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栄養学の基礎がために
本書では、「どうしてバランスのよい食事が大切なのか」「そもそも栄養とは何か」という栄養学の基本から,栄養アセスメント,経腸栄養など医療の現場で役立つ知識まで学べます。図やイラストが沢山用いられており、とてもわかりやすい構成となっています。入門書としてお勧めの一冊です。
はじめに
近年の栄養学の進歩には目覚ましいものがあり、栄養の実践は、貧困、保健、医療、福祉、教育、ジェンダー、労働、成長、平等、そして気候変動など、多種多様な領域に影響を及ぼすことがわかってきました。例えば、栄養改善は、体力、精神力を向上させ、労働力を上昇させることにより、収入や賃金を増やすことができ、貧困を削減させることができます。
栄養欠症や肥満・非感染性疾患の予防は、健康状態を増進すると同時に、医療費や介護費を減少させ、胎児や幼児の栄養改善は、学習能力をも向上させ、社会のエンパワメントを高めます。発展途上国においては、栄養改善により国民総生産(GNP)を8~11%上昇させることができることがわかってきました。さらに食品の生産、加工、分配調理の工夫により、地球環境に与えている負荷も減少させ、地球にやさしい食事を提供することが可能になるのです。
一方、わが国においては、高齢社会の進展により、人々は健康寿命の延伸を望むようになってきています。いつまでも元気で、はつらつと生きていくための「栄養バランスのとれた健康な食事」は、ますます重要になってきています。では、「栄養のバランスとは、何のバランスなのか」「そもそも栄養とは何なのか」を聞くと、正確に答えられる人は少ないのです。栄養学を究めようとしている専門家に聞けば、多くの人たちから「それはとても難しい問題だ」と答えが返ってきます。栄養学は、親しみがあり、誰でも栄養に関する多少の知識はもっています。しかし、栄養を本当に理解しようとすると、栄養学を深く、広く学ぶ必要があり、簡単に習得できるわけではありません。
しかしながら、私たちは、知識のレベルに関係なく、生きていくために、毎日必ず何かを食べていかなければいけません。健康上のリスクをもった人や病気の人は、どのような食事をすればいいのか、深刻な課題になります。つまり、誰もが、生きている限り、栄養を正確に学ばなければならないのです。それは、人類が雑食性により進化したために、多種多様な食品から、「何を、どのくらい食べれば生きていけるのか」という知恵が必要になったからです。人間は、生きていくために「栄養を正しく知る」ことを宿命づけられたのです。
このように大切な栄養ですが、情報化社会の発達により、栄養はもちろんのこと、健康、食品、食事に関する情報が、連日、山のように放出され、結局、人々は、何をどのように食べればいいのかわからなくなってきています。このような状況であるがゆえに、栄養学を、わかりやすく、楽しく学べる本が必要だと考え、今回、この本を執筆しました。「難しい話をわかりやすく、楽しく、正しく伝える」ために、過大な協力をいただいたイラストレーターのウチダヒロコ様、さらに編集部の田頭みなみ氏と関家麻奈未氏に心から感謝します。
この本が、多くの人々の健康と幸福に貢献できることを願っています。
2020年1月
中村丁次
目次
はじめに
キャラクター紹介
第1章 栄養学とは
1 栄養,栄養学とは
2 栄養学の歴史
1エネルギー代謝に関する発見
2糖質と脂質に関する発見
3タンパク質に関する発見
4ビタミンに関する発見
5ミネラルに関する発見
