人材マネジメント入門 日経文庫B76

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人事の実務家におすすめ

人材は、企業の戦略を達成し、長期的な競争力を維持・教科するために欠かせない経営資源です。本書は、企業や組織が人を資源として経営する時、どういう考え方に基づいて人材を活用していけばよいかについての基礎的な枠組みを示しています。日本企業の実情の即した、実践的な解説が書かれています。

守島 基博 (著)
出版社 : 日本経済新聞出版 (2004/2/14)、出典:出版社HP

人材マネジメント入門 日経文庫B76 (日本語) 新書

まえがき

本書は、企業や組織が、人を資源として経営するときに、どういう考え方に基づいて人材を 活用すればよいのかについての基礎的な枠組みを示した本です。したがって、通常の人事管理 論の教科書とは違っています。正直、この本を読むことで、人事管理の詳細についての理解は 深まらないでしょう。

その代わり、この本を読んで理解してほしいのは、人材マネジメントの背後にある考え方で す。それは大きく二つあります。ひとつは、人材とは、企業の戦略達成に貢献し、さらに短期 的な戦略達成だけではなく、長期的な企業の競争力を維持・強化していく経営資源であること です。こうした資源を獲得、育成、配置、評価、処遇していくのは、人材マネジメントの最も 重要な機能となります。基本的には、経営視点からの人材マネジメントです。

ただ、人材マネジメントはここでは終わりません。なぜならば、人という資源は、経営資源 のなかでも特殊な存在だからです。特殊である理由は、人は人材である前に人であるという事 実に基づきます。 そのため、人材は適材適所で活用され、活き活きと働いているときに、最も働きがいを感じ資源としての価値も一番高く、さらに長期的にも人材として成長していきます。こうした 人材の意欲や成長、働きがいなどの視点も、人材マネジメントにおいては重要です。人の視点 からの人材マネジメントだといってもよいでしょう。
したがって、「企業の戦略達成や競争力維持」と「人材としての活用や成長」という二つの 目的を統合しながら行うのが、人材マネジメントということになります。人事管理論で議論されているいろいろな制度や施策は、そのための道具です。本書では、道具を考える前に、知っておかなければならない基礎的な考え方を紹介します。

本書の完成までには、多くの人々の支援がありました。特に、人材マネジメントについて教 えていただいた諸先輩、研究者、実務家の方々から多くを学びました。また、日本経済新聞社出版局編集部の堀口祐介さんの並々ならぬ忍耐と応援がありました。記して感謝します。最後 に、この本を、私が人材を考えるときの先生のひとりである、妻、利子に捧げたいと思います。

