思考を鍛えるレポート論文作成法 [第3版]

【書き方をしっかり学ぼう – レポート・論文おすすめ本】も確認する

本物の書く力、考える力が身に付く

文章を論理的・批判的に読む力が身に付きます。文献の調べ方や読み方、フォーマットに沿った書き方はもちろん、正しい引用方法や引用の必要性まで解説されています。また、資料の選び方など、“調べる力”の充実が図られています。

井下 千以子 (著)
慶應義塾大学出版会 (2019/2/6)、出典:出版社HP

はじめに

本書の目的は、レポート・論文の基本的な書き方をマスターできるよ う、考えるプロセスを支援することにあります。よりよいレポート・論 文を作成するためには書くことと考えることの往復運動が大切です。
レポートを書くのは初めてという人は、最初は「大変そう、難しそう」 と感じるかもしれません。でも、大丈夫です! ポイントをつかみ、 ルールを理解すれば、誰でも書けるようになります。 なお、本書は、次のような読者を対象としています。
●レポートを書くのは初めてという高校生、大学生
●卒業論文や修士論文を書こうとしている大学生、大学院生
●通信教育やビジネス・スクールで学んでいる社会人学生
●職場で論理的説明が求められるビジネス・パーソン
●看護・医療・介護・福祉に従事する現職者
さらに、次のような要望を持つ読者に向けて、どこをどう読んだらよ いのか、効果的な活用法を提案しています。
●初めてレポートを書くのでどうすればよいかわからない
●提出日が迫っていて焦っている
●書き方を体系的に勉強したいと思っている
●コピペでない、引用の正しい方法を学びたい
●事実と判断を峻別し、根拠に基づく伝わる文章を書きたい
自分の考えを自分の言葉で表現できたとき、レポートや論文をまだ足りないと思いながらも書き終えたときには、達成感だけでなく、自分が 少し前に踏み出せたような喜びも感じることができます。
自分の考えを明確に伝える力は、大学だけでなく、仕事の場において も、とても重要です。本書が、みなさんの思考を鍛えていくための一助 となることを心から願っています。

井下 千以子 (著)
慶應義塾大学出版会 (2019/2/6)、出典:出版社HP

Contents

はじめに
本書の使い方
第1章 レポート・論文を書く前に
1 レポートとは何か、論文とは何か
2 まずは段取り、ゴールまで見通す
3 書くことで思考が深まる
4 よりよく書くためのメタ認知
第2章 説得力のあるレポート・論文を書くために
1 思考を論理的に組み立てる
2 問いを立て、証拠を示す
3 批判的に検討する
4 読む力を鍛える3ステップ
ステップ1情報を効率的に点検する「概略的読み」
ステップ2 論理の組み立て方を理解する 「構造的読み」
ステップ3 議論を組み立てる「批判的読み」
5引用を的確に示す
第3章 レポートを書く
1 レポートの型を見極める
2 レポートのイメージをつかむ
3 レポート作成の5ステップ
ステップ1 論点を見出す
ステップ2 調べる:流動性で速報性のある情報を収集する
ステップ3 組み立てる
ステップ4 執筆する
ステップ5 点検する
第4章 論文を書く
1 論文を書く前の心構え
2 卒業論文、修士論文に取り組む意味
3 論文の型と研究方法
4 論文作成の5ステップ
ステップ1 テーマを決める
ステップ2 調べる:体系的で信憑性のある情報を収集する
ステップ3 組み立てる
ステップ4 執筆する
ステップ5点検する
5 調査や実験を実施する際の「研究倫理」について
第5章 レポート・論文の作法を学ぶ
1 題名のつけ方
2 定義の仕方
3 引用の示し方、文献リストの書き方
4 パラグラフの書き方
5 事実と意見を区別する一記録物・報告書でも重要
6 わかりやすい文章を書くために
第6章 プレゼンテーションを成功させる
1 プレゼンテーションのポイント
2 パワーポイントの作成
3 レジュメの作成
付録1 論証型レポートの見本レポート
2 文献研究による仮説論証型論文の見本レポート
3 実証研究による仮説検証型論文の見本レポート
4 自己点検評価シート、ルーブリックについて
5 参考となる文献の紹介
6 図表一覧
索引
あとがき

本書の使い方

本書の特徴
レポート・論文作成を通して、本物の 「書く力」「考える力」をつけることが、 この本、1冊でできます。
●フォーマットには、思考の道筋が埋め込まれています
●何を、どう検索したらよいか、引用したらよいかがわかります
●見本レポート・論文を参考に、自力で書くことができます
●索引を活用し、〈辞書〉のように使えば、論理的な思考法を身につけ、本格的なレポートや論文を書くことができます
●図解や自己点検評価シートを使うと、ポイントが素早く理解できます
●携帯やスマホなど身近な話題を用いてわかりやすく解説しています

執筆する前の準備
レポートや論文は、パソコンに向かっていきなり書き出せるものでは ありません。初めて書くという人や提出日が迫っている人は、まず、本 書で提案しているフォーマット (pp.68~69、87、95) を使って、自分 の頭の中に、思考の道筋を作ることからはじめてみましょう。時間に余 裕のある人は、何本か論文を調べ、ざっと目を通してみてください。定 型的な表現があることがわかります。そうすると、自分で文脈に合わせて表現を選んで使えるようになります。
作成に取りかかる前に、次の2つのことを必ずやってみましょう。

型を見極める:自分が書こうとしているレポート・ 論文は、どの型か、図解(pp.40~41、79~80)を 使って見極めてください。

イメージをつかむ:見本レポート・論文 (pp.134~ 152)を見てイメージをつかんでください。「なるほ ど、こう書くのか」「文字数はこれくらいか」など、 分量の目安、題名や見出し、引用の仕方、論理を示す接続表現に注目してください

レポート・論文作成の5ステップ
次の5つのステップを行きつ戻りつ、書くことと考えることの往復 運動を繰り返しながら、よりよいレポート・論文をめざしましょう。
ステップ1 テーマを決める論点を見出す
・素朴な疑問を大切に、資料を徹底して調べ、 テーマが決定するまで、広げては絞り込む往復 運動を繰り返す
・レポート課題で、テーマが提示されている場合 は、テーマに関するキーワードを使って、思考 を整理し、論点を絞り込み、下調べに入る

ステップ2 調べる
下調べ:テーマに関する概略的知識を得ることを目的とし、検索エンジンや事典などで調べる
文献検索:図書館で蔵書検索(OPAC)やデータベースによる検索(図5、表5: p.50~51)を行い、資料を収集する
文献入手:資料を読み込み、芋づる式検索などにより、さらに情報を収集する

ステップ3 組み立てる
・論点を定め構造を組み立てるため、主題文を書く
・問いを立てる、アウトラインを作成する
・仮の題名をつける。

ステップ4 執筆する
・初心者:フォーマットを用い、見本レポート・論文を参考に執筆する
・経験者:アウトラインをもとに執筆する
・キーワードとの整合性を考え、題名を決定する

ステップ5 点検する
・自分で:自己点検評価シート(ルーブリック、付録5:pp.153~161)でチェックする
・授業で:見開きシートを A3用紙に拡大コピーし、ペアやグループで点検し、互いに 学びあう

効果的な活用法

井下 千以子 (著)
慶應義塾大学出版会 (2019/2/6)、出典:出版社HP