より少ない生き方 ものを手放して豊かになる

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より少なく生きると、大切なことに集中できる

ものを手放すことで、時間とお金から自由になることができます。人生から不用品を取り除くことの重要性、また所有物の適正量など本書を通して学べます。いちばん大切にしているものを優先し、その障害になるものは排除するというミニマリズム最大の利点である「豊かさが増える」を実現することができる1冊です。

ジョシュア・ベッカー (著), 桜田 直美 (翻訳)
出版社 : かんき出版 (2016/12/14)、出典:出版社HP

THE MORE OF LESS
by Joshua Becker Copyright © 2016 by Becoming Minimalist LLC
All rights reserved. uanslation published by arrangement with WaterBrook Press, the Crown Publishing Group, a division of Penguin Random House, LLC
through Japan UNI Agency, Inc., Tokyo
an imprint of the Crown Pub

私のウェブサイト「ミニマリストになる」に、集まってくれるすべての人たちに捧げる。みなさんの支援と励ましのおかげでこの本は生まれた。これからもみなさんの存在が刺激となって、少ないもので豊かに暮らす生き方が広まっていくことを願っている。

目次

第1章 より少ない生き方を始める
ものがありすぎると幸せから遠ざかってしまう
クローゼットの中身が教えてくれること
ものを手放すことで得られるメリット
ものを手放すと大切な夢を実現できる
少ないもので暮らすと人生が変わる
より少なく豊かな暮らしはすぐそこにある

第2章 ものを減らして自由になる
大切にしているものを最優先にする
少ないもので暮らすと心が豊かになる
イエスが教えた、ものに執着しない生き方とは
持ち物を最小限にすると自由に生きられる

第3章 自分らしいより少ない生き方を見つける
自分の目的を基準に生き方を見つめる
人はそれぞれ目的のために生きている
実行しながら学んでいくと目的がはっきりする
自分の目的がわかると人生が変わる
目的に合わせてシンプルにする方法を選ぶ
自分だけの生き方を見つける

第4章 消費社会の罠を知り尽くす
ものをいくら買っても幸せにはなれない方
世代による消費に対する考え方の違いを知っておく
過剰なライフスタイルは成功の証しではない
浪費を防ぐために広告業界の手口を知る
ものを買わないことで得られる自由

第5章 自分の中にある「欲しい」という気持ちを探る
私たちはなぜものをため込むのか
安心と快適を混同してものを集める誤り
所有するだけでは得られない本当の安心
人の価値は所有物では決まらない
満足感は物欲を手放すと見えてくる
ものを買う動機を知ると物欲から解放される

第6章 簡単なところからものを手放していく
なぜより少ない生き方を目指すのか考える
よく使う場所のいらないものから処分する
ものの少ない生活の利点はすぐに実感できる
自分なりの基準で順番にものを減らしていく
同じようなものは1つだけ残して処分する
ものを手放して得られた経験を人に伝えよう
今日からすぐにでも始めよう

第7章 どうしても手放せないものと向き合う
1つの夢の終わりは、もう1つの夢の始まり
思い入れの強い本を手放すには
郵便物などの紙類を処分するには
お気に入りだった電子機器を手放すには
家族の思い出の品をどうするか
車を持つことの価値を考え直す
小さな家の暮らしやすさを考えてみる
理想を実現するためには、あきらめないこと

第8章 少ないもので暮らす実験をする
実験は自分を理解するきっかけになる
自分にとっての「十分」を知る
3カ月間、33アイテムで生活してみる
手放すのを迷ったら一時保管してみる
すべての持ち物をいったん箱に詰めてみる
29日後にものを処分するかどうか決める
過剰に持つことの実験から学べる教訓
持たずに暮らしてみるとわかる

第9章 より少ない生き方を維持する
掃除をラクにするための10カ条
ものを買わないとお金のやりくりから解放される
浪費の元凶、テレビの催眠術から逃れる
本当に必要な贈り物だけに減らす
「足るを知る」と感謝の気持ちが育つ
物欲から解放されると新しい習慣が身につく

第10章 家族でより少ない生き方をする
自分が見本となって家族に我慢強く説明する
健全な関係を維持するためには妥協も必要
小さな子供に少ないことの大切さを教えるには
親が限度を決めないと子供はずっと欲しがる
10代に教えるのは簡単ではないが、大切なこと
10代で気づいたより少ない生き方
家族との関係が何よりも大切

第11章 ものを手放して「意味のある人生」を実現する
不要品を売るのは大変なこと
売るよりも、もっといい方法がある
指輪の寄付から世界に広がった助け合い
ものもお金も、あまったら手放す
お金を手放して、お金のありがたさを知る
時間を手放して、時間のありがたさを知る
手放すことで人は自由になれる

第12章 何のために生きるのかを見つめる
時間とお金に追われる忙しさ
自分の時間を取り戻すには
見た目よりも健康状態を大切にする
自分の意識を変えて健康的な選択をする
人生のすべてでより意識的に生きられる
人をものと同じように扱うのは間違い
すべての人間関係でより意識的になる
目的意識を持って能力を最大限に発揮する

第13章 ものの少ない暮らしの先にあるもの
生きるうえで大切な物語が教えてくれる教訓
本当に大切なこととは
ものを手放すと、逆に豊かになれる
ポジティブな変化を起こす
もっと豊かに暮らすためにできること

謝辞

カバー写真©️Erich Schmidt/glowimages
本文デザイン・DTP/松好那名(matt’s work)

