リーマン予想のこれまでとこれから

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リーマン予想の現在地と今後の展望

リーマンが、リーマン予想を提出してから150年以上が経ちました。数学最大の難問との呼び声が高いリーマン予想は、現在までに無数の研究が行われてきました。本書は、これまでのリーマン予想の概要を振り返り、読者の方々がこれからの発展を視野に入れることができるように期待されて書かれています。

黒川 信重 (著), 小山 信也 (著)
出版社 : 日本評論社 (2009/12/1)、出典:出版社HP

序文

リーマン(1826-1866)がゼータ関数の零点に関してリーマン予想を提出してから,今年(2009年)でちょうど150周年になる.数学最大の難問との呼び声の高いリーマン予想に関しては無数の研究が行われてきた.本書はこれまでのリーマン予想研究の概要を振り返り,これからを展望する.もちろん,これまでに行われたリーマン予想に関する研究すべてを詳細に振り返ることは本書の目的ではなく,著者による取捨選択を行っている.

本書では,第Ⅰ部において,ゼータ関数に親しむことを目的とし,有限ゼータ関数とその無限への接近を扱う,リーマン予想への導入である.この段階は,数学的には簡明なものであるが,ゼータ関数全体への展望を与えてくれる.

つぎに,第II部において,リーマン予想の研究史の概略を振り返る.リーマン予想研究が,素数の研究を推進することから進化してきたことを見て欲しい.とくに,リーマン予想のさまざまな対応物の重要性とそれらを証明するための理論や道具の整備が更なる発展を導いてきた.たとえば,有名なフェルマー予想やラマヌジャン予想もこの思想の流れで解決している.

本書の第III部はリーマン予想研究の核となる,零点の固有値解釈を中心に解説する.固有値解釈は1914年頃のヒルベルトとポリヤの提言にはじまる.これは,2つのゼータ族に対して確立されている.それは,双方とも,20世紀数学の壮大な精華である.最初に現実となったのは20世紀の前半から行われた合同ゼータのリーマン予想の研究であり,まず,1次元の場合にリーマン予想の証明が完成された(ハッセ,ヴェイユ).20世紀の後半には,その高次元の場合を証明するためにグロタンディークが空間概念を革新して1万ページに及ぶ「スキーム論」を構築し,すべての合同ゼータに対して固有値解釈を樹立した(1965年).その上でドリーニュは1974年に合同ゼータ一般のリーマン予想の証明を完成した.20世約の後半には,もう1つのゼータ族であるセルバーグ・ゼータに対しても固有値解釈とリーマン予想の証明が完成している.こちらは,リーマン多様体のゼータ関数であり,ラプラス作用素による固有値解釈が核心である.本書の特徴は,このセルバーグ・ゼータ関数をかなり詳細に解説していることである.

第IV部では,最近目覚しい発展を続けている絶対数学を取り上げる.リーマン予想の解決の観点からすると,絶対数学が光明を与えてくれるであろう.

さらに,数学研究の導入にも触れる.

読者は,本書によってリーマン予想のこれまでを知るだけでなく,これからの広大な発展を視野に入れることができるであろう.若い人達が,この未開拓の領域にはばたかれることを期待する.

2009年7月
著者

黒川 信重 (著), 小山 信也 (著)
出版社 : 日本評論社 (2009/12/1)、出典:出版社HP

目次

序文

第I部 リーマン予想への助走

第1章 有限ゼータ関数
第2章 無限への接近

第II部 リーマン予想とその歴史

第3章 ピタゴラスからオイラーまで
第4章 リーマン
4.1 リーマンの業績
4.2 明示公式の一般化
第5章 リーマンの後
第6章 Z-カ学系のゼータ関数
−−リーマン予想の簡単な類似
6.1 やさしい事項の準備
6.1.1 線形代数からの準備
6.1.2 群論からの準備
6.1.3 微積分からの準備
6.1.4 複素関数論からの準備
6.2 Z-力学系のゼータ関数の定義
6.3 Z-力学系のゼータ関数の性質
第7章 R-カ学系のゼータ関数

第III部 リーマン予想からの発展

第8章 合同ゼータ関数
8.1 有限体
8.2 メビウス反転公式と無理数の個数
8.3 グロタンディークとドリーニュの定理
第9章 セルバーグ跡公式
9.1 フーリエ変換とフーリエ展開
9.2 ポアソンの和公式とその威力
9.3 基本群と普遍被覆空間
9.4 セルバーグ跡公式の骨格
9.5 無限次行列の場合
9.6 合同ゼータとの関連
9.7 連続無限次の場合(積分作用素)
9.8 跡公式としてのポアソン和公式
9.9 上半平面のセルバーグ跡公式

第10章 セルバーグ・ゼータ関数
10.1 セルバーグ・ゼータ関数の導出
10.2 リーマン予想が成り立つ仕組み
10.3 R-力学系のゼータとしてのセルバーグ・ゼータ関数
10.4 SL(2, Z)の跡公式とスペクトル理論入門
10.5 アイゼンシュタイン級数のフーリエ展開
10.6 スペクトルを用いた素数定理の別証

第IV部 展望

第11章 絶対数学展望
11.1 絶対ゼータ関数
11.2 黒川テンソル積の実例
第12章 研究のすすめ
12.1 数学研究とは
12.2 問題の考察の例とヒント

読書案内
[1]ゼータ関数をもっと知るために
[2]オイラーを知るために
[3]リーマン
[4]ラマヌジャン
[5]ゼータ関数の定番書
[6]絶対数学入門
[7]最近のリーマン予想の状況を知るために

あとがき

黒川 信重 (著), 小山 信也 (著)
出版社 : 日本評論社 (2009/12/1)、出典:出版社HP