手にとるように銀行がわかる本

【最新 – 銀行業界を知るためのおすすめ本 – 仕事内容から社会との関わりまで】も確認する

銀行業界について学ぶ

本書は、銀行の基本的な仕組みや役割、銀行の組織、銀行員の仕事内容、銀行の業務など、銀行に関するテーマを幅広く解説しています。銀行に勤めている方、金融機関への就職を希望する方が銀行業界を知るために役に立ちます。

岩崎博充 (著), 株式会社 地域金融研究所 (監修)
かんき出版

はじめに

ここ数年、世界的に「銀行」の動きが注目されています。

08年後半に起きた米国発の世界金融危機では、多額の証券化商品を購入してきた米国や欧州の銀行が過大な不良債権を抱えてしまっていたことが明らかになりました。米国では、日本の証券会社に当たる投資銀行の経営が困難となり、サブプライムローン(信用力の低い人向けの住宅ローン)の証券化で業績を伸ばしていたリーマン・ブラザーズが倒産したほか、大手投資銀行は軒並み、米国政府から資金援助を受けることになりました。

この金融危機で、国際的に景気が急速に悪化しました。景気のテコ入れを図るため、各国は大規模な財政支出を行いましたが、それ以前に財政状態が悪かったギリシャやアイルランド、ポルトガルなどが発行している国債の信頼が揺らぎ、各国の共通通貨であるユーロ相場が下落するなど、金融・為替市場は大きく混乱しました。今回の金融危機によって、改めて、「銀行の本当の役割とは何か」「どのようなあり方がふさわしいのか」が問い直されることになりました。それは比較的、金融危機の傷が浅かった日本の銀行も例外ではありません。

日本の銀行は、90年代後半に起きた金融システム危機を契機に、大きく再編成されました。それまで10行以上あった都市銀行が3つのメガバンクに集約され、これにともなって、メガグループの一員に再編された信託銀行や証券会社もたくさんあります。これと併行して、金融の自由化が急速に進み、銀行が扱う金融商品は多様化しました。そして、長期金融、短期金融、証券、生損保といった業態を分けていた規制の壁は、しだいに取り払われていきました。さらに、店舗をもたないインターネット銀行が勢力を伸ばし、電子マネーやクレジットカードなどで決済できる範囲が広がり、日常的に現金を使う機会は確実に減っています。銀行を取り巻く環境は、大きく変化したのです。

このような激動の時代だからこそ、お金の流れの中心に位置する銀行について、改めてよく知っておく必要があります。銀行が常に経済社会に「お金」を送り続けることで、個人や企業は滞りなく経済活動を営むことができているのです。

本書は、銀行と金融の基本的なしくみと役割・機能から、扱う商品・サービス、組織と銀行員の仕事内容、さらには金融行政のしくみと現状まで、銀行にまつわるテーマを幅広く取り上げ、できるだけわかりやすく解説しました。本書が銀行と金融のしくみを理解する上での一助となれば幸いです。

2011年1月
株式会社 地域金融研究所

岩崎博充 (著), 株式会社 地域金融研究所 (監修)
かんき出版

目次

はじめに

PART1 ニュースからみえる銀行の今の姿
1 経済危機が起こるとなぜ銀行が大きな打撃を受ける?
●不況になると不良債権が増加する

2 米国の銀行は金融危機の後どうなっている?
●サブプライムローンが金融危機につながった
●米国の銀行の自由な取引を厳しく制限

3 景気が悪くなるとなぜ銀行の貸し渋りが話題になる?
●不良債権の処理を迫られる
●自己資本比率が減ってしまう
●今は企業の資金ニーズが少ない

4 なぜ銀行はたびたび増資をするのだろう
●企業の増資とは目的が違う

5 銀行はなぜ国債を買い続けている?
●銀行が国債を買い支えている
●なぜ低金利の国債を買うのか
●銀行が国債に投資するもう1つの理由

PART2 銀行は経済を動かす中心的な存在
1 銀行は経済をどう動かしている?
●銀行は金融システムの中心を担っている
●国民生活を金融面から支えている

2 銀行は経済活動を円滑にする
●銀行には3つの機能がある

3 銀行は他の金融機関とどう違う?
●銀行として成立する条件
●欧米と日本では銀行の定義が違う
●信用金庫、信用組合も基本的には同じ

4 銀行と監督官庁・金融庁との関係は?
●銀行のあらゆる動きをチェック
●旧大蔵省から分離独立してできた

5 中央銀行とは何だろう
●中央銀行は国の経済の命運を握る
●日銀の資本金は国が過半数を保有

6 日銀の金融政策は何をしている?
●金融政策における3つの活動

7 日銀は金利をどう動かす?
●銀行の預金・貸出金利を変動させる

8 銀行の金利はどう決まる?
●銀行金利が決まるメカニズム

9 景気は日銀が調整している
●景気が過熱してきたら金利を引き上げる
●景気が悪化してきたら金利を引き下げる

PART3 銀行の種類と役割をみてみよう
1 銀行にはどんな種類がある?
●公的機関と民間機関に大別される
●普通銀行は短期貸出の機関
●新しい銀行が登場してきた

