インフラPPPの経済学

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政策担当者だけでなく民間事業者も必読!

本書は、PPPの概要やそれが利用されている背景、国別事例や実施すべき条件などをまとめています。PPPの実務的な話題よりもPPPの理論的な話題が多いですが、現実に沿った内容が多く、経済学的な観点からPPPをうまく機能させる方法やPPPに関わる様々なテーマを解説しています。

Eduardo Engel (著, 編集), Ronald D.Fischer (著, 編集), Alexander Galetovic (著, 編集), 安間 匡明 (翻訳)
出版社: きんざい (2017/11/29)、出典:出版社HP

日本語版への序文

PPPsは、いくつかの国において公共インフラを調達するための重要な手 段となっている。しかしながら、私たちが2014年に本書(原題:The Economics of Public-Private Partnerships)を著した時には、日本はどちらかといえば、PPPsが発展する可能性は低いところであるように思われた。日本では公共インフラが中央政府・地方政府および高速道路会社(NEXCO) のような公的機関によって十分適切に提供・維持管理されてきている、というのがその主な理由である。実際のところ日本では、1999年のPFI法施行以 来、PPPsが、主に公共施設の建物を調達するために使われ、毎年の平均事 業規模は、2,500億~3,000億円程度と、どちらかといえば控えめな金額である。まさにこうした理由から、安間匡明氏が本書を日本語に翻訳すると申し出てきてくれた際には、喜びとともに興味をそそられた。

折しも、日本政府は、既存の道路インフラを費用効率的に維持管理するために、あるいは、増加しているインバウンドの訪日旅行客を受け入れるべく6つの空港を改装するためにPPPSを推進しようとしているという。日本政 府は、2013~2022年までの10年間に総額21兆円(約2,000億米ドル)の事業規模を計画している。世界の毎年のPPP投資総額がほぼ1,000億米ドルである ことをふまえれば、この金額は相当に大きいものである。

このようにPPPSを推進するなかで、PPPプログラムの成功のための前提条件を明確に示す本書は、何かしらお役に立てるのではないかと考える。ひとつは、公共インフラに民間資本を導入することによって、まさに1980年代の英国においてウイリアム・ライリー卿が導入した原則のとおり予算外で公 共支出をいっさい増やすことなく、納税者にとっての費用負担を削減できることである。PPPSが公共予算制約を緩和するという広く知れ渡った考え方は、実は間違いであることがわかっており、PPPSを正当化する論拠は、もっばら効率性にかかっている。もうひとつは、需要リスクの移転を行うことは、需要そのものがコンセッション事業者の行為によってなんら影響を受け ないのであれば、PPPプロジェクトでは必ずしも良い考えとはいえない。最後に、PPPSのためには政府の十分な対応能力が必要であることを本書は強調している。PPPsはあくまでも公共インフラを調達するための手段であり、政府は、計画、プロジェクトおよび契約の設計、建設、実行、そして、契約執行やモニタリングを含めたあらゆる段階のプロセスに関与しなければならない。

PPPsについて関心をもつ2つ目の理由は、日本の建設会社は日本国内で数十年にわたって道路を建設・維持管理してきた技能を挺に世界展開し、 PPPの活動を世界中で拡大して利益をあげることができる可能性である。しかしながら、これが現実の機会となるかどうかはさほど単純ではないことを本書は示している。ひとつの理由は、先ほどのわずか年間1,000億ドルという数字にもあるように、世界のPPP産業の規模は依然として比較的控えめなものにとどまっている。おそらく、さらに重要なことであるが、ほとんどの国において、PPPSは頻繁に再交渉されており、多くの再交渉は事業者側から引き起こされている。したがって、PPPS事業を行うグローバル企業が発揮する重要なスキルは、政府を相手取って契約を再交渉することにあるといってもよい。しかし、これは、日本の競争優位性がある分野とは思われな いし、まさにそのことが、世界のPPP産業において日本企業が大きく展開していない理由を説明しているかもしれない。

とまれ、PPPは世界で成長している産業である。日本においてPPPsが普及していくことを期待し、本書が以上のような文脈で、どんなに控えめなものであっても、一定の役割を果たせることに刺激を受けている。最後になるが、安間氏が本書に関心をもち翻訳してくれたことに心から感謝したい。

