資源・インフラPPP/プロジェクトファイナンスの基礎理論

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インフラの理論がわかる!

本書は、PPPの中でもプロジェクトの基礎理論とプロジェクトファイナンスの基礎理論を解説した本です。基本的な内容だけでなく、プロジェクトやプロジェクトファイナンスで気になるポイントの背景やそれぞれで押さえておきたい特徴など比較的具体的なテーマを詳細に深掘りしています。

樋口 孝夫 (著)
出版社: きんざい (2014/6/23)、出典:出版社HP

推薦のことば

国内外での投資事業およびその資金調達に携わる方々、大規模な事業のビ ジネスに関心をもっている学生や研究者に、本書を読むことをぜひ薦めたい。
プロジェクトファイナンスは、わかりづらい代物である。人によってプロ ジェクトファイナンスについての評価・見方が異なるからである。実際のと ころ、ディールの現場でもさまざまな意見が語られ、まことしやかに伝承される。

たとえば、1プロジェクトファイナンスは、若い担当者だけが取り組むに 値する単なる金融実務にすぎない。2膨大な契約書類は、弁護士を儲けさせ るだけのもので、時間とコストの無駄。3資金力のあるスポンサーならプロ ジェクトファイナンスを利用する必要はない。4経験のある優良スポンサーがいれば、貸付リスクなどないも同然であり、契約書も紙1枚で十分。

5イ ンフラ事業などでは、対象事業の契約ストラクチャーさえしっかりしていれ ばよく、初体験のスポンサーでもプロジェクトファイナンスで貸すことがで きる。6貸し手によるステップインはしょせん空想にすぎず、これを可能と する仕組み・契約は無駄至極である。7そこに費やされる膨大なエネルギー のすべては不要な回り道であり、すべてのプロセスは貸し手側の自己満足に すぎない。8プロジェクトファイナンスは、債権保全がしっかりしていて、 事業の経済性やカントリーリスクが変化しても安心安全だ。9それは突き詰 めるところ倒産隔離が目的である。10わが国のプロジェクトファイナンスも 外国のものも内容は基本的に同じである。

こうした意見・見方のなかには、単純な誤りもある。一方で、必ずしも間違いではないが、見方があまりに一面的すぎるものもある。したがって、初 心者の多くは、プロジェクトファイナンスに接した初期の段階からった見 力を周囲から植えつけられることがある。

プロジェクトファイナンスは、金融の一手法であるが標準化ができていない面もあって、厳格な金融規律や理想的な契約構造が、現場における実務的 要求やバランスのとれた総合的判断と、頻繁に交錯・衝突する実務作業であ る。言い換えれば、理念・理屈が正しく貫かれるべき事項もあれば、実質的 なビジネス判断が大きく優先することもある。

何が守られるべき金科玉条の ルールで、何が柔軟に判断されるべきなのかは、時に判然としない。したがっ て、スポンサーであれ、レンダーであれ、契約交渉をリードするためには相 当の経験、バランスのとれたリスク評価と総合的な判断力が求められる。一 定程度のディール経験を重ねていくと、複数の案件を貫いているこの世界の 真髄が少しずつみえてくるようになる。

しかしながら、回数を重ねて案件を担当していれば、プロジェクトファイ ナンスの基本的な原理原則が、必ずしも簡単に、ごく自然に身についていく わけではない。実務経験、プロジェクトの資金調達交渉体験を重ねるなかで、 本当にこの分野をよく理解している専門家に、原理原則に立ち返った講釈や 確認をしてもらうことを通じて、はじめて「そういうことか」と理解できるようになってくる。

ところが、実際にはディールの現場は、火事場のように 混乱していて、原理原則を確認する暇を与えられることなどなく、若い担当 者はリーダーの指示をいわれたままにこなすしかない。そして、1つの ディールを終えれば別の新しい案件のインフォメモを作成する(あるいは読 む)ことに奔走している。特に優秀な先輩たちはお客さんから引っ張りだこで、なかなか時間をゆっくりとって後輩たちに極意を教えてくれるわけではない。