3 人体の成り立ちと栄養
1人体の構成と栄養
2細胞・遺伝子と栄養
4 食物の成分と栄養
5 保健,医療,福祉と栄養
1保健と栄養
2医療・福祉と栄養
第2章 栄養素の種類と働き
1 栄養素の種類と含有する食物
1タンパク質
2脂質
3炭水化物(糖質、食物繊維)
4ビタミン
5ミネラル
2 タンパク質の働きと欠乏症,過剰症
1働き
2欠乏症,過剰症
3タンパク質の食事摂取基準
4生物学的方法
5化学的方法
3 脂質の働きと欠乏症,過剰症
1働き
2欠乏症
3過剰症
4 糖質の働きと欠乏症,過剰症
1働き
2欠乏症,過剰症
5 食物繊維の働きと欠乏症,過剰症
1働き,欠乏症
2摂取量の推移,過剰症
6 ビタミンの働きと欠乏症,過剰症
1水溶性ビタミン
2脂溶性ビタミン
3ビタミンの食事摂取基準
7 ミネラルの働きと欠乏症,過剰症
1多量ミネラル
2微量ミネラル
3ミネラルの食事摂取基準
8 水の働きと摂取量
1水の働き
2水の適正な摂取量
第3章 栄養素の生理
1 食物の摂取
1食欲中枢とその調整機能
2空腹感
3食欲と空腹感
4味覚
5栄養感覚による摂取量の調整
2 消化
1消化とは
2消化器官
3 吸収
1吸収とは
2吸収の機構
3吸収の経路
4消化吸収率
4 排泄
5 栄養素の消化・吸収
1タンパク質
2脂質
3炭水化物
4ビタミン
5ミネラル
6 栄養素の代謝
1タンパク質
2脂質
3炭水化物
4ビタミン
5ミネラル
第4章 エネルギー代謝
1 生命のエネルギーと食物のエネルギー
1エネルギーの単位
2エネルギー産生栄養素
2 人体のエネルギー代謝
1基礎代謝
2活動代謝
3食事誘発性熱産生(DIT)
3 消費エネルギーの測定法と算定法
1直接熱量測定法
2間接熱量測定法
3生活活動調査
4 推定エネルギー必要量の算定
5 傷病者へのエネルギー投与量
第5章 ライフステージと栄養
1 妊娠期、授乳期
1母性の特質
2妊娠と栄養
3授乳と栄養
2 発育期
1発育期の生理
2発育期の栄養
3 思春期,青年期
1思春期,青年期の生理
2思春期,青年期の栄養
4 成人期
1成人
2成人期の栄養と生活習慣病
5 高齢期
1高齢者
2高齢者の生理
3高齢者の栄養
4高齢者の栄養不良
第6章 栄養アセスメント
1 栄養アセスメントとは
1栄養アセスメントはなぜ必要なのか
2栄養アセスメントで行われる評価
2 各種栄養指標の特徴
1身体計測
2生理・生化学検査
3臨床徴候
4食事調査
第7章 傷病者の栄養ケア
1 食事療法
2 栄養がかかわる主な疾患
1肥満
2痩せ
3タンパク質欠乏症
4ビタミン・ミネラル欠乏症
5糖尿病
6脂質異常症
7高尿酸血症・痛風
8高血圧症
9慢性腎臓病(CKD)
10貧血
11食物アレルギー
12消化器疾患
13肝臓病,胆のう病,脾臓病
14がん
15外科手術
3 栄養補給
1経口栄養(食事)
2経腸栄養
3経静脈栄養
第8章 特別用途食品と保健機能食品
1 病者用食品
2 妊産婦・授乳婦用粉乳
3 乳児用調製乳
4 えん下困難者用食品
5 保健機能食品
1特定保健用食品
2栄養機能食品
3機能性表示食品
第9章 健康づくりと栄養
1 健康増進と疾病予防
1栄養改善から健康増進へ
2健康日本21
2 食事摂取基準
1日本人の食事摂取基準とは
2日本人の各栄養素の摂取基準
3生活習慣病の増悪化防止の食事
3 食生活指針
生活指針改定の趣旨
第10章 これからの栄養
1 栄養不良の二重負荷
2 快適で持続可能な社会の建設と栄養
おわりに
参考文献
付表 日本人の食事摂取基準(2020 年版)
索引