コピペと言われないレポートの書き方教室: 3つのステップ

【書き方をしっかり学ぼう – レポート・論文おすすめ本】も確認する

コピペではなく、情報を正しく「引用」する

レポート作成における最重要ポイントが絞られているので、論理的に文章を書く上での基礎が身に付きます。また、自分の書いたレポートの修正すべき点がどこなのかがすぐに分かるようになります。大学生だけでなく中高生にとっても有益となる1冊です。

山口裕之 (著)
出版社 : 新曜社 (2013/7/26)、出典:出版社HP

はじめに 「コピペ」の蔓延とその原因

この本の特徴とねらい

「この本を手に取ったみなさんは、大学の授業の課題で生まれて初 めて「レポート」なるものを書くように言われて戸惑っている大学 1年生の方でしょうか。あるいは、大学1年生に「コピペ・レポート」をやめるように指導したい大学教員かもしれません。最近は、 中学校や高校でも総合学習の時間などにインターネットを使った調べ学習が行われていて、あるテーマについて自分で調べたことを発 表する機会があるようです。そのためにネット情報の活用法を知りたい中高生も多いに違いありません。この本では、そうしたみなさんすべてに、「コピペと言われないレポート」を書くためにはどう すればよいかを説明したいと思います。もちろん、最終的な目標は 優れたレポートを書けるようになることですが、それ以前に、コピ ペをしていたのでは「レポート」の範疇にさえ入りません。
これまでにも「レポートの書き方」と銘打った本がたくさん出版 されています。しかし、それらの本の多くは、ネット時代以前に書 かれたもので、「コピペ問題」に対応しようという問題意識が希薄 なようです。また、レポートのみならず論文の書き方についても指南しようとしているために、少々高度なことまで盛り込まれており、かえって一番重要なポイントが何なのか、分かりにくくなって いる本も多いのです。
そこでこの本では、「コピペ」と言われないためには具体的にどうすればよいのかを、最重要ポイントのみに絞って、大学生のみならず中学生、高校生にも読めるように、できるだけ簡単に説明します。「最重要ポイント」というのは要するに、大学教員がレポート を採点するときに、最低限度ここだけはちゃんとしてほしいと考える点です。
そして、レポートの書き方について、実際に何をどうすればよい のかが分かるように具体的に説明していきます。
たとえば、「レポートは感想文ではありません! 論理的に書き なさい」などと言われても、具体的にどういうふうに書けばよいのか分かりませんよね。この本では、「あなたのレポートには〈カギ かっこ>がありますか?」とか思う〉と書いてしまったら消して理由や根拠を考えましょう」など、多くの学生がレポートを書く ときにやってしまいがちなことを具体的にどのように修正したらよいのか、注意点を挙げていきます。これなら、自分の書いたレポー トの修正すべき個所がどこなのか、誰でもすぐに分かるはずです。
そうした基本的なレポートの書き方を練習することで、自分の意 見を説得的に表現する方法という、学校で学ぶときにも、会社で仕 事をするときにも、あるいは民主主義社会を生きていくうえでも、 もっとも重要で貴重なスキルを身に付けていってもらうことが、こ の本のねらいです(「民主主義とレポート」については、この本の 最後でまとめて説明します)。
この本の使い方としては、レポートを書く前に、まずざーっと全 体を読んでください。読書力のある人なら1時間ちょっと、あまり 本は読まないという人でも2,3時間もあれば読み終わるはずで す。この本は3つのステップで構成されています。ステップごとに 内容のまとめページを作り、さらに最後にレポートの書き方チェックリストとできばえチェックリストを付けてあります。全体を読んだらまとめのページに戻って、内容を覚えているか一度確認してみ ましょう。
実際にレポートを書くときには、「書き方チェックリスト」の流れに従って書き、できあがったら「できばえチェックリスト」で形 式や内容が妥当かどうかチェックしてください。リストは要点だけ ですから、細かい点を確認したいときには本文の該当箇所に戻って 読み直して確認してください。このようにすれば、誰でも無理なく 「コピペと言われないレポート」が書けるはずです。