2 3大メガバンクの成り立ちは?
●都市銀行は5行ある
●3大メガバンクは何回もの合併で誕生
●りそな銀行はメガバンク?
●3大メガバンク合併の道のり
●ゆうちょ銀行が新たに参入した

3 メガバンクがコングロマリット化している
●金融持株会社の傘下に事業会社を置く

4 地方銀行と第二地方銀行はどう違う?
●地方銀行と第二地方銀行がある
●地方銀行は国立銀行が起源
●第二地方銀行は中小企業に特化
●地銀、第二地銀にも再編が進行中

5 信託銀行は普通銀行とどう違う?
●顧客から財産を預かって管理・運用する
●信託業法改正の衝撃
●業界再編が進んだ
●メガバンク誕生を受けて再編が加速

6 信用金庫と信用組合はどう違う?
●会員の出資で運営されている
●金融審議会で見直しの審議が進む

7 ゆうちょ銀行とはどんな銀行だろう
●総資産196兆円の巨大銀行

8 政府系金融機関とは何だろう
●すべてが大きく統廃合された

9 インターネット銀行とは?
●パソコンで銀行サービスが受けられる
●従来の銀行もサービスを開始
●モバイルバンキングは携帯電話を利用する

10 ノンバンクとは何を指す?
●多種多様な業態がある
●貸出の上限金利の引き下げで苦境に

11 在日外国銀行とはどんな銀行?
●日本に支店や事務所をもっている銀行
●富裕層向けと企業向けのビジネス
●シティグループは日本法人を設立した

PART4 銀行の3大業務と儲けのしくみ
1 銀行の3大業務とは何だろう
●金利は各銀行が独自に決める

2 銀行預金はどう分類される?
●流動性預金と定期性預金

3 銀行貸出にはどんな種類がある?
●貸出業務の中で最も多いのは証書貸付

4 銀行の為替業務とは?
●現金移動に為替業務は不可欠
●様々な内国為替業務
●外国為替業務の特徴
●取扱量の増加で信用力アップ

5 銀行はどのようにして儲けているのだろう
●預金金利と貸出金利の差が儲けになる
●バブル崩壊で貸出を大きく伸ばした
●バブル崩壊で企業融資が縮小した

6 銀行のお金の流れはどうなっている?
●預かった資金と貸出した資金の調整

7 銀行窓販の手数料収入とは?
●投資信託、保険商品販売も解禁
●投資信託の手数料は2種類ある
●生命保険、損害保険の販売手数料は?

PART5 銀行の企業向けビジネス
1 銀行と企業はどのように付き合っている?
●企業は設備投資資金や運転資金が必要
●銀行と企業の関係が変化

2 間接金融から直接金融への流れとは?
●資金調達には間接金融と直接金融がある
●直接金融のメリット

3 企業と銀行の関係が変化した
●大企業の銀行離れが目立つ
●メガバンクはビジネスローンに力を入れる
●中小金融機関との競争が激化してきた

4 ホールセールとリテールはどう違う?
●ホールセールは大口、リテールは小口
●リテールが無視できない存在になった

5 リレーションシップバンキングとは?
●地域密着で長期的な信頼関係を築く
●中小金融機関向けの再生プログラム

6 投資銀行ビジネスとは何だろう
●貸出の利息収入に頼らない新しいビジネス
●投資銀行と商業銀行の違い
●銀行と証券会社に境界がなくなった
●メガバンクの投資銀行サービスの中核は?

