平尾章成] 第7章 宇宙科学探査ミッションのデザイン
[石上玄也] 第8章 デザインの研究
[佐藤浩一郎] 第9章デザインの教育
[増田耕・佐々木良隆・林章弘・松岡由幸]

第3部 Mメソッドを用いたデザイン事例集
【M-BAR の事例】
第1章 オフィス機器のデザイン
[浅沼尚・松岡慧] 第2章 アイウェアのデザイン
[浅沼尚・松岡慧] 第3章 プロダクトデザイン教育
[伊豆裕一] 【IM-QFD の事例】
第4章 福祉機器のデザイン
[松野史幸・加藤健郎・松岡由幸] 第5章 生産システムのデザイン
[三輪俊晴] 第6章 自動車部品のモジュラーデザイン
[星野洋二・加藤健郎]

索引
著者紹介

加藤 健郎 (著, 編集), 佐藤 弘喜 (著, 編集), 佐藤 浩一郎 (著, 編集), 松岡 由幸 (監修)
出版社 : 慶應義塾大学出版会 (2018/3/20)、出典:出版社HP