レポートと就職

「自分の意見を説得的に表現する方法」は会社で仕事をするうえ でも重要、と書きました。経済同友会が2010年に行った「企業の採 用と教育に関するアンケート」では、「新卒の採用選考の際、ビジ ネスの基本能力等として、特にどのような能力を重視しています か」という設問に対して、「論理的思考力」という回答が4位となっています(http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2010/pdf/ 101222a.pdf, 2012年9月25日アクセス)。
通常の企業が「論理学」を重視しているとはあまり考えられない ので、ここでいう「論理的思考力」とは「自分の意見を説得的に表現する方法」に他ならないでしょう。
「なんだ、4位か」と思われるかもしれません。しかし、1位は 「熱意・意欲」、2位は「行動力・実行力」、3位が「協調性」で、 これらは性格的なものですから、身に付けようとしてもなかなか身 に付くものではありません。それに対して「自分の意見を説得的に 表現する方法」は一つの技術であり、練習することでその能力を高めていくことができます。この本では、その技術の基本を伝授します。

コピペとは何か

この本を手に取ってみられたということは、「コピペ」とは何 か、すでによくご存知の読者も多いとは思いますが、念のため、簡 単に説明しておきます。そのうえで、なぜそれがいけないことなの か、なぜそうしたことが蔓延するのか、ということについても触れたいと思います。理由が分かれば、対策はおのずと明らかになって くるでしょう。
まず、「コピペ」とは、「コピー&ペースト」の省略で、要するに 「文章の切り貼り」ということです。具体的には、パソコンで電子 ファイル(主にはインターネットのページ)の一部分をコピーし て、自分の文書に貼り付ける行為を指しています。これがなぜレ ポートと関係あるのかというと、大学の授業などでレポートを宿題 にすると、インターネットのページを切り貼りして作成したものを 提出する学生が激増しているのです。
当人は、ちゃんと調べて書いたつもりなのかもしれませんが、ひ どいものになるとウェブページの丸写しということもあります。ふ つう大学教員は「テーマに関連する情報を調べたうえで、自分の意 見を説得的に表現する」というスキルを練習してもらうためにレ ポートを宿題にするのですが、ウェブページ丸写しではカンニング と言われても仕方ないでしょう。
一つのウェブページを丸ごとコピペしてそのまま提出するような 悪質なレポートはさすがにそれほど多くありません。大学や学部に よってかなり違いはあるようですが、私の大学の場合では、100人 のクラスで1人いるかどうかという程度です。しかし、いくつかの ページの切り貼りのみで構成されたレポート、つまり「自分の意見」がほとんど書かれていないレポートはかなりたくさんあります。100人中で2~30人はそういうパターンです。中には、段落ご とに、あるいは文の途中から活字のフォント(字体)やサイズが 違っていたりするものもあります。コピペしたのが丸わかりのレ ポートを前に、「せめて隠蔽工作をしようという頭ぐらい働かせて くれよ」などと思ってしまったりします。

「ホームページ」か「ウェブページ」か?

「インターネット上に公開されているページのことをすべて「ホームページ」と呼ぶこともありますが、正確には「ホームページ」と は、複数のページで構成されているウェブサイトの表紙にあたる ページのことです。スタートページやトップページと呼ばれること もあります。以下、この本ではインターネット上のページのことを 「ウェブページ」(あるいは単に「ページ」)と呼びます。

コピペ判定ソフト

コピペ・レポートの蔓延という事態を受けて、主に大学教員向け に「コピペ判定ソフト」が実用化されています。そうしたソフト は、学生の提出したレポート本文のどの部分が「コピペ」なのか、 色を変えて表示してくれたり、「コピペ率」を算定してくれたり、 レポート同士の類似性(つまり友だちのレポートをコピペした学生 がいないか)を示してくれたりします(コピペ判定ソフトの機能については、以下のサイトを参考にしました。株式会社アンク「コピペルナー V2), http://www.ank.co.jp/works/products/copypelna/Client/index. html, 2012年9月24日アクセス)。
はっきり言って、まともな大学教員であれば、コピペのレポートかどうかは読めば一目でわかります。コピペのレポートは、語り口や言葉づかいが、学生が書いたレポートにしては不自然なのです。 そのため、単にコピペを見破るだけならばこうしたソフトは不要と もいえるのですが、いざ採点しようとするときには、証拠がないと 0点は付けにくい、あるいは自分でネットを検索して証拠をつかむ のは手間、ということで利用されているのかもしれません。

