インプレス標準教科書シリーズ 5G教科書 ―LTE/ IoTから5Gまで―

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5Gまでの全貌が見える一冊

本書は複雑かつ難解な技術について、豊富な図面を用いて解説しており、コラム枠で用語の説明や、概念の説明もあって分かりやすい構成となっています。難易度は高いですが、かなり細かく丁寧に説明されています。5Gに関心のある方、特にある程度の知識がある人におすすめです。

服部 武 (著, 編集), 藤岡 雅宣 (著, 編集)
出版社 : インプレス (2018/9/21)、出典:出版社HP

まえがき

本書は、携帯電話システムの第4世代(4G)であるLTEから第5世代(5G)までについて、ネットワーク技術をはじめ、無線技術や標準化、周波数利用、スマートフォンの構成とOSの進化に至るまで、最新の動向を踏まえ詳述しています。携帯電話は、周知の通り、ライフスタイルの変革のみでなく、産業構造も大きく変えてきています。その顕著なのが、第4世代のLTEとスマートフォンです。LTEの名称は、Long Term Evolutionで、それまでの技術名称とは異なるネーミングとなっています。LTEは、2010年からサービスが導入され、通信速度が第3世代のWCDMA/CDMA2000に比較して100倍以上となり、スマートフォンの登場とともに本格的なインターネット・アクセスや高品質な動画像などが提供されています。

LTEは、世界の統一規格となったことも、それまでの複数標準システムとは大きく異なっています。LTEには、多くの特徴がありますが、その1つはスケーラビリティ(拡張性)をもつことです。これは国や事業者によって適用可能な周波数帯が異なる場合もサンプリング速度を変えることで、柔軟に対応できることです。LTEは、導入後もさらに進化し続け、LTEAdvanced、LTE-Advanced Proへと発展し続けています。本書は、これらの一連の技術的発展を 説明しています。またLTEは、1つの周波数帯を用いて送受複数のアンテナ(MIMO: Multiple Input and Multiple Output)で、最大100Mbpsの通信を実現していますが、LTE-Advancedではさらに高速化を行うため、アンテナ数の増大、複数の異なる帯域を同時に利用するキャリアアグリゲーション、高度な変調方式の適用で最大1Gbpsの伝送速度を可能としています。また、スモールセルや複数セル協調によってトラフィック処理能力を高めるなど大幅な高度化が行われています。

LTEの役割は、それまでの人と人と(Person to Person/P2P)の通信から、モノとの通信へと役割が拡大しています。モノとの通信を最近は、IoT(Internet of Things)という用語が使用されています。IoTの時代を迎え、対象市場も飛躍的に拡大しています。IoTに関する無線システム(LPWA)として本書では、ライセンス系としてLTEをベースにした方式(NB-IoT、LTE-M)を説明しています。携帯システムは、これまで10年を1つの単位として、新たなシステムの導入が行われてきました。4Gに続くシステムとして5Gの標準化の検討が行われ、2017年12月のノンスタンドアロン(NSA)に続いて、2018年6月にスタンドアロン(SA)という規格仕様が策定され、第1フェーズの標準化が完了し、2020年に本格的な5G導入に向けた検討が進展しています。5Gのシステムは、3つのユースケースとして、10~20Gbpsのブロードバンド、接続時間1ms以下の超低遅延、大量なデバイス接続を対象にしたマッシブ(大規模)IoTに対応しています。

5Gにおける無線系の方式は、NR(New Radio)と呼ばれ、LTEのOFDMA(直交周波数多元 接続)をベースに拡張が行われています。また、制御方式として、制御プレーンとユーザー・ プレーンを分離したことも5Gの大きな特徴です。これは、5GがLTEのマクロセル内に 5Gを埋め込む方式が想定されるためです。さらに、このような3つの異なるユースケースにネットワーク側も柔軟に対応することが必要となっています。そのため、ネットワークを論理的に分離して適用する構造化を行っています。これをネットワーク・スライシングと呼んでいます。周波数利用に関してこれまで利用に関してこれまでと大きく異なる特徴は、5Gには6GHz以下の周波数以外に6GHz以上の高い周波数が適用されることです。長い移動通信の歴史でミリ波の本格的な適用はありませんでした。技術的にも、方も大きなチャレンジとなっています。6GHz以上の効率的な利用のため、マッシブMIMO庫ばれる方式が標準化されています。

5Gは、このように新たな周波数帯とともに3つのユースケースを想定しているため、事業道入としても従来のコンシューマを中心としたものから、B2B2Xへと大きく変わることが想定されています。このことをクロスインダストリーと呼んでいます。移動通信によるビジネスのパラダイム変革が起きることが期待されています。本書は、携帯電話に携わる第一線の技術者が精魂こめて執筆をしたもので、非常に質の高い内容となっています。読者層としては、ワイヤレスに携わる技術者や研究者を想定していますが、知財関係に携わる関係者や、大学・大学院でこの分野を研究する学生諸君にも貴重な書鐘と言えます。さらに、数式処理を最小限にとどめ解説を行っているため、ワイヤレス関係の経営者や営業に携わる方々にも最近の動向を知るうえで、大いに参考になると自信をもって推薦できます。

本書の質を高めるため、編集者も日夜徹して努めてきたことを著者一同に代って感謝します。本書が皆様の座右の書となり、ワイヤレス・ブロードバンドの進展に寄与することを重ねて祈願させていただきます。

