図解入門 よくわかる最新都市計画の基本と仕組み

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都市計画やまちづくりまで幅広く学べる入門書

高度経済成長期での人口増加と施設の増加に対する都市計画。1980年の都市計画法の改正による地域視点でのまちづくりの増加。21世紀での市民による地域主体のまちづくりの活動。本書は、このように変化を続ける都市計画やまちづくりを学ぶ学生や関心のある一般の方に向けた入門書です。

五十畑 弘 (著)
秀和システム (2020/6/5)、出典:出版社HP

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はじめに

都市計画とは、旧来のとらえ方からすれば、全国で統一的な開発、土地利用規制のルールや誘導計画によって実施される都市づくりです。この意味から「都市計画」は、都市計画法、およびその関連法を根拠とした「法定都市計画」であり、都市計画行政制度の体系といえます。

戦後、高度経済成長期における急増する都市人口とそれによる住宅、道路をはじめ、各種の都市施設の拡大に対し、「都市計画」は、課題を残しつつも応えてきました。その後、ポスト高度経済成長の中で、都市における人々の生活や活動が複雑化、多様化するにしたがって転換点を迎えました。

1980(昭和55)年の都市計画法の改正では、全国一律、統一的な規制から、地区の状況に応じてメリハリをつける地区計画制度が導入されました。また、神戸市をはじめとする都市景観条例や、まちづくり条例の制定がされはじめ、地域の視点による「まちづくり」の傾向が出てきました。

電信電話公社、国有鉄道の民営化をはじとした公共事業への民間活力導入などとともに、国家主導、中央集権から地域主義の傾向も出始めました。世紀末に新たな世紀へ向けて出された展望では、かつて経験したことのない人口減少・超高齢化社会の課題が数多く取り上げられました。

一方、阪神淡路大震災後の復興まちづくりでは、行政だけではなく地域住民、あるいは一般市民が果たす役割が認識されました。
今世紀に入ると、地域における市民の視点を重視し、ハードを主体とする都市計画から、より広範な領域を対象に含む、市民による地域主体の「まちづくり」の活動が一般化されてきました。

本書は、このような経過をたどり今も変化を続ける「都市計画」および「まちづくり」を学ぶ大学や工業高等専門学校の学生、あるいは都市計画、まちづくりに関心のある一般の方々を読者層に想定した入門書として執筆しました。

都市計画が経てきた流れから、本書は、「都市計画&まちづくり」として、法定都市計画に相当する部分を中心とする「第I部 都市計画の基本」と、まちづくりの新たな課題について述べる「第II部まちづくりの課題と取り組み」の2部構成としています。

都市計画の初学者にとって法定都市計画に相当する部分は、基本として押さえておく必要があります。これが「第I部 都市計画の基本」です。
「第Ⅱ部 まちづくりの課題と取り組み」では、環境、防災、歴史、A I、情報化、市民参加など、都市にとっての新しい課題を扱っています。この「まちづくり」の部分には、変革期を迎える現社会において、従来の枠組みを超えて、変化して行く新しい傾向が含まれます。これは新型コロナウイルス(COVID-19)など未知のウイルスや細菌による感染症に対するまちづくりの備えにも通じます。

まちづくりにおけるそれぞれの課題の背後には、それらの施策決定のメカニズムに着目する必要があります。まちづくりに限らず公共的な施策の意思決定に共通する関係者間の課題です。

情報オリエンテッドのまちづくりは、AI情報技術の進化で今後その方向性は予測しがたい面もありますが、社会的により望ましい施策の意思決定の可能性は、関係者の良識にかかっていることは確かです。

自動車から公共交通への転換、コンパクトなまちづくり、カーボンフリーのまちづくりなどから、地域住民の相互扶助による防災、地域の公園、緑道、ごみ収集場の清掃などの身近な活動まで、個人の利益と公共の利益のはざまにあって社会的に最良の選択には、協調を生み出す地域、関係者間の信頼性が鍵となります。
競合ではなく協調によって全体として利益を得ることはゲーム理論でも説明されてきましたが、協調を促すための良識の醸成は、関係者の意識の変換なしには超えることができません。

