新・天文学入門 カラー版 (岩波ジュニア新書)

【最新 天文学について学ぶためのおすすめ本 – 初心者から上級者まで】も確認する

天文学の最初の入門書

惑星・恒星・銀河の成り立ちや宇宙について、天文学の基本を学ぶことができます。基礎だけでなく、最新の研究を取り入れた知見も得られます。カラーの写真や図が多用されており、平易で丁寧な解説がされているので、初学者の方でもビジュアルで楽しむことができます。

嶺重 慎 (著, 編集), 鈴木 文二 (著, 編集)
出版社 : 岩波書店 (2015/6/20)、出典:出版社HP

もくじ

序章
夜空を見上げれば
第1章
わたしたちはどこから来たのだろう
第2章
わたしたちの太陽系と系外惑星系
第3章
進化する星ぼしと元素の起源
第4章
天の川銀河と生命のふるさと山
コラム1
天体の観察をしよう
第5章
銀河、そして宇宙へ
コラム2
高校生天体観測ネットワークに参加しよう
もっと学びたくなった人のためのブックガイド
あとがき
さくいん
執筆者紹介
扉デザイン=NDCグラフィックス

嶺重 慎 (著, 編集), 鈴木 文二 (著, 編集)
出版社 : 岩波書店 (2015/6/20)、出典:出版社HP

序章 夜空を見上げれば

みなさんは満天の星空をみたことがありますか?そして、「自分が宇宙の中に存在している」ということを感じたことがありますか?

満天の星空

一九九八年春にオーストラリアで天体観測を行ったときのことです。ケント山観測所という非常に小さな観測所で、自炊しながらの観測でした。この観測所は町からずいぶんはずれた平原の中の小高い丘の上にあり、まわりには人家もなく、人工的な光の影響はまったく受けない場所にありました。深夜を過ぎて休憩しようと思い、ドームを出て、飲み物などが用意されている本館に向かって歩いていたときでした。疲れてややうつむき加減で歩いていると、まわりが明るいことに気づきました。ふと見上げると、そこにはまさに満天の星空があり、星明りで影ができていたのです。再び見上げた空には、天の川がほんとうに川のように流れていて、その中でももっとも明るい中心部が真上にありました。わたしは疲れも忘れてしばらく天の川をながめていました。
すると、今度はなんだか宇宙の中でたったひとりになってしまったような感じがして、とても怖くなってきたことを、よく覚えています。あの感覚はいまでも忘れることができません。
ひょっとすると、昔の人たちはみんな、夜ごとのような感覚になっていたのかもしれません。星空は美しいばかりではなく、むしろ、みるたびにいろいろなことを考えさせるものだったのかもしれませんね。

宇宙観の変遷

古代の人にとって、天上の世界(宇宙)とは、神さまが住み、神さまが支配する世界でした。地上と違い、人間が理解することが許されない世界だったのです。しかし天文学の発展は、そのような宇宙観を大きく変革しました。天上の世界も、わたしたちが地上の実験で得た法則や知識によってある程度理解できるということを証明してきたのが、天文学の歴史といえます。たとえば、万有引力とは、リンゴを木から落とす力であると同時に、月と地球の間に働く力でもあります。また、太陽をはじめ宇宙を構成する物質は、地上にある物質と同じものです。この理解は、時代とともに、太陽、惑星、恒星、銀河、そして宇宙全体へと広がってきました。
現代のわたしたちは、電波、赤外線から紫外線、X線、2線までさまざまな光で宇宙をみています(カバーソデ図参照)。望遠鏡の大きさも、すばる望遠鏡(図1)に代表されるように直径が八~一○mのものから、三○m望遠鏡へと進みつつあります(図2)。この発展した「目」を使って宇宙をながめてみた結果、わたしたちは宇宙のことについてかなり確信をもって、いろいろなことを語れるようになってきました。本書では、こうしてわたしたちに明らかにされた宇宙の姿をご紹介します。

旅へのいざない

みなさんは、いったいどんなことにわくわくしますか?人によっていろいろでしょうが、なにか自分の知らないことを知ったり体験したり、ふだん疑問に思っていることの答えを聞いたりするときには、きっと胸がおどるのではないでしょうか。とりわけ、なにかしら自分にかかわる謎について知るときに、ぞくぞくしたおぼえはありませんか。
わたしたちは二〇〇五年に、『カラー版天文学入門―星・銀河とわたしたち」を上梓しました。この本の執筆にあたっては、「わたしたちとのつながりから宇宙をながめる」、ということに、とくに留意しました。宇宙に存在する天体は、一見無関係に思えるわたしたち人間やその他さまざまな生命とも深くかかわりあっているのです。
この本は、幸いなことに、多くの読者を得て読み継がれてきました。しかし、その後の天文学の進歩はめざましいものがあります。近年、太陽系以外の惑星の相次ぐ発見によって、宇宙とわたしたち生命とのつながりについても、ますますクローズアップされています。これらの最新の知見をとりいれるため、このほど、新版に改めることにしました。宇宙を知ること、それはつまりわたしたち自身を理解することにもなるのです。さあ、みなさん、いっしょに宇宙=わたしたち自身を知る旅に出かけましょう。

嶺重 慎 (著, 編集), 鈴木 文二 (著, 編集)
出版社 : 岩波書店 (2015/6/20)、出典:出版社HP