盗作(ないし剽窃)と引用の違い

「完全コピペ」や「コピペのパッチワーク」であれば大幅減点は やむを得ないし、その証拠をつかむためにはコピペ判定ソフトも役 に立つのでしょう。しかし実は、一番多いのは、どこかで得た情報 の単なる要約に過ぎないレポートです。これが大変に多い、という より、提出されるレポートのほとんどはこれ、といっても過言では ありません。
たとえば、以前に「常識を疑え!」というテーマの講義で課した 「ハイブリッドカーは環境に良いか」という課題に対する、ある学生さんのレポートの書き出しは、以下のようなものでした。
ハイブリッド車とは、異なる二つ以上の動力源・エネル ギー源を持つ自動車のことで、 通常のエンジン車よりも 燃費がいいといわれている。
種を明かせば、この文章はウィキペディアの項目「ハイブリッド カー」の要約です。
巧みになされた要約は、それ自身、創造的な思考活動ではないの か、というふうに考える方もおられるかもしれません。また、完全 なコピペではないので、単純に「0点」を付けることには抵抗を覚える大学教員もおられるかもしれません。
というわけで、実際に大学でレポートの採点をするときには、 「単なる要約レポート」については「まあ60点(通常、大学で「単 位」が認められる最低得点)を付けておこうか」ということになる ことが多いかと思います。
「完全コピペ」はともかく、なぜ単なる要約でもいけない(合格 スレスレの点数しかもらえない)のでしょうか。一言で言うと、情 報源を明記せずに要約したり、そのまま写したりするのは「盗作」 (より正確だが難しい言葉でいうと「剽窃」)になるのです。 ところが、先ほどの例文に、ウィキペディアによると、ハイブリッド車とは、異なる二つ以上の動力源・エネルギー源を持つ自動車のことで、通 常のエンジン車よりも燃費がいいといわれている。
というふうに、冒頭に「ウィキペディアによると」という一文を付けただけで、「盗作」が「引用」に変わるのです(もちろん、さすがにこれだけでは不十分なので、具体的にどういうふうにすればよいかは後で説明します)。
専門の学者が他人の論文を盗作したり、作家が他人の作品を盗作 したりしたことが発覚すれば、彼らの社会的地位が失われるほどの 重大問題になります。学者や作家の仕事は、オリジナリティのある 作品(論文や小説など)を制作することです。優れた作品を制作する能力のある学者や作家は高い評価を得ます。他人の作品を盗作することは、単なる「盗み」ではありません。自分の価値を本来の価 値以上に見せかけて人をだまし、それによって不当な利益を得ると いう詐欺行為なのです。
専門の学者や作家でない学生の場合でも、コピペでレポートを作るということは、もともと自分が書いたのではない文章を、あたか も自分が書いたかのように装って教員に提出し、よい成績をもらおうとする行為ですから、同様の詐欺行為になります。要するに、カ ンニングだということです。
他方、「引用」は、合法的に他人の論文や作品を参照する行為 で、学者も作家も日常的に行っていることです。とくに学者の場 合、引用することは非常に重要です。多くの学生さんは学問研究に ついて、「白衣を着たちょっと変わった人が研究室にこもって一人 でやっているもの」といったイメージを持っているかもしれません が、実は学問研究とは集団的な作業です。ある学者の学説を、他の 学者が批判的に検討し、より優れた学説に鍛え上げていくことに よって科学は進歩します。ですので、自分の論文に、他の学者の研 究成果を引用し、それを検討することは、論文作成において必要不 可欠です。ふつうの学会では、引用文献のない論文は、「論文」と して認めてもらえません。
レポートの場合も同様です。レポートでは、テーマに関連する情 報を調べ、それを批判的に検討することで、自分の意見を主張する ことが求められています。引用文献がなく、「自分の思い」だけを 書いたものは感想文であって「レポート」ではありません。
このように、盗作と引用には大きな違いがあります。そしてこの 大きな違いは、たった一つ、情報源を明記するか否かにあるのです。

