事例で学ぶ物流改善

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現場改善の実態がわかる35事例

近年、物流は私たちの生活を支える重要な社会インフラとしての認識が高まってきました。物流の重要性に気づいた企業は、抜本的な物流改革に取り組もうとしています。物流改善を行う際の最大の課題は、「その企業にとって、どのような手法と優先順位が最適なのか」です。本書は、著者が実際に手掛けた物流改善のコンサルティングをありのままに伝えています。

青木 正一 (著)
出版社 : 秀和システム (2017/9/16)、出典:出版社HP

はじめに

近年、物流は、産業活動や私たちの生活を支える重要な社会インフラとしての認識が高まってきた。「宅配危機の元凶」とやり玉にあげられるアマゾンだが、ネット通販業界における躍進ぶりは、まさしく「物流を制する者が市場を制した」ケースと言えよう。物流はもはや、トラック輸送会社や倉庫会社といった物流事業者だけのものではない。従来は荷主の立場であったメーカー、卸売業者、小売りチェーン、通販会社等、自ら積極的に取り込み、物流を企業戦略の柱として取り組む状況にある。

物流の重要性に気づいた企業は、抜本的な物流改革に取り組んできた。自力で大きな効果を出す企業もあれば、コンサルティング会社を入れた改革や3PLを行う企業もある。物流効率化、物流品質の向上、コスト削減、顧客ニーズへの対応等、狙いは様々だが、物流改革の成否を分けるポイントは何なのだろうか。
失敗の原因の多くは、現場レベルでの改善手法の未熟さばかりではなく、経営体質や経営トップの意識の低さにあるケースが実に多い。まずは、トップや管理者が変わらなければ、現場も変わらない。また、コンサルティングにおいては、荷主が納得し、物流に対する意識が根本から変わるような提案が求められる。

私は学生時代、佐川急便で4tドライバーを経験した。そのとき、「物流ほど奥深い仕事はない」と素直に感じた。何が奥深いのかというと、企業の業種・業態に関わらず、物流のやり方次第で収益に大きな差が出ることだ。その経験を生かしたいと考え、佐川急便の後に入社した船井総研では、物流コンサルチームを立ち上げた。そして、1996年、「荷主企業と物流企業の温度差をなくす物流バンク」をコンセプトとする物流新業態企業を設立した。

前職を含め、過去26年間で750件以上のコンサルティング業務に携わったが、物流改革は実に泥臭いものだとつくづく思う。また、絵に描いた餅のような改善事例を参考にしただけでは到底変えられるものではないだろう。事実、物流改善を望む企業からは、次のような課題が多数寄せられている。

「自社の物流のどこに問題があるのか、改善の切り口が見えない」
「成功事例だけではなく、もっと失敗事例からも改善のあり方を学びたい」
「自社にとって最適な物流コストの基準を知りたい」
「物流センターの運営方針やオペレーションに対する考え方を根本から見直したい」

つまり、物流改善という切り口は同じでも、実際に落とし込む手法、進め方、体制、システム、成果や効果は千差万別なのである。物流は、その企業の社風、風土、歴史、さらには、業界、業態の商習慣に根付いたものであり、教科書化されたノウハウを真に受けて、闇雲に改善を行えば、却って経営を悪化させてしまうこともあるだろう。実際にそうした企業をいくつも見てきた。物流改善における最大の課題は、「その企業にとって、どのような手法と優先順位が最適なのか」である。

こうした問題を解決するには、私自身が実際に手がけた物流改善のコンサルティングを、ありのままに伝えることが最善と考えた。そこで、物流専門雑誌『月刊ロジスティクス・ビジネス』(株式会社ライノス・パブリケーションズ)で「事例で学ぶ現場改善」という連載の執筆をはじめたのである。本書は、2003年から現在に至る170回に及ぶ連載の中から、最新事例をはじめ、今日に即活用できる35事例を精選し、業界、業種別に収録したものである。さらに加えて、同連載から物流改善の基礎となる6つのポイントをピックアップしている。

激動の物流業界において、本書が皆様の改善活動のバイブルになることを切に願っている。

2017年9月 青木正一

※本文中の「昨年」「今年」などの表記は、内容に差し障らないものについては、掲載当時のままとしています。

青木 正一 (著)
出版社 : 秀和システム (2017/9/16)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 メーカーの改善ケース
1-1 公共資材メーカーV社のコスト削減
1-2 食品メーカーZ社の物流発の経営改革
1-3 外資系化学品D社の供給網再構築
1-4 中堅資材メーカーM社の物流事業化
1-5 繊維メーカーV社の付加価値物流構築
1-6 衣料品メーカーN社の誤出荷ゼロ化
1-7 中堅日雑メーカーの自社運営センター改善

第2章 卸売業の改善ケース
2-1 納品率向上に挑んだ中堅日雑卸
2−2 建材卸W社のドライバー不足と在庫管理
2-3 地方中堅食品卸の物流体制刷新
2-4 地方食品卸K社の業態改革プロジェクト
2-5 地域総合卸S社の事業再構築
2-6 小規模な物流現場のKPI作成
2-7 雑貨卸J社の物流内製化プロジェクト

第3章 小売チェーン、通販、サービス業の 改善ケース
3-1 物流コンペの思わぬ結末−−リサイクルチェーンP社
3-2 印刷E社の物流フロー改善プロジェクト
3-3 新興SPAの最適化プロジェクト
3-4 中堅外食チェーンG社のコスト削減プロジェクト
3-5 通販会社M社の特積み運賃削減
3-6 ローカル外食チェーンW社の物流整備
3-7 通販会X入社の自社センター改造

第4章 運輸事業者の改善ケース
4-1 中小運送会社の共配事業戦略
4-2 主要荷主の物量急減を生き延びる
4-3 不況下に業績を伸ばす下請け運送会社
4-4 長距離運送E社の黒字化プロジェクト
4-5 超高収益運送会社T社のさらなる挑戦
4-6 中堅特積み会社K社の憂鬱
4-7 覚悟を決めた運送業2代目45歳

第5章 物流事業者の改善ケース
5-1 物流子会社L社の3PL事業強化
5-2 物流会社M社のパート戦力化プロジェクト
5-3 印刷物取扱T社の物流センター新設
5-4 投資ファンドA社の出資先テコ入れ
5-5 オーナー系倉庫会社 M社の25年目の夏
5-6 センター運営会社Z社の3PL参入断念
5-7 巨大企業グループの物流子会社問題

第6章 その他の改善ポイント、失敗しないためのアドバイス
6-1 物流会社の現場改善「11の鉄則」
6-2 何が物流会社の明暗を分けるのか
6-3 輪止めを見ればレベルがわかる
6-4 人手以前に工夫が足りていない
6-5 物流会社が生き抜くための10の経営改革
6-6 「配車力」を鍛えるための5箇条

資料 物流現場チェックリスト
おわりに
著者経歴

青木 正一 (著)
出版社 : 秀和システム (2017/9/16)、出典:出版社HP