図解でよくわかる地政学のきほん: 新聞・テレビではわからない国際情勢、世界の歴史、グローバリズムがすっきり見えてくる

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地政学に踏み込む前の第一歩

近年よく耳にするようになった「地政学」とは、自らの行動の指針となるように、世の中を立体的に、そして多角的に捉えていこうとする営みのことです。本書は、地政学の本ではなく、地政学を学ぶ前に必要な国・地域別の歴史の知識を、地図を使って解説します。中高生や歴史が苦手な人にもわかりやすい「地政学」の入門書です。

はじめに

最近、「地政学」という言葉が流行っています。耳馴れない言葉の響きがかっこよさそうな雰囲気であることが受けているのでしょうか。
この本は地政学の本ではありません。地政学に踏みこむ前に、地政学って何? ということをつかむための第一歩の本です。歴史に興味のある中学生や高校生にも読んでもらえる超初歩的な内容になっています。
地政学って何だろう? と思いインターネットで検索して辞書的な意味を知っても釈然としないでしょう。
実はそんなに難しいことではありません。地政学とは、自らの(自らの属する共同体の)行動の指針となるように、世の中を立体的に、そして多角的にとらえていこうとする営みのことだと思ってください。
立体的にとらえていくというのは、陸(land)のみならず海(sea)、そして空(sky)、さらには宇宙(space)、はたまた地下(underground 資源の多くは地下に眠っている)、もちろん水中も含め、さまざまな観点から世の中を見ていくことです。
世界は観点を変えることでさまざまな見え方をします。まずそれを自覚することが固定観念を取り払い、直感を鍛えていくことにつながります。
何だかあたりまえのことをいっているようですが、最近、地政学という言葉がことさらに強調されているのは、むしろ世界を包括的にとらえようという姿勢がこの現代社会のなかで見失われているからではないでしょうか。
哲学者のディルタイは「歴史は理解(了解)の学である」といいました。さまざまな事象を関連させて統一的な意味を見出していくことが大事なのであって、地政学という言葉はどうでもいいのです。
この本がぼくら人間がつくってきた、そしてつくっているこの社会を理解するための小さな第一歩になってくれれば嬉しい限りです。
では、気軽に、でもしっかりと読み進めていってください。

荒巻豊志

もくじ

はじめに

[第1章] 大陸国家になれなかった日本
島国日本 大陸進出の野望
ロシアの圧力と蝦夷地の探検
日本の朝鮮進出と日清戦争
日本の朝鮮進出と日露戦争
列強を警戒させた日本の大陸経営
中国とソ連の脅威と満州事変
満洲を守るための中国との戦争
海洋国家日本の起源となる海上貿易
明治政府の南方進出政策
第一次世界大戦と日米対立の顧在化
東南アジア進出と日米戦争
島国となった日本と周辺国との領土問題
[column] 地政学の基礎知識 日本の領海

[第2章] 海洋国家になれなかった中国
中国王朝と遊牧民との抗争の歴史
ユーラシア帝国としての元
元の後継国 明・清
海へ向かおうとした大陸国家中国
列強に分割された苦難の近代中国
ナショナリズムの高揚と中華人民共和国の成立
[column] 地政学の基礎知識 マッキンダーのハートランド理論

[第3章] 大陸から海を目指すロシア
ハートランドを支配するロシア
エカチェリーナ2世の領土拡大政策
クリミア戦争の敗北とアジアへの進出
列強に阻まれるバルカン半島進出
東アジア進出の野望と日露戦争の敗北
ロシア帝国の後継としてのソ連
[column] 地政学の基礎知識 地政学用語①

[第4章] 大陸国家かつ海洋国家アメリカ
大陸国家アメリカ合衆国
フロンティアの消滅と海外進出
アメリカ合衆国とラテンアメリカ諸国
アメリカ合衆国のアジア進出
太平洋戦争へ向かう日本との対立
アメリカ合衆国とヨーロッパ
[column] 地政学の基礎知識 地政学用語②

[第5章] 海洋国家イギリス
大陸国家から海洋国家へ
第一次大英帝国の繁栄と衰退
産業革命の成功と植民地の拡大
ロシアとの対立から和解への道程
世界大戦へ向かったドイツとの対立
独立する植民地と大英帝国の解体
[column] 地政学の基礎知識 世界のチョークポイント

[第6章] 大陸で覇を競うヨーロッパ諸国
主権国家体制の成立
ブルボン朝の繁栄と衰退
ナポレオンの夢と挫折
ドイツの登場で分裂するヨーロッパ
バルカンはヨーロッパの火薬庫
第一次世界大戦とヨーロッパの没落
ヴェルサイユ体制とヒトラーの登場
第二次世界大戦とヨーロッパの分割
[column] 地政学の基礎知識 マハンのシーパワー理論

[第7章] 現代世界
冷戦の時代① 終戦から1950年代初頭
冷戦の時代② 1950年代 第三勢力の台頭
冷戦の時代③ 1960年代からソ連崩壊まで
ポスト冷戦から現在へ
戦後の中国① 南シナ海への進出
戦後の中国② 強引な拡大政策
戦後の中国③ 少数民族問題
ソ連の解体とその後継としてのロシア
ヨーロッパの統合と拡大
パレスチナ問題① イスラエルの建国
パレスチナ問題② ゲリラ活動の激化
イラン・イラク戦争から湾岸戦争まで
混乱の続くアフガニスタン
21世紀の戦争 テロの脅威
東南アジア① 独立運動
東南アジア② ベトナム戦争
東南アジア③ 進化する経済統合
インドの独立とパキスタンの誕生
アフリカ諸国の独立
[column] 地政学の基礎知識 ハウスホーファーのパン・リージョン理論

[付録] 世界地図の見方
地図の種類と選び方
中心点を変えて世界を見てみよう
大陸から見た日本

参考文献