山口裕之 (著)
出版社 : 新曜社 (2013/7/26)、出典:出版社HP

コピペと著作権法

コピペはもちろん、情報源を示さない要約もまた、重大な「犯罪 行為」です。日本の著作権法では、第三十二条で、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公 正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の 引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」 とされています。
条文に「公正な慣行」とありますが、これは具体的には以下の3 つです。
1)主従関係:引用文が、作品全体の一部分(従属的な部分)にとどまっていること。レポートの半分が引用文といったものや、レ ポート全体が引用文のパッチワークといったものは認められません。
2)明瞭区分性:引用文をカギかっこでくくるなどして、それが引 用であることをはっきり示すこと。
3)出所表示: どこから引用したのか、出典を明示すること。
主従関係・明瞭区分性・出所表示という3つの言葉をしっかり頭 に入れておいてください。この本は、こうした「公正な慣行」を学べるように構成しています。これに合致しないものは違法になりますので注意してください。
「要約はどうなんだ?」と思われるかもしれません。著作権法の 第二十七条では、「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する」とされています。要するに、他人の作品を勝手に要約して、あたかも自分の作品であるかのように発表してはいけないということ です。コピペ・レポートだけでなく、「単なる要約レポート」も違 法なのです。
もちろん、引用したい文章が長すぎるときなどには、それを要約 したうえで、先の「公正な慣行」に合致する形で利用することは問 題ありません。

学生は、なぜコピペしてしまうのか

なぜ多くの学生がコピペをしてしまうのでしょうか? 「最近の 大学生はモラルが低下している」というようなことを言う人もいま すが、私はまったくそう思いません。少なくとも、私が勤めている 大学の学生さんたちの多くは(「全員」とは言いませんが)、あえて 悪事を働こうなどとは夢にも思わないような、素直でまじめな人たちです。どうも彼らには、自分たちの提出したレポートには「課題 についてちゃんと調べてきた答え」が書いてあると思っているふし があります。「コピペだから0点!」と宣告すると、何が悪かった のか分からずにびっくり仰天する人もいます。
最近の情報化社会、インターネットの発達を背景に、多くの小、 中学校や高校で「調べ学習」が行われているようです。学生からの 話を総合すると、そうした「調べ学習」は、「単に調べてきたこと をそのまま発表して終わり」という形で行われることが多いような のです。そこで彼らは、与えられた課題についてどこからか「正 解」を探してきてそのまま報告すれば褒められる、と学習してし まっている。つまり、調査した文献や資料を「引用」することと、 「丸写しすること」の違いが教育されていないのです。異論のある 小中高校の先生方もおられるとは思いますが、残念ながら大多数の 大学生が悪事だと思わずにコピペをしてしまっているというのが実 態です。
「コピペ・レポート」の蔓延に対して、私の大学を含めて多くの 「大学では1年生の最初の時期に「大学入門講座」などの時間を取 り、その中で「コピペはいけません」と指導しています。しかし、 時間が不十分なこともあってか、調べてきた情報をどのように扱え ば「コピペ」でなくれっきとした「引用」になるのか、といった具体的なところはなかなか教育されていないのが実情かと思います。 そして、授業でいきなりレポートが宿題に出され、「ちゃんと調べ たこと」 を丸写しして出してしまう、ということになるようです。

ウィキペディアは使ってはいけない?

「コピペ問題」が広がる中、「ウィキペディアは使ってはいけない」ということは繰り返し指導されており、学生の間によく浸透しているようです。そこで彼らは、言いつけをきちんと守ってウィキ ペディアを使わない代わりに、「Yahoo 知恵袋」や、誰が書いたの かも分からないブログなど、もっと信用のならない記述をコピペしてくれたりします。使ってはいけない理由をきちんと伝えることが 大切だと痛感します。
この本は、「コピペ」と言われないために守るべき形式上のルー ルを伝授することを主要な目的としていますが、そのときに、なぜ そうするのか、理由も説明します。理由が理解できていれば、どう すればよいか迷ったときに、おのずと答えが見つかるものです。 信用できるウェブページと信用できないページの判定法について は、のちほど、いくつかのポイントを示しますので活用してください。

「コピペ!」と言われないための基本ルール

「コピペ」と言われないレポートを書くためには、以下で述べる とても簡単なルールを守ればよいのです。基本は、先に述べたよう に、情報源を明記せずに単に要約したり、そのまま写したりするの は「コピペ」だということです。
この本では、「コピペと言われないレポートの書き方」の基本的 なルールを、7つのポイント、3つのステップに分けて説明していきます。あらかじめ列挙しておくと、

ステップ1 「コピペ」と言われない書き方・基礎編
ポイント1:情報源は引用と出典で明示する
ステップ2 「コピペ」をしようと思わなくなるための方法
ポイント2:複数の情報源を確認する
ポイント3:反対意見・反対の事例を常に探す
ポイント1:「論じるべきこと」を見つける
ステップ3 「引用」を活用した文章の構成
ポイント5:「思う」は禁句
ポイント6:接続詞を入れる
ポイント7:具体的な結論を出す

