発酵は錬金術である (新潮選書)

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科学して金儲けをする発想法

著者の小泉さんは、専攻している発酵学やその分野とは関係ないものまで、持ち前の発想力で数々のヒット商品を生み出してきました。解説はわかりやすいですが、奥が深いです。どんなビジネスにも役立つ発想力の極意がわかるため、発酵に関する知識がなくても楽しめる1冊です。

小泉 武夫 (著)
出版社 : 新潮社 (2005/11/1)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 マイナスをプラスに変える
米からチーズの発想
「黄色い砂糖」の発想
「麦出酢」の発想
米糠から天然のうま味を作る発想
動物の飼料・削りカスから超高価天然フレーバーを生んだ発想
ユニーク醤油への発想
ワインへの発想
吟醸香集積装置の発明
「もろみ酢」の発想

第2章 日本人の底力
灰で豪商になった男の発想
「夏の甘酒」の発想
「猫またぎの鯖」をサバイバル化する発想
小便から爆薬を作る発想
「擬き」の発想
造り酒屋の水
文献からの発想

第3章 柔軟な発想
「行列の出来るラーメン屋」の発想
寿司屋の煎酒の発想
「商標」への発想「発酵唐辛子」の発想
中国に見る究極のリサイクル 生ゴミから宝を生んだ発想
「豚血を使った酒の熟成」という奇妙な発想
気候を利用する爽やかな発想
プロフェッショナル農業集団
人類の未来への発想

小泉 武夫 (著)
出版社 : 新潮社 (2005/11/1)、出典:出版社HP

はじめに

この本には、科学して金儲けする発想法がいっぱい詰まっている。売れるもの、ヒットするもの、成功するものを発想するには先ず、その発想に向かって「常に考えている」ことが必要であり、日頃から何を見るのにも好奇心の塊になることが大切である。物事に対して貪欲に興味を持つ。新しい方法が何かないか、いつも考えられるように心の準備をしておく。これが基本である。
しかし、ただ漠然と思いつくのを待っていたのでは、誰でも考えられるような、似たり寄ったりの発想しか生まれず、結局みんなと同じことになってしまう。
人間には、それぞれ個性がある。それと同じように、発想にも個性があるのだ。その個性を生かすことも発想には大切である。私は子供のころ、何にでも強く興味を抱く好奇心旺盛な少年であった。その上、遊びに遊んだ。もの凄いわんぱく小僧だったのであるが、それが六十一歳の今も続いていて、自分で言うのもなんだが、二十歳の学生に負けない肉体と精神を持っていると自負している。「小泉は、子供のまんま大人になった」なんて周りの人たちは言うが、それは非常に大事な個性のひとつで、言い換えれば、心がいつも少年のように燃え、輝いているという個性が新鮮な発想を生むのである。
私は現在まで、すでに特許を二十数件取得している。食べ物や微生物、そして発酵学を研究しているが、それらの特許のうち、自分の学問に関係しているものは七割くらいで、残りは専門分野とは関係のないものである。その中には「失敗から生まれた発想」もあった。海外旅行中にカバンを盗まれてしまった経験のある日本人は、たくさんいると思う。私もイタリアに行った時にバッグをやられてしまった。幸い大切な物は入っていなかったが、気分のいいものではない。その時ひらめいたのが、「盗難防止装置」である。これだけ情報技術が発達している世の中なのだから、絶対にできないはずはないと思い、ある物を考えた。それはブザーである。荷物が自分の体から二メートル以上離れると、持っているブザーと、荷物のブザーが同時に鳴る。これなら、荷物を持ち逃げしようとした犯人もさぞかしびっくりするだろうと思い、つくったらどうかと考えたわけである。つまり、ここにも子供時代の遊び心の発想があるのだ。
それからもうひとつ。昔、横浜に住んでいた時に、私はアフガンハウンドという大きな犬を飼っていた。毎日散歩に連れて行くと、犬がウンコをする。これにはとても困った。犬は生きもので、これは生理的現象なのだから、犬に「ウンコするな」と言ってもしようがない。それで考えたのが、犬の「ワンタッチ・ウンチ取り器」。こんなふうに考えてみると、世の中には必要なのにないものがたくさんあることに気づく。本書は、私がこれまで考え出した奇想天外な発想、世界のあちこちで見てきた知恵の発想などを紹介し、発想次第では大きな経済効果を生みだせることを語るものである。

小泉 武夫 (著)
出版社 : 新潮社 (2005/11/1)、出典:出版社HP