マッキンゼー流 入社1年目ロジカルシンキングの教科書

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マッキンゼー流ロジカルシンキングのエッセンス

ロジカルシンキングというものに初めて触れる人間でも非常に馴染みやすく、ロジカルシンキングの大枠を理解するには最適の一冊です。施工テクニックもいくつか紹介されているので挑戦してみるのも面白いです。

大嶋 祥誉 (著)
出版社: SBクリエイティブ (2014/4/18)、出典:出版社HP

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講義の前に

最初に、個人的なことをお話しますが、私は「ロジカルシンキング(論理思考)」が大好きな人間ではありません。どちらかといえば「直感」や「いい感じ」といった、自分の感覚を大事にするタイプだと思っています。それなのに、なぜマッキンゼーという、世間のイメージではロジカルシンキングの権化のような場所で修業をして、そのあともコンサルタント、エグゼクティブ・コーチとして「ロジカルシンキング」とは切っても切れない仕事をしているのか。
自分でも不思議なのですが、その理由は、マッキンゼーで体験した「ロジカルシンキング」が、すごくクリエイティブなものだったからだと思っています。
常に「自分なりの答え」「独自の知見」をつくり出そうとする姿勢は、クリエイティブな空気にあふれたラボのような印象でした。

*ゼロ発想”という言葉に象徴されるように、過去の経験や知見をもとにしながら、同時に、ときには無邪気なぐらいそれらに縛られず、「それ、いいね」とみんなを引き寄せるバリューのあるアウトプットを出すことが「当たり前」。
私が経験した「ロジカルシンキング」というのは、その人にしかできないクリエイティブな発想や仕事を生み出すためにあるものだったのです。
社会人になって最初に、その基本を叩き込まれたからこそ、私のように感覚的な人間でも「ロジカルシンキング」を身に付けたいと思ったわけです。
なぜなら「ロジカルシンキング」を武器にすれば、自分の思考がすごくスッキリしてクリエイティブな発想を生かすことができ、みんなに「それ、いいね」と賛同してもらえることが増えるのですから。
皆さんはどうでしょうか。「ロジカルシンキング」って、フレームワークだとか、なんとなく堅苦しいイメージで苦手。もしかしたら、そんなふうに感じている人もいるかもしれません。難しい内容を「理路整然と聞かされる」ような印象もありそうです。言っていることは正しいけれど、なんだかぐっとこない。誰だって、そんなものと付き合いたくはないですよね。この本で、お伝えするのは、それとはまったく逆で、皆さんの魅力やバリューをアップさせるための思考術と行動です。
本当の「ロジカルシンキング」は、「それ、面白い!どうやったらできるの?」と、相手が身を乗り出したくなるような提案や行動を生み出してくれるものなのです。
では早速、ちょっと考えさせられるケースを見ながら、「ロジカルシンキング」のオリエンテーションに入っていきましょう。

目次

講義の前にー

オリエンテーション
女性が喜ぶプレゼントの落とし穴?
クリティカルに考え、ロジカルに展開する

第1講義 論理思考は難しくない! ロジシンの基礎講義
香りのしないコーヒー豆では人は振り向かない
そもそも「論理思考」は、なんの役に立つのか?
論理思考と生まれつきの頭の良さは関係ない?
仕事ができる人ほど、対人で「論理思考」を大切にする
私のこと (My Value)ではなく、私たちのこと(Our Value)にするために
本物の論理思考は、みんなの行動も変えてしまう。
あらゆるビジネスで「論理思考」が必要になっている
本当は怖い「決め付け」の魔力
世の中をぜんぶロジカルに切り取ってみる
ゼロ発想を意識して生きる なぜ「論理的」なだけではダメなのか

第2講義 クリティカルに考える考えを深くするコツ
「知ってるつもり、わかっているつもり」から脱け出す
「相関関係」と「因果関係」を一緒にしない
毎朝バナナを食べると健康にいい?
当たり前のことを言わない
クリティカルな思考の3つの基本姿勢
クリティカルな思考を鍛える7つの習慣