エドアルド・エンゲル
ロナルド・D・フィッシャー
アレキサンダー・ガレトビッチ

はじめに

過去25年間、多くの開発途上国と先進国が、ファイナンス、建設、運営を 民間企業との長期契約のなかにバンドリングする官民パートナーシップ (PPPs)を導入してきた。本書では、PPPSの実務経験と学術論文の相互作用 から得られる主な教訓と考えられるものが示される。主な課題としては、政府はいかなる場合に従来型事業」ではなくPPPを選択すべきなのか、PPPsはどのように実施するべきなのか、PPPsの適切なガバナンス構造などがあげられる。PPPsの財政的なインパクトは従来型事業と同様であり、PPPsは公的資金を解放するものではないと著者は論じている。PPPSは、効率性向上 とサービス品質の改善にその拠り所が立脚しているが、それらは往々にして とらえどころのないものである。実際には、頻繁な再交渉、誤った財政会計 制度、お粗末なガバナンスにより、PPPモデルは危険にさらされている。

エドアルド・エンゲルは、現在、チリ大学の経済学の教授、イエール大学 の客員教授、エコノメトリック・ソサイエティのフェロー。2002年には同ソサイエティのフリッシュメダルを受賞。America Economic Review、 Econometorica, Jounarl of Political Economy, Quarterly Journal of Economicsなどの主要学術誌に論文多数。マサチューセッツ工科大学経済学博士、スタンフォード大学統計学博士、チリ大学工学職業専門学位。

ロナルドD.フィッシャーは、現在、サンチアゴのチリ大学産業工学部の経 済学の教授。官民パートナーシップの経済学、金融市場の非効率性と経済パフォーマンスの関係性、海港等の規制産業の経済学を中心に研究。Jounarl of Political Economy、Quarterly Journal of Economicsなどの主要学術誌に 論文多数。ペンシルベニア大学経済学博士。
アレキサンダー・ガレトビッチは、現在、サンチアゴのロスアンデス大学の経済学の教授。官民パートナーシップの経済学、産業構造の均衡決定理論、電力市場の経済学などを研究。Jounarl of Political Economy、Review of Economics and Statistics Journal of the European Economic Association、Harvard Business Reviewなどの主要学術誌に論文多数。プリンストン大学経済学博士。

[訳者注] (訳者注は各章末に記載) i conventional provision”の訳。”traditional provision”の表現も出てくるが、本書ではこれらいずれも、中身としては“public provision”(「公共事業」、後述の訳者注i参照)のことを指す趣旨で使われている。

Eduardo Engel (著, 編集), Ronald D.Fischer (著, 編集), Alexander Galetovic (著, 編集), 安間 匡明 (翻訳)
出版社: きんざい (2017/11/29)、出典:出版社HP

序文

最近数十年の間に、インフラ・サービスを提供するための重要な組織形態が新たに出現した。官民パートナーシップあるいはPPPと呼ばれているこの手法は、しばしば、公共事業がと民営化の間に位置づけられるものであ る。本書において、PPPに関する実務経験と学術研究を相互に参照すること から得られる主な教訓と筆者の考えを要約して示す。

10年あるいは20年前に知らなかったことで、私たちはいま何を知っているのだろうか。PPPsと公共事業のどちらを選ぶのかという設問に対して、実務経験は経済分析とともに、どのような回答を提供できるのであろうか。 PPP契約を設計するための最良の手法とはどのようなものだろう。

最近まで、高速道路、橋梁、空港、学校、刑務所などのインフラ施設は、公共財であると考えられてきた。インフラ施設は、そういうものとして政府によって建設され、税金でファイナンスされ、公的機関によって管理されて きた。1980年代後半にいくつかの国でPPPsが利用され始めた。PPPは、ファ イナンス、建設と運営を、調達当局と民間企業の間に結ばれる単一の長期契 約のなかに一括りにしたものである。契約期間中、初期投資、運営費用、維 持管理支出の対価として、企業は一連の収入を受け取る。契約にもよるが、 その収入は、受益者負担金、調達当局からの支払、あるいはその両方から構 成される。契約が終了すると、資産は政府に帰属する。