防災まちづくりの面では、高潮、津波、地震、台風、豪雨などに対するハードの防災施設、あるいはソフトの仕組み、制度などは「その時」以外は本来の役割を果たしませんが、常に存在しつづけ、日々の人々の日常の場を構成する要系として大きく影響します。かつて青松白砂であった海辺の視界を延々と覆い尽くす10メートル超えの防波堤に置き変えることが、将来のために社会的に最良の選択であるかを含め、今後も「まちづくり」において議論の余地の残るところです。

以上のように、都市計画&まちづくりは、今後その領域を必然的に拡大せざるを得ない分野がいろいろと含まれると思われます。
本書が、はじめて都市計画を学ぶ方々にとって、都市計画の基本についての情報提供と同時に、まちづくりの新たな課題について考えるきっかけとなれば、かつて大学学部生の都市計画入門科目を担当していた著者としては、望外の喜びです。

令和2年5月
五十畑 弘

五十畑 弘 (著)
秀和システム (2020/6/5)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに

第I部 都市計画の基本
第1章 都市計画とは?
1-1 都市の意義と分類
コラム 古代ギリシャの都市国家 アテネ
1-2 都市の起源と歴史
コラム ケンブリッジ大学の木組み建物
1- 3 20世紀以後の都市計画思想の流れ
コラム初期の鉄道駅舎ヨーク駅(イギリス)
1- 4 わが国の近代以降の都市計画

第2章 都市計画法と関連法規
2-1 法定都市計画の概要
2-2 都市計画法
2-3 都市計画の関連法

第3章 都市計画の調査と立案
3-1 都市計画の立案の手順と項目
3-2 都市計画のための調査
3-3 都市計画区域の指定

第4章 土地利用
4-1 地域地区
4-2 用途地域の建築規制

第5章 都市交通と交通施設
5-1 都市交通の特質と課題
5-2 人の動きと都市交通
5-3 都市交通施設
5-4 都市交通計画
コラム ベルリン中央駅(ドイツ)

第6章 供給・処理施設
6-1 上水道
コラム チェスター配水塔(イギリス)
コラム 栗山配水塔 (千葉)
6-2 下水道
6-3 廃棄物処理

第7章 都市再開発
7-1 市街地開発
7-2 土地区画整理事業
7-3 市街地再開発事業
7-4 その他の市街地再開発事業
7-5 地区計画
コラム再開発されたビルバオ(スペイン)

第II部 まちづくりの課題と取り組み
第8章 環境とまちづくり
8-1 まちづくりにおける自然環境
8-2 地球環境

第9章 防災とまちづくり
9-1 近年の防災意識の変化
9-2 戦後の災害と防災への取り組み
9-3 都市防災対策の考え方
9-4 災害リスクごとの対策
9-5 防災まちづくりの課題と新たな傾向
コラムロンドンのテムズ川防潮堤

第10章 歴史とまちづくり
10-1 なぜまちづくりに歴史か?
10-2 まちづくりにかかわる文化財
コラム 山口県萩城下町
10-3 歴史まちづくり法の制定
10-4 歴史を活かしたまちなみの事例
コラム 世界遺産リドー運河(カナダ)
コラム 復元されたドレスデン聖母教会(ドイツ)

第11章 新たなまちのかたち
11-1 住みやすいまち
11-2 バリアフリーとユニバーサルデザイン
11-3 ウォーカブルタウン
11-4 コンパクトシティ
コラム リスボンの路面電車(ポルトガル)
11-5 スマートシティ
11-6 サイバーシティ

第12章 まちづくりと市民参加
12-1 法定都市計画からまちづくりへ
12-2 法定都市計画に組み込まれた市民参加
12-3 市民参加の手法
12-4 市民参加の新たな役割

参考文献
索引

五十畑 弘 (著)
秀和システム (2020/6/5)、出典:出版社HP