第3講義 ロジカルに展開するわかりやすく伝える方法
説得力のない自分から卒業する
ロジカルにわかりやすく展開するときの3つのポイント
ピラミッドストラクチャーに展開する−頭の中を見渡そう
ピラミッドストラクチャーのつくり方
そもそも、なにからどう考えればいいのか
「演繹法」を使ってみる
まったく新しい思考をしたいとき
「帰納法」を使ってみる なにから話せば説得力が出るのか
「大丈夫です」は、大丈夫ではない

第4講義 クリティカルに発想する。それ、いいね
みんなと同じ発想から脱け出す
自分以外の人になりきって考える
アイデアが出ないのは「論理思考を使っていない」から
独自のユニークな発想ほど、論理思考が大きな武器になる

第5講義 クリシン+ロジシンで独創的な飛躍をする
論理的なだけでは食べていけない
「クリシン+ロジシン」を鍛えるノート
新規事業が盛大にコケるのはなぜ?
自分の考えが「うまくいく」シナリオをつくる
シナリオ分析で「未来」を見に行く
もっと自由に、本当にやるべきことのために生きる
「論理思考」の穴も知っておく

大嶋 祥誉 (著)
出版社: SBクリエイティブ (2014/4/18)、出典:出版社HP

講義のあとに

オリエンテーション
頭がいいのに、仕事もプライベートも なぜか「うまくいかない」人がいるワケ

女性が喜ぶプレゼントの落とし穴?
結婚3年目を迎える共働き30代のKさん夫婦。 広告会社で営業をしている旦那さんのKさんは、ここのところ仕事が忙しく、帰宅はだいたい深夜になっていました。(そういえば、もうすぐ結婚記念日か……)
終電に乗りながら、スマートフォンで《女性が喜ぶプレゼントランキング》というネットの記事を眺めていたKさん。女性が喜ぶプレゼントの1位にアクセサリーがランキングされているのを見ながら、ふと自分の奥さんのことを思い浮かべました。
そして、翌日。仕事の打ち合わせの帰りにジュエリーショップに立ち寄り、奥さんのために、かわいいネックレスを買ったのです。
(最近、一緒に買い物にも行ってなかったからビックリするだろうな)
結婚記念日の夜。その日も終電ぎりぎりで帰宅したKさんは、奥さんの喜ぶ顔を想像しながらサプライズでネックレスの箱を手渡しました。するとー。
奥さんは「ありがとう」とは言ってくれたものの、Kさんの予想に反して、それほど嬉しそうな様子ではありません。いったい、なぜ?
皆さんも、こんな経験があるのではないでしょうか。
相手のために良かれと思ってしたことや、言ったことが、なぜか受け入れられない。決して間違ってはいないはずなのに、伝わらなくて悔しい思いをする。
それどころか「本当に、ちゃんとわかってる?」と相手から不安に思われてしまっり……。 どうすれば、自分がいいと思ったことがちゃんと相手にも受け入れてもらえるようになるのでしょうか。この本では、そんな「正しいはずなのに、うまくいかない」現象を解き明かし、いろんなことが今よりも確実にうまくいくための正解”を論理的に導き出す方法をお伝えしていきます。
もっと日常的にいえば、自分が考えたこと、自分の発言や行動に、相手が笑顔で「いいね」と頷いてくれることが格段に増やせるようになればいいと思いませんか。
さて、先ほどのKさんの話に戻りましょう。じつは、この数週間前、少しだけいつもより早く帰宅できたときに、Kさんの奥さんはKさんに、ファッション情報のサイトを見せながら、ちょっと目を輝かせてこんなことも言っていたのです。
「ねえ、このネックレス良くない?」
このことを覚えていたKさんは、余計に、奥さんはほしがっていたネックレスをサプライズでもらってきっと喜んでくれるだろうと期待したわけです。
「アクセサリーは女性が喜ぶプレゼントランキング上位だ」
→ 「奥さんがネックレスをネットでチェックしていた」
→ 「結婚記念日にサプライズでプレゼントしよう」
きっとKさんは、こんな思考を働かせて奥さんを喜ばせたいと思ったわけです。
たしかにアクセサリーが好きな女性は多いでしょう。
キラキラしたものを見れば目も輝きます。Kさんの奥さんだってネットで見ていたネックレスが気になっていたのは事実ですが、それ以上にとても気になっていたのは「旦那さんのこと」だったとしたらどうでしょう。
本当は、最近Kさんが忙しすぎて、なかなかふたりの時間が取れないから、結婚記念日には奥さんはふたりで話がしたかった。そのきっかけ”がネックレスの話題だったのかもしれません。お互い忙しい毎日で、いつもより早く帰宅した Kさんと話ができる時間が嬉しくて、結婚記念日も、少し早く帰ってきてくれるかもしれないと密かに期待していた…。
でも、実際はいつものように時間が過ぎていってしまった。もし、それが事実であれば、「女性が喜ぶプレゼントラ ンキング1位のアクセサリーをサプライズで渡したら、奥さんが喜ぶ」という論理展開は成り立っていなかったことになります。
では、Kさんの場合の“正解”は、なんだったのでしょうか。

