都市計画 第3版増補

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都市計画について学ぶのに最適

現代は人々の考え方や価値観などが多様化し、都市計画のあり方についても新しい方向を見定めなければならない状況になりました。都市計画の本質を知り、現状の課題について正しく認識することが必要です。本書は、都市計画に関する重要な事項を広くまとめてあります。大学で都市計画を学ぶ学生が知っておくべきことが本書に全てまとまっています。

日笠 端 (著), 日端 康雄 (著)
共立出版; 第3版増補版 (2015/1/23)、出典:出版社HP

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第3版まえがき

第2版の発行からおおむね5年,初版からおおむね10年が経過した.それぞれの版で何回かの増刷を重ねた。これは、多くの教育機関において教科書として採択いただいた結果であり、そのことに感謝しつつ、都市計画を学ぶ導入的なテキストとして活用されていることに引き続き大きな責任を感じている。

初版の「まえがき」に書いた都市計画の課題などについては,現在でも基本的に同じことが指摘できるが、都市計画の背景となる社会経済状況が変化し,また,都市計画の地方分権が進み、市町村の権限が飛躍的に大きくなっており,これまでになかった視点も必要になっている。具体的には、都市における人口減少が現実のものとなり、より一層,自動車から公共交通への転換を進め、集約型都市構造へと変革していく必要性が高まっていることなどがあげられる.

第3版の改訂に際しては、掲載データをできるだけ最新のものに更新した,そのほかに、諸外国の都市計画制度としてフランスの計画制度を取り上げた。これは、フランスの計画制度も,わが国における都市計画制度を検討する際に参考とされることが多いことを考慮したものである.また,新しい都市計画制度として立地適正化計画をとりあげた、本制度は,具体的に集約型都市構造へ変革するために有効となる可能性がある.今後,市町村が新たに増えた都市計画権限や自主条例による創意工夫に努め、国や都道府 県がそれを支援することが求められる.

さらに,都市計画の地方分権化により,自治体が工夫して取り組む内容が多角的に進展してきている、そうした動向や内容をそれぞれの関連分野において解説し,事例を紹介するようにした.また,できるだけ理解しやすくするため、具体的な事例の写真や図を追加するようにした.

第3版への検討に際しても,それぞれの専門分野で活躍されている方々にお願いして提案や示唆をいただいた阿部成治氏(福島大学),和田幸信氏(足利工業大学),岡井有佳氏(立命館大学),三谷浩二郎氏(石川県),片岸将広氏・真島俊光氏((株)日本海コンサルタント),小柳健氏(金沢市)である.また,出版に際して森北出版株式会社の加藤義之氏にお世話になった。これらの方々に対して深く感謝申し上げる。

本書を通じて、都市計画の基本的な内容について学び,都市計画やまちづくりにかかわるさまざまな分野で活躍いただければ筆者の心からの喜びとするところである。

2017年8月
著者

まえがき

わが国は、明治以降の近代化の中で,西欧諸国の先進国をモデルとして、近代的な都市計画制度とそれに基づく都市づくりに取り組んできた。その中で、都市計画に関するプランを描くとともに、法的な規制を通じて土地利用計画の実現や誘導を行い、都市計画事業などにより都市基盤施設の実現を図ってきた.しかし近年,社会はますます急速に変化し、都市の問題や課題も増え,都市計画として対応すべき諸問題も多くなってきた。

こうしたなか、さまざまな分野においてめざすべき方向性と構築されてきた仕組みなどが見直されている。都市においても,災害に強い安全で安心できる環境づくり地球環境問題や持続的発展のためのあり方などが重要なテーマとなっている。都市計画でそうした動向をふまえつつ、近代的な都市計画制度の確立に向けてつぎのような新らしい取り組みをする必要がある.

・都市計画マスタープランの充実などにより,都市全域を対象とする基本計画と地区レベルにおける計画の二段階的計画制度を充実させていくこと
・国,都道府県,市町村の役割を見直しつつ、都道府県などによる広域的な計画や調教のもとに、市町村主体の都市計画制度へと変革していくこと
・都市計画を本来的な総合的環境形成のための制度へと充実させていくこと
・さまざまなまちづくり活動と積極的に連携するようにしていくこと
・計画に関連する情報のよりいっそうの公開と住民参加を拡大すること

さらに、これらを担うことができるプランナーなどを育成していくことも大切である。

本書は,都市計画の入門書として、計画の理論と制度の基礎から実務的な内容の概要ま で、総合的に扱っている。内容は、都市計画の歴史的流れ、諸外国などの理論や事例、都市基本計画や各分野における計画のための調査や計画の立案方法の概要を説明している。また、後半部においては、都市計画制度について、できるだけ新しい内容や事例などを整理しながら、基本的なことについてわかりやすく説明している。また,各章末には、演習問題を掲載し、その解答例を巻末に示した。さらに巻末には、執筆にあたり参考とした文献を掲載した。