いまから約15年前、本著者の樋口氏、松井毅氏(現・大阪ガス株式会社執行 役員)と私の3人は、一時期同じ国際協力銀行のプロジェクトファイナンス の現場でディールに取り組み、案件を離れた場でも、プロジェクトファイナ ンスの本来のあり方論についての議論を重ねた。樋口氏は、チームの解散後 も国内のPFIにかかわり、その問題意識を継続してきた。私はある時、樋口氏と共著で本書と同様の企画を試みたが、日々の些事にまみれ、逆に乗り気 になった樋口氏の期待に応えられず挫折してしまったが、辛抱強い樋口氏は本書を単著で完成した。

日本国内の PFI の適切な発展、本邦企業のいっそうの海外事業展開、そし てわが国金融のさらなる発展を祈念して、若い読者が案件に取り組みながら 本書を熟読することを強く期待している。

2014年4月
国際協力銀行 執行役員・企画管理部門長
京都大学経営管理大学院 客員教授
福井県立大学客員教授
安間匡明

樋口 孝夫 (著)
出版社: きんざい (2014/6/23)、出典:出版社HP

目次

第Ⅰ編 序論
1 本書の目的
(1) ホスト国・オフテイカーからの観点
(2) 民間事業者からの観点
(3) シニア・レンダーからの観点

2 関係当事者
(1) ホスト国・オフテイカー
(2) スポンサー(株主)
(3) プロジェクト会社
(4) O&M オペレーター
(5) EPC コントラクター
(6) シニア・レンダー
(7) 独立コンサルタント(エンジニア)

3 契約関係
(1) プロジェクト関連契約
(ⅰ) 事業契約(オフテイク契約)
(ⅱ) O&M 契約
(ⅲ) EPC契約
(ⅳ) スポンサー劣後貸付契約
(ⅴ) プロジェクト・マネージメント・サービス契約

(2) 融資関連契約
(ⅰ) 優先貸付契約
(ⅱ) スポンサー・サポート契約
(ⅲ) 担保関連契約
(ⅳ) 直接協定
(ⅴ) コンサルタント契約

4 2つのケース
(1) プロジェクト会社がマーケット・リスクをとるケース(ケース1)
(2) プロジェクト会社がマーケット・リスクをとらないケース (ケース2)

第Ⅱ編 資源・インフラ PPP プロジェクトの基礎理論
1 資源・インフラ PPPプロジェクトの内容
(1) BOT 形式のプロジェクト
(2) BLT 形式のプロジェクトとの相違
(3) BOTとPFI および PPPとの関係
(4) PFI と PPPとの関係
(5) 施設の設計・建設を含まない単なる物・サービスの提供の PPP
(6) DBOプロジェクト
(7) ハコ物 PFI

2 資源・インフラ PPPプロジェクトが用いられる理由
(1) 資源・インフラ PPP プロジェクトにおける「富」の源泉

(2) ホスト国・オフテイカーにとってのメリットを計る指標
(ⅰ) バリュー・フォー・マネー
(ⅱ) アディショナリティ
(ⅲ) 財政にかわる景気刺激および公共のバランスシートにおける オフバランス
(ⅳ) 「国・地方公共団体にお金がないことから民間のお金を使う」は本質的に誤り

(3) スポンサーにとってのメリットを計る指標

3 資源・インフラ PPP プロジェクトの本質
(1) 資源・インフラ PPP プロジェクトで SPC が用いられる理由
(ⅰ) 複数のスポンサーの存在が理由か
(ⅱ) プロジェクトファイナンスが理由か
(ⅲ) スポンサーからの倒産隔離が理由か
(ⅳ) 資源・インフラ PPP プロジェクトに対するモニタリングが理由か

(2) 資源・インフラ PPPプロジェクトで SPC であるプロジェクト 会社が用いられる真の理由 資源・インフラ PPP プロジェクトに おける民間事業者の「投資」
(ⅰ) スポンサーによる金員の拠出
(ⅱ) スポンサーへの利益のための事業が行われること
(ⅲ) スポンサーにより拠出された金員の資金使途—事業は運営 が対象
(ⅳ) 「投資」における有限責任
(ⅴ) ホスト国・オフテイカーがスポンサーやプロジェクト会社からの各業務の受託者と基本契約を締結することの妥当性
(ⅵ)事業契約におけるリスクが民間事業者に移転することの意味