クリティカルに考え、ロジカルに展開する
奥さんが結婚記念日にネックレスをもらって、嬉しいか嬉しくないかといえば当然「嬉しい」わけであり、奥さんを喜 ばすという意味においては、その選択は正解だったといえます。しかし、もし奥さんが結婚記念日にふたりで話す時間を持ちたかったのであれば、最適な解は、ネックレスよりも「いつもありがとう。すごく幸せだよ。ゆっくりふたりで食事しながら過ごそう」というKさんの言葉だったのかもしれないわけです。
人間は、近しい相手であっても、自分が「本当はこう思っている」ということや「こんなふうにしてもらったら嬉しい」ということをなかなか直接相手に伝えられないことがよくあるものです。
あれっ、この本はビジネスの現場で使えるロジカルシンキングの本だったはず。
なのに、なんで男女間のコミュニケーションの行き違いの話をしてるの?
そんなふうに思われるかもしれませんが、じつは、こうした「正解なのに、うまくいかない」現象は、ビジネスの現場、対クライアントとの人間関係や職場でもたくさん発生しています。そして、そのような現象を「伝え方の問題」として仕方のないことと思っていないでしょうか。

しかし、職場や取引先で「伝え方の問題」として片づけられていることが、じつは「論理思考」不足の問題だったとしたら、ちょっと、その対応策も変わってきます。
「あの人、言っていることは正しいけど、なんかしっくりこないんだよな」
「いつも言いたいことがうまく伝わらなくて後悔する」
「ちゃんとやったはずなのに、なんでダメだったんだろう」
「そんなこともわからないの? 言っている意味わかる?って上司に困った顔される」
「こちらがやってほしかったことと、まったく違うものが提案されて、その理由もわからず、ビックリしたよ」
私たちの周りでは、常にこんな言葉が飛び交っています。あまりにも日常的なので「仕方ない」と無意識のうちに諦めてしまっているかもしれません。
とはいえ、私たちはみんなKさんのように、できれば相手に喜んでもらいたい、相手にうまく伝えたい、相手を理解したいし自分のこともちゃんとわかってほしいと考えて行動しています。行き違いを望んでいる人はいません。
それなのになぜ、こんなにも多くの「うまくいかない」ことが起こるのでしょうか。
ここでもう一度、先ほどのKさんの思考と行動をふり返ってみます。
「アクセサリーは女性が喜ぶプレゼントランキング上位だ」 【前提ルール】
「奥さんがネックレスをネットでチェックしていた」 【調査観察] 「結婚記念日にサプライズでプレゼントしよう」 【結論行動】
一見すると、ちゃんと論理展開が成り立っているように思えます。
しかし、そもそも「前提ルール」とした「アクセサリーは女性が喜ぶプレゼントランキング上位だ」というのが、本当にKさんの奥さんにも当てはまっていたかどうか。
Kさんが最初にネットで見つけた《女性が喜ぶプレゼントランキング》は、じつは、独身女性を母集団にしたデータだったかもしれないのです。
既婚者の女性を母集団にしたアンケートだったら、異なる結果になっていたかもしれません。たとえば、案外、モノのプレゼントよりも「自分の存在が相手に幸せをもたらしている」という証になるような言葉や、「自分が大切にされている」と確認できるような言葉がほしいというのが、ランキングの上位にくるかもしれません。
ただ、そういった「心の深層にある本当の気持ち、感情=インサイト」は、日常ではほとんど表には出てこないもので す。もっといえば、当事者である本人も、自分の本当の気持ちに気づいていないことだってあるのです。
それなのに、表に見えている状況や目先の情報を「前提」にして、本当のところはどうなのかというインサイトを見極める「深い洞察」をしないで結論を出したり行動してしまうことで、「こんなはずじゃなかった」という悲劇”が発生するわけですね。
でも大丈夫です。私たちは、普段から基本的には「論理的」に考え行動することができています。ただ、そこにもう少しだけ「深さ」を加えられれば、いろんな場面で最適な“正解”を出せるようになります。

