入門 物流(倉庫)作業の標準化-バラツキを減らし、ムダとミスをなくす! –

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物流の現場作業の基礎がわかる

近年、労働環境のホワイト化やAI導入をスムーズにするため、物流工程の標準化を推進する流れが加速しつつあります。そこで本書では、物流工程の一連のプロセスに沿って作業標準化への流れを現場改善の視点を踏まえてわかりやすく解説します。工場や倉庫における物流工程の仕組みと実務について学びたい人におすすめです。

鈴木 邦成 (著)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2020/4/17)、出典:出版社HP

はじめに

工場などの生産現場では効率化や品質管理の視点から標準化が推進されてきた。機器や設備の寸法や仕様を統一するだけでなく、一連の手順についてもマニュアルや手順書を設けて作業プロセスを明確化している。しかし、生産現場とは異なり、物流工程の標準化は立ち遅れていた。

けれどもここにきて物流工程についても標準化を推進する流れが加速されてきている。少子高齢化の進行や労働環境のホワイト化の推進などが大きな要因となり、物流工程に携わる労働力の質は多様化し、手順書を用意するなどして作業ルールをしっかり定めておかなければ、仕事量や作業効率に大きなバラツキが発生してしまうことになる。また、近年はAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などがさまざまなかたちで現場の効率化のために導入されてきているが、物流工程を標準化することでその導入もスムーズに進むことになる。

そこで本書は、物流工程の一連のプロセスに沿って作業標準化への流れを現場改善の視点を踏まえてわかりやすく解説する。序章「標準化の必要性と進め方のポイント」では、標準化を行うことによって得られる効果と、その実践におけるポイントを解説する。標準化を進めるにあたっての考え方や方針をまとめている。第1章「積込み・積卸し作業」では工場、倉庫、物流センターでの積込み、積卸し作業について標準化への道筋を解説する。同様に第2章「入出荷作業」では入出荷に関する一連の作業手順について、第3章「仕分け・ピッキング作業」では仕分け・ピッキング作業の効率化について、第4章「保管・梱包作業」では包装・梱包の手順について、それぞれ標準化の手順や方針について解説する。

そのうえで第5章「状況に応じた物流改善手順」では標準化により作業現場の課題がどのように改善されていくかを実践的な視点から紹介し、あわせて労災管理や防火管理のルール作りについても解説する。なお、各章の前半に標準化の課題(実践事例)を1項目見開きで「改善前」と「改善後」の状況が理解できるように紹介し、章の後半で補足的な説明を加える構成とした。あわせて☆印をつけることで各項目の重要度も判断できるようにした。なお、イラストについては現場の雰囲気、イメージを伝えることを優先したので、必ずしも専門的な正確性を有しているわけではないこともお断りしておきたい。

本書を読むことで、工場や倉庫における物流工程のしくみと実務について読者の皆さんの理解がより一層深まり、日々の実務などに活用していただければ筆者の望外の喜びです。

2020年4月
鈴木邦成

目次

序章 標準化の必要性と進め方のポイント
・なぜ標準化か?
物流現場における標準化の必要性/標準化されていない現場の課題/標準と標準化/物の標準化と事柄の標準化/標準の種類/標準化の原則/工場における物流工程/物流コスト管理・物流KPI管理と標準化/標準化による作業平準化の実現/ABC分析の導入

Column 倉庫施設の標準化

第1章 積込み・積卸し作業

標準化の事例
1-1 効率的な積み付けの位置
1-2 積卸し方法
1-3 過積載・過密運行の防止
1-4 ストレッチフィルムの巻き付け方
1-5 積込みに使う台車・カゴ台車の管理

標準化のポイント
1-1 効率的な積み付けの位置
さまざまな荷物に応じた対応を
1-2 積卸し方法
重量配分に留意しよう
1-3 過積載・過密運行の防止
過密な運行計画はしない
1-4 ストレッチフィルムの巻き付け方
ストレッチフィルムの標準化
1-5 積込みに使う台車・カゴ台車の管理
台車の安全管理を定める

第2章 入出荷作業

標準化の事例
2-1 入荷・入庫作業
2-2 入荷検収作業
2-3 入出荷検品の手順
2-4 パレタイズの手順
2-5 格納・保管

標準化のポイント
2-1 入荷・入庫作業
入庫作業(入荷検品)の標準化例
2-2 入荷検収作業
確実にチェック項目を確認してからサイン
2-3 入出荷検品の手順
数量やアイテムなどの検品を確実に行う
2-4 パレタイズの手順
パレットの取扱いの基本
2-5 格納・保管
正しくロケーションできるシステムを構築

第3章 仕分け・ピッキング作業

標準化の事例
3-1 ピッキング手順
3-2 ピッキングエリアのレイアウト
3-3 ピッキング手順書の作成
3-4 負担を生じない合理的な仕分け手順
3-5 情報システムとリンクした作業手順.

標準化のポイント
3-1 ピッキング手順
ピッキング作業を正確、迅速に
3-2 ピッキングエリアのレイアウト
ピッキング通路の最短化を目指す
3-3 ピッキング手順書の作成
ピッキングリストを受け取り、手順書に従う
3-4 負担を生じない合理的な仕分け手順
生産計画とのリンクが重要
3-5 情報システムとリンクした作業手順
マテハン機器の仕様や特性を把握

第4章 保管・梱包作業

標準化の事例
4-1 梱包作業の手順と荷姿の統一
4-2 段ボール箱の大きさ・サイズ
4-3 通い箱・クレートの形状・サイズと管理方法
4-4 パレットの規格・ライズ・材質
4-5 コンテナ輸出の作業手順
4-6 PPバンドとガムテープの取扱い

標準化のポイント
4-1 梱包作業の手順と荷姿の統一
積み荷の重量やサイズを設定
4-2 段ボール箱の大きさ・サイズ
段ボール材の強度などを統一
4-3 通い箱・クレートの形状・サイズと管理方法
通い箱の取扱いマニュアル・作業手順書を整備
4-4 パレットの規格・サイズ・材質
扱う物品や業界標準などに合わせる
4-5 コンテナ輸出の作業手順
確実なバンニングで荷物を固定
4-6 PPバンドとガムテープの取扱い
ガムテープの貼り方
Column 輸出用貨物のくん蒸処理

第5章 状況に応じた物流改善手順

標準化の事例
5-1 強化段ボール箱の導入
5-2 パレット荷役の改善
5-3 人材配置の適正化
5-4 倉庫の労災管理
5-5 倉庫の防災管理

標準化のポイント
5-1 強化段ボール箱の導入
強化段ボール箱で改善
5-2 パレット荷役の改善
フォークリフトによる荷役が原則
5-3 人材配置の適正化
標準人時を設定して標準作業手順書を作成
5-4 倉庫の労災管理
安全な作業に留意
5-5 倉庫の防災管理
避難路の確保

資料編
標準化に役立つ物流KPI一覧表/コンテナの基本知識/包装貨物の荷扱い図記号/レンタルパレットの寸法例/国際貨物の梱包/ABC分析

主要参考文献
索引

鈴木 邦成 (著)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2020/4/17)、出典:出版社HP