本書の特徴は、都市の基盤施設計画から景観設計まで幅広く扱っていること、前述のようにその重要性から都市の環境計画や防災計画を独立した章として充実させていること、都市計画制度については、わが国が参考としてきた諸外国について紹介するとともに、わが国の制度についてもていねいに紹介している。

本書を執筆するに際して、多くの方々にお世話になった。とりわけ、図表の作成には城戸隆良氏(金沢大学技術専門職員)に協力いただき、出版に際しては、森北出版株式会社の石田昇司氏にお世話になった、深く感謝申し上げる。

本書を通じて、都市計画への理解を深め、都市計画や関連分野、まちづくり活動などについて関心をもち、さらには、読者自身が都市計画の進展に貢献いただければ、筆者の心からの喜びとするところである。

2007年10月
著者

日笠 端 (著), 日端 康雄 (著)
共立出版; 第3版増補版 (2015/1/23)、出典:出版社HP

目次

第1章 都市論
1.1 都市の定義
1.2 都市の成り立ち
1.3 都市問題
1.4 日本の都市と都市化
1.5 開発途上国の都市と都市化
1.6 社会変化と都市
演習問題

第2章 都市計画論
2.1 都市学と都市計画
2.2 日本における都市計画の発祥
2.3 都市計画の計画・設計の事例
演習問題

第3章 都市基本計画
3.1 都市基本計画の位置づけ
3.2 都市基本計画の上位・関連計画
3.3 都市基本計画の与件
3.4 都市基本計画の内容
3.5 都市基本計画の方法
3.6 日本の都市基本計画
演習問題

第4章 土地利用計画
4.1 土地利用計画の目的
4.2 土地利用の基礎的理論
4.3 土地利用の計画技術
4.4 日本の土地利用計画制度
演習問題

第5章 都市交通計画
5.1 都市交通の問題と課題
5.2 街路空間の機能・役割
5.3 都市交通計画の内容と手法
5.4 街路の計画
5.5 都市交通計画の基本的方法
5.6 地区交通計画の必要性
5.7 地区交通計画の方法

第6章 公園・緑地・オープンスペースの計画
6.1 公園・緑地・オープンスペースと都市環境
6.2 日本での公園の導入
6.3 都市と公園・緑地・オープンスペース
6.4 公簿・緑地・オープンスペースの機能
6.5 都市公園・緑地
6.6 公園の計画・設計
6.7 新しい動向

第7章 住宅・住環境の計画
7.1 都市化と住宅問題
7.2 住宅・住環境の計画体系
7.3 居住水準
7.4 住宅需給計画
7.5 住宅地の計画
7.6 関連トピックス
演習問題

第8章 都市基盤施設の計画
8.1 都市基盤施設と都市施設
8.2 都市水系
8.3 都市エネルギー
8.4 情報通信システム
8.5 廃棄物処理施設ほか
8.6 そのほかの都市基盤施設
演習問題

第9章 都市環境の計画
9.1 都市の環境問題
9.2 産業・都市の活動と環境
9.3 低炭素都市づくり
9.4 生活と環境
演習問題

第10章 都市の防災計画
10.1 防災計画の仕組み
10.2 都市の防災計画の課題
10.3 災害危険性の評価
10.4 避難計画…
10.5 住まいの復旧・復興
演習問題

第11章 都市の景観設計
11.1 景観設計の方法
11.2 都市形態のデザイン
11.3 都市デザインの形態的手法
11.4 都市デザインの基本理念
11.5 道路・街路の機能とデザイン
11.6 歩行空間の各種装置
11.7 広場
11.8 ストリートファニチュア
11.9 都市空間における防犯デザイン
11.10 バリアフリーデザイン
11.11 景観,バリアフリー関連制度
演習問題

第12章 欧米諸国の計画制度
12.1 イギリスの計画制度
12.2 ドイツの計画制度
12.3 フランスの計画制度
12.4 アメリカ合衆国の計画制度
演習問題

第13章 日本の都市計画制度
13.1 都市計画制度の歴史と概要
13.2 全体および土地利用に関連する計画
13.3 市街地開発事業
13.4 地区を対象とする計画制度
13.5 宅地開発指導要綱
13.6 計画決定プロセス
13.7 まちづくり関連条例
演習問題

演習問題の解答例およびヒント
参考文献・資料
索引

日笠 端 (著), 日端 康雄 (著)
共立出版; 第3版増補版 (2015/1/23)、出典:出版社HP