【最新 – 心理統計を学べるすすめ本 – 入門教科書から実践書まで】も確認する
心理学を学ぶ学生のための教科書
本書は、SPSSという統計解析ソフトウェアを用いて、研究に適切な統計的方法を自分で選択し、適切に結果を読み取り解釈ができるようになることを目的としたテキストです。また、どの分析でも論文での結果の報告の方法が解説されているので卒論や修論を書く際にも役立ちます。
SPSSによる心理統計
本書では IBM SPSS Statistics 24で動作確認しています。
SPSS製品に関する問合せ先:
〒103-8510 東京都中央区日本橋箱崎町19-21 日本アイ・ビー・エム株式会社アナリティクス事業部 SPSS 営業部
Tel. 03-5643-5500 Fax.03-3662-7461 URL http://www.ibm.com/spss/jp/
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まえがき
本書は, SPSS (IBM SPSS Statistics, http://www-01.ibm.com/software/ jp/analytics/spss/)という統計解析ソフトウェアを用いて,心理学研究 で利用されることの多い統計的方法を学ぶためのテキストです。具体的 な心理学研究の文脈で、1つ1つの統計的方法について演習していきます。想定する読者は,心理学領域で卒業論文や修士論文に取り組もうと している学生・院生です。本書を読み進めるための前提として,大学等 で心理統計に関する入門講義を履修していることを想定しています。具 体的には,山田・村井(2004)を読み終えた程度の心理統計に関する知 識を有していることを期待しています。ある程度の知識を有することを 前提としているという意味では,本書は全くの初学者向けの本ではあり ません。本書でも統計の基本的な内容について必要な説明はしています が,心理統計の理論について書かれた他のテキストと併用することで,より学習効果が高まると思います。
読者の皆さんは、実際に SPSS を起動して、本書に書かれた分析を1つ1つ自分の手を動かしながら追体験して欲しいと思います(そのため に、本書で用いた全てのデータを、東京図書のホームページで公開して います)。そうすることで,本書で取り上げる統計的方法への理解が深まることでしょう。しかし、本に書かれたことをただ書かれた通りにSPSS で実行できるだけでは、十分ではありません。本書では,「SPSS を用いてデータ分析ができること」だけではなく,もう少し先のことを目標に しています。具体的には, ・ 自分のリサーチクエスチョンに応じて、適切な統計的方法を自分で選択できること。 SPSS の出力結果を正しく読み取り,適切な解釈ができること。
・ データ分析の結果と,その結果に基づく考察を分かりやすい、文章で報告できること。
を目標とします。SPSS はあくまでデータ分析という作業を遂行する、 の手段であり、大きな目標は,分析した結果から必要な情報を読み取り それをレポートや論文としてまとめられるようになることです。この日 標を達成するために,本書では以下のような工夫を施しました。
本書の特徴
本書は,基礎編と実践編からなります。基礎編では, 鈴木・武藤(2013) という1つの心理学研究を例に,心理学領域の卒業論文や修士論文でよく使われる統計的方法について演習を行っていきます。データの作成 項 自分析(1変数,2変数の記述統計),尺度構成(因子分析),尺度得点に ついての分析,群間の平均値差の検討 (t 検定,分散分析),変数間の関 連の検討(相関分析,回帰分析),という実際の心理学研究と同様の流れ で,重要な統計的方法について一通り学んでいきます。読者の皆さんに, 自分が鈴木・武藤(2013)の研究の著者であるかのような擬似体験をしてもらえたらと思っています。
実践編では,基礎編よりもやや高度なことを取り上げています。最近 の心理学研究の動向を踏まえて,新しく注目されている統計的方法についても紹介しました。具体的には,尺度構成に関する諸問題として,実 際に尺度構成を行う場合に生じ得る様々な具体的なケースとそれへの 対応について説明しました。さらに,重回帰分析による交互作用の検討, プリ・ポストデザインデータの分析,対比分析」といった基礎編に比べると少し難易度の高い、しかし,重要なデータ分析の方法について解説 しました。これらの方法について理解を深めることで、より多面的にデー タを検討することができるようになると思います。最後に,統計的仮説 検定の問題点,心理学における統計改革、ベイズ統計学といったトピッ クについて紹介しています。統計的仮説検定については様々な問題が(か なり以前から)指摘されています。しかし、現在でも心理学研究における主要なデータ分析法として君臨し続けています。「一般的な方法である から…」, 「みんなが使っているから…」と無批判に利用するのではなく, 一度立ち止まって、読者の皆さん自身で「統計的仮説検定」というツー ルについてじっくりと考えてみてほしいと思います(クリティカルシン キングを行ってほしいということです)。 本書を読むことで,以下のようなことが達成されたら嬉しいです。