4 資源・インフラ PPPプロジェクトの特徴
(1) 資源・インフラ PPPプロジェクトは、運営が主体であること
(2) オーナーオペレーターの原則・
(3) スポンサーと EPC コントラクターとの利益相反

(4) 事業の単一性の原則およびプロジェクト会社は特別目的会社で あること
(ⅰ) 事業の単一性の原則
(ⅱ) プロジェクト会社は特別目的会社であること

(5) バック・トゥ・バックの規定およびリスクのパススルーなら びにプロジェクト会社のペーパー・カンパニー化
(ⅰ) バック・トゥ・バックの規定およびリスクのパス・スルー
(ⅱ) プロジェクト会社のペーパー・カンパニー化

(6) シングル・ポイント・レスポンシビリティの原則
(ⅰ) O&M 業務におけるシングル・ポイント・レスポンシビリティの原則
(ⅱ) EPC 業務におけるシングル・ポイント・レスポンシビリティの原則
(ⅲ) O&M 業務と EPC業務においてシングル・ポイント・レスポンシビリティの原則が求められる根拠の相違
(ⅳ) シングル・ポイント・レスポンシビリティの原則が求められるその他の業務

(7) スポンサー兼O&M オペレーターが資源・インフラ PPP プロジェクトの主役
(ⅰ) スポンサー O&M オペレーターによる資源・インフラ PPP プロジェクト全体の統括
(ⅱ) スポンサー兼 O&M オペレーターの事業遂行能力の重要性
(ⅲ)プルーブン・テクノロジーの原則
(ⅳ) 資源・インフラ PPPプロジェクトの格付
(ⅴ) 資源・インフラ PPP プロジェクトの事業期間
(ⅵ) ホスト国・オフテイカーが資源・インフラ PPP プロジェクトの入札段階で審査すべき項目

(8) 設計・建設期間および運営期間
(ⅰ) 設計・建設期間
(ⅱ) 運営期間
(ⅲ) 時系列の観点からのキャッシュフロー

(9) 2種類の資源・インフラ PPPプロジェクト
(ⅰ) マーケット・リスク・テイク型
(ⅱ) 利用可能状態に対する支払型
(ⅲ) テイク・オア・ペイ
(ⅳ) テイク・オア・ペイとアベイラビリティ・フィーとの相違点

(10) 事業期間における事業の固定化
(11) プロジェクト会社はお金のない会社
(12) 資源・インフラ PPP プロジェクトの困難性およびサスティナビリティ

5 主要なプロジェクト関連契約の特徴
(1) 事業契約(オフテイク契約)の特徴
(ⅰ) リスク分担
(ⅱ) 事業契約上の対価
(ⅲ)利用可能状態に対する支払型におけるプロジェクト会社のリ スクの負い方
(ⅳ)プロジェクト終了時にプロジェクトに係る施設をホスト国・ オフテイカーに譲渡する理由

(2) O&M契約の特徴

(3) EPC契約の特徴
(ⅰ) EPC業務の対価
(ⅱ) 性能未達に係る損害賠償の予約

第II編 プロジェクトファイナンスの基礎理論
1 プロジェクトファイナンスの内容
(1) プロジェクトファイナンスの定義
(2) ファイナンスリースを利用した航空機ファイナンスとの相違
(3) 証券化との相違
(4) 事業と資産との相違

2 プロジェクトファイナンスが用いられる理由
(1) プロジェクトファイナンスにおける「富」の源泉
(2) スポンサーにとってのプロジェクトファイナンスのメリット
(ⅰ)プロジェクトファイナンスによるスポンサーの Equity-IRR の向上
(ⅱ) スポンサーの貸付債務に関する法的責任の限定および貸借対照表からの貸付債務のオフバランス

