SDGs入門 (日経文庫)

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導入からわかりやすいSDGs入門書

2015年の国連サミットで決められた大きな市場と雇用を生み出す可能性があると言われるSDGsの入門書です。本書の著者2人は、多くのセミナーや講演を担当しているSDGsのスペシャリストです。そのセミナーや講演でよく質問を受ける箇所に重点を置いて書かれています。SDGsの概要について理解したい人におすすめです。]

村上 芽 (著), 渡辺珠子 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/6/15)、出典:出版社HP

はじめに

_2015年9月に国連総会でSDGs(持続可能な開発目標)が採択されて以降、政府や自治体、企業、非営利団体や大学などで、SDGsに関する様々な取り組みが展開されています。この本を手に取った皆さんも、おそらく新聞記事やニュースなどを通じてSDGsという単語を一度ならず目にしたり耳にしたことがあると思います。

その上でSDGsって何? 具体的に何をすればいいの? 絶対に取り組まなければいけ ないの?など、様々な疑問を持っているかもしれません。
著者は普段、企業や自治体向けのSDGsについての講演や、SDGsに貢献する取り組 みを検討するワークショップの講師などを担当しています。
参加された企業や自治体の方々にSDGsに対する印象や、取り組む上での疑問や悩みを 聞いてみると、「SDGsについて従業員に理解してもらうためのよい方法はないだろう か」「すでに環境対策や働き方改革はやっているけれど、それだけではだめなのか」「発展途 上国への支援をしなければ、SDGsに取り組んでいるとは言えないのか」「いったい何から始めたらよいのか」「日々の業務で手一杯で、SDGsのような新しい取り組みまで手が 回らない」など、様々な回答が返ってきます。

SDGsの1の目標をよく見てみると、あなたの子どもや孫、ひ孫世代が安心して住むことのできる世界を、どうやってつくっていくか、そのために私たちが今取り組むべきことは 何かについて書かれているということに気が付きます。すでに取り組んでいることが含まれ ていることにも気が付くでしょう。

多くの企業が世の中をよくするための製品・サービスを提供していますし、従業員が健康 でいきいきと働くための取り組みや、節電やごみの削減など地球環境の保全につながる取り 組みも積極的に行っています。自治体では行政として当然広く関わっています。

だから、今の取り組みでもSDGsの目標達成に貢献していると言える組織は多いはずなのです。しかし、もっと工夫できることがあるはずだ、ということをSDGsは私たちに投げかけています。

著者の講演やワークショップでも、現在の取り組みをSDGsの観点から見直すだけでな く、世界のお困りごとを解決するためにリソース(人材、技術、製品・サービス、その他の 様々な資産)を活用して何ができるかといったことを考える時間を設けています。

先日、ワークショップに参加したあるエンジニアの方から「(参加したものの)当初は SDGsにはそれほど興味はなかったんです。だから自分の仕事に関係のある情報ばかりに 目が向いていたんだけど、最近は新聞やテレビのニュースを見てSDGsのどの目標に関係 するか、自分の仕事を通じてできることは何かな、と考えることが増えました」という感想 をいただきました。 _SDGsは世界全体の目標なので、一見すると自分にはあまり関係しそうもないような目 標に見えるかもしれません。しかしSDGsの達成に向けて、「あなた自身や身の回りのこと」にいかに引き付けて考えられるかが大切だと思います。

この本は、これからSDGsに取り組む方の参考になるように、SDGsの基本的な内容 はもちろんのこと、SDGsの観点から見ると、企業の取り組みがどのように見えるのか、 そしてこれから取り組むにあたっての第一歩をどう踏み出すかについて触れています。 特に企業経営の視点で書いていますが、自治体経営にも役立てていただけると思います。 SDGsの取り組み支援の一端に携わるものとして、この本が皆さんの第一歩を踏み出す ヒントになることを願ってやみません。

村上 芽 (著), 渡辺珠子 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/6/15)、出典:出版社HP

目次

はじめに
第1章 まずはSDGsを理解しよう
1 SDGsとは持続可能な世界のための7の目標
SDGsの目標にはどんな種類があるのか
SDGsを世界共通の成長戦略と捉える
ゴール本文を読んでみよう
16のターゲットこそ宝の山
2 SDGsが達成できないと、世界はどうなるのか
人間活動から生じた課題を解決しよう
途上国・新興国にとっての持続可能な開発
3 ミレニアム開発目標(MDGs)からSDGsへ
MDGsとSDGsは何が違うのか
キーワードはサステナビリティ
持続可能なパーム油とは何か
世代間の公平を考える
立場を変えて問題を見てみる
4 SDGs達成を誰が進めていくか?
SDGsを「自分ごと」として捉える ?
「ジャパンSDGsアワード」で進む企業の取り組み

