コンサルが教える廃棄物管理のルールと実務

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Q&Aで学ぶ廃棄物管理

複雑でわかりにくい法律である廃棄物処理法をQ&A形式で記載することで、自分の知りたいテーマに合わせて学ことができることが本書の特徴です。また、一問完結型になっているので、廃棄物処理担当ではない方への説明をする際にも役立つ一冊となっています。

イーバリュー環境コンサルティング事業部 (著)
出版社: 産業環境管理協会 (2018/10/1)、出典:出版社HP

まえがき

「もっと多くの人が廃棄物処理法を理解してくれたら……」
「廃棄物管理に必要な人もコストも足りない……」
「どうして会社は廃棄物管理のリスクをわかってくれないのだろう?」
廃棄物管理の担当者である皆さまはこのように思われたことはありませんか?
廃棄物処理法はとても複雑で難しい法律です。読者の皆さまはこうした書籍を手にとっているという時点で、そのことをある程度理解していると思います。しかし担当者個人が理解していても、組織全体のリスク管理はなかなかうまくいきません。
本書はこうした廃棄物管理の担当者共通の課題に対するひとつの解決策を提示したものです。これらの内容は、月刊「環境管理」の連載記事(2016年4月~ 2018年9月現在連載継続中)や、イーバリュー株式会社のホームページ上に掲載しているコラムを再構築したものです。これらの記事やコラムは、環境コンサルティング企業として実際にクライアントから現場で受けた相談内容が元になっています。
本書は、廃棄物管理に関する「疑問」とそれに対する「答え」というQ&A形式で構成されています。Q&A形式なので最初から順番に読み進める必要はありません。
順番にこだわらず、目次から気になるテーマを選びその疑問の解消に役立てていただければ結構です。
また、本書はそれぞれのQ&Aで極力完結するように構成されています。つまり、重要な条文や通知の内容はさまざまなテーマにまたがって何度も登場します。この「一問完結型」の形式は、廃棄物管理担当者以外の方に対して特に真価を発揮します。
例えば、「廃棄物管理に関して現状ではリスクが高いので、もう少しコストをかけて管理体制を強化したい」とご自身の会社で提案したとします。具体的には「マニフェストの記載に不備が多いので管理ソフトを導入したい」といった内容です。
すると上司や役員の方たちから「そんな細かなミスで罰則が出た事例がどれだけあるのか?」と問われることになります。
こうした疑問が生まれるのは「不法投棄に巻き込まれた際に、委託契約書やマニフェストなどの法定書類を適切に管理していなかっただけで排出事業者が厳しく追及される」という排出事業者責任の大前提を十分に理解されていないことが原因です。しかし、その理解を得るにはマニフェストの内容だけでなく、排出事業者責任、罰則規定や行政処分の要件なども、必要が生じることになります。経営層に廃棄物のリスクについて正しい理解を得ることは容易ではありません。こうしたギャップが生まれる状況下において「一問完結型」が効果を発揮します。
例えば本書のQ6では「細かなミスは行政に注意されてから直せばいいの?」と、いう疑問に対し、実際に罰則が適用されるリスクはもちろん、不法投棄に巻き込まれた場合のリスクや最近になって取り締まりが強化されている現状も解説しています。この解説を読むことで、細かなミスが引き起こし得るリスクに関するひと通りの理解が得られます。もし実際に上記のようなケースに直面した場合には、該当ページを参考にして上司や経営層の方たちを説得する稟議書を作成することもできると思います。
このように、本書は廃棄物管理担当者自身の知識強化のためだけでなく、社内関係者や経営層を巻き込むための強力な武器となります。ぜひ本書を手に、さまざまな廃棄物管理の改善活動に取り組んでいただきたいと思います。

2018年10月
イーバリュー株式会社 環境コンサルティング事業部

イーバリュー環境コンサルティング事業部 (著)
出版社: 産業環境管理協会 (2018/10/1)、出典:出版社HP

CONTENTS 目次

まえがき
《廃棄物処理法の基礎知識》廃棄物管理の基本

第1章 | 廃棄物管理を取り巻く情勢と動向 | 廃棄物処理法と排出事業者責任
Q01 廃棄物処理業者はプロだから法律を守って適正処理をしてくれるの?
Q02 廃棄物の管理は管理会社に任せておけば安心なの?
Q03 分社化したグループ会社の廃棄物もまとめて処理していいの?
Q04 企業はゼロエミッションを目指さなければならないの?
Q05 法律ではNGだけど罰則事例がない規制はあまり気にしなくてもいいの?
Q06 廃棄物管理上の細かなミスは行政に注意されてから直せばいいの?
Q07 建設工事に伴う廃棄物の排出事業者は元請業者だから発注者には責任がないの?
Q08 建設業の許可をもたない設備工事業者も
元請なら排出事業者としての責任があるの?
Q09 事業者が廃棄物を自ら処理するなら面倒な規制はかからないの?
Q10 梱包材が廃棄物になった場合、排出事業者は誰になるの?
Q11 清掃業者に清掃を委託しましたが、
清掃を行った後に発生する廃棄物の排出事業者は誰になるの?
Q12 法令に関する用語をよく耳にしますが、
廃棄物処理法、施行令、施行規則、通知どう違うの?