「コピペと言われない書き方って、これだけ?」と思われるかもしれません。しかし、ルールを聞くのは簡単ですが、実際にそれが できるようになるにはかなりな練習が必要です。私が授業などでいつも言うことなのですが、「野球のルールをいくら聞いても、練習 しなければホームランは打てない」のです。
ルールを知らなければそもそも野球はできませんが、ルールを 知っているだけでも無理ですよね。筋トレをやって、素振りをし て、実際に球を打ってみて、といった地道な練習を重ねて初めてまともな試合ができるようになるのです。
レポートもまったく同じです。書き方のルールを知らなければレ ポートは書けませんが、まともなレポートが書けるようになるには 「地道な練習を重ねることが必要です。そうした基本練習は、卒業論 文など、もっと本格的な論文を書くときにも役に立つことでしょう。

コピペ以前の基本

ここまでコピペを中心に説明してきましたが、ここでコピペ以前 の「レポートを書くときの基本」について簡単に説明しておきま す。
まず、レポートはパソコンのワープロソフトで作成しましょう。 パソコンのスキルは身につけておいて損はありません。普段から練 習を兼ねてパソコンを使いましょう。採点する立場から言うと、必 ずしも字のうまい学生ばかりとは限りませんので、手書きの原稿を 読み続けるのはけっこう疲れるのです。
また、携帯電話のメールでレポートを作成してそのまま送信する 学生もいます。最近の多機能携帯電話(いわゆる「スマホ」)の画 面はずいぶん大きいとはいえ、パソコンと比べればずっと小さいで す。小さい画面では多くの文章が表示できませんから、推敲することが困難です。推敲しないで書き流された文章など、高い評価を与 えられるはずがありません。というわけで、携帯電話でレポートを作成するのはやめましょう。
さて、パソコンで作成した原稿を保存するとき、ファイル名は、 とくに教員からの指示がない限り、「授業科目名+自分の名前」と しておくのがよいでしょう。たとえば、「哲学概論」という授業の レポートの場合には、「哲学概論レポート(山口裕之)」としましょう。
ただし、教員によってはあえて「縦書き原稿用紙に手書きで」などと指示する人がいます。そうした場合には指示に従ってください。私の知人の大学教員にも、「パソコンで作成させると、ウェブ ページを読みもしないでコピペするから、せめて一度は読ませる」 という目的で手書きを指定する人がおられます。
紙は、A4の用紙に横書きが基本です。1行の文字数や1ページ あたりの行数、文字のフォントやサイズなどは、初期設定のままで よいです(Microsoft 社の Word では、1行40文字×36行で、文字 は游明朝の10.5ポイントが初期設定になっています)。これも、と くに指示がある場合にはそれに従ってください。
ときどき、レポート全体に区切れがなく1段落という学生さんが いるのですが、文章は、ひとまとまりの内容ごとに段落に区切りましょう。最低限度、「起承転結」で分けたとしても4段落ぐらいに はなるはずです。 「言うまでもないことですが、段落の最初は1文字下げることを忘 れずに。小学生のときに「原稿用紙の使い方」は学ぶはずですが、 ワープロで作成すると横書きになるためか、段落の頭を1文字下げ なかったり、あるいは段落と段落の間になぜか空白の行をはさんだりする学生さんがちらほら見受けられます。
文末は、「だ・である」(常体)に統一しましょう。レポートや論 文など学問的な文章では「です・ます」調はふつうは使いません。
ときどき、友だちにメールを書くかのような文体でレポートを書く人がいるのですが、きちんとした「書き言葉」で書くようにして ください。なお、この本では、「!」や「?」などの記号も使って いますが、レポートや論文で使ってはいけません。(^^; などのいわ ゆる顔文字や(笑)などの記号も使ってはいけません。
分量については、指示された量の8割以上は書くようにしましょう。とくに指示がなければA4の用紙で2~3枚ぐらいが妥当だと 思います(400字詰原稿用紙でおよそ7~10枚程度の分量です)。A 4に半分以下しか書いていなければ、私なら落第させます。
なお、A4で2~3枚のレポートであっても、ページ番号を振り ましょう。Word の初期設定ではページ番号はついていませんので、「挿入」タブをクリックして、その中にある「ページ番号」ボ タンをクリックすれば、ページ番号を振ることができます。詳しく は、自分の使っているワープロソフトの使用説明書を見てください。万一、わからなかったら、手書きでもよいから付けておきま しょう。
立派な表紙を付けてくれる学生さんもいるのですが、A4に2~ 3枚の分量であれば表紙は付けなくてもよいでしょう。これももち ろん、「表紙をつけよ」という指示があればそれに従ってください。
あと、言うまでもないことかもしれませんが、レポートの冒頭 (ないし表紙)には、授業の科目名、レポートのタイトル、自分の 名前、所属(学部・学科)、学生番号を忘れずに書いてください。 レポートのタイトルについては、文字サイズを大きめにしましょう。14ポイントぐらいが妥当かと思います。 提出するときには、紙を束ねて左上をホッチキスで止めてください。ただし、文学系の授業などで縦書きを指定された場合には右側 を止めてください。横書きは左側、縦書きは右側を綴じるのがルー ルです。なお、クリップは外れるので避けましょう。
レポートの体裁については、この本の最後にサンプルを示します ので参考にしてください。

