2時間で丸わかり 物流の基本を学ぶ

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物流の「仕事」までわかる

物流業界では実務を行いながら仕事を覚えていくOJT教育が主流ですが、物流の仕事をする上で自分の担当外のことまで気を配れる広い視野を養うことはとても重要です。幅広い知識を持つことで物流全体を見渡すことができるようになれば、見えるものが違ってきます。本書は、物流に関する基本的な知識を効率的に学べるように工夫しながら書かれています。

木村 徹 (著)
出版社 : かんき出版 (2014/11/6)、出典:出版社HP

はじめに

「物流は利益を生まないコストセンターである」

ひと昔前まで、こんなことが言われていた物流ですが、近年、コスト削減や効率化によって利益を作り出す部門として、あらためて注目されています。また、近年のインターネットを中心とする通信販売企業の躍進により、物流の形態が「多頻度小口配送」へとシフトしています。これは、小売流通業だけではなく、製造業の部品や資材の配送でも、同じことが言えます。こういった変化は、消費者の利便性を向上させ、製造業の効率化に大きく貢献しています。もはや、物流なしでは、経済がまわらないし、私たちの生活も成り立たちません。物流は日本経済の根幹を担っていると言っても過言ではないのです。

これほど重要な役割を担っている物流ですが、現在、物流会社や物流部門を持つ多くの企業が、「教育に割く時間がもったいない」という理由で、実務を行いながら仕事を覚えさせていく、OJT教育を行っています。これは「なぜそのようなことを行っているのか、行わなければならないのか」を、体系立てて教える教育ではありません。このような教育方法が長年継続されると、それが会社の文化になってしまいますし、「とりあえず目先のことをこなす」という文化が定着してしまいます。

これではいつまでたっても、物流全体を俯瞰して見る目を養うことはできません。つまり、視野が狭くなってしまうのです。しかし、仕事をするうえで、自分の担当外のことまで気を配れる、広い視野を養うことはとても重要です。幅広い知識を持つことで、物流全体を見渡すことができるようになれば、見えるものが違ってきます。最初は、時間のムダに思えるかもしれませんが、半年後、1年後には、かならずその成果が現れてくるでしょう。

なぜ、このようなことを言うかというと、私自身も、まったく同じ経験をしているからです。私も若手と呼ばれる時代にOJTによる教育を受けました。次から次へと現れる目の前の作業を、残業しながらひたすらこなす毎日でしたが、あとから考えると、はやい段階で、物流の基礎を系統立てて教わっていれば、作業にかかっていた時間を、もっと短縮することができたと思います。なぜなら、基礎を学び直し、物流全体を俯瞰できるようになったとたん、ジグソーパズルのピースがピタリとはまるように、自分の仕事の意味を理解することができ、何をすべきかがわかるようになったからです。

いま考えると、基礎知識を身につけていないことで、いかに時間をムダに使っていたのかと残念で仕方ありません。空いた時間にほかの仕事ができれば、さらなる経験を積めたかもしれません。もしくは、もっとはやく帰宅して、自分の時間を多く持つことができたかもしれないのです。

本書の読者は、運送業や倉庫業をはじめとする物流企業に勤める人、メーカーや卸、小売りなどの物流担当者、なかには物流関係の会社に融資している金融関係の人もいらっしゃるかもしれません。とはいえ、みなさん「物流の基本を学びたい」「部下や後輩に指導するときに使いたい」といった理由から、本書を手に取っていただいたのだと思います。

私は、長年、物流の川上から川下までさまざまな現場に身を置いてきました。現在も、オーストラリアのレンタルパレットを扱う会社に身を置きながら、物流や貿易に関するコンサルタントや講師などを行っています。そんな経験をもとに、物流に携わるすべての若手実務担当者の人に、物流に関する基本的な知識を、より効率的に学んでいただけるよう、工夫しながら本書を書き上げました。

本書の構成について簡単に紹介しましょう。

第1章
「ロジスティクスは会社の利益に直結する重要な部門」では、物流部門がどのように利益を作り出しているのか、そして、その具体的な方法をさまざまな角度から解説していきます。

第2章
「物流にかかるお金の話」では、おもに、物流にかかる「コスト」の話を中心に話を進めていきます。物流を自社で行う場合と、アウトソーシングした場合とでのコスト比較から、競合他社の物流コストや、他社商品に含まれる物流費を算出する方法まで、物流にかかるお金に関する知識やノウハウを紹介します。

第3章
「いまさら聞けない物流の基礎知識」では、タイトルどおり、物流の役割や用語の解説など、物流にまつわる基礎的な知識を紹介していきます。入社して間もない新人の読者や、基礎的なことを教わっていないという読者は、この章から読み進めていただいてもいいでしょう。