時には誤った理由から、PPPsの重要性はおそらく引き続き高まるだろう。 政府は、PPPSsをインフラ投資から資金を解放し別のプログラムに再配置するための、費用のかからない方策とみなしている。典型的にはPPPsは財政赤字に影響を及ぼすことなく、公的債務にも計上されないなど、予算制度の 不備によりPPPsを選択する追加的なインセンティブがもたらされている。さらに、公共事業によるインフラは多くの場合品質も悪く費用もかかるため、PPPsは民間企業の効率性を期待させる。ホワイト・エレファント、ポークバレルは、公共事業契約の透明性の欠如、標準以下の維持管理・サービス品質など、公共事業にはいろいろな欠陥があることからも、PPPSによってより良いパフォーマンスとサービス品質がもたらされることを政府が望む 理由がある。

過去のPPP契約で評判が芳しくないことといえば、契約がごく当たり前に再交渉しされていることである。契約が長期間にわたり、コンセッション期 間中に状況が変化することから、再交渉が当然に期待されているものもある。しかしながら、契約の受注後間もなくコンセッション事業者側に好都合 な条件で再交渉が起きていることを示す広範な証拠がある。再交渉によって PPPsがもたらすとされる便益については疑念が湧く。再交渉が起きると、 ロビー活動に比較優位性をもっているけれども、施設の建設や運営にはさほど慣れていない企業が引き寄せられてしまうことから、いわゆる「逆選択の 問題」につながる。さらに、再交渉が前提となると注意深くプロジェクトを設計・選択をしようという政府のインセンティブがそがれ、コストの削減を 図る企業のインセンティブも減退してしまうことでモラルハザードの問題が起きる。最後に、再交渉は現職政治家が支出の先取りをする新たな手段ともなりうる。

本書では、PPPsが、インフラ施設の公共事業あるいは民営化と類似している部分を正確に示す。PPPsのなかには受益者負担金でまかなわれているものがあるので、PPPsは政府にとって費用のかからないものであるとか、 政府の貸借対照表に計上されるべきではないといった考えになりがちである。しかしながら、異時点間の政府予算への影響を考慮すれば、PPPSは政府の貸借対照表に計上されるべきであり、その影響はあたかもPPPsが公的部門の一部であった場合と同じであるとの結論に至る。その結果、公共ファ イナンスの観点からは、PPPsは公共事業に近いものである。しかしながら、特定の地域で頻発している契約の再交渉さえ起きなければ、PPPの仕組みによって効率化しインフラ・サービスの提供コストを引き下げるインセンティブが生まれる。

このようにPPPは、もたらされるインセンティブをみると民営化に似ている。しかしながら、根本的な意味でPPPsは民営化とは異なる。たとえば、契約期間の長さを調整することで民営化では不可能なリスク分担の取決めを つくりだすことができる。特に、社会厚生の向上により大きくつながる可変期間契約を設計することが可能となる。
PPPsに関する誤った理解があるが、PPPsの本当のメリットとは何だろうか。第1に、ライフサイクルコストを削減するインセンティブによって、断 続的な維持管理よりもずっと費用のかからない継続的な維持管理が促進されることがあげられる。高速道路のようにサービス品質が契約で規定可能”で あるのならばこの点は特に貴重である。PPPsでは、ほかにもより良い維持管理を期待できる理由がある。PPP契約では、契約の最終期限にインフラが 良い状態で返還されなければならないことを約定することができる。これによって同一のプロジェクトを公共事業として行った場合には得られない維持 管理へのインセンティブが生まれる。

第2に、受益者負担金を回収するPPPプロジェクトでは、利用者は良いサービスを要求できる権限をもっていると感じることができるので、継続的 な維持管理が必要になる。公共インフラ・プロジェクトについて受益者負担 金が回収される際には、その資金は一般会計予算に入るとみられるか、あるいは、せいぜいインフラ一般基金に入るとみられるので、利用者は自身がそのような権限をもっているとは感じにくい。

