GAFAに克つデジタルシフト 経営者のためのデジタル人材革命

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デジタル最前線のノウハウとエッセンス指南書

本書は、GAFAの強さを解説した上で、企業へのデジタルシフトの重要性を訴え、デジタルシフトしていく上で重要になるポイントを記しています。デジタルシフトを成功させるポイント、失敗するポイントともに解説されているので、よりわかりやすくなっています。

鉢嶺 登 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/9/21)、出典:出版社HP

はじめに

「アマゾンなんて、Eコマースの会社でしょう?うちの会社にはあまり関係ないんだよね」。 ある社長のこの言葉に私はこう答えた。「いえいえ、違います。アマゾンはあらゆる企業に影 響を及ぼすのです!」と。ここからアマゾンをはじめとするGAFA(ガーファ : 米グーグル、 アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)や中国BAT(バット : バイドゥ、アリ ババ、テンセント)などの話を詳説すると、その社長はみるみる真剣な表情になった。「うちも デジタルシフトしなければ、生き残れない!」と。

百年に一度の大きな波、デジタル産業革命(第4次産業革命)。デジタル技術が社会を劇的に 変えている姿を描写した言葉だが、このデジタル産業革命の最中において、私は「デジタルシ フト」という言葉を使って、経営者の方々にデジタルの重要性を語っている。
デジタルシフトとは、デジタル技術の活用を前提に、企業の在り方すべてを変革させること を指す。デジタル技術が世界を覆うこの時代、企業組織の存続は「デジタルであること」が前提となる。ビジネスの企画構想から始まり、研究、マーケティング、開発・設計・製造、品質 管理、販売、顧客サポート、また人事・経理・福利厚生・社員教育などのバックオフィス業務 に至るまで、企業のすべての業務、すべてのビジネスモデルを、デジタル技術の存在を前提に 組み替えなければならない。
先日、私は日本を代表する自動車メーカーの技術幹部の方に、「近い将来、電気自動車の時 代になると思う。そんな時代になっても、日本人としては日本の自動車メーカーに今と同様に、 世界で勝ち続けてほしい」と伝えた。するとその幹部は「電気自動車は蓄電技術が相当発展し ないと普及しないと思いますよ」と答えた。私は愕然とした。本当なのだろうか?
中国の深圳では従来、日本製のガソリンタクシー車が9割以上を占めていたが、今や2万台 以上のタクシーの9%がBYDという中国企業が製造する電気自動車にリプレースされている。 2019年3月に日本の自動車関係会社の方々をオプトグループの中国事業幹部がお連れし、 中国の新興4大自動車メーカーなどを訪れた。皆さん一様に中国の先行事情や規模の大きさに 驚き、「本気で電気自動車や自動運転車に取り組まねば置いていかれる」と、気付きを得て帰 国されたそうだ。
私は仕事柄、企業の幹部と会うことが多い。その経験から言うと、大企業のトップは皆デジタルシフトの必要性を感じているものの、実感が湧いておらず、具体的な実行方法も模索状態 だ。一方、地方の中小企業の社長はまだ自社への影響に本気で気付いていない状態である。G AFAやBATをはじめとした、ネットの巨大プラットフォーマーの強さの源泉とその影響を 軽く見てはいけない。一刻も早くデジタルシフトしなければ、自社存亡の危機であると強く警 告し、デジタルシフトへの実践法をお伝えしたい。

デジタルシフトはすべての企業に急務

私が経営するオプトグループでは、今からさかのぼること十数年前に、日本を代表する大手 広告代理店の電通と資本業務提携を結んだ。多いときは100人以上のデジタル人材を送り込 み、電通のデジタルシフトを支援した経験を持つ。その後も「TSUTAYA」を擁するカル チュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)やソフトバンク、日本経済新聞社など数々の大手企 業のデジタルシフトを支援してきた。これらの企業は日本の中ではいち早くデジタルシフトに 着手した企業群であり、その先見性や行動に移すスピードは注目に値すると言って良いだろう。
彼らとデジタルシフト実践を通じて、私たちは数々の学びを得た。そして、特にここ数年、企業からのデジタルシフトに関する「本気の依頼」が殺到し始めている。
本書では机上の空論ではなく、デジタルシフトを成し遂げるにはどうしたら良いのか、その ノウハウとエッセンスを余すところなくお伝えしたい。第1章で紹介するGAFAの脅威は凄 まじいものがある。デジタルの最前線で働く私が最も実感していると言って良いだろう。一刻 も早くデジタルシフトをしなければ、多くの企業が衰退の憂き目にあうことを確信する。