第2章 | 廃棄物の定義・区分・管理 | 廃棄物・有価物・専ら物などの判断
Q13 古紙、くず鉄、あきびん類、古繊維は「専ら物」だから
廃棄物処理法は関係ないの?
Q14 廃棄物処理法には専ら物のような特例制度はほかにもあるの?
Q15 有価物化プロジェクトでコスト改善を図っていますが、
有価で買い取ってくれれば廃棄物ではないの?
Q16 食料品メーカーの倉庫で保管していた賞味期限切れの
食料品を廃棄する場合、これは産業廃棄物? 一般廃棄物?
Q17 リサイクル目的で以前は有価売却していましたが、景気の影響で輸送費を
逆に支払うことになりました。どんな対応をすればいいの?
Q18 水銀廃棄物に関する法改正がありましたが、
蛍光ランプや水銀電池などはどのような処理業者に出せばいいの?
Q19 健康影響のリスクが高いことから規制対象になったRCFって何?
Q20 保管場所以外に仮置きすることが多いのですが、
何日くらいまでなら廃棄物の仮置きは許されるの?
Q21 法改正で新たに規制されることになった「有害使用済機器」って何?

第3章 | 処理委託先の選定 | コストに限らない多くの判断要素,
Q22 処理委託をする前に処理業者の信頼性を図るポイントは何?
Q23 処理業者の実地確認においてもっとも重要なチェックポイントは何?
Q24 実地確認の確認事項として参考になるチェックシートはあるの?
Q25 廃棄物を処理委託する場合、処理費は安ければ安いほどいいの?
Q26 処理業者から処理困難通知を受け取りました。
どんな対応をしなければならないの?
Q27 廃棄物管理において災害が起きた場合に備えておくことはあるの?

第4章 | 実務で取り扱う書類 | 排出事業者責任を全うする書類作成
Q28 委託契約書やマニフェストは処理業者が作成してもいいの?
Q29 委託契約書は一般的に出回っているひな形を使っていれば問題ないの?
Q30 委託契約書に「別紙見積のとおり」「許可証のとおり」と記載しても大丈夫なの?
Q31 WDSはすべての委託契約書に添付しなければいけないの?
Q32 許可証の有効期限が過ぎていたので処理業者から取り寄せようとしたら
更新申請中とのことでした。この場合はどうしたらいいの?
Q33 マニフェストを交付したら後は戻ってくるのを待っているだけでいいの?
Q34 電子マニフェスト登録の3日ルールはどのように変わったの?
Q35 社内でマニフェストを電子化すると工数が増えるといわれてしまいました。
電子マニフェストは手間がかかるの?
Q36 電子マニフェストでは複数品目の登録や有価物・到着時有価物の管理もできるの?
Q37 委託契約書や覚書に貼る収入印紙代はどのように決めたらいいの?

第5章 | 行政に提出する書類 | 年度末に集中する行政報告を忘れずに!
Q38 マニフェスト交付等状況報告書はどうやってつくればいいの?
Q39 マニフェスト交付等状況報告書の排出量が1,000t未満でしたが、
多量排出事業者に該当するの?
Q40 PCB廃棄物の保管等の届出に関する改正がありましたが、
いったい何が変わったの?
Q41 法律で定められている届出や報告以外にも
都道府県知事等に提出する書類はあるの?

第6章 | 番外編 | 異例の事態への対応や規制動向
Q42 敷地内の土地に埋まっていた廃棄物を掘り起こしてしまったらどうしたらいいの? …
Q43 平成29年改正を経て廃棄物処理法は今後どのような方向に向かうの?・・

索引

推薦のことば
推薦のコメント

廃棄物処理法の基礎知識
廃棄物管理の基本

ここでは、具体的なテーマを解説する前に、Q&Aを読み解いていく上で最低限必要な廃棄物処理法の基礎知識について説明します。これらは排出事業者にとって廃棄物管理の基本的な事項です。

廃棄物とは
廃棄物処理法(正式名称:廃棄物の処理及び清掃に関する法律)はその名のとおり、廃棄物に関する規制について定められています。廃棄物は法律で次のように定義されています。

この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)をいう。
(法第2条第1項)

つまり、固形状、液状の不要物全般が廃棄物となっているわけです。しかしこれでもまだ曖昧なので、次のように通知で補足がされています。

廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不安になったものをいい、これらに該当するか否かは、占有者の意思、その性状等を総合的に調べるべきものであつて、排出された時点で客観的に廃棄物として観念できるものではないこと
(廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正について(通知)/昭和52年3月26日・環計第37号)