第4章
「物流現場では何が行われているのか?」では、物流の要である、物流センターの業務について解説します。普段物流センターには、いくことがないという読者も多いと思いますが、自身の業務を俯瞰するうえで重要な知識ですので、しっかり覚えてください。

第5章
「先輩から一目置かれる、覚えておきたい知識」では、「単品管理」と呼ばれる商品管理の方法や、作業
をより効率化するための視点、物流センターの選定方法など、少し高度なワンランク上の知識を紹介します。いま、担当している実務と直接関係のない知識かもしれませんが、この先みなさんが、さらに大きな仕事をしていくためには必須の知識です。

第6章
「これからはロジスティクスとSCMの時代」では、物流・ロジスティクス・SCMの違いや、物流に関する最新トレンドを紹介していきます。

なお、各章の冒頭には、その章の概要をつかんでいただくために、「ダイアローグ(対話)」を設けました。ある商社の営業部から、物流部に異動してきたばかりの新人、佐藤君と、彼の教育係である山口先輩の会話を読んでから本編を読み進めていただければ、物流の世界をより身近に感じられることでしょう。

物流の基礎を学ぶには、幅広い知識を習得する必要があります。私は、物流全体を俯瞰して見ることができるようになるまでに、何年もかかってしまいました。この時間を取り戻すことはできませんが、みなさんは、本書を活用し、物流業務を体系的に短時間で習得し、有意義に時間を使っていただきたいと思います。

また、物流業務を担っている上司のみなさんには、ぜひ、時間を取っていただき、部下である若手社員に対して、物流の体系的な知識を教えるときに、本書を活用していただければと思います。

本書が、あなたの物流の知識を向上させるための一助になることができれば幸いです。

2014年10月
木村 徹

木村 徹 (著)
出版社 : かんき出版 (2014/11/6)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 ロジスティクスは会社の利益に直結する重要な部門
<ダイアローグ>物流部門が利益を作り出す!?
1 在庫を減らせば会社の業績がよくなる!?
2 仕入れと発注のコントロールが会社の利益を左右する
3 運送方法を変えるだけでこんなにコストを削減できる
4 物流センターの改善はコスト削減の宝庫である
5 販売方法の変更は物流コストに大きなインパクトを与えることができる

第2章 物流にかかるお金の話
<ダイアローグ>うちの会社の物流費は本当に適正なの?
1 物流で発生するコストにはどのようなものがあるのか?
2 物流会社によって料金体系はこんなに違う!
3 固定費から変動費へシフトする
4 競合他社は物流にいくらかけているのか?
5 通販で買った1万円の化粧品にはこれだけの物流費がかかっている
6 倉庫を借りる際に発生する費用

第3章 いまさら聞けない物流の基礎知識
<ダイアローグ>いまさら聞けない物流の基本をおさらいしよう
1 物流とは何か?
2 物流拠点の種類
3 パレットとフォークリフトの密接な関係
4 物流センターの効率化を決めるマテハン機器の導入
5 梱包材を使いわけて効率的で破損が少ない物流を構築する
6 WMSが物流センターの質と効率を左右する
7 輸送手段の種類と機能を使いわける
8 多頻度小口配送
9 かんばん方式とJIT
10 なぜ、在庫は製品よりも部品で持つほうがいいのか?
11 3PL/4PL/LLPの違いとは?
12 これからの物流のトレンドは「環境」である

第4章 物流現場では何が行われているのか?
<ダイアローグ>物流センターにいってみよう!
1 物流センターの1日の流れを把握する
2 流通加工では何をどのように加工するのか?
3 ピッキング作業現場
4 物流センターの事務担当者の業務は?
5 棚卸業務
6 保管コストの削減努力
7 クレーム防止のための苦労
8 KAIZEN活動は常に行うべし
9 社員教育は55で決まり

第5章 先輩から一目置かれる、覚えておきたい知識
<ダイアローグ>覚えておきたいワンランク上の物流知識
1 SKUと単品管理
2 作業効率化の視点
3 バーコードは物流に必須の道具である
4 間違いのない物流センターの選び方
5 請負契約と委託契約
6 物流KPIで見える化を図る
7 食品の「3分の1ルール」
8 世界の港のコンテナ取扱量

第6章 これからはロジスティクスとSCMの時代
<ダイアローグ>物流とロジスティクス、SCMって何が違うの?
1 ロジスティクスとSCMを使いこなして、さらなる効率化を目指す
2 物流の責任範囲のトレンドがEXWに変わりつつある
3 物流のトレンドはアウトソーシング
4 在庫回転率向上で物流の真価を発揮する
5 ブルウイップ化を防ぐことで生産と在庫を削減する
6 SCMでは製造原価を下げ続けなくてもいい?

木村 徹 (著)
出版社 : かんき出版 (2014/11/6)、出典:出版社HP