・沢山の統計的方法の中から,データの種類や研究目的に沿った適切な方法を選んで分析を実行できるようになる。
・漠然と考えている「やりたいこと」を、「この分析によって実現できる」と自分で変換できるようになる。例えば,「ある指導法は, 英語を学ぶ意欲が低い人ほど効果があるかどうかを検討したい」 ときに、それを「交互作用の検討をすれば良いのだ」と具体的な分析方法に置き換えることができるようになる。
本書は SPSSのマニュアルを書くことを目的とはしていないので, SPSSの細かな操作について学びたい人は、他のテキスト,例えば,酒井 (2016)などを参照して下さい。また、購入しているオプションソフト次第で,本書に掲載されている画面とは完全に一致しないことがあります のでご注意下さい。本書では基本ソフトであるIBM SPSS Statistics Base で実行できる機能のみを紹介しているため,Base 以外のオプショ ンは不要です。どのようなユーザーであっても本書に書かれたものと同 様の分析が実行できます。
引用文献
酒井麻衣子 (2016). SPSS 完全活用法――データの入力と加工(第4版)
東京図書) 鈴木雅之・武藤世良(2013). 平均的な学業水準との比較による学業的自
己概念の形成――学業水準の高い高校に所属する生徒に焦点を当て
て― パーソナリティ研究, 21, 291-302. 山田剛史・村井潤一郎(2004). よくわかる心理統計ミネルヴァ書房
目次
まえがき
【基礎編】
1章 本書で用いる質問紙について
1-1 本書で紹介する研究(鈴木・武藤, 2013)の目的
1-1-1 学業に対する有能感一学業的自己概念
1-1-2 有能感を形成する要因一学業達成,内的準拠枠,外的準拠枠
1-1-3 鈴木・武藤(2013)で検討したこと
1-2研究で使用した質問紙
1-2-1 学業的自己概念
1-2-2 学校内での相対的な学業水準の知覚
1-2-3 一般的な高校生との相対的な学業水準の知覚
1-2-4 達成目標
1-2-5 学業成績(模擬試験の偏差値)
1-3 本書で検討するリサーチクエスチョンと,検討のために用いる分析
1-4 本書におけるデータ分析の流れについて
2章 データ分析前の下準備
2-1 質問紙に含まれる項目について
2-1-1 プロフィール項目
2-1-2 質問項目
2-2 SPSS でデータを作る
2-2-1 データのコーディング
2-2-2 SPSS を起動する
2-2-3 「変数ビュー」で変数の情報を入力する
2-2-4 「データビュー」でデータを入力する
2-3 SPSSで簡単な分析を実行してみる
2-3-1 質的変数についての視覚的分析
2-3-2 量的変数についての視覚的分析・基本統計量の算出
2-4 本書で用いる SPSS データについて
3章 項目分析
3-1 鈴木・武藤(2013) データを確認する
3-2 プロフィール項目の分析
3-2-1 度数分布表と棒グラフ
3-2-2 クロス集計表
3-3 変数の種類と尺度水準
3-3-1 質的変数と量的変数
3-3-2 4つの尺度水準
3-4 量的変数の分析
3-4-1 視覚的な分析
3-4-2 データの要約
3-4-3 ファイルの分割を用いて、グループ間比較を行う
3-5 練習問題
4章 2つの変数の関係の視覚化と要約——相関分析
4-1 散布図と相関係数
4-1-1 散布図
4-1-2 相関係数
4-1-3 相関係数の性質
4-2 SPSSによる相関分析
4-2-1 散布図の表示
4-2-2 相関係数の算出
4-2-3層別相関係数の算出
4-2-4 論文での結果の報告例
4-3 練習問題
5章 尺度構成——因子分析
5-1 因子分析
5-1-1 因子分析とは
5-1-2 因子分析の考え方
5-1-3因子分析の手順
5-2 SPSS による因子分析その1(因子数が1つの因子分析)
5-2-1 逆転項目の処理
5-2-2 因子分析の実行(因子数の決定)
5-2-3 因子分析の実行(因子負荷の推定)
5-3 SPSS による因子分析その2(因子数が複数ある因子分析)
5-3-1 因子分析の実行(因子数の決定)
5-3-2 因子分析の実行(因子負荷の推定)
5-3-3 因子の解釈
5-4 共通性と因子寄与
5-4-1 共通性と独自性
5-4-2 因子寄与
5-5 論文での結果の報告例
5-6 練習問題
6章 尺度得点についての分析
6-1尺度の妥当性
6-1-1 妥当性とは
6-1-2 妥当性の評価
6- 2尺度の信頼性
6-2-1 信頼性とは
6-2-2 妥当性と信頼性の関係
6-2-3 古典的テスト理論と信頼性係数
6-2-4 信頼性係数の推定
6-3 SPSS による尺度得点についての分析
6-3-1逆転項目の処理
6-3-2a係数の算出