PPPsのもうひとつの潜在的なメリットは、プロジェクトが受益者負担金 だけでファイナンスされている場合には、機会主義的な再交渉の余地はなく、民間企業はプロジェクトを自分で評価してホワイト・エレファントの案 件を切り捨てる。さらにPPPでは、公共事業のプロジェクトに比べて受益者 負担金を引き下げる圧力はより小さくなるので、インフラ・プロジェクトからの潜在的な収入額が大幅に増えることにつながる。最後に、受益者負担金からの収入はPPPが直接に徴収するので、一般歳入税あるいは資金を民間企 業に渡すために必要な政府の官僚主義的な実務に伴う費用のいずれによっても税の歪曲は起きない。

そのすべてに説得力があるわけではないが、むしろ公共事業のほうが良いという反論がある。目にみえるファイナンスコストは民間企業よりも政府のほうが低くなる。しかしながら、これは政府が資源を焼いてしまうためにも 借りることができ、政府債務の金利は大きくは上昇しないからである。つまり、貸し手はグローバルな債務状況だけをみており、個々の公共プロジェクトは評価していない。こうしてみると、PPPsが直面しているより高い借入コストは、部分的には貸し手がより良いプロジェクト評価をしたことによる ものであって、これは価値のあることである。また、PPPsのより高い借入コストはむしろ間違った契約設計や規制的収用や国有化のリスクによるかも しれない。さらに、PPPのより高い借入コストは、モラルハザードを防ぐとともに、費用削減のインセンティブならびに適切なサービス品質の提供・運営のモニタリングを強化するために、内生的なリスクを移転したことに伴う費用を含むものである。公的資金調達によるプロジェクトに賛同する説得力 のある議論は、PPPsが政府の貸借対照表に計上され、議会の監視を離れて公共支出の先取りをすることには使えないというものである。最後に、政府のプロジェクトでは建設段階で機会主義的な再交渉の余地はあるものの、その後になると、PPPsでは最も重要な問題のひとつである機会主義的な再交 渉の可能性はなくなる。

これまでの議論から、途上国ではPPPsよりも公共事業が選好されるべき である。いったん資本が投下されたら、政府は規制的収用も国有化も行って はならないので、制度的な発展がPPPsにおいては公共事業の場合よりもより大きな役割を果たす。PPPのもとでは、継続的な関係によって機会主義が 生じる余地がより大きくなる。したがって、本書の議論は、制度的な環境が十分に発達した中所得国および先進国に集中する。

PPPsとインフラの種類に関しては、高速道路、トンネル、橋梁といった、品質が契約で規定可能であって検証できる分野であれば、PPPsが生み出す ことのできる社会厚生の向上は大きくなる余地があると考える。さらに、契約は設計のあり方次第では、いずれの当事者からも機会主義的に振る舞う余 地を大きくすることなく、変化する条件に適合するようにできる。論拠はあまり明確ではないものの、空港のようなその他の種類の交通インフラについ ても、PPPsは公共事業よりも望ましいだろう。対照的に、病院や学校などの複雑なインフラ・プロジェクトの場合には、PPPsのメリットのほとんど は発現しない、もしくは発現させることがむずかしい。

筆者は、約20年前からPPPsについて研究を始め学術論文を書き、政府や国際機関に助言してきた。2年前にこの経験から著者が学んだ主な教訓を詳 述した本を書くことに決めた。本書の主な結論は、より少ない費用でより良いインフラを構築するための政府の政策を設計することに役立てると考えて いる。本書の目的は、政策担当者に意味のある教訓を引き出し、現実世界の 証拠と裏に潜んだ経済学的議論を組み合わせることである。この理由から、 本書は他の研究者の業績に大きく依拠した総合の作業である。そうはいっても、本書はすべてを包含するような中立的な概観書ではないので、だれもが 本書の結論に同意するわけではないだろう。

まさに、著者はいくつかの論点については強い自説にこだわった意見をもっており、その他の論点についてはいまだ最終的な結論は定まっていないと考えている。政策のレベルでは、PPPsはイデオロギーの問題となってき た。ある評者は、PPPsが政府の役割を制限するというので賛成だったし、 他の評者は同じ理由から反対した。対照的に、本書では証拠と経済分析を使って偏見を和らげるように努力した。読者はどの程度その試みが成功した のかを判断できるだろう。