私自身、まだすべての組織に通用するデジタルシフトの方法が分かっているわけではない。 ただ、過去の自らの実践体験や様々な企業のデジタルシフトの成功例・失敗例を通して得た、 現時点における最良の方法はお伝えできる。本気でデジタルシフトに向かおうとしている経営 者・企業であれば、本書に記載した人と組織に関するノウハウとエッセンスは十分に活用して いただけることと思う。
思えば、私も1994年に創業し四半世紀が経ったが、常に企業に対し、デジタルの提案を し続け、否定され続けた歴史と言える。2000年代前半は「ネット広告をやりましょう!」「効 果測定しましょう!」と提案するものの、ほとんどの企業が「うちは大手総合広告代理店と付 き合ってるから大丈夫」「マス広告で十分」などと門前払い。その中でも実施してくださった 企業が大きく成功し、業界他社が追随した。その後もソーシャルメディア、動画など次から次に新しいメディア、手法が出るたびに提案に伺うも、最初は否定の連続。今回のデジタルシフ トもまさにその繰り返しである。「貴社にも必ずGAFAの影響が及びます」「一刻も早くデジ タルシフトすべきです」と唱えても、大半の経営者や企業は、「うちには関係ないからね」と いう感じである。しかし、必ず数社に1社は応えてくれる。私はその会社を必死で成功させる。 すると、他社も気付いて実行に移してくれるのだ。

18世紀の産業革命も最初の発明から、世の中に浸透し、人々の暮らしや社会が変わるのに 150年もかかっている。インターネットの民間利用が始まった時期をおおよそ1990年と すれば、今はデジタル産業革命が始まってまだ30年しか経っていないわけで、本番はまさにこ れからである。30年後、50年後の社会は今からでは想像もできないほど大きく変わっているこ とだろう。日本企業が1社でも多く、デジタルシフトを成し遂げ、今と変わらず未来も繁栄し 続けていることを心の底から願ってやまない。

鉢嶺 登 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/9/21)、出典:出版社HP

目次

はじめに
デジタルシフトはすべての企業に急務

第1章 デジタルシフトしない企業は消え去る
GAFAの影響が自社にも及ぶことに気付いてほしい
時価総額ランキングの上位を独占するGAFAとBAT
トヨタのライバルはもはや自動車メーカーではない
パナソニックはメーカーから「ソフトウエア企業」へ
ユニクロの敵もアマゾンに
現場で体感したGAFAの圧倒的凄さ
日本のネット企業が世界的企業になれない構造的な理由
世界の「ネット広告」はGAFAが独占
位置情報はグーグルが独占
スマホ検索は集合サイトからダイレクトサーチへ
未来の主戦場「AI」もGAFA
テレビもネット新興企業に主役交代
次世代自動車もGAFA色が強まる
アマゾンの影響をさらに深掘りしてみる
アマゾンがオンライン書店と侮ったら倒産
アマゾンがEコマースモールだと思ったら大間違い
倒産、大量閉店に追い込まれた企業
ネットからリアルに本格展開し始めたアマゾン
高級スーパーのホールフーズを買収した理由
アマゾンが「家庭内店舗」にも進出
動車の中にも店舗を出店
研究開発投資は世界
デジタル社会の未来を読み解くヒント
歴史上の「産業革命」に共通する3要素
次世代自動車トレンド「CASE」から見えてくること
テスラのエネルギー投資の考え方
エネルギー業界のメガトレンドは「3D」
次世代のAIを読み解く

