よくわかる観光社会学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

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観光学の知識を体系的に学ぶ

本書は他の観光社会学のテキストに先駆けて刊行された、いわば観光社会学のテキスト第一号のような存在です。本書の構成として、専門用語が使われた際には、すぐ隣の語注に参考箇所や参考文献が記載されているので、詰まることなく学習を進めることができます。

安村 克己 (著), 遠藤 英樹 (著), 寺岡 伸悟 (著), 堀野 正人 (著)
出版社 : ミネルヴァ書房 (2011/4/1)、出典:出版社HP

はじめに

■よくわかる観光社会学
本書は,観光社会学がこれまでに集積した研究成果の全体像と,これから展開する研究の方向性とを紹介する,初学者向けのテキストです。ただし本書には,新しい学問である観光社会学の挑戦的な理論や事例が盛り込まれているので,本書はあらゆる読者が観光研究の新たな〈知〉に接するのにも役立ちます。
観光社会学の研究主題である社会現象としての「観光」は,社会学において今までほとんど看過されてきました。しかし,年間に9億人が国際移動する現代において,「観光」は世界や時代の動向にさえ重大な影響を及ぼす社会現象とみなせます。こうした重大な意味をもつ「観光」の研究に,観光社会学はまだ取り組みはじめたばかりなのです。
執筆者一同は,本書を観光社会学の本格的な研究の出発点にしたいと考えています。すなわち本書は,観光社会学の〈知〉が体系的に整理されるテキスト第一号となるはずです。
そのために,本書は観光社会学の〈知〉全体を俯瞰して、読者が観光社会学の研究成果を的確に理解できるように「もくじ」を立てました。本書は,4部11章から構成され、そこに94項目の研究課題が配置されています。「もくじ」の第1部は「観光社会学とは」です。ここでは,観光社会学が観光を捉える視点や方法が解説され、特に研究主題となる現代観光の構造的な特徴が説明されます。第2部の「現代観光のかたち」は,研究対象の新しい観光と多様化する観光形態を現代社会の動向に絡めて紹介します。第3部の「観光社会学の体系」では,観光社会学が取り扱う主要概念や隣接学問との関係などが議論されます。そして最後の第4部は「事例を読み解く」です。ここでは,観光社会学の事例研究の成果が解説され,また観光社会学の代表的な研究者が紹介されます。
このような本書を読者が観光社会学の入門書として活用し,これを契機に新たな〈知〉を挑戦的に追究されること期待しています。そして,本書が観光社会学の発展の一助となれば,それは執筆者一同にとって望外の幸せです。
最後になりますが,いまは軽視されがちな観光社会学の本来の「意義」と本物の「魅力」を世に広く知らせたいという編者の「意固地」な思いを汲み取られ,本書を「よくわかるシリーズ」に加えてくださったミネルヴァ書房に感謝します。そして編集部の酒井格氏は,編者の無理難題に最後までおつき合いくださり,本書を編者の「意固地」な思い以上のレベルに仕上げてくださいました。心より深謝の意を表する次第です。

2011年春
編者を代表して 安村克己

安村 克己 (著), 遠藤 英樹 (著), 寺岡 伸悟 (著), 堀野 正人 (著)
出版社 : ミネルヴァ書房 (2011/4/1)、出典:出版社HP

もくじ

■よくわかる観光社会学

第1部 観光社会学とは
Ⅰ 観光社会学の輪郭
1 社会学と観光
2 観光社会学の現状と課題
3 観光社会学の射程
4 現代観光の理論と実践
Ⅱ 社会現象としての観光の構造と変遷
1 観光の構成要素と構造
2 観光研究の土台からみる現代観光の変遷
3 マス・ツーリズムの出現とその弊害
4 持続可能な観光の模索と実践

第2部 現代観光のかたち
Ⅲ 新しい観光のかたち
1 新しい観光の登場
2 エコツーリズム
3 コミュニティ・ベースドツーリズム
Ⅳ 多様化する観光
1 スペシャル・インタレスト・ツーリズム
2 グリーン・ツーリズム
3 産業観光
4 都市観光
5 フィルム・ツーリズム
6 巡礼観光
7 アニメと観光

第3部 観光社会学の体系
Ⅴ 観光社会学の視座
1 観光経験
2 感情労働
3 文化資本
4 擬似イベント
5 観光客のまなざし
6 真正性
7 シミュラークル
8 パフォーマンス
9 観光における文化の商品化
10 伝統の創造
11 聖-俗-遊
12 ポスト・コロニアリズム
13 ディズニーランド化
14 構築主義
15 ツーリスティック・ソサイエティ

Ⅵ 観光社会学の領域
1 メディアと観光
2 文化と観光
3 産業と観光
4 ジェンダーと観光
5 家族と観光
6 宗教と観光
7 環境と観光
8 政治経済と観光
9 福祉と観光
10 まちづくりと観光
11 エスニシティと観光
12 遊びと観光
13 ポストモダン社会と観光
14 社会構想と観光
15 社会調査と観光
Ⅵ 隣接する学問領域
1 人類学における観光
2 カルチュラル・スタディーズにおける観光
3 地理学における観光
4 経済学における観光
5 歴史学における観光

第4部 事例を読み解く
Ⅶ 観光施設の社会性
1 ホテル
2 博物館・美術館
3 動物園・水族館
4 ショッピング・モール
5 映画館・
6 テーマパーク・遊園地
Ⅷ 観光の文化装置
1 B級グルメと郷土食
2 ツアー・ガイド
3 旅行記
4 ガイドブックーその変遷と可能性
5 みやげ
6 写真
7 温泉
8 博覧会
9 音楽イベント
10 スポーツ
11 ホスピタリティ
12 鉄道
13 世界遺産・文化遺産
Ⅸ 観光社会学の舞台
1 秋葉原・池袋・日本橋——「おたく」趣味の観光パフォーマンス
2 沖縄——海のイメージ,観光のまなざし
3 京都——庭園,文化遺産
4 高知・札幌——鏡の中の地域アイデンティティ
5 遠野——ふるさとイメージと語り部
6 奈良——古代イメージの卓越
7 由布院——まちづくりの批判的読み解き
8 横浜——創られる観光の都市空間
9 インド——聖地巡礼,聖-俗-遊
10 韓国——分断の観光化
11 グアム——マス・ツーリズムの「楽園」
12 タイ——トレッキング・ツアー,エスニシティと観光
13 ニューヨーク——場所のパフォーマンス
14 ベトナム——文化の商品化
15 香港——ポスト・コロニアリズム,ホテル
Ⅺ 研究者紹介
1 ダニエル・ブーアスティン
2 ヴァーレン・スミス
3 ディーン・マキャーネル
4 エリク・コーエン
5 ジョン・アーリ
6 エドワード・ブルーナー
7 バーバラ・キルシェンブラット-ギンブレット

さくいん

安村 克己 (著), 遠藤 英樹 (著), 寺岡 伸悟 (著), 堀野 正人 (著)
出版社 : ミネルヴァ書房 (2011/4/1)、出典:出版社HP