[訳者注] i “public provision”の日本語訳として、ここではあえてわかりやすく平易な日本語として「公共事業」という言葉を用いているが、本書における “public provision” は、単に政府・自治体などの公的部門がインフラ建設のための建設請負工事契約を発注する契約事業という意味ではなく、公的部門がインフラの資産を建設・所有し、かつ自ら運営・維持管理も行って、公共インフラ・サービスの提供を行うといった観点で「公共インフラ・サービスを公的部門で営んで根 供する事業」(=あえて無理に略せば「公営事業」)という意味で使っている。

ii “white elephants”のこと。使い道のない、役に立たないものの英語のたとえ。必要性・需要のない事業のことをいう。昔のタイでは、白い象は珍しく神聖な 動物で、王様に献上され王様だけがそれに乗ったが餌代が高くかかった。王様 が、気に入らない家来にホワイト・エレファントを与えると、それを処分することも許されず、ただ餌代がかさみ破産したことにちなむ。

iv “pork-barrel”の訳。選挙区での議員の人気とりを目的とした開発基金のことをいう。米国南部、南北戦争時代に、農場で、奴隷に、樽に入れた塩漬け豚肉 を与えたことから使われた言葉。

v “renegotiation”の訳。当初締結ずみのPPP契約の条件の変更を伴う新たな交渉のことを意味している。

vi 「支出の先取り」は、“anticipate spending”の訳。anticipateの意味には、まだ確保できていないものを先に使うとか支出するという意味があり、本書では、 本来は支出できないはずのものを先取りして使うという意味で訳している。 vin “contractible”、”contractibility”の訳。本書では、PPPsにおいて公的部門が求めて民間企業が提供するインフラ・サービスの品質基準を、両者間の契約書において明確に規定することが可能であるかが、PPPsが有効に機能するか否かを判断するうえで重要な基準になっている。単に品質基準の規定が普通の言葉として両当事者間で理解可能かということにとどまらず、最終的には契約書にある当該規定を裁判所に持ち込んだ場合において法的に強制執行可能なものとして認められるほどの明確性があるかが問われることになる。

謝辞

私たちは、エドアルド・ビットラン、アントニオ・エスタシェ、J・ルイス・ グアッシュ、ウイリアム・ホーガン、マイケル・クライン、ギジェルモ・ペ リーとジャン・ティロールが私たちのPPPsに関する研究の初期段階から激励と意見をくれたことにとりわけ感謝する。彼らは、私たちを何年も考えさ せる質問をすることで研究へ刺激を与えるという重要な役割を果たした。
多くの仲間が本書の第1ドラフト段階から各章に惜しみないコメントを提供してくれた。私たちは、アンデス開発公社(CAF)から受けた寛大な財政支援に深く感謝している。フィッシャーとガレトビッチは、2005年以来のエンジニアリング複雑システム研究所からの支援に感謝している。ガレトビッチは、スタン フォード国際開発センターとフーバー研究所のもてなしにも感謝している。

ケンブリッジ大学出版会のスコット・パリスとカレン・マロニーに感謝する。そして、最終稿の校正と索引の作成についての際立った助力について は、マリナ・イグナシア・ヴァレラに感謝している。

本書を通じて、方程式の使用を回避するのは容易ではなかった。そこに関 心がある読者のために、本文で言及した多くの結果を可能な限り簡単に公式化したベアボーンモデルを含む補遺をつけた。一方、本書ではできる限り参 照文を避けるかわりに、参考文献注記メモを各章末に挿入し、私たちが情報 を得た主な論文を記載した。本書では、以下の私たちの過去の業績からも引用している。

Eduardo Engel (著, 編集), Ronald D.Fischer (著, 編集), Alexander Galetovic (著, 編集), 安間 匡明 (翻訳)
出版社: きんざい (2017/11/29)、出典:出版社HP

目次

第1章 概論
1.1 本書の取扱範囲
定義
公共事業、PPPs、民営化
PPPの範囲
1.2 傾 向
1.3 公共事業の問題点
ずさんなプロジェクト選択
インフラ・メインテナンス
非効率な価格設定
権力と腐敗
制度設計の問題
再交渉
1.4 期 待
政府予算制約の緩和
効率性向上
競争導入
適切な受益者負担金設定
ホワイト・エレファントをフィルターにかける
所得分配
1.5 経 験
よく知られている欠陥
再交渉
ソフト・バジェット
1.6 概要

