PPPの知識(日経文庫)

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PPPがよくわかる

本書は、PPPの基本的な内容を解説している本です。PPPが求められる理由や英国での事例と限界、具体的な手法の紹介や成功させつためのポイントについてまとめています。後半では、自治体と民間企業の事例の紹介やPPPのコンセプトが将来どのように活用されていくのかなど、様々なテーマを取り上げています。

町田 裕彦 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2009/11/14)、出典:出版社HP

まえがき

今、我が国はかつて経験したことのない少子高齢化の大きな潮流に翻弄されつつあります。少子化に伴う人口減少により公的施設等へのニーズが縮減していく一方、高度経済成長期に集中的に投資した公共施設等が老朽化したことに伴う改築更新のための財政負担が、厳しい財政状況のもとで地方自治体にボディブローのようにきいてくることが見込まれます。

公民連携、PPP (Public Private Partnership)という今まで聞き慣れなかった用語が紙上を賑わすことが多くなったことと、これらの状況の変化は無関係ではありません。公民連携、PPPとは、このような厳しい状況変化に対応できるよう、公共と民間が幅広く連携していくことなのです。「PPPとは何かというとその定義は茫漠としたもので明確なものはありませんが、本書では、一般的にPPPといった際に含まれるもの、そして新たなニーズに対応して最近PPPに含まれるようになったものについて紹介しています。ここでひとつ留意しておかなくてはならないのは、PPPには、いくつかのプリンシプル(原理、原則)があるということです。このプリンシプルの代表的なものはバリュー・フォー・マネー(VFM)評価といい、納税者にとっての価値が最大化するかどうかを評価基準とするものです。

本書では、PFI(民間資金を活用した社会資本整備)の限界にも触れた上で、事例に則した多様なPPPのスキームの整備に向かう英国の状況も解説しました。また、日本にとって今後の大切な行政課題でもある、公共施設等の老朽化に伴う改築更新等について、PPPを使った柔軟なアプローチを提案するとともに、その際に留意すべきプリンシプルについて整理しました。

PPPは、「官から民へ」というキャッチフレーズのもと、完全に民間に移行するという考え方ではなく、公共と民間がそれぞれ異なるリソースと行動原理を有していることを前提としたうえで、協働して解決策を構築していくことがその考え方のコアとなっています。

課題に対する解決策が見えにくい今のような時期こそ、幅広い英知を集める手法としてPPPは様々な分野で取り組まれることが望まれています。PPP手法の活用により、課題について柔軟に、そしてもっとも適切なスキームを構築していく、いわば、新しいフロンティアが開かれていくことを今望んでやみません。最後になりましたが、本書を出版する機会を与えていただいた日本経済新聞出版社に感謝するとともに、執筆にあたり様々なご協力をいただいた鹿島の瀬谷啓二部長、東京都の久米栄一 副参事、横浜市の嶋田稔課長、日本総合研究所の石田直美主任研究員、そして、なによりもPwCアドバイザリー時代以来、有意義な意見交換をさせていただき、今回の出版にあたってもお忙しい中様々なアドバイスをいただいた野田由美子前横浜市副市長に深い感謝の意を表します。

2009年10月
町田 裕彦

町田 裕彦 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2009/11/14)、出典:出版社HP

目次

[Ⅰ]なぜ今、PPP(公民連携)が求められるのか
1 PPP(公民連携)とは何か
1 PPPの定義
2 PPPの具体的な手法

2 PPPを取り巻く状況
1 公共と民間を取り巻く状況の変化と課題
2 これらの課題に対する解決策としてのPPP

[Ⅱ]英国におけるPFIの進化とその限界
1 英国におけるPFI導入の背景
1 小さな政府の実現に向けて
2 低い公共投資水準と施設の劣悪な状況からの脱却
3 財務省の中央集権的な一元管理
4 2003年におきたPFIへの批判

2 公民のコミュニケーションの必要性の再認識とその制度化
1 運営段階における公民のコミュニケーション
2 調達段階における公民のコミュニケーション

3 公共が資金を供給するPFIスキームの登場
1 クレジット・ギャランティ・ファイナンス(CGF)
2 CGFを活用したパイロットプロジェクト
3 CGFの今後の展開

4 よりニーズに即した多様なスキームの整備
1 BSF(将来にわたる学校建設計画)
2 LIFT (NHS地域向上ファイナンストラスト)

5 PFIのコモディティ化

6 PFIの限界と新たな方向
1 PFIの限界
2 多様なスキーム①―コンセッション
3 多様なスキーム②―戦略的インフラパートナーシップ
4 多様なスキーム③―インテグレーター
5 新たな方向に向けて

[Ⅲ]PPPの具体的な手法
1 3つに分けられるPPPの領域

2 民間による公共サービスの提供
1 指定管理者制度—M
2 市場化テストーツ

3 手法の応用例―公的施設等のファシリティマネジメントにおける民の活用
1 ファシリティマネジメントという考え方
2 PFIによるファシリティマネジメント―英国社会保険省の例―
3 ファシリティマネジメントにPFIを活用する際の課題―PFIからPPPへ―

4 公有資産の活用による事業創出
1 WMI
2 ネーミングライツ
3 定期借地権の設定等

5 民間活動への支援
1 構造改革特区
2 ビジネスマッチング

[Ⅳ]PPPを成功に導くために
1 共通の判断基準としてのVFM
1 納税者にとっての価値最大化のための基準
2 ライフサイクルコストで評価すべきもの
3 リスクをどう評価し、どのようにVFMに反映させていくかが鍵
4 評価プロセスや評価方法に透明性を確保すべきこと

2 ブレークスルーの活用
1 性能発注に基づくライフサイクルの一括管理
2 リスクの最適配分
3 業績連動払い
4 公共と民間の双方向のコミュニケーションの必要性

[V]自治体・民間企業の先進的な取り組み
1 横浜市の例
1 民の活力を幅広く導入
2 共創推進事業本部の設置
3 共創推進の指針について
4 具体的な取り組み
5 今後の展開

2 伊藤忠商事の例
1 包括連携協定
2 PPP手法としての包括連携協定の限界と課題

[Ⅵ]今後のキーコンセプトとしてのPPP
1 望まれるPPPコンセプトの活用

2 公有資産の活用にかかわるPPPの課題
1 民間のPPP参加へのインセンティブの必要性
2 PPPにかかわるVFM評価のルール化の必要性
3 マスタープランの策定の必要性
4 事業の実施が適切になされることを担保していく仕組みの必要性

3 今後のPPPの展望
1 PPPのあり方―ジョイントベンチャーの提案
2 PPPの推進による公民の融合へ
3 地域発のパラダイムシフトに向けて

参考文献・資料

町田 裕彦 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2009/11/14)、出典:出版社HP