「はじめに」のまとめ

前置きが長くなってしまったかもしれませんが、「コピペ」 がなぜいけないのか、理解できましたか? ここまでの要点を まとめておきましょう。
・「コピペ」や「単なる要約」はカンニングである。
・情報源を示すことで「盗作」でなく「引用」になる。
・レポートの目的は、「自分の意見を説得的に表現する方法」を学ぶことである。
・「よいレポート」を書くためには、練習を重ねることが必 要である。

★「コピペ」以前の基本
・ワープロでA4の用紙に横書き。
・ひとまとまりの内容ごとに段落に区切る。
・段落の頭は1文字下げる。
・「だ・である」調の書き言葉で書く。
・分量は2~3枚程度で表紙は不要。
・ページの下にページ番号を振る。
・科目名、レポートのタイトル、自分の名前と所属と学生番号を忘れずに書く。
・紙の左上をホッチキス止めして提出する。
※教員からの指示があればそちらを優先。

目次

はじめに――「コピペ」の蔓延とその原因
この本の特徴とねらい
レポートと就職
コピペとは何か
「ホームページ」か「ウェブページ」か?
コピペ判定ソフト
盗作(ないし剽窃)と引用の違い
コピペと著作権法
学生は、なぜコピペしてしまうのか
ウィキペディアは使ってはいけない?
「コピペ!」と言われないための基本ルール
コピペ以前の基本
「はじめに」のまとめ

ステップ1「コピペ」と言われない書き方・基礎編
ポイント1:情報源は引用と出典で明示する
基本中の基本
引用が長くなる場合
文献を要約するには
「 」と()と。の関係
ウィキペディアについて
情報源(出典)の書き方について:ウェブページの場合
ウェブページにタイトルがない場合
「注」によって出典を示す場合
Word の「脚注機能」を活用しよう
「参考文献一覧」によって出典を示す場合
なぜ出典を書くことが必要なのか
「いわれている」は魔法の言葉
「いわれている」と書いてもよい場合
「コピペ」と言われない書き方・基礎編のまとめ
ステップ2 「コピペ」をしようと思わなくなるための方法
ポイント2:複数の情報源を確認する
情報源の信頼性の判定
ネット情報は「きっかけ」として利用する
情報のありそうな場所
情報源(出典)の書き方について:文献の場合
ハイブリッドカーの虚実
本は買った方がよい
二重カギかっことイタリック体
Word の「引用文献機能」を活用しよう
論文を検索しよう
引用する理由
「トンデモ論文」の判定法
ポイント3:反対意見・反対の事例を常に探す
ポイント1:「論じるべきこと」を見つける
タイトルを付ける
「コピペ」をしようと思わなくなるための方法・まとめ
ステップ3 「引用」を活用した文章の構成
(ポイント5:「思う」は禁句)
「思い」と「意見」の違い
ポイント6:接続詞を入れる
「だから」に気をつけろ!
ポイント1:具体的な結論を出す
「引用」を活用した文章の構成・まとめ
◆“コピペと言われない書き方”の総まとめ
◆電子メールでレポートを提出する
◆チェック項目一覧
書き方チェックリスト
できばえチェックリスト
◆付録:この本で紹介したお役立ちサイト一覧
おわりに――民主主義とレポート

山口裕之 (著)
出版社 : 新曜社 (2013/7/26)、出典:出版社HP