廃棄物を一言で定義するのは困難ですが、あえていえば、持ち主にとって利用価値がなく、お金を出して買ってくれる人もいないものが廃棄物ということです。
さらに2013(平成25)年3月の通知では、廃棄物に該当するかどうかは、
①物の性状(品質や有害性など)
②排出の状況(計画性など)
③通常の取扱い形態(市場性など)
④取引価値の有無(経済合理性など)
⑤占有者の意思
などを総合的に勘案して判断することと明記されています。一般にこれを「総合判断説」と呼びます。

廃棄物の区分
次に廃棄物の中での区分があります。大きくは産業廃棄物と一般廃棄物とに分けられます。
産業廃棄物とは、廃棄物の中でも事業活動に伴って生じたもので、法令で定める20種類に該当するものをいいます(表1)。
また、一般廃棄物は法律では次のように定義されています。

この法律において「一般廃棄物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう。
(法第2条第2項)

つまり産業廃棄物を具体的に定め、それ以外の廃棄物を「一般廃棄物」としています。

業種指定品目
さらにこの中で、木くずや紙くずなど(表1の13 ~ 19)は「建設業に係るもの」などのように、その廃棄物を排出する業種が限定されています。これを業種指定品目といい、業種指定品目にあたる廃棄物は、たとえ事業活動に伴って排出された廃棄物でも、特定の業種の事業活動から発生したもの以外は事業系一般廃棄物として取り扱います。「廃棄物の区分を判別する流れを図1に示します。

図1/廃棄物の区分を判別する流れ

委託基準と保管基準
産業廃棄物に該当する廃棄物は、事業者が自ら処理をするか、委託基準を守って許可業者に委託する必要があります。委託基準とは、書面による委託契約の締結などについて定められています。具体的には主に次のような項目があります。

①許可業者への委託
②委託する業務が許可内容の範囲に含まれていること
③契約書などの書類の保存
④収集運搬・処分を委託する場合は、それぞれの業者と直接契約すること

また、廃棄物の処理を委託するまでの間、生活環境保全上の支障がないように保管基準を守ることも排出事業者に義務付けられています。

特別管理産業廃棄物
産業廃棄物の中には、有害物質が含有する等の基準に該当する廃棄物という区分があります。特別管理産業廃棄物の委託先は、特別管理産業廃棄物収集運搬業・処分業の許可が必要です。排出事業者は特別管理産業廃棄物の種類、性状、取り扱い上の注意事項などを委託先に対してあらかじめ書面で通知します。また、事業場ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者の設置が必要になるなど、より厳しい管理が必要とされます。特別管理産業廃棄物の種類などを表2に示します。

委託後の流れ
廃棄物の処理を委託する場合、マニフェスト(正式名称:産業廃棄物管理票) によって処理の流れを管理することになります。マニフェストは7枚綴りの複写伝票で、排出事業者が交付します。交付後、運搬終了、中間処理終了、再生もしくは最終処分終了のタイミングでそれぞれ控え伝票の返送があります。
返送は、収集運搬、中間処理は90日(特別管理産業廃棄物の場合は60日)、 最終処分は180日以内に排出事業者の手元に届いていなければなりません。 また、処理業者は、収集運搬や中間処理が終わってから(最終処分は最終処分が終了した通知を受けてから)10日(電子マニフェストでは3日)以内に排出事 業者に返送しなければならないこととなっています。 「返送期限の90日、180日というのは、マニフェスト交付から各処理が終了したことを確認する排出事業者側の期限です。10日というのは、各処理が終 了してから返送するまでの処理業者側の期限です。
すべての処理終了報告をマニフェストの返送で確認できたら、最後まで処理が行われたことを意味します。マニフェストには、紙で運用する従来の紙マニ フェストのほかに、情報をインターネット上でやり取りをする電子マニフェス トがあります。
紙マニフェストは1年間の交付実績を集計し、マニフェスト交付等状況報告書(正式名称:産業廃棄物管理票交付等状況報告書)として管轄する自治体に報告する必要がありますが、電子マニフェストは環境大臣が指定した情報処理セ ンターに情報を登録するため、改めて集計して報告する必要はありません。
違反に対する罰則
このほかにも廃棄物処理法にはさまざまな規制があり、さらに地方自治体が個別に定める条例等も含めるとその内容は非常に複雑です。しかし法律ですから当然「知らなかった」は通用しません。違反行為に対しては厳しい罰則も科せられます(表3)。
以降の各Q&Aでは、特に疑問が多い内容について順序立てて解説をしていきます。

表3/排出事業者の主要罰則
廃棄物処理法においては、違反行為をした法人の代表者、代理人、使用人その他の従業員が刑事処分(罰則)の対象になります。

イーバリュー環境コンサルティング事業部 (著)
出版社: 産業環境管理協会 (2018/10/1)、出典:出版社HP