6-3-3尺度得点の計算
6-3-4尺度得点の記述統計量の算出
6-4 練習問題
7章 学業的自己概念の性差の検討――独立な2群のt検定
7-1 学業的自己概念の性差の検討
7-2 統計的仮説検定の基礎
7-2-1 統計的仮説検定の手順
7-2-2 独立な2群のt検定の手順
7-3 SPSS による独立な2群のt検定
7-3-1 独立な2群のt検定の実行
7-3-2 SPSS の結果を解釈する
7-3-3 p値と有意水準を比較する
7-3-4 統計的仮説検定の重要用語
7-3-5 論文での結果の報告例
7-4 練習問題
8章 学業的自己概念と学業水準の関係の検討―― 一要因分散分析
8-1 学業的自己概念と学業水準の関係の検討
8-2 3つ以上の群の平均値を比較する分散分析
8-2-1 分散分析に関する用語
8-2-2 一要因被験者間分散分析
8-3 SPSS による一要因被験者間分散分析
8-3-1 一要因被験者間分散分析の実行その1
8-3-2要因被験者間分散分析の実行その2
8-3-3 論文での結果の報告例
8-3-4 学業的自己概念の学校間差がみられなかった結果について
8-4 練習問題
9章 学業的自己概念と性別,文理志望の関係――三要因分散分析
9-1 学業的自己概念と性別,文理志望の関係の検討
9-2 二要因の分散分析
9-2-1 交互作用
9-2-2 主効果
9-2-3 単純主効果
9-2-4 二要因被験者間分散分析
9-3 SPSS による二要因被験者間分散分析
9-3-1 二要因被験者間分散分析の実行
9-3-2 論文での結果の報告例
9-4 SPSS によるクロス集計表の作成と – 検定
9-4-1 クロス集計表の作成と r- 検定の実行
9-4-2 論文での結果の報告例
9-5 練習問題
10章 学業的自己概念の予測——回帰分析
10-1 回帰分析
10-2 重回帰分析
10-2-1 偏相関係数
10-2-2 重回帰分析
10- 3 SPSSによる回帰分析
10-3-1 回帰分析の実行
10-3-2 回帰分析とは検定の関係
10-3-3 偏相関係数の算出
10-3-4重回帰分析の実行
10-3-5 論文での結果の報告例
10-4 基礎編のまとめ
10-5 データの階層性とマルチレベル分析
10-6 練習問題
【実践編】
1章 尺度構成に関する諸問題
1-1 不適解が生じたとき
1-2 妥当性や信頼性が確認されている尺度を使用するとき
1-3 a 係数が低いとき
2章 重回帰分析による交互作用の検討
2-1 「学業的自己概念」と「相対的な学業水準の知覚」の関係に対する達成目標の影検討
2-1-1 「相対的な学業水準の知覚」と達成目標の交互作用
2-1-2 重回帰分析における交互作用の検討
2-1-3 多重共線性と中心化
2-1-4 分散分析における交互作用と重回帰分析における交互作用
2-2 SPSS による重回帰分析
2-2-1 変数の中心化と交互作用項の作成
2-2-2重回帰分析の実行
2-2-3 出力結果の読み取り
2-2-4 論文での結果の報告例
2-3 交互作用の視覚的分析
2-4 交互作用が有意であったときの下位検定
3章 プリ・ポストデザインデータの分析——対応のあるt検定,共分散分析
3-1 研究例(鈴木・市川, 2016)
3-1-1 工夫速算能力
3-1-2工夫速算能力を高めるための準実験
3-2 研究で使用した変数
3-2-1 事前コンパス得点
3-2-2 事後コンパス得点
3-2-3 SPSS データ (鈴木・市川(2016) データ)
3- 3 SPSSによる対応のあるt検定
3-3-1 1群プリ・ポストデザイン
3-3-2 対応のあるt検定
3-3-3 対応のあるt検定の実行
3-4 SPSSによる変化量についての独立を2群のt検定
3-4-1 2群プリ・ポストデザイン
3-4-2 変化量についての独立を2群のt検定
3-4-3 変化量についての独立な2群のt検定の実行
3-5 SPSS による共分散分析
3-5-1 共分散分析
3-5-2 共分散分析の実行
4章 対比分析
4-1 研究例(鈴木, 2011)
4-1-1 学習者のテスト観
4-1-2 テスト観に対するルーブリック提示の効果
4-2 対比分析
4-2-1 対比分析とは
4-2-2 一要因分散分析と対比分析
4-3 SPSS による対比分析
4-3-1 鈴木(2011) データの確認
4-3-2 対比分析の実行
4-3-3論文での結果の報告例
5章 有意か否かを超えて――近年の統計改革の動向について
5-1 統計的仮説検定に関する諸問題
5-1-1 分散分析と多重比較
5-1-2 多重比較の方法による検定結果の相違
5-1-3 統計的仮説検定の問題点
5-2 心理学における統計改革
5-2-1 心理学における統計改革とは
5-2-2 効果量
5-2-3 効果量の使われ方
5-2-4 SPSSによる効果量(偏イータ2乗)の算出
5-3 ベイズ統計学
5-3-1 ベイズの定理
5-3-2 ベイズ推測の活用
引用文献
付録質問紙
索引
基礎編