2018年8月
編著者:服部武

服部 武 (著, 編集), 藤岡 雅宣 (著, 編集)
出版社 : インプレス (2018/9/21)、出典:出版社HP

CONTENTS

まえがき
執筆者一覽

第1章 5G (第5世代)に向けて発展する ワイヤレス・ブロードバンドの全体像 ―モバイル・ブロードバンドと無線技術の進化―
1 ワイヤレス ブロードバンドの基礎知識)
1.1 電波特性と無線技術に関するイントロダクション
1.2 FDDとTDDの特徴と比較
1.3 移動通信で利用する周波数バンド
1.4 ライセンスバンドとアンライセンスバンド
1.5 回線交換方式とパケット交換方式の技術と歴史

2 ワイヤレス・ブロードバンドと移動通信の進化)
1.6 移動通信の歩み
1.7 5G (第5世代)への進化

第2章 Q&Aで学ぶワイヤレスブロードバンドの 基礎知識
Q1 携帯電話の基地局やネットワークの仕組み
Q2 携帯電話の位置登録の仕組み
Q3 携帯電話の電波の強さ
Q4 変調とは何か?
Q5 移動通信の無線アクセス技術とは?
Q6 MIMOとは?
Q7 無線通信の基礎のまとめ
Q8 移動通信端末の位置情報とは?
Q9 国際ローミング・サービスとは?
Q10 MVNO(仮想移動通信事業者)と移動通信事業者ネットワークの接続は?
Q11 モバイル(マルチアクセス)・エッジ・コンピューティングとは?
Q12 ネットワーク・シェアリングとは?

第3章 LTE, LTE-Advanced、LTE-Advanced Proの無線アクセス技術
3.1 LTE. LTE-Advanced, LTE-Advanced Pro
3.2 LTE、LTE無線アクセス系の核となる移動通信システム無線アクセス方式
3.3 LTE-Advanced無線アクセス方式
3.4 LTE-Advanced Pro、第4世代から第5世代への掛け橋

第4章 5G(第5世代)の無線アクセス技術―NSA方式とSA方式との2種類のアーキテクチャを規定―
4.1 5G(第5世代)とは?
4.2 プロトコル構造と各チャネルの役割
4.3 5Gで利用が想定される周波数
4.4 フレーム構造
4.5 下りリンク無線アクセス
4.6 上りリンク無線アクセス
4.7 アクセス・プロシージャと無線インタフェースプロトコル
4.8 5Gで使用されるマルチアンテナ技術
コラム1 MIMOを数式的視点から理解しよう

第5章 4G (第4世代)のアーキテクチャ「EPS」を 支えるパケット・コア基盤「EPC」
5.1 3GPPで標準化された4Gシステム「EPS」とパケット・コア「EPC」
5.2 EPCの基本アーキテクチャとその機能
5.3 ローミングの場合のEPCアーキテクチャ(GTPベースのS8インタフェース)
5.4 EPSのプロトコル構成
5.5 EPSにおけるベアラの概念とQoS
5.6 加入者情報管理機能/ユーザー認証・許可機能とモビリティ管理機能
5.7 FPSにおけるセッション管理機能
5.8 EPSにおけるUEのIPアドレスの設定
5.9 3GPPアクセス内でのハンドオーバー(HO)
5.10 非3GPPアクセス・ネットワークとの相互接続
5.11 EPSとCDMA2000 HRPDアクセスの最適化相互接続アーキテクチャ
5.12 PCCアーキテクチャとEPSとの連携
5.13 EPCの進化

第6章 4GのEPCから5G コア (5GC)への進化―NFV/SDN、分散クラウド、ネットワーク・スライシングを導入へ―
6.1 5Gシステム(コア)の4つのキー技術
6.2 ネットワーク機能の仮想化NFVとSDN
6.3 分散クラウド技術:エッジ・コンピューティング
6.4 ネットワーク・スライシングの登場と特徴
6.5 5Gコアのアーキテクチャの概要
6.6 ネットワーク発展シナリオ

第7章 IPマルチメディア・サブシステム(IMS)と その応用
7.1 IMS導入の背景
7.2 IMSアーキテクチャの機能と特徴
コラム2 SIPとは?
7.3 IMSの拡張機能
7.4 IMSのアプリケーションへの適応例
7.5 IMSにおける音声サービス(VoIP)技術
7.6 VoLTE(Voice over LTE)とその発展

第8章 高度化するスマートフォンの端末構成と特徴
8.1 スマートフォンの端末構成と機能
8.2 4G通信方式における端末の基本動作
8.3 4Gスマートフォンで実現されるサービス
8.4 4G高速端末の仕組みと5Gに向けた取り組み

第9章 5Gへ向かうスマートフォン時代のモバイル OS―GoogleのAndroidやAppleのiOS―
9.1 モバイル端末のプラットフォーム化
9.2 プラットフォームとスマートフォンOS
9.3 モバイルOS1:Android
9.4 モバイルOS2:iOS
9.5 モバイルOS3: Windows 10 Mobile
9.6 その他のモバイルOS
9.7 5G時代のモバイルOS

第10章 5G実現に向けたIoT規格の標準化動向―セルラー LPWA規格「LTE-M/NB-IoT」―
10.1 IoTのユースケースとその分類
10.2 LTEによるLPWA向け無線アクセス技術
10.3 LTE-Mの概要
10.4 NB-IoTの概要
10.5 IoT向けシグナリングの最適化

第11章 第5世代移動通信システム (5G)に関する国際標準化の最新動向
11.1 5GのITUでの取り組み
11.2 世界無線通信会議(WRC)における5Gの周波数の検討
11.3 5Gに向けた3GPPの取り組み
11.4 5Gに関する我が国の検討体制と取り組み状況

参考文献
あとがき
索引
編著者 略歴

服部 武 (著, 編集), 藤岡 雅宣 (著, 編集)
出版社 : インプレス (2018/9/21)、出典:出版社HP