第2章 国別事例
2.1 英 国
評価
2.2 チリ
歴史
コンセッションプログラム
[Box 2.1] チリ最初のコンセッション
[Box 2.2] 契約監督者としてのMOP
MOPの汚職
再交渉
[Box 2.3] 第三者監視のない再交渉
コンセッション法の改正
2.3 米国
効率性
通行料
ホワイト・エレファント
再交渉
歳出を先取りする
[Box 2.4] シカゴ・スカイウェイ
将来展望
2.4 中国
中国のPPP
中国のPPPの課題・
[Box 2.5] 汚職の事例:安徽省合巣荒高速道路事業
[Box 2.6] 福建省の不正競争の事例
[Box 2.7] 隠れた収用の事例:湖北省の襄荊高速道路
[Box 2.8] 学習の事例:北京メトロの4号線と5号線
[Box 2.9] 青島湾橋
2.5 結論

第3章 高速道路
3.1 物理的特徴と経済的特徴
[Box 3.1] 契約で規定可能な高速道路サービス
3.2 PPPはどのような場合に高速道路に適切なのか
[Box 3.2] 伝統的事業における維持管理の改善
3.3 PPPの実施のあり方
[Box 3.3] 最初のPVRオークション
3.4 結論

第4章 インセンティブ
4.1 いかなる場合にPPPSは機能するのか
4.2 リスク分担とPPPSのインセンティブ
4.3 民間事業者提案
4.4 結論

第5章 プライベートファイナンス
5.1 PPPSの金融の仕組み
PPPファイナンスのライフサイクル
[Box 5.1] 高速道路PPP事業のライフサイクルの事例
SPVが締結している諸契約の関係
収入原資、需要リスクとファイナンス・ 格付機関と保険会社の役割
プロジェクトファイナンス vs. コーポレートファイナンス
5.2 PPPプレミアム
分散化と契約
[Box 5.2] 瑕疵のある契約設計とPPPプレミアム
PPPのリスクと効率性
取引費用
5.3 結 論

第6章 パブリック・ファイナンス
6.1 財政の会計制度
[Box 6.1] 既存施設のPPPと政府支出
政府による収入保証
[Box 6.2] ライリー・ルール
6.2 政府予算の負担を軽減する
資金制約のある政府
[Box 6.3] 国際機関の役割
6.3 最適契約
税金ファイナンスと社会的費用便益分析
[Box 6.4] ミズーリの800の橋梁を再建するアベイラビリティ契約
受益者負担金ファイナンス
[Box 6.5] ポルトガルの可変期間型高速道路コンセッション
6.4 結論

第7章 再交渉
7.1 会計制度と支出の先取り
7.2 逆選択とモラルハザード
逆選択と再交渉
モラルハザードと再交渉
7.3 柔軟性と再交渉
7.4 再交渉と契約のあり方
7.5 結論

第8章 ガバナンス
8.1 PPPが良好なガバナンスを必要とする理由
8.2 PPPSとガバナンス:経験
8.3 PPPガバナンスについての提案
8.4 結論

第9章 いかなる場合にどのようにPPPSを実施すべきか
9.1 いかなる場合にPPPSを利用すべきか
制度
PPPは公的資金を解放するのか
効率性とPPP
民営化かPPPか
PPPプレミアム
いかなる場合にPPPを使い、あるいは使うべきでないのか
9.2 PPPSをどのように設計・実施すべきか
契約の設計
ガバナンス
財政会計制度
9.3 PPPの将来

補遺 公式モデル
A.1 基本的前提
計画者の問題
A.2 無差別な結果
A.3 履行
A.4 効率性向上:資金を貸し付ける費用
A.5 効率性向上:契約規定不可能なイノベーション
公共事業
PPP
積極的な努力のための条件
最適契約と履行
PPPプレミアムと契約規定不可能なイノベーション
A.6 仮定を緩和する
需要
計画者の目的関数
イノベーションからの便益

参考文献
事項索引

Eduardo Engel (著, 編集), Ronald D.Fischer (著, 編集), Alexander Galetovic (著, 編集), 安間 匡明 (翻訳)
出版社: きんざい (2017/11/29)、出典:出版社HP