7 銀行の証券化ビジネスはどうなっている?
●資産を担保に有価証券を発行して販売する

8 大企業の銀行ビジネス進出状況は?
●01年以降、異業種参入へ

PART6 銀行の個人向けサービス
1 家計と銀行の関係はどうなっている?
●家計金融資産残高は1445兆円
●日本の家計はなかなか投資に向かわない

2 銀行の個人向けサービスをみてみよう
●預かる、貸出す、為替の3つのサービス
●キャッシュレス時代の銀行業務

3 住宅ローンの動きはどうなっている?
●住宅ローン利用者が増えている
●リコースローンが主流の日本

4 住宅ローン金利にはどんな種類がある?
●民間金融機関の商品とフラット
●金利の大幅な変動は家計に打撃
●金利設定は銀行の判断

5 目的ローンとフリーローンはどう違う?
●多彩なローン商品

6 銀行のクレジットカード業への取り組みは?
●市場規模が拡大している
●メガバンクの傘下に入る大手クレジット会社

7 銀行が扱う個人向け金融商品が拡大した
●投資信託と保険商品は全面解禁
●国債も証券会社並みに販売

8 プライベートバンキングとはどんなビジネス?
●スイスタイプと米国タイプがある

9コンビニATMのしくみとは?
●24時間365日稼働のATM
●独自の進化を遂げるコンビニATM

PART7 銀行の組織と業務はどうなっている?
1 銀行はどんな部門から構成されている?
●頭取を頂点に組織化されている
●中枢は時代とともに変化する

2 頭取はどんな仕事をしている?
●頭取の社外業務
●頭取の社内業務

3 審査部の仕事はどんな内容だろう
●貸出が適切かどうかを審査する

4 貸出審査のポイントは?
●ヒト、モノ、カネでみる
●中小企業は経営者の人柄をみる

5 支店の法人融資の詳しいプロセスをみてみよう
●融資できるかどうかを審査する
●融資と審査は別の部署で担当
●各銀行が独自に行う「信用格付け」

6 最前線で顧客ニーズをつかむ営業部門
●融資案件は稟議書を作成して審査に回す
●営業部員の営業日誌はとても重要

7 商品開発部はどんな仕事をしている?
●ゼロ金利時代は商品開発力がものをいう

8 国際部門はどんな業務を担う?
●中小の銀行にも国際化の波
●投資銀行部門と連携する
●国内部門に匹敵する組織構成に
●邦銀の海外進出が加速している

9 投資銀行部門とは何だろう
●2つの業務内容

10 ディーリング部門はどんな仕事をしている?
●ディーリング部門とブローキング部門
●ディーラーの能力に左右される成果

PART8 支店の組織と業務をみてみよう
1 銀行の支店とは何だろう
●経営方針によって支店戦略は異なる
●預金吸収型支店と貸出運用型支店
●大手銀行のフルバンキング型支店
●機能特化型店舗が増えている

2 支店の業務にはどんなものがある?
●4つの業務内容

3 支店の組織構成をみてみよう
●支店長が最高指揮官
●支店内の各課の役割
●店外活動中心の渉外(取引先)課

4 支店長の仕事はどうなっている?
●強化されるリスク管理業務

5 支店の中はどうなっている?
●標準的な店舗はなく多彩な形態

6 支店から銀行員の人生がスタートする
●転勤ありの総合職と転勤なしの一般職
●資格試験と人物評価で出世する
●支店長になれば出世コース?
●取締役になれるのはごくわずか

7 銀行員が取得する資格には何がある?
●入行後に取り組む銀行業務検定
●有価証券売買業務に必要な証券外務員
●あると便利な中小企業診断士、宅建主任者

PART9 銀行業界はこれからどうなっていく?
1 銀行に求められるコンプライアンスとは何だろう
●一般企業より高いレベルを要求される

2 銀行が守るべき金融商品取引法とは?
●管轄を金融庁に絞り込んだ法律
●規制のポイントと対策
●金融機関の内部統制を強化した
●もともとは米国でつくられた規制

3 銀行には国際的な自己資本比率規制がある
●自己資本比率8%以上を求められる
●多様化、高度化する銀行リスクに対応する

4 銀行の自己資本比率規制は今後どうなっていく?
●自己資本比率規制がさらに厳格化される

5 金融庁は銀行をどのように検査しているのだろう
●大蔵省の検査はベールに包まれていた
●検査の手引書、金融検査マニュアル
●リスク管理は9つに分類される
●4段階の銀行評価制度を導入した
●金融円滑化法で金融検査マニュアルが改訂

6 銀行は厳しく情報を管理している
●4つの情報管理体制

7 銀行の預金者保護対策はどうなっている?
●預金保険制度による保護
●ICチップや生体認証の新技術
●振り込め詐欺にも対応

8 銀行は電子商取引にどう取り組んでいる?
●電子商取引市場が急成長している
●銀行も決済手段を通じて市場に参入

9 電子マネー時代の銀行戦略とは?
●急速に進化する電子マネー業界
●プリペイドとポストペイの違い

10 クレジットカード業界の再編はどう進む?
●ランキングが目まぐるしく変わっている

○コラム1 世界の銀行の歴史はどうなっている?
○コラム2 日本の銀行の歴史をみてみる
索引

カバーデザイン/重原隆
カバー・本文イラスト/洪知希
図版作成・DTP/株式会社 度

岩崎博充 (著), 株式会社 地域金融研究所 (監修)
かんき出版