(3) シニア・レンダーにとってのプロジェクトファイナンスのメリット

(4) スポンサーにとってのプロジェクトファイナンスの限界・デメリット
(ⅰ) プロジェクトファイナンスを受けることができるプロジェクトの限定
(ⅱ) プロジェクトファイナンスを受けることができるスポンサーの限定
(ⅲ) 用いることができる技術の限界
(iv) プロジェクトファイナンスに係る費用および時間
(v) シニア・レンダーによるプロジェクト会社の事業遂行に対す るコントロール

(5) シニア・レンダーにとってのプロジェクトファイナンスの限界

(6) ホスト国・オフテイカーにとってのプロジェクトファイナンス のメリットおよび限界
(ⅰ) VFM の向上
(ⅱ) 資源・インフラ PPPプロジェクトの選別機能
(ⅲ) スポンサーの選別機能
(iv) 資源・インフラ PPP プロジェクトのモニタリング機能
(v) プロジェクト立直し機能

3 プロジェクトファイナンスの本質
(1) スポンサーの事業遂行能力に依拠しているファイナンス
(2) 長期の事業金融
(3) シニア・レンダーによるプロジェクトの審査
(ⅰ) スポンサーの事業遂行能力および信用力ならびに用いられる 技術
(ⅱ)プロジェクトの経済性(収益性)
(ⅲ) 対象となる資源・インフラ PPP プロジェクトに含まれるさ まざまなリスク
(iv) 対象となる資源・インフラ PPP プロジェクトのサスティナ ビリティ
(4) シニア・レンダーによるモニタリング

4 プロジェクトファイナンスの特徴
(1) デット・エクイティ・レシオ
(ⅰ) デット・エクイティ・レシオの意味
(ⅱ)デット・エクイティ・レシオが求められる期間
(ⅲ) エクイティ・ラスト
(iv) 運営期間におけるデットエクイティ・レシオ維持には合理性はない

(2) ウォーターフォール規定
(ⅰ) ウォーターフォール規定の内容
(ⅱ) ①公租公課等、O&M 業務委託料および②プロジェクトファイナンスのシニア・ローンの元利金の支払の順位
(ⅲ) ②プロジェクトファイナンスのシニア・ローンの元利金および③株式・劣後ローンに係る配当等の支払の順位
(iv) ウォーターフォール規定における支払順序は、一定期間ごと に適用されること
(v) 配当等の要件
(vi)配当等支払準備口座および配当等支払口座が別々に開設され る理由

(3) キャッシュフロー・ストラクチャー
(ⅰ) スポンサー(株主)による劣後ローンの供与
(ⅱ) スポンサーへの金員の支払の名目は重要でない
(ⅲ) DSCR、LLCRおよびPLCR

5 主要な融資関連契約の特徴
(1) 財務的完工および完工保証
(ⅰ) 財務的完工の内容
(ⅱ) 財務的完工が規定される目的
(ⅲ) 完工保証

(2) スポンサー・サポート
(3) セキュリティ・パッケージ

(4) プロジェクトファイナンスにおける担保権
(ⅰ) プロジェクトファイナンスにおいて担保権が設定される理由 消極的(防御的)理由
(ⅱ) プロジェクトファイナンスにおいて担保権が設定される理由 積極的理由
(ⅲ) ①旧スポンサーが有する株式および劣後ローン債権の新スポンサーに対する譲渡、ならびに②旧プロジェクト会社のすべての資産の新スポンサーが有する新プロジェクト会社に対する譲渡のメリット・デメリット
(iv) 担保権設定の時期
(v) 担保権の実行に求められる手続
(vi)プロジェクト関連契約のうえへの担保権の設定
(vii)事業契約のうえへの担保権の設定

(5) 直接協定およびステップ・インの権利
(ⅰ) プロジェクト関連契約(上のプロジェクト会社の権利)のうえに設定された担保権に関する対抗要件の具備
(ⅱ) ステップ・インの権利
(ⅲ) プロジェクト関連契約に係るプロジェクト関係当事者のプロジェクト関連契約上の義務を遵守するシニア・レンダーに対する義務

あとがき 志の高い若き諸君のために
事項索引

樋口 孝夫 (著)
出版社: きんざい (2014/6/23)、出典:出版社HP