その方法=論理思考こそが、皆さんにお伝えしたいこと。
この本では、主にビジネスパーソンが仕事やプライベートのあらゆる場面で「うまくいく」ための論理思考術を、私がマッキンゼーで伝授されたエッセンスを交えて、わかりやすく、すぐ実践できるようにまとめて1冊の教科書にしました。
そもそも「ロジカルシンキング(論理思考)」とは、どのような思考のことをいうのでしょうか。ちょっと考えてみましょう。
ここでいう論理思考とは「クリティカルに考え(深い洞察による自分の考えを持ち)、ロジカルに展開する(わかりやすく伝える)」ということです。論理思考の基本は、たったこれだけです。論理思考の本質は、このようにシンプルなのですが、その中にはとても重要な視点が含まれています。それは、クリティカルに考える(深い洞察による自分の考えを持つ)という視点です。これがとても大切。クリティカルに考えるという視点があるか、ないかで「それ、いいね」と言われるかどうか、あるいはぐっとくるか、こないかが左右されます。
深い洞察から自分の考えを導き出すことこそが、本質に迫るような思考をすることにつながる。それが「本物の論理思考」です。
論理思考とは、ただ単に決まった公式、のようなものに当てはめて思考を形式化することではありません。クリティカルに考える(深い洞察による自分の考えを持つ)こととセットで行うのが「本物の論理思考」だということなのです。
世間でいう「ロジカルシンキング」が、最初から答えありきで、その答えに矛盾や間違いがないことを論理的に検証するものだとしたら、マッキンゼー流の「ロジカルシンキング」とは、常にゼロ発想、仮説思考で、その場に最適で的を射た「新しい答え」をクリエイティブ(創造的)につくっていくもの。
その思考作業は、みんなそれぞれの「センス」の違いを出すことができて、とても面白く、マッキンゼーでは、そうした「人を惹き付ける思考」で新しいバリューを出すことを「セクシー」と呼んでいました。この本では、そんなふうに本当にセクシーでぐっとくる、「クリティカル+ロジカル(深くてわかりやすい)」思考を「論理思考」と呼んでいくことにしましょう。

読み進めていただくと、いかにいろんな場面で論理思考の「ある・なし」が、私たちの選択とその結果を左右しているかがわかると思います。
そして、大げさではなく、その積み重ねが「自分が望むもの」を手に入れられることにもつながっていくことが見えてくると思います。
ぜひ、今のうちに「マッキンゼー流ロジカルシンキング」を身に付けて、深い洞察とその結果がもたらしてくれる「うまくいく」人生を楽しんでください。

大嶋 祥誉 (著)
出版社: SBクリエイティブ (2014/4/18)、出典:出版社HP