二〇〇四年一月一
守島基博

守島 基博 (著)
出版社 : 日本経済新聞出版 (2004/2/14)、出典:出版社HP

目次

I 人材マネジメントとは何か
1 人材マネジメントの考え方
1 人材マネジメントにおける経営と人
2 人材マネジメントにおける長期と短期
2 人材マネジメントのデリバラブル。
3 人材マネジメントの活動%
1 成果としての戦略達成への貢献を高める
2 戦略を構築する能力を獲得し、その能力を向上させる
3 公平で、情報開示に基づいた評価と処遇を提供する
4キャリアを通じ、人間としての発達を支援する
4 人事部はいらないのか
Ⅱ 人材を獲得する
1人的資源の獲得
2 人材スペックと人材ポートフォリオ
1 人材スペックの明確化
2 採用はスペックだけではない、でも…。
3 人材ポートフォリオ
3 採用による人材獲得の三つのステップ
1 採用プロセスとは
2 リクルーティング
3 募集と採用におけるリアリズム
4 採用ブランドとキャリア開発
4 選抜――誰が意思決定をするのか
5 人材の獲得と多様性
Ⅲ 人を育てる
1 人材育成とは何か 。
1 人材育成の目的は組織が強くなること
2 人材育成の長期性…。
3 戦略を構築するために必要な能力
2 キャリア開発としての人材育成
1 キャリアを通じた育成
2 働く人と企業との間のパートナーシップ
3 人材育成の場としての仕事経験的
1 OJTとOff-JT
2 OJTと現場の役割
3 Off-JTの役割
4 キャリアの節目でのOff-JT
4 リーダー人材の育成。
1 リーダー育成の新しい流れ
2 早期選抜の意味
3 キャリア連動と個別性
V 人材を評価する
1評価の目的
1 なぜ、人材評価を行うのか
2 評価の戦略達成機能
3 評価の人材育成機能
4 パフォーマンス・マネジメントの根幹
2 成果を出すプロセスと評価%
1 何を評価の対象にするか
2 業績評価と目標管理のポイント
3 目標管理は上司を評価する
4 労働意欲評価
3 格差と相対評価
4 評価の公正性
1 評価の正確性をどう確保するのか
2 過程の公平性
3 フィードバック
4 評価は現場の人材マネジメント
V 人材を処遇する
1 処遇の意味
1 目的は、働く人の行動を組織の期待する方向に水路づけること
2 内発的動機づけと外発的動機づけ
2 インセンティブとは何か
1 インセンティブの種類
2 おカネによるインセンティブ
3 仕事によるインセンティブ
3 処遇の与え方
1 期待理論
2 期待理論とインセンティブ・マネジメント
3 昇進というインセンティブの与え方…?
4 インセンティブ制度の設計図
1 納得性の役割
2 納得性を形成する三種類の比較
3 他者との比較
4 自分自身のなかでの比較
5 外部労働市場との比較
6 納得性とモチベーション
Ⅳ人材を動かす
1 人材フローの考え方
2 人事異動とは何か
1 第一の目的は、マッチング
2 人材要件の明確化
3 第二の目的はキャリア開発
3 キャリア開発の新しい形
1 人材が異動するとき、その主体は誰か
2 個人主導型キャリア開発の前提
3 企業の人材ビジョン
4 組織と個人の相互作用をとりもつ仕掛け
4 企業からの退出血
1 解雇について
2 雇用調整
3 退職のマネジメント
4 定年退職
5 内部労働市場という考え方
Ⅶ人材を尊重する
1 人材の視点
1人を大切にするとは
2 自律的な貢献を引き出す
3 納得性をいかに維持するか
4 成長する個人
2働きやすさと人材マネジメント
1 働きやすさとは
2 職場環境
3 仕事と生活の調和
4 働きやすさの要素としての柔軟性
5 福利厚生の位置づけ
3 ステークホルダーとしての人材%
1 企業が人材の声を聞く仕組み
2 労働組合の実情
3 労働組合の人材マネジメント上の機能
4 人材の尊厳を守る
Ⅷ 人材を組み合わせる
1 雇用の外部化と人材マネジメント
1雇用の外部化とは
2 正規従業員を中心とした人材マネジメントの強み
2 人材は組み合わせで考える
1 正規雇用の弱みとそれへの対応
2 「正規従業員」は本当になくなるのか
3 人材ポートフォリオ
3 非正規従業員の人材マネジメント
1 戦略人材としての非正規従業員
2 非正規従業員に対する人材マネジメントの必要性
4 雇用構造の変化と企業の競争力朗
1 機能的柔軟性の確保
2 組織の競争力のために
ブックガイド
COFFEE_BREAK
RJPは日本で根付くのか
選抜型リーダー育成の展開
評価の納得性は現場の上司で決まる
成果主義の裏技
以人材創出企業
ワーク・ライフバランス
人材ポートフォリオの例
正規従業員と非正規従業員
用語解説
コンピテンシー

●人材マネジメントの役割は、人材を活用して、会社の戦略を達成し、さらに次の戦略を生み出す人材を提供することです。
●人材は成長し、発揮する価値を変化させていく存在です。
●人材マネジメントには、企業目標の達成という経営の視点と、人間としての価値を高めていくという人の視点が必要です。また、その際、短期的目標と長期的目標の 両方が設定されます。
●この二つの視点と目標に基づいて、人材マネジメントのデリバラブル(目的・提供 価値)は何かを考えるべきです。

守島 基博 (著)
出版社 : 日本経済新聞出版 (2004/2/14)、出典:出版社HP