第2章 SDGsとビジネスはどう結び付いているのか
1 企業とSDGsの関係
経営者が感じるSDGsの3つの魅力
SDGsウォッシュには常に注意
新規事業開発・事業拡大のヒントとして。
「やること」リストも「やらないこと」リストも作れる
2 若い人はなぜ SDGsに関心があるのか
人材獲得につながるSDGs
「未来への共感」でミレニアル世代とZ世代に寄り添う
コミュニケーションツールとしてのSDGs
3 ESGとSDGsはなぜ一緒に語られるのか
ESGとSDGsの違い
明文化や可視化することが価値になる
ESGはプロセス、SDGsはゴール
4 非上場企業にも広がるESG
イノベーションと持続可能性の関係

第3章 SDGsに取り組むときのヒント
1 まずは国連や、政府が提供しているツールを知る
「SDGコンパス」とは何か
「PLAN」の段階でSDGsと紐付けて考える
自分にあったやり方を選ぶ
トップのコミットメントが推進を加速させる
トップに関心を持たせる
個人の生活レベルから始める
2 会社の経営理念を確認しよう
理念の方向性を考える
世代間ギャップを埋める
まずは自分から行動しよう
自分でやるために、自分にあった「外圧」を学びに変える
部署がなければグループで始めよう

第4章 SDGsにビジネスで貢献する
1 今ある取り組みからできることを考える
まずは興味関心から始めよう
もっと広げるための「ロジックモデル」
あなたの「わくわく」は、顧客をどう動かしているか
顧客の反応から、SDGsのゴールにたどり着く
2 提案営業にSDGsを取り入れてみる
ロジックモデルの右側に来るターゲットは1つとは限らない
SDGsを営業資料に使ってみる
逆転の発想でSDGsに貢献する
社会のお困りごとの解決にこだわる
社外のリソースを活用しよう
バックキャスティングモデルを描く
迷ったときは、SDGsの精神に立ち返る
3 なぜSDGsでは「誰一人取り残さない」のか?
フランスで起きた「黄色いベスト運動」
ロジックモデルからKPIを見つける
開発援助や、寄付活動の評価も参考にする
デジタル技術を使って「見える化」を進める
パートナー探しにもつなげる

第5章 SDGsの取り組みテーマを選ぼう
1 複数のターゲットを組み合わせ、革新的な取り組みアイデアを生み出す
日本で注目される9つのテーマ
2 女性がますます活躍する社会をつくるには
なぜ「女性活躍」に注目が集まったのか
「なでしこ銘柄」に6年連続で選出されたカルビー
従業員が働きやすい組織づくり
バックオフィスで再就職を支援する
フリーランスが変える企業の未来
3 教育と職業訓練で、チャンスを掴み取る
所得を向上させ、貧困から抜け出す
「スタディサプリ」が変える教育環境格差
スウェーデンの住宅企業の取り組み
4 ますます重要になる働く人の健康促進
介護はSDGsに関係ないのか
働きながら介護もできる柔軟な働き方を考える
従業員の健康管理や維持・促進
健康経営の優良企業、SCSKの取り組み
全額企業負担となった禁煙治療の費用
途上国の医薬品入手状況を改善するグラクソ・スミスクライン
ジェネリック版の製造・販売を促進する
5 誰もが住みやすいまちをつくる
増加傾向にあるスラムで生活する人々
「誰もが暮らしたいまち」とは何か
世界で評価される塩尻市のまちづくり
6 エネルギー利用に伴う環境負荷に取り組む
エネルギー利用や二酸化炭素の削減
効果を数値化しやすい二酸化炭素の削減
114社で4・7億トンから大胆に削減
再生可能エネルギーの利用にシフトするアマゾン
ターゲット7・aに貢献するSBエナジーの投資
7 持続可能な消費を探る
消費を「持続可能にする」とはどういうことだろう
紙の消費を持続可能にするセイコーエプソン
毎年3億トンもの食料が捨てられている
日本人は一人当たり年間約6gの食品ロスを削減しなくてはいけない
消費期限を長くするための取り組み
捨てられる部分をおいしく食べる工夫
8 海洋プラスチックごみは削減できるのか
海に流出する年間約800万トンのプラスチックごみ
対策を始める国際社会
意外に進んでいる日本のプラスチックのリサイクル
投資を通じた海洋プラスチックごみ対策
森林や生態系を気候変動から守る
自然界の秩序を維持する
金融の仕組みでターゲット15・2に貢献する森林信託
精密林業計測に出資した三井住友信託銀行
10 科学技術・イノベーションの創出
世界が強く期待する「新しい市場」 「技術促進メカニズム」とは何か
東南アジアの農家を支援する天候インデックス保険
自然の技術を活かすネイチャーテクノロジー
どうやって取り組みテーマを考えるか
おわりに
参考資料的

村上 芽 (著), 渡辺珠子 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/6/15)、出典:出版社HP