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【最新 – 日本建築を学ぶおすすめ本 – 特徴、歴史、構造も知る!】も確認する
日本の建築美を感じられる1冊
1999年初版の増補新装版で、解説文、構成、写真等当初の流れを確実に引き継いでいます。
様式について写真付きで説明がとても細かく、比較検討ができます。日本建築の歴史を知りたい人にぜひお勧めしたい一冊です。
目次
はじめに
1章
縄文・弥生・古墳時代 先史時代の建築
住まいの黎明期<旧石器時代>
定住集落の出現<縄文時代草創期〜早期>
巨大建築の発生<縄文時代前期〜晚期>
環濠集落と高床倉庫<弥生時代>
豪族居館と家形埴輪<古墳時代>
2章 古代Ⅰ
飛鳥・奈良・平安時代 寺院・神社
飛鳥・奈良時代の寺院建築
平安時代の寺院建築
飛鳥・奈良・平安時代の神社建築
懸造の誕生
伊勢神宮の式年造営
3章 古代Ⅱ
飛鳥・奈良・平安時代 宮殿・住宅
飛鳥・奈良時代の宮殿と住宅
平安時代の宮殿
平安時代の住宅
平安時代の庭—『作庭記』に見る石立の原理
4章 中世Ⅰ
鎌倉・南北朝・室町時代 寺院・神社
中国からの新様式1:大仏様
鎌倉時代における南都の建築様式
中国からの新様式2:禅宗様
寺社建築のデザインをかえるもの
地方の発展と寺社建築のデザイン
大勧進重源
長床
5章 中世II
鎌倉・南北朝・室町時代 住宅
鎌倉時代の上層邸宅
南北朝・室町時代の上層邸宅
中世の庶民住居一民家の発達
寝殿造から書院等への様式変化
会所の座敷飾り
禅の庭
6章 近世Ⅰ
桃山・江戸時代 城郭・寺院・神社
城郭建築
寺社建築Ⅰ〈16~17世紀〉
寺社建築Ⅱ〈18~19世紀〉
絵様—渦と苦楽
7章 近世Ⅱ
桃山・江戸時代 住宅
概要
支配者層の住宅
茶室と数寄屋風書院造
庶民住宅—民家
江戸の町割
8章 近代
明治・大正・昭和前期 ひながた主義との格闘
はじめに
日本近世・「ひながた」主義からの西洋建築の理解
外国人建築家・折衷主義からの日本理解
日本人建築家による西洋建築理解の展開
近代主義建築の様式的位置づけ
近代数寄屋における「ひながた」主義の乗り越え
螺旋塔と近世のアヴァンギャルドたち
9章 現代
昭和後期・平成 モダニズムの時代からポスト・モダンの時代へ
モダニズム建築とは何か
モダニズムの時代I
モダニズムの時代II
ポスト・モダンの時代
近代建築の保存と再生
阪神・淡路大震災は何をもたらしたか
DOCOMOMOの設立とモダニズム建築再評価の動き
都市再生特別措置法による都市景観の激変
日本建築様式史年表
巻末資料
古代寺院の伽藍配置図
寺院建築様式図と各部の名称
神社建築様式図と各部の名称
住居建築変遷図
建築用語解説
掲載図版データ
図版提供・協力
主要参考文献
索引一遺跡・建造物・人物名
執筆者紹介・奥付
凡例
1 本文中の図版番号は《》で囲んだ
2 本文中の付加的な西暦年・時代区分は〈〉を用いた
3 本文中の人物の生没年は()で囲んだ
4 本文図版が建造物写真でなく図面・復元模型・絵画資料等の場合,それらの図版に関するデータは,巻末の掲載図版データページの当該項目欄に記載した
はじめに
日本建築史の研究は伊東忠太によって始められた。伊東は明治25年〈1892〉,帝国大学の工科大学造家学科を卒業して大学院に進み,日本建築史の研究に取り組んだ。当時,有職故実の一部として住宅史の研究はあったものの,社寺も含む建築の歴史としての研究はなかった。法隆寺が最も古い寺院建築の一つであることは知られていたが現存するその建物が創立当初のものであるかどうかは,全く明らかにされていなかった。しかし伊東は法隆寺の建築様式が他の寺のものと全く異なること,たとえば雲斗・雲肘木のように,他では見られないものであることに着目し,これが現存する最も古いものである可能性があると考え,その研究に着手した。その成果が伊東の『法隆寺建築論』(明治31年<1898>)で,日本最初の本格的な建築史の研究であった。
明治28年に帝国大学を卒業した関野貞は,翌年末から奈良県嘱託(後に技師)として奈良の古建築の保存に携わることとなった。そのとき,建物の建設年代を明らこと,修理において建立時の姿を推定することが,肝要なこととして考えられた。それが分からなければ,事業計画を立てることもできなかった。日本建築様式史の研究は,このような実務上の必要から,急遽進められることになったのである。関野は就任後,わずか半年で,奈良県の古建築80棟を挙げ,その造立年代を記した報告書を県に提出している。
関野のあと,天沼俊一が奈良県技師となり,研究・修理を進め,日本建築様式中はー応整えられた。昭和2年〈1927〉に発行された天沼俊一『日本建築史要』がその成果であり,唯一の通史として広く普及した。
戦後,昭和22年,太田博太郎の『日本建築史序説』が刊行され,3回の改訂増補を経て現在も読み継がれている。建築の様式と構造の発展,機能の変化,工匠の活動という視点から,大きく日本建築史を見通したものであった。
本書の企画は,建築の様式を中心のテーマとして,日本建築史を記述することである。『日本建築史序説』刊行以後,戦後50年の間に蓄積された多くの成果を盛り込むことになった。また,日本建築史というと,原始・古代から江戸時代の終わりまでを取り扱うのが通例であるが,本書では近代・現代も含め,全体の通史とした。読者のご批評を俟つところである。
監修者=太田博太郎+藤井恵介