入門 都市計画-都市の機能とまちづくりの考え方-

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都市計画の全体像がわかる

地域の商店街の話題や空き家問題、防災対策など都市に関わるさまざまなニュースがあります。このような都市に関わる課題を解決しより良い都市にするために働きかけを行う行為を「都市計画」という。本書は、具体的な都市計画の事例を交えながら都市計画に対する考え方や手がかりなどを解説しています。

谷口守 (著)
森北出版 (2014/10/21)、出典:出版社HP

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まえがき

テレビや新聞を眺めてみると、都市にかかわるニュースや話題が,必ず毎日どこかで取り上げられています。それらは商店街の活性化の試みや地域の環境づくりの話題であったり、住宅の空き家問題から防災対策に至るまで、じつに多岐に渡ります.そして、それらはいずれもわれわれの生活に大きくかかわることばかりです.また,その内容は時代の流れに応じて大きく変化しています。たとえば、地球環境への配慮や,スマートフォンを用いたまちづくりの情報交換などは,過去のまちづくりには想像もされなかったことですこれら都市にかかわる様々な課題を的確に把握し、よりよい将来を実現するために,都市そのものや,そこで暮らす人たちに対して働きかけを行う行為が「都市計画」です。

都市計画は「数学」や「物理」といった学問などと比較すると、一見誰にでも取り組めそうな簡単なことに思われるようです。しかし,将来を的確に読み,現状を客観的に理解し,そして有効な方策を考案するには、きわめて高度な専門性が必要とされます.また,そのようなプランニングといわれる能力は、一度身につけると都市計画 の専門にかかわらず、広く社会の中で様々なシーンにおいて活かすことが可能です.本書は,そのような素養をなるべく楽しんで誰にでも身につけていただけるよう,最新の都市計画に関する知識と話題をわかりやすく整理したものです。

なお、優れた都市計画の教科書はすでに数多く出版されています.しかし,それらはおもに都市計画に関連する既存の制度解説に主眼が置かれています。制度をきちんと網羅しようとすると,現在ではほとんど使われなくなった制度もある反面,追加される制度もあるので,教科書はどんどん分厚くなっていきます.また,教科書に書いてあることとして現在の制度を最初に頭に入れてしまうと,人間というのは不思議なもので、その制度が正しいという前提のもとで,その制度を守るための行動を取るようになります。プランニングにおいて、このような思考停止はもっとも避けなければなりません、既存の制度をなぞるだけでは、現在の激しい社会変化の中で、本来行うべき都市計画の改革が実施できなくなっているということを,まずわれわれは認識する必要があります。以上のような問題意識から、本書では,制度解説は可能な限り最小限に抑え、その反面,具体的な事例を多く交えるようにしました。今後を考えるうえで、必ずしも成功例とはよべない事例も学習のために多く取り入れたことも、既存の教科書とは大きく異なる点です。社会が変わっていく中で、どう都市計画に対する「考え方」を変えていく必要があるのか、そして、その手掛かりをどうつかむのか、そのヒントの提示にむしろ本書は重点を置いています。最初に学ぶ機会において 志高く発想を自由に拡げられるようにしておくことは、とくに都市計画の専門家になる人にとってはきわめて大切な要件であると考えるからです。

また,都市計画を将来専門としない人にとっても手に取っていただけるよう、話題を厳選するとともに,平易な解説を心がけました。一方で、まだ整理が不十分な点や,私見に基づく不勉強な記述も残されているかと思い、皆様のご批判を得ることで、今後も内容の改善を図っていきたいと考えています。
なお、本書の記載事項には,研究室の代々の学生との取り組みや議論を経て得られた成果も少なくありません。図表の使用許諾を取る作業等では秘書の岡本律子氏のお世話になりました。また、本書が世に出る道筋をつくっていただいた森北出版(株)の石田昇司氏,丁寧な校正,編集をいただいた富井晃氏に巡り合えたことは大きな幸運でした。記して謝意を申し上げます。

2014年9月
つくば市研究学園にて
谷口守

谷口守 (著)
森北出版 (2014/10/21)、出典:出版社HP

目次

1章 はじめに――なぜ都市ができるのか
1.1 競争と安定——ホテリングモデル
1.2 都市の構造
1.3 都心と郊外の成立――アロンゾ付け値地代
1.4 集積の利益と都市
1.5 都市の階層性
1.6 都市のライフサイクル

2章 現代都市の問題
2.1 都市化の実態
2.2 スプロール
2.3 人口減少と高齢化
2.4 リバース・スプロールの時代へ
2.5 社会資本の維持管理

3章 都市の進化とプランニング
3.1 プランニングのはじまり
3.2 都市の展開
3.3 近代化と都市計画
3.4 田園都市とニュータウン
3.5 自動車時代の計画
3.6 競争する世界都市

4章 計画概念とプランナー
4.1 様々な計画概念
4.2 計画をめぐる誤解と課題
4.3 プランナーの役割――都市や地域のドクター
4.4 地域概念
4.5 計画の段階的構成
4.6 上位計画(国土計画,広域計画)を考える

5章 暮らしを支える都市
5.1 施設配置を考える
5.2 「都心」対「郊外」
5.3 交錯する都市
5.4 弱者を支える
5.5 安全な都市

6章 豊かな都市空間を考える
6.1 心休まる空間づくり
6.2 風土と歴史を活かす
6.3 都市デザインと景観を考える
6.4 空間利用の効率化
6.5 生活の質を考える
6.6 選択肢を確保する
6.7 愛着をもてる空間に

7章 持続可能性(サステイナビリティ)に取り組む
7.1 持続可能性とは
7.2 緑を考える
7.3 人口上限を論じる
7.4 環境負荷を測るエコロジカル・フットプリント
7.5損なわれたものを取り戻す
7.6 トレードオフを理解する

8章 都市計画の基本的な制度
8.1 基本的な仕組み
8.2 マスタープランと都市計画区域
8.3 区域区分と地域地区
8.4 地区計画
8.5 市街地開発事業
8.6 容積率と斜線制限

9章 都市の再構築
9.1 都市再構築のポイント
9.2 市街地再開発事業
9.3 民間による再開発
9.4 都市再生特別措置法と都市の再構築
9.5 地方都市で考える
9.6 蘇生する都市
9.7 まちのボリュームを減らす
9.8 多様性の強み

10章 新しい都市の形を考える
10.1 コンパクトシティ
10.2 都市の見かけと中身
10.3 「拠点に集約」から「拠点を集約」へ
10.4 どこに住むべきか
10.5 スマートシティ
10.6 クリエイティブシティ
10.7 サイバーシティ

11章 合意と担い手
11.1 意見を活かす
11.2 合意形成とNIMBY(ニンビー)
11.3 専門家を活かした決定方法
11.4 市民参加のデザイン
11.5 ソーシャル・キャピタルを考える
11.6 行動変容の重要性——競争から協調へ

12章 これからの都市づくり
12.1 好きな都市,嫌いな都市
12.2 思考停止がもたらすこと
12.3 何のための制度か
12.4 次の進化に向けて

索引

谷口守 (著)
森北出版 (2014/10/21)、出典:出版社HP