第2章 デジタルシフトを成功に導く方法
デジタルシフトに取り組む経営者の悩み
世界で最もデジタルシフトに成功した企業、DBS銀行
日本で最もデジタルシフトに成功した企業、リクルート
デジタルシフトに失敗する企業の共通する5つの理由
1 トップに、デジタルシフトを戦略の中心に据える決意と覚悟がない
2 デジタルを分かっていない人が、デジタルシフトの責任者になる
3 既存事業を優先させ、デジタルをないがしろにする
4 デジタルシフトの責任者に権限(カネやヒト)を与えられていない
5 デジタルシフトによってもたらされるワクワクする未来を、トップが語れない
デジタルシフトの注意点
ベンチャーへの出向・人材交流だけでは何も起きない
エース社員を配置する
既存の人事制度でデジタル責任者を異動させない
デジタルシフトを成功させる10方法
1 トップが、デジタルシフトを戦略の中心に据える決意と覚悟を持つ
2 デジタルが分かっている人を、デジタルシフトの責任者に置く
3 デジタル事業を既存事業より優先させる
4 デジタルシフトの責任者に権限(カネやヒト)を与える
5 デジタルシフトによってもたらされるワクワクする未来を、トップが語る
6 組織を分ける
7 デジタルシフト経営チームを組成する(CDO+CMO+CTO+cco)
8 デジタル人材で固める
9 経営者がデジタルを学ぶ
10 社内の人材をデジタルシフトさせる

第3章 まずは経営者のデジタルシフトから始めよ
経営者の年齢に反比例するデジタル力
経営者の「デジタルカ」を自己診断する
★経営者のデジタルカパーソナルチェックリスト : 基本編
★経営者のデジタルカパーソナルチェックリスト : 応用編
「デジタル力」をアップさせる3つの習得法
習得法その1:「テックタッチ」を日々心がける
・ニュースアプリを購読する
・エアビーアンドビーで宿泊予約してみる
・ウーバー、リフトを使ってみる
・フリマアプリを使ってみる
・ウーバーイーツ、出前館で食事を届けてもらう
・ARやVRを体験する
・ウィーワーク(WeWork)のシェアオフィスを訪問する
・スマートウォッチを使ってみる
習得法その2 : 自分の目、耳、足で確かめる
・ネット分野の主要イベントに足を運ぶ
・海外の大規模イベントに自ら足を運ぶ
・自分の疑問を起業家やベンチャーキャピタリストにぶつける
習得法その3 : 情報を常にアップデートし続ける
★デジタルシフト時代を理解するための推薦図書〈1〉〈2〉
・「任せる」ための基礎力となるのがデジタルカーS

第4章 デジタルシフトに必須の「デジタル人材」4職種
デジタルシフト時代に求められる社員のスキルセット
全社員に必要な「デジタル力」とは何か
デジタル力の有無で収入に差
デジタルシフトを実現する「デジタル人材」4職種とは
顧客ニーズと行動を捉え、自社収益に変換する: マーケター
顧客ニーズを直接吸い上げ、デジタル技術で価値を生み出す: テクノロジスト
ユーザーとの接点の品質や魅力を上げる: クリエイター
デジタル時代の収益構造を設計する: ビジネスプロデューサー
オプトがテクノロジストとクリエイターの確保に成功した理由
オプトが手がけた2つの策
ギークナイトを通じてエンジニア同士のつながりを広げた
エンジニアの自主独立組織を用意
デジタルエンジニア拡充の必要性を痛感
営業が強すぎてエンジニアが定着しなかった
成功の秘訣は方向性を示し、現場に任せたこと
現場のエンジニアチームを「治外法権」とした
これからの事業体は「ミドルアップダウン」が理想的
社内におけるエンジニアとの協働を支援
クリエイターがいなければ始まらない
人材とプロジェクトのマッチング・プラットフォームに
事業の幅が広がり、案件の質が変わってきた
デジタル人材が企業の成長を支えている

第5章 実践デジタルシフト人材育成プログラム
1 ビジネスプロデューサー向け教育プログラム
中国視察ツアー
デジタルシフトアカデミー
2 マーケター向け教育プログラムーク
Eラーニングプログラム「ジッセン!」
HRDCコンピテンシー人材育成プログラム
3 テクノロジスト向け教育プログラム
SIGNATE QUEST
4 クリエイター向け教育プログラム
OPT HRDCラーニングポータル
オンラインメディア「デジタルシフトタイムズ」
ビジネスの共同構築

特別対談
立教大学ビジネススクール教授・田中道昭が切り込む、 筆者・鉢嶺登の「思い」と「覚悟」の実像
オプトが日本企業にデジタルシフトを問う理由

あとがき

装幀 : 小口翔平 + 岩永香穂(tobufune)
本文DTP:阿部克也
編集協力:高下義弘

鉢嶺 登 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/9/21)、出典:出版社HP