図解入門業界研究 最新銀行業界の動向とカラクリがよ~くわかる本[第5版]

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銀行業界の動向を知る

銀行業界の仕組みや銀行業界の最新の動向、銀行業界に関連する法律知識などについて図解をしながら解説をしています。現場の取材で得た銀行員のコメントも掲載されており、現在の銀行業界を把握するのに役立ちます。

はじめに

銀行業界は、一九九〇年代末の不良債権処理の時代を経て、二○○八年のリーマン・ショックという世界的な金融危機を乗り越えてきました。おおむね経営の健全性を維持しており、有事から平時の時代に入っているといえるでしょう。不良債権処理にメドを付けました。金融機関の破たん懸念も小さくなりました。しかし、経済は緩やかに成長しているという実感はあまりありません。ゼロ金利どころかマイナス金利に突入しているのは、景気が低迷して企業の設備投資意欲が減退しているからです。

少子高齢化が進み、銀行を利用する人は、年を追うごとに減っています。銀行は利益を確保するのに汲々とし、生き残りの競争が厳しさを増しています。メガバンクの再編は一応終わりましたが、地銀の再編は熾烈を極めています。同一県内の地銀同士の合併は、公正取引委員会の判断待ちになっていますが、金融庁は取引先の移管をしてでも実現させようと躍起になっています。

金融庁も自己変革に取り組んでいます。来年にも組織改革を行う予定で、担保第一主義の「日本型金融」を排除して、銀行が独自の目利き力を養って地域経済が活性化するような融資に転じることを願い、これまで銀行の貸付スタンスを拘束してきた金融検査マニュアルを廃止するなど大胆な行政転換を図ろうとしています。

金融とITを融合した新しい金融サービスである「フィンテック」の動きが急になっています。インターネット社会がますます進化し、スマートフォンが銀行の代わりを果たすようになってきました。フィンテックに乗り遅れることは、業界で取り残されるリスクをはらんでいます。銀行業界は平時に戻りましたが、サバイバル競争は一段と激しさを増しています。それだけに、銀行業界における課題は山積しており、今後も目を離せません。

本書は、現場の取材を通して得た銀行マンのコメントなども盛り込んだ異色の金融入門書で、二〇一四年発行の改訂版です。メガバンクグループ、信託銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫各業態の置かれた現状を豊富な資料とともに紹介しています。銀行業界を的確に把握するための副読本にしていただければ幸いです。

二〇一七年一一月
平木 恭一

目次

はじめに

第1章 銀行業界の現状
1-1 ゼロ金利時代の銀行業界
1-2 先を見据えた未来投資戦略二○一七
1-3 次世代の金融を担うフィンテック
1-4 投信、保険で儲ける手数料ビジネス
1-5 銀行カードローンで議論
1-6 巧妙化、悪質化する金融犯罪
1-7 金融庁が組織再編
1-8 「銀証信」三位一体経営目指すメガバンク
1-9 二〇二〇年五輪に向けての金融国策
1-10 問われる信託の存在意義
1-11 吹き荒れる県内再編(地方銀行)
1-12 大手の再編で業界縮小へ(第二地銀)
1-13 中小金融機関最後の砦(信用金庫)
1-14 上場で真価問われる日本郵政グループ
1-15 「新たな形態の銀行」は住宅ローンが好調
1-16 装置産業の宿命…銀行システム
1-17 地域金融機関で主流のシステム共同化

第2章 銀行業界の仕組みと仕事
2-1 ヒエラルキーに基づいた日本の金融制度
2-2 お金を融通する担い手(銀行の仕事)
2-3 銀行の三大業務(預金、融資、為替)
2-4 フィービジネスは第四の業務
2-5 それでも融資は銀行の重責
2-6 ホールセールとリテール
2-7 銀行決算の読み方
2-8 銀行支店の代替基地コンビニ
2-9 終わらない再編統合
2-10 銀行の障がい者対策
2-11 銀行で認知症サポーター増える
2-12 「コンプライアンス」の鐘が鳴る
2-13 反社排除でデータベース活用
コラム 銀行と反社会的勢力

第3章 銀行業界で必要な法律知識
3-1 金融環境の変化に即応(銀行法)
3-2 財管業務を大幅緩和(信託業法)
3-3 有事に備える保険料(預金保険法)
3-4 金融不安と震災復興で改正(金融機能強化法)
3-5 消費者をリスク商品から守る(金融商品販売法)
3-6 「未完の大法」違反やまず(金融商品取引法)
3-7 ネットワークの陥穽(振り込め詐欺救済法)
3-8 カード被害は銀行が弁償(預金者保護法)
3-9 疑わしき取引(犯罪収益移転防止法)
3-10 プライバシー保護の厳格化(個人情報保護法)
3-11 銀行は適用対象外(貸金業法)
3-12 割販業登録を回避した銀行も(割賦販売法)
コラム 法改正で増える個人情報のビジネス利用

第4章 銀行業界の問題点
4-1 大手銀行グループが目指す金融サービス
4-2 メコンデルタへの進出(メガバンクグループ)
4-3 銀行、信託の法人融資を統合(三菱UFJFG①)
4-4 異変! 頭取交代と行名変更(三菱UFJFG②)
4-5 仮想通貨発行に乗り出す(三菱UFJFG③)
4-6 発足一五周年を迎えた「ワン みずほ」(みずほFG①)
4-7 二○一八年秋に新システム稼働へ(みずほFG②)
4-8 住友、グループを制圧(三井住友FG①)
4-9 どうする「銀証信」戦略(三井住友FG②)
4-10 信託業界トップに陰り? (三井住友THD)
4-11 「鼎立」鮮明で覇権争い激化 地銀再編を歩く①(九州地区)
4-12 関西再編の主役は三井住友FG 地銀再編を歩く②(関西・中四国地区)
4-13 カギを握るMUFGの動向 地銀再編を歩く③(東海・北陸地区)
4-14 銀行過剰は解消するか 地銀再編を歩く④(北海道・東北地区)
4-15 規模が物言う再編の時代 地銀再編を歩く⑤(関東甲信越地区)
4-16 信金にも再編の波
4-17 異業種参入再浮上の「新銀行」
コラム 地銀再編夜話

第5章 銀行業界の最新動向
5-1 銀行支店の営業時間が自由化
5-2 キャッシュアウトが解禁
5-3 加速する銀行のオムニチャネル化
5-4 流通二強が頼る金融事業
5-5 ローソンも銀行業進出
5-6 見直し始まる相談役・顧問制度
5-7 信託銀行の不透明な議決権行使
5-8 地銀で活発な健康融資
5-9 医療ツーリズムと地銀
5-10 地銀が地方創生で不動産証券化
5-11 高齢化対応の銀行
5-12 「旧姓口座」開設に柔軟対応
5-13 銀行定年七〇歳時代
5-14 保険販売に手数料開示の圧力
5-15 金融庁が進めるベンチマーク型金融
5-16 三度目の正直か 東京国際金融センター
5-17 広がるデビット型スマホ決済
コラム シティバンクの教訓

第6章 銀行業界の将来動向
6-1 銀証信は誰のためか
6-2 信託の再編はあるか
6-3 地銀再編は地方創生に必要か
6-4 クラウドファンディングは育つか
6-5 銀行支店がなくなる
6-6 ブロックチェーンで銀行は変わるか
コラム 先行者利益を得たいメガバンク

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