ジョシュア・ベッカー (著), 桜田 直美 (翻訳)
出版社 : かんき出版 (2016/12/14)、出典:出版社HP

第1章 より少ない生き方を始める

2008年のメモリアルデーの休日は、朝からよく晴れていた。
5月末のバーモント州ではとても珍しいことだ。
そこで妻のキムと私は、せっかくなので買い物や家の雑用などをすませてしまうことにした。この週末を使って春の大掃除を一気に終わらせるという、大きな目標を立てたのだ。手始めはガレージの片づけだ。

そして土曜日の朝が来た。キムと、赤ちゃんの娘はまだ寝ていたが、私は息子のセーレムを起こし、ベーコンと卵で朝食をつくった。おいしい朝食を食べれば、息子もパパの手伝いをする気になるかもしれないと考えたからだ。5歳の子供がガレージの片づけに興味を持つかはかなり怪しいものだが、ともかくなぜか私はそう期待していた。朝食が終わると、私と息子はガレージに向かった。うちのガレージは車が2台入る。そしていつも、ものであふれている。箱がいくつも山積みになり、今にも棚から落ちてきそうなほどだ。壁には自転車が何台も立てかけてある。庭で使うホースは、隅のほうでとぐろを巻いている。熊手やスコップや箒は、あっちを向いたりこっちを向いたりしている。
あまりにものがありすぎるので、車に乗り降りするときに、横を向いてカニ歩きをしなければならないこともある。

私は息子に言った。「今日やることを説明するよ。冬の間にガレージがずいぶん汚くなってしまったんだ。これからここにあるものを全部外に出して、ホースを使ってガレージの中を水で洗う。そして中がすっかり乾いたら、今度は出したものを全部、きれいに戻すんだ。わかったかな?」息子はうんとうなずいた。そこでまず手始めに、隅で埋もれていたプラスチックの容器を掘り出すことにした。だが間の悪いことに、それはセーレムの夏のおもちゃを入れた容器だった。

もうおわかりだと思うが、息子は冬の間ずっと見ていなかったおもちゃと再会すると、もうガレージの掃除のことなどすっかり忘れてしまった。
そして子供用の野球ボールとバットのセットをつかむと、裏庭に向かって走り出した。息子は途中で止まってふり向くと、「パパも一緒に遊ぶ?」と言った。一緒に遊んでもらいたいと顔に書いてある。「ごめんね。パパは遊べないんだ」と、私は答えた。「でもここが終わったら一緒に遊ぼう。約束するよ」
セーレムの小さな頭がガレージの角を曲がって見えなくなると、私の胸はちくりと痛んだ。それなのに時間がたつにつれてやることが次々と出てきて、息子と一緒に遊べる可能性はどんどん小さくなっていった。キムが私とセーレムをお昼に呼んだときも、まだガレージの片づけは続いていた。お昼を終えてまたガレージに戻るとき、お隣のジューンが庭仕事をしているのが目に入った。花を植えて、水をまいている。ジューンは笑顔の優しいおばあさんで、いつも私たち一家のことを気にかけてくれる。私は彼女に手を振ると、作業に取りかかった。そのとき私は、ガレージの外に出したものをきれいにして整理する作業に取りかかっていた。これはかなり大変な仕事で、思っていたよりも時間がかかりそうだ。

最近はこうやって片づけをしていても、どうも身が入らないことがよくある。今回もそうだった。さらに悪いことに、セーレムが何度も顔を出して、まだ遊べないのとせっついてくる。私はそのたびに、「もう少しだよ」と答えていた。
ジューンはそんな私のようすを見て、心中を察してくれたようだ。ちょうどすれ違ったときに、「家を持つのって大変よね」と声をかけてきた。彼女もまた、家の管理に1日の大半を費やしていた。私は答えた。「昔から言われている通りですね。ものが増えると、ものに支配されるようになるんですよ」

そのときのジューンの言葉が、私の人生を変えた。「本当にそうね」と彼女は言って、「だからうちの娘はミニマリストになったそうよ。『こんなにものはいらない』っていつも言っているわ」

こんなにものはいらない。
その言葉が耳にこびりついてはなれなかった。私はふり返ると、午前中の仕事の成果を見わたした。汚れてホコリをかぶったものたちが、ドライブウェイに山積みになっている。そのとき突然、裏庭にいる息子の姿が目の端に映った。息子はまだ、たった1人で遊んでいる。山積みのガラクタと、1人で遊ぶ息子。この2つのイメージが、私の心に深く突き刺さった。そのとき初めて、自分の不満の原因がわかってきたような気がした。ドライブウェイに出現したガラクタの山が、その原因だ。ものがたくさんあっても、幸せになれるわけではないということは、もちろん昔から知っていた。だがそもそも、それを知らない人などいるだろうか?所有物は幸せを運んでくれない。みんな少なくとも頭ではわかっている。しかしあの瞬間、山積みになったガラクタを眺めたとき、また別の気づきがあった。「私の所有物は、幸せを運んでくれないだけではない。それどころか、むしろ私を幸せから遠ざけている!」「私は家の中に駆け込んだ。そして2階に上がり、バスタブを磨いている妻を見つけた。私は息を切らせながら言った。「キム、さっき信じられないようなことが起こったんだ。隣のジューンがね、「こんなにものはいらない』って言ってたんだよ!」その瞬間、わが家はミニマリストになった。

ジョシュア・ベッカー (著), 桜田 直美 (翻訳)
出版社 : かんき出